Pallas – Arrive Alive (1983)
1980年代初頭のロンドン・マーキー・クラブ(The Marquee Club)を拠点に、パンク/ニュー・ウェイヴ以降の新たな息吹として巻き起こった「ネオ・プログレッシブ・ロック(ポンプ・ロック)」のムーヴメント。マリリオン(Marillion)やIQ、ペンドラゴン(Pendragon)らとともにその最前線を駆け抜けたスコットランド・アバディーン出身の5人組、パラス(Pallas)が1983年に発表した初期の金字塔的ライブ・アルバムが、この『アライヴ・アライヴ(Arrive Alive)』だ。
自主制作カセットからEMIメジャー契約へと駆け上がった熱狂の原点
1974年に結成され、70年代プログレッシブ・ロックの構築美とNWOBHM(ニュー・ウェイヴ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィ・メタル)のダイナミズムを融合させながらスコットランドのクラブで腕を磨いていたパラス。本作は1981年4月に故郷スコットランドで行われたライブ音源をグラスゴーのCa-Vaスタジオでミックスダウンし、当初は自主制作カセットテープとして手売りされていた音源が元になっている。
これがアンダーグラウンドのプログレ・ファンや英『サウンズ(Sounds)』誌などの音楽メディアで大反響を呼び、1983年に待望のアナログLP化。マーキー・クラブでの伝説的な連続公演を経て、彼らは大手メジャーレーベルのEMIと契約を交わし、1984年の名作スタジオ盤『The Sentinel』へと結実させていく。本作はその前夜にあたる、荒削りながらも剥き出しのパッションが炸裂したバンド初期のドキュメントである。
ピーター・ガブリエルの狂気を継ぐユアン・ローソンのシアトリカルな怪演
この時期のパラスの求心力となっていたのが、初代ボーカリストであるユアン・ローソン(Euan Lowson)の演劇的(シアトリカル)なステージングだ。初期ジェネシスのピーター・ガブリエルやアレックス・ハーヴェイを想起させる白塗りのメイクや奇怪な衣装を身にまとい、曲ごとに憑依したかのようにドラマを演じ分けるパフォーマンスは熱烈な信奉者を生んだ。
その真骨頂が、B面を締めくくる15分近い大作「The Ripper(切り裂き魔)」だ。当時英国社会を恐怖に陥れていた連続殺人事件の空気を反映し、猟奇的な殺人者の心理を演劇的な語りと絶叫、そして不気味なテンポチェンジで描いたこの楽曲は、マーキー・クラブでの過激な演出が物議を醸し、一時は同会場への出演禁止騒動にまで発展したという逸話を持つ。ローソンの鬼気迫るボーカルと、それを盛り上げるロニー・ブラウン(Ronnie Brown)の重厚なキーボード、ナイル・マシューソン(Niall Mathewson)の叙情的なギターソロが織りなすカタルシスは圧倒的だ。
ヘヴィ・ロックの疾走感とシンフォニックの融合が生んだネオ・プログレの熱気
オープニングを飾るタイトル曲「Arrive Alive」や「Heart Attack」に見られるのは、70年代のプログレ特有の長尺な晦渋さを削ぎ落とし、シンセサイザーのキャッチーなリフとエネルギッシュな8ビートで突進する80年代ならではの切れ味だ。グレアム・マレー(Graeme Murray)の図太いベースラインとマイク・ストーカー(Mike Stobbie/Derek Forman)のタイトなドラミングが牽引するリズム隊の推進力は、同時期のアイアン・メイデンやサクソンといったヘヴィ・メタル勢のリスナーをも巻き込むほどの突進力を誇っていた。
一方で「Queen Of The Deep」や「Crown Of Thorns」で見せるメロディアスなシンフォニック・バラードの美しさも秀逸であり、ダイナミズムと叙情性の振れ幅こそが彼らの真骨頂であることを証明している。スタジオ盤での整音されたサウンドとは異なる、観客の歓声とバンドの生々しいエネルギーが直撃する80年代英国プログレ再興期を象徴する必聴のライブ盤だ。
トラックリスト
- A1 - Arrive Alive
- A2 - Heart Attack
- A3 - Queen Of The Deep
- B1 - Crown Of Thorns
- B2 - The Ripper