Gong – Expresso II (1978)
Gong『Expresso II』について
Gongの『Expresso II』は、1978年に発表されたスタジオ・アルバムで、バンド名義では通算8作目にあたる作品だ。とはいえ、内容の中心にいるのはデヴィッド・アレン時代のサイケデリックな宇宙感というより、ピエール・モエランを軸にしたジャズ・ロック寄りの編成と演奏だ。ヴィブラフォンを前面に出したインストゥルメンタル主体の作りで、Gongの別の側面がはっきり出た一枚として知られている。
作品の位置づけ
Gongはフランスで結成されたプログレッシブ/サイケデリック・ロック・バンドで、メンバーの入れ替わりが非常に多い。この『Expresso II』は、デヴィッド・アレン主導のスペース・ロック的な流れとは距離があり、実質的にはピエール・モエラン率いるGongの2作目にあたる位置づけだ。とはいえ当時は契約上の事情で、Virgin Recordsからはまだ「Gong」名義で出ている。
そのため、同じGongでも前期の作品群とは手触りがかなり違う。一般に連想されやすい浮遊感のあるヴォーカルやコミカルな世界観より、リズムの組み立てとアンサンブルの精度が前に出る内容だ。ジャズ、ロック、フュージョン、プログレッシブ・ロックの交差点に置かれるのは、そのあたりの性格によるものだろう。
サウンドの特徴
このアルバムの軸は、演奏の密度とリズム感だ。ビブラフォンの響きが印象を決め、ギター、ベース、ドラム、パーカッションが細かく噛み合う。Gongらしい実験性は残しつつも、曲の進行はかなり演奏主導で、ジャズ・ロックの文脈で聴かれることが多いのも納得できる。
聴感としては、音の隙間が多いというより、各パートがきっちり役割を持って動くタイプだ。フレーズの反復や拍のずらし方に耳が向きやすく、即興性と構成の両方が見える。前期Gongのような物語性や言葉遊びを追うより、演奏そのものを追いかけるアルバムという印象が強い。
編成とクレジット
参加メンバーには、ピエール・モエラン、ミシェル・グローディ、スティーヴ・ヒレッジ、マイク・ハウレット、ビル・ブラッフォード、ティム・ブレイクらが名を連ねる。ジャズ/プログレ界隈で重要な名前が並んでいて、この時期のGongが単なる「サイケバンド」ではないことがはっきりしている。
とくにビル・ブラッフォードの参加は、英国プログレの耳で聴くと見逃しにくい点だ。ドラムの質感やリズムの立ち上がりに、同時代のプログレッシブ・ロックやフュージョンの感覚が入り込んでいる。
同時代とのつながり
1978年という時期は、プログレッシブ・ロックが初期のピークを過ぎ、ジャズ・ロックやフュージョンとの往復がより目立っていく頃だ。Gongのこの作品も、その流れの中に置くと分かりやすい。比較対象としては、マハヴィシュヌ・オーケストラやソフト・マシーン周辺の、演奏の切れ味を重視する作品群が思い浮かぶ。
ただし『Expresso II』は、純粋なジャズ・ロックへ寄り切るというより、Gongという名前の持つ歴史を背負いながら、その時点のメンバーで別の方向へ進んだ記録になっている。タイトルは同じでも、前期のGongと同一線上で語るより、派生バンドの色合いで捉えたほうが実態に近い。
代表曲・聴きどころ
このアルバムはインストゥルメンタル中心のため、シングルヒットや一般的な代表曲で語られるタイプではない。アルバム全体の流れとアンサンブルが聴きどころだ。曲単位で目立つというより、連続して聴いたときに演奏の組み替わりや音色の違いが見えてくる作りだ。
まとめ
『Expresso II』は、Gongのディスコグラフィの中でも、デヴィッド・アレン期の宇宙的なサイケデリアから離れ、ピエール・モエラン主導のジャズ・ロック路線を明確にした作品だ。1978年の時点で、Gongという名前がまだ複数の方向を内包していたことを示す一枚でもある。ヴィブラフォンを核にしたインストゥルメンタルの演奏、プログレとフュージョンの接点、そして移行期のバンド編成。そのあたりが、このアルバムの輪郭になっている。
トラックリスト
- A1 – Heavy Tune (6:22)
- A2 – Golden Dilemma (4:52)
- A3 – Sleepy (7:18)
- B1 – Soli (7:37)
- B2 – Boring (6:22)
- B3 – Three Blind Mice (4:50)