Genesis – Gabacabriel Vol. 1 – Milton Keynes 2nd Oct. 1982 (1983)
Genesis『Gabacabriel Vol. 1 – Milton Keynes 2nd Oct. 1982』について
Genesisは、1967年に英サリー州ゴダルミングのチャーターハウス・スクールで結成されたロック・バンド。初期は複雑な曲構成や演奏の緻密さで知られ、ピーター・ガブリエル在籍期には演劇的なステージも含めて強い個性を持っていた。1970年代後半以降はフィル・コリンズが前面に出る形になり、1980年代にはより広く聴かれる方向へ進んでいく。その流れの中で、1982年のライヴを収めた本作は、バンドの転換期を映す記録として見える一枚だ。
作品の概要
本作『Gabacabriel Vol. 1 – Milton Keynes 2nd Oct. 1982』は、1982年10月2日にミルトン・キーンズで行われた公演を収めた3枚組。盤の表記は1983年で、クレジットには「An L. Z. Lobb Producktion」「Jessicarisma TM Records」「Fan Club Use Only」とあり、ファン向けの流通を意識した体裁になっている。
タイトルにある“Gabacabriel”は、1981年作『Abacab』とピーター・ガブリエルの名を重ねたような表記で、1982年当時のGenesisの状況をそのまま切り取ったような印象がある。ピーター・ガブリエルが在籍していた時代の曲と、フィル・コリンズ体制以降の曲が同じ文脈で並ぶ時期であり、バンドの変化をたどるうえで興味深いライヴ音源になっている。
1982年のGenesisという位置づけ
1982年のGenesisは、いわゆるプログレッシブ・ロックの初期像と、80年代的なポップ寄りの書き味が同居していた時期。『Abacab』の後であり、同年には『Three Sides Live』の流れも見えてくる頃で、ライヴでは過去曲をどのように並べるかが重要なポイントになっていたはずだ。
この時期の編成は、ピーター・ガブリエル、トニー・バンクス、マイク・ラザフォード、フィル・コリンズ、スティーヴ・ハケットの5人が中心。特にガブリエル、コリンズ、ハケットが同じ公演に関わる82年のGenesisは、バンド史の中でもかなり特別な並びとして受け取られている。
収録内容と聴きどころ
背面クレジットには曲名の表記ゆれがあるとされているが、ライヴ盤としては、Genesisの代表曲群をステージ上でどう再構成しているかが見どころになる。初期の長尺で組曲的な曲、70年代後半以降の比較的コンパクトな曲、さらに80年代の新しいナンバーが並ぶことで、バンドの変遷がそのまま流れになる。
Genesisのライヴでよく注目されるのは、スタジオ版と演奏アレンジの差。トニー・バンクスのキーボードは音の層を増やし、マイク・ラザフォードはベースとギターを使い分け、フィル・コリンズはドラマーでありながら歌でも曲を引っぱる。ピーター・ガブリエル時代の楽曲が入る場合は、当時の歌唱の輪郭がどう扱われているかも聴きどころになりやすい。
代表曲との関係
Genesisといえば、後年の大ヒット曲である「Invisible Touch」や「That’s All」がまず思い浮かぶかもしれないが、この1982年のライヴはそれ以前の段階にある。つまり、商業的なピークに向かう途中のGenesisを記録したものとして見やすい。初期の代表曲、70年代後半の楽曲、そして当時の新しい曲が同じステージで並ぶ点に、この時期ならではの意味がある。
同時代の文脈
同じ英国プログレの流れでいうと、YesやKing Crimsonのような技巧派の文脈と比べられることが多いGenesisだが、1980年代に入ると、Genesisはよりポップス寄りの聴かれ方も強くなっていく。本作は、その変化がライヴの現場でどう出ていたかを示す資料のような存在だ。
3枚組という構成も含め、単なるベスト的な編集盤ではなく、特定公演の空気をまとった記録として受け止めやすい。1983年の盤として出回ったこの一枚は、1982年時点のGenesisの姿を追ううえで、当時のステージ運びやセット構成を感じられるライヴ作品になっている。
まとめ
『Gabacabriel Vol. 1 – Milton Keynes 2nd Oct. 1982』は、Genesisの転換期を捉えた1982年公演の3枚組ライヴ盤。ピーター・ガブリエル時代の遺産と、フィル・コリンズ体制の現在進行形が同居する時期の記録として、バンドの歩みをそのまま辿れる内容だ。Genesisの歴史を追うとき、スタジオ盤だけでは見えにくい現場の並びが見えてくるタイプの作品である。
トラックリスト
- A1 – Back In New York City
- A2 – Selling England By The Pound (Dancing With The Moonlight Knight)
- A3 – Carpet Crawler
- B1 – Firth Of Fifth
- B2 – Musical (The Musical Box)