The Pineapple Thief – 10 Stories Down (2005)
The Pineapple Thief『10 Stories Down』について
The Pineapple Thiefは、ブリテンのプログレッシブ・ロック・バンドというより、Bruce Soordを中心に進んできたプロジェクトとして語られることが多い。1999年に始動し、2005年に4作目として登場したのが『10 Stories Down』。The Pineapple Thiefの初期をまとめるうえで、ひとつの節目に置かれる作品だ。
2023年盤は、このアルバムを改めて聴ける再発で、もとの2005年版とは音源の扱いが異なる。The Pineapple Thiefのカタログを整理し直す流れの中で出てきた盤と見てよさそうだ。
作品の位置づけ
『10 Stories Down』は、Bruce Soordがソロ色の強い活動から、バンドとしての形を少しずつ固めていく時期のアルバム。プロフィール上でも、この頃にはJon Sykes、Wayne Higgins、Matt O’Leary、Keith Harrisonといった旧友たちが参加し、のちにSteve Kitchも加わっていく。つまり、The Pineapple Thiefの「バンドとして鳴り始める前後」の空気が入った一枚という位置づけになる。
クレジット面でも重要で、2005年版はBruce SoordとSteve Kitchによるミックス。さらに2011年にはKscope盤として再ミックス版が出ており、2023年盤はその流れを踏まえた再構成盤として扱われている。
内容と曲の特徴
このアルバムは、長めの尺の曲と、比較的コンパクトな曲が混ざる構成。プログレッシブ・ロックらしく、展開を持たせた曲作りが中心だが、技巧の見せ場を前に出すタイプというより、曲全体の流れを保ちながら進む作りになっている。
マスターノートを見ると、この作品は2005年の時点で別テイクや別マスターを含むやや複雑な経緯を持つ。初期盤には誤ったマスターが使われ、のちに修正版が出た。修正版では「It’s Just You And Me」が追加され、「I Will Light Up Your Eyes」は2部構成の「Light Up Your Eyes」に置き換えられている。2011年の再ミックスでは、さらに「It’s You And Me」が戻され、曲名も整理された。2023年盤では、過去の版に収録された曲をまとめて収める形になっている。
2005年盤と2023年盤の違い
- 2005年オリジナルは、誤プレス版と修正版が存在
- 2011年にはBruce Soordによる再ミックス版が登場
- 2023年盤は、2023年に再ミックス・リマスターされた版
- 初期版・修正版・再ミックス版で収録曲や曲名が異なる
- 2023年盤は、そうした差異を整理して聴ける版という位置づけ
同時代の文脈
2000年代前半のUKプログレ周辺では、壮大さよりも、メロディと曲構成を重視するバンドが多く見られた。The Pineapple Thiefもその流れの中で、Porcupine TreeやIQ、Pallasのような大きな系譜と並べて語られることがあるが、音の重心はもっと内省的で、Bruce Soordの歌と作曲のまとまりに寄っている。
『10 Stories Down』は、そうした文脈の中で、The Pineapple Thiefが後年の安定したバンド像へ向かう途中段階として聴こえる作品だ。のちのカタログを知っていると、ここで見えてくる骨格がかなりはっきりしている。
ひとこと
2023年盤は、単なる旧作の再発というより、2005年版をめぐる複数のマスターと再ミックスの履歴を整理した版として見るのが自然だ。The Pineapple Thiefの初期を追うなら、作品そのものだけでなく、曲順や収録曲の変遷も含めて面白い一枚である。
トラックリスト
- A1 – Prey For Me
- A2 – Clapham
- A3 – Wretched Soul
- A4 – The World I Always Dreamed Of
- A5 – Start Your Descent
- B1 – My Own Oblivion
- B2 – It’s Just You And Me
- B3 – The Answers
- B4 – From Where You’re Standing
- B5 – I Will Light Up Your Eyes