Anthony Phillips – Private Parts And Pieces (1978)
Anthony Phillips『Private Parts And Pieces』について
『Private Parts And Pieces』は、British multi-instrumentalist Anthony Phillips が1978年に発表したソロ作品である。Genesisの初期メンバーとして知られるPhillipsにとって、バンド脱退後のソロ活動がすでに軌道に乗っていた時期の一作で、作品名どおり「断片」や「個人的なスケッチ」を集めたような性格が強いアルバムとして位置づけられている。
1970年にGenesisを離れたPhillipsは、その後にソロ・デモや作曲活動を進め、1977年には初の本格的なソロ・アルバム『The Geese and the Ghost』を発表している。『Private Parts And Pieces』はその翌年の作品で、ソロ作家としての手応えを積み重ねていく流れの中にある。
作品の位置づけ
本作は、Anthony Phillipsの長いソロ・ディスコグラフィーの中でも、初期の重要作として扱われることが多い。大きなバンド編成で押し切るタイプではなく、ギター、ピアノ、鍵盤、アコースティック楽器を中心にした、細かな書法や室内楽的な組み立てに耳が向きやすい内容である。Genesis時代のロック・バンドの文脈というより、作曲家としてのPhillipsの側面が前に出る一枚といえる。
タイトルの『Private Parts And Pieces』は、その後シリーズ化される名称でもあり、この作品が単発のアルバムというだけでなく、彼の私的な器楽作品群の入口になっている点も見逃せない。
音の印象
このアルバムは、派手な展開を強く押し出す作りではない。曲ごとの小さな表情の違い、フレーズの積み重ね、音色の切り替えが中心にある。実際に聴くと、メロディーが前面に出る場面もあれば、和声や伴奏の流れがそのまま曲の核になっている場面もある。
プログレッシブ・ロックの中でも、技巧の誇示よりも構成の細かさや響きの配置に重心があるタイプで、同時代の繊細なソロ・インスト作品や、英ロックのアコースティック寄りの作品群と並べて語られることがあるのも納得できる内容である。
制作面の記録
クレジット上では、Send Barnsで録音され、Trident Studiosでリミックス、マスタリングが行われている。さらに、1978年8月にロンドンのTrident Studiosでマスタリング、同年9月にニューヨークのSterling Soundでリマスタリングが施されている。英国録音と米国向けの仕上げが併記されている点は、この時期の英ロック系作品らしい流れでもある。
US盤としてはPassport Recordsからのリリースで、PVC Records製造、JEM Records配給という形になっている。ラベル表記でも曲はRun It Music, Inc.から出版されている。
Genesisとのつながりと比較
Anthony Phillipsといえば、やはりGenesisのオリジナル・ギタリストとしての印象が強い。だが、本作を聴くと、バンドの初期作で見えたアコースティック感覚や、英国的なメロディーの運びが、より私的な形で整理されていることがわかる。Genesisのダイナミックな組曲性とは違い、ここでは曲の内部の細部が主役になっている。
同時代のプログレ界では、バンドから離れたミュージシャンがソロで器楽作品や内省的な作風を深める例が少なくないが、Phillipsの場合はその中でもかなり作曲寄り、記譜された音楽の感触が強い。後年の作品群へつながる、基礎の確認のような役割も持っている。
代表曲について
本作はシングルヒットで広く知られるタイプのアルバムではない。むしろ、アルバム全体を通して聴くことで、曲ごとの小さな構造や音の配置が見えてくる作品である。派手な代表曲で引っ張るのではなく、連続した流れの中で印象が残る構成になっている。
まとめ
『Private Parts And Pieces』は、Anthony PhillipsがGenesis脱退後に築いたソロ活動の中で、作曲家としての輪郭をはっきり示した一枚である。1978年という時点で、すでに彼はバンド・ギタリストという枠を離れ、器楽曲と小品の積み重ねで自分の音楽を組み立てていた。その姿が、かなり率直に表れた作品といえる。
派手さよりも、曲の作り、音色、静かな展開に目が向くアルバムである。
トラックリスト
- Home Side
- A1 – Beauty And The Beast (4:09)
- A2 – Field Of Eternity (5:11)
- A3 – Tibetan Yak-Music (6:10)
- A4 – Lullaby – Old Father Time (1:15)
- A5 – Harmonium In The Dust (Or Harmonious Stratosphere) (2:31)
- A6 – Tregenna Afternoons (7:50)
- Away Side
- B1 – Reaper (6:12)
- B2 – Autumnal (6:00)
- B3 – Flamingo (11:08)
- B4 – Seven Long Years (2:56)