Lords Of The New Church – Killer Lords (1985)
ザ・ダムド、デッド・ボーイズ、シャム69、ザ・バラクーダス。70年代後半の英米パンク・シーンを最前線で駆け抜けた強者たちがロンドンで合流し、1981年に産声を上げたスーパーグループがザ・ローズ・オブ・ザ・ニュー・チャーチ(The Lords of the New Church)だ。本作『キラー・ローズ(Killer Lords)』は、彼らが1985年にI.R.S.傘下のイリーガル・レコード(Illegal Records)から発表した、初期のキャリアを凝縮した初のコンピレーション・アルバムである。
パンクの猛者たちが切り拓いたダーク&グラムな新機軸
バンドの顔ぶれはまさにパンク・シーンのオールスター。フロントに立つのはUSパンク伝説のデッド・ボーイズで危険なカリスマ性を放っていたスティヴ・ベイターズ(Stiv Bators)。ギターはザ・ダムドの初代ギタリストであり、初期のソングライティングを一身に担っていたブライアン・ジェイムス(Brian James)。リズム隊にはシャム69の屋台骨だったデイヴ・トレグナ(Dave Tregunna、ベース)と、サーフ/ガレージ・パンクの名手ザ・バラクーダスのニッキー・ターナー(Nicky Turner、ドラム)が顔を揃える。
当時の彼らが鳴らしたのは、単なるストレートなパンク・ロックのリバイバルではなかった。70年代パンクが持っていた生々しい攻撃性とエッジを保ちつつ、80年代初頭に勃興したポストパンクやゴシック・ロックの耽美的な陰影、さらには60年代ガレージ・ロックやデヴィッド・ボウイ直系のグラム・ロックが持つポップな毒気を融合。タイトで研ぎ澄まされたビートにシンセサイザーのダークなレイヤーが重なり、独自の「ゴス・パンク」とも言うべきスタイルを打ち立てていた。
3枚のスタジオ盤を総括する代表曲群と貴重なセッション
『Killer Lords』は、1st『The Lords of the New Church』(1982年)、2nd『Is Nothing Sacred?』(1983年)、3rd『The Method to Our Madness』(1984年)という初期3枚のアルバムからの重要曲を軸に、アルバム未収録のシングル曲やB面曲、オルタナティブ・ミックスなどを巧みに網羅している。
アルバムの冒頭を飾る「Dance With Me」は、スティヴ・ベイターズの艶のあるボーカルと退廃的なシンセのメロディが絡み合う彼ら最大の代表曲。MTVの創成期にミュージックビデオが頻繁にオンエアされ、映画監督のデレク・ジャーマンがクリップを手掛けたことでも知られるナンバーだ。鋭利なギターリフが牽引する政治色の濃い「Open Your Eyes」や「Russian Roulette」では、ブライアン・ジェイムスのソリッドなプレイが炸裂する。
さらに注目すべきは、単なるベスト盤の枠を超えたサイドプロジェクト的なトラックの充実ぶりだ。「Lord’s Prayer」はUK初期パンクの雄ジ・アドヴァーツ(The Adverts)のT.V.スミスが書き下ろした楽曲で、プロデュースをブルース・スプリングスティーン率いるEストリート・バンドのリトル・スティーヴン(スティーヴ・ヴァン・ザント)が手掛けている。パンクとアメリカン・ロックンロールの邂逅が生み出した、張り詰めたダイナミズムが耳を引く。
マドンナのカバー「Like A Virgin」と異色のユーモア
本作のラストを飾るのが、マドンナが1984年末に世界的大ヒットを記録させたばかりだった名曲「Like A Virgin」のパンク・カバーだ。I.R.S.レコーズを率いる名物プロモーター、マイルズ・コープランド(ポリスのマネージャーとしても著名)の強い提案によって録音されたこのトラックは、エコーの効いたドラムと重厚なファズギター、そしてスティヴの皮肉たっぷりで演劇的なボーカルによって、煌びやかなディスコ・ポップから不穏で退廃的なガレージ・ロックへと見事に解体・再構築されている。
シングル化された際には、スティヴ・ベイターズ自身が純白のウェディングドレスとヴェールをまとって佇む強烈なヴィジュアルが打ち出され、全英インディ・チャートで2位を記録するスマッシュヒットとなった。単にシリアスで重厚なダークサイドに沈み込むだけでなく、こうしたキッチュな挑発やユーモアを平然とやってのけるところにも、彼らが持っていたニューヨーク・パンク譲りのスマートなセンスが息づいている。
80年代アンダーグラウンドの交差点としての価値
クリーデンス・クリアウォーター・リバイバルの泥臭いロックンロールを疾走感あふれるビートに仕立て直した「Hey Tonight」など、ルーツへの敬意と80年代的なアプローチのバランスも絶妙だ。ハードロックやメタルのリスナーにも刺さる分厚いギターサウンドを持ちながら、バウハウスやシスターズ・オブ・マーシーといった当時のポジティブ・パンク勢とも共振する妖しさを兼ね備えていた。
『Killer Lords』は、70年代パンクの火花を絶やすことなく、80年代という新しいディケイドの空気を取り込んで劇的な進化を遂げた4人の猛者たちの足跡を、最もコンパクトかつ濃密に追体験できる一枚として長く聴き継がれている。
トラックリスト
- A1 - Dance With Me (3:25)
- A2 - Hey Tonight (4:55)
- A3 - Russian Roullette (3:47)
- A4 - M-Style (4:12)
- A5 - Lord's Prayer (5:39)
- A6 - Live For Today (3:38)
- B1 - Method To My Madness (3:16)
- B2 - Open Your Eyes (3:27)
- B3 - I Never Believed (3:38)
- B4 - Black Girl White Girl (3:39)
- B5 - New Church (3:30)
- B6 - Like A Virgin (3:47)