Mike Oldfield – The Complete (1985)

Mike Oldfield『The Complete』について

Mike Oldfieldの『The Complete』は、1985年にUKで登場した2枚組の編集盤だ。いわゆる「ベスト盤」というより、1970年代から1980年代半ばまでの活動をまとめて見せる回顧的な作品で、作曲家・マルチインストゥルメンタリストとしての変化を追える内容になっている。
『Tubular Bells』で知られる複雑な長尺インストゥルメンタルの時代から、1980年代前半のヒット曲、さらに当時のライヴ音源までを収めた構成で、Mike Oldfieldの仕事を俯瞰する入口として位置づけやすい1枚だ。

作品の構成

オリジナルの2LPでは、各面ごとにテーマが分かれている。

  • A面はインストゥルメンタル中心。1970年代から1980年代の短い小品や、シングルで出ていた非アルバム曲が並ぶ。
  • B面はヴォーカル曲中心。1982年から1984年にかけてのヒット曲をまとめている。
  • C面は複雑な長尺作品の抜粋。初期4作からの断片と、1984年の映画『The Killing Fields』の音楽が入る。
  • D面はライヴ音源。1981年と1982年のツアーからの未発表曲で構成されている。

この分け方がかなり明確で、単なる曲寄せ集めではなく、Oldfieldの作風の広がりを面ごとに見せる作りになっている。短い旋律の小品、ポップ寄りのヒット曲、長大な組曲、そしてライヴ演奏という並びは、当時の彼の活動をそのまま切り分けたような印象だ。

聴きどころ

この盤でまず目を引くのは、やはり1980年代前半のヒット曲群だ。Mike Oldfieldといえば『Tubular Bells』のイメージが強いが、1983年の「Moonlight Shadow」も代表曲として外せない。こうした楽曲がB面にまとまっていることで、シングル・アーティストとしての側面もはっきり見える。

一方で、A面の小品群やC面の初期作品抜粋は、プログレッシヴ・ロック的な構築性や、フォーク、民族音楽、アンビエント寄りの要素が混ざるMike Oldfieldらしさを伝える部分だ。長尺作品の断片だけでも、メロディの置き方や楽器の重ね方に独特の癖がある。

そして、ファンの関心を集めやすいのがD面のライヴ音源だろう。スリーヴノートでも、1981年から1984年にかけてのツアーで演奏された未発表ライヴ素材として紹介されている。スタジオ盤とは違って、演奏の推進力が前に出やすく、楽曲の輪郭が少し違って聴こえる構成になっている。特に『Sheba』から『Mirage』、『Platinum』、『Mount Teide』といった曲の並びは、当時のステージを切り取った記録として価値が高い。

収録曲の由来に見えるポイント

ライヴ面の収録元には、ドイツ各地の公演が含まれている。『Sheba』と『Mirage』は1981年4月1日のエッセン公演、『Platinum』は1981年4月2日のハノーファー公演からとされている。『Mount Teide』は1982年ツアーのドイツ公演からのもので、1982年12月6日のケルン公演音源ではない点も記録されている。

こうした情報を見ると、『The Complete』は単なるダイジェストではなく、当時入手しにくかった音源を含めてMike Oldfieldの活動を整理した編集盤として作られていることが分かる。とくにライヴ面は、コレクター目線でも注目されやすい内容だ。

1985年という時期の意味

1985年のMike Oldfieldは、初期の実験的で長いインストゥルメンタル作品から、より広い聴衆に届く楽曲へと活動の重心が移っていた時期だ。『The Complete』はその変化を1つの作品に収めているため、彼のキャリアの見取り図として機能している。『Tubular Bells』の作曲家という顔だけでは収まりきらないことが、かなり分かりやすい。

同時代のプログレッシヴ・ロック周辺のアーティストと比べても、Oldfieldはシンフォニックな長尺曲とポップなヒット曲を同じ軸で扱える点が特徴的だ。この編集盤では、その両方が無理なく同居している。

細かな表記について

盤面表記では、A7が「Wallberg」となっているが、正しいタイトルは「Waldberg」とされている。また、A2の曲長表記にはズレがあり、センターラベルでは3:52とあるが、実際は2:52とされている。こうした細部も、初期プレスらしい記録として残っている。

まとめ

『The Complete』は、Mike Oldfieldの10年以上にわたる仕事を、インストゥルメンタル、ヒット曲、長尺構成、ライヴという4つの切り口で見せる1985年の編集盤だ。『Moonlight Shadow』のような代表曲と、初期作品の断片、さらに未発表ライヴまでを並べたことで、彼の音楽の幅がそのまま伝わる内容になっている。
ベスト盤というより、作家としての変遷をたどるための1枚、という印象が強い。

トラックリスト

  • A1 – Arrival (2:46)
  • A2 – In Dulci Jubilo (3:52)
  • A3 – Portsmouth (3:15)
  • A4 – Jungle Gardenia (2:45)
  • A5 – Guilty (3:57)
  • A6 – Blue Peter (2:07)
  • A7 – Waldberg (The Peak) (3:24)
  • A8 – Wonderful Land (3:37)
  • A9 – Etude (Theme From The Killing Fields) (3:04)
  • B1 – Moonlight Shadow (3:37)
  • B2 – Family Man (3:45)
  • B3 – Mistake (2:54)
  • B4 – Five Miles Out (4:17)
  • B5 – Crime Of Passion (3:38)
  • B6 – To France (4:34)
  • B7 – Shadow On The Wall (12″ Version) (5:07)
  • C1 – Excerpt From Ommadawn (7:04)
  • C2 – Excerpt From Tubular Bells (8:34)
  • C3 – Excerpt From Hergest Ridge (4:20)
  • C4 – Excerpt From Incantations (4:41)
  • C5 – Excerpt From The Killing Fields (Evacuation) (4:07)
  • D1 – Sheba (3:28)
  • D2 – Mirage (4:49)
  • D3 – Platinum (Including North Star/Platinum Finale) (14:16)
  • D4 – Mount Teide (4:07)

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2026.07.21
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