Severed Heads – Since The Accident (1983)
Severed Heads「Since The Accident」について
「Since The Accident」は、オーストラリア出身の電子音楽グループ、Severed Headsが1983年に発表した作品。UK盤も同じ1983年リリースで、初期のバンドが持っていた実験性と、その後につながるダンス寄りの感覚が同居した時期の記録として位置づけられる一枚である。
Severed Headsは1979年にシドニーで始動したグループで、もともとはMr And Mrs No Smokin’ Signとして活動していた。初期はテープループやノイズ、シンセサイザーの不協和音を軸にした、いわゆるインダストリアル寄りの作風で知られる。その後、4/4の規則的なリズムや分かりやすいメロディ、コード進行を取り入れていき、前衛性とEBM、シンセポップが交わるような方向へ進んでいった。
作品の輪郭
「Since The Accident」は、その流れの中でも、リズムの輪郭がはっきり見えやすい時期の作品として聴こえる。打ち込みの感触、反復するフレーズ、音の切り貼り感が前面に出ていて、初期インダストリアルの硬さと、後年のダンス・ミュージック的な推進力のあいだを行き来する内容になっている。
ジャンル表記としてはElectronic、スタイルとしてはLeftfield、Experimental、Synth-pop、Industrial。こうした並びからも、単純なシンセポップ作品というより、実験音楽の手つきが残った電子音楽として捉えられていることが分かる。同期の電子音楽と比べると、整ったポップ性だけでなく、音の配置や質感にひっかかりが残るタイプの作品である。
アーティストの中での位置づけ
Severed Headsにとっては、初期のアヴァンギャルド寄りの作風から、より広いリスナーに届く可能性を持ったサウンドへ移っていく途中の重要な段階にある作品といえる。のちに「Dead Eyes Opened」で1984年にチャート入りし、Nettwerk RecordsやVolition Recordsとの関係を通じて活動の幅を広げていくが、その前段階である1983年時点のバンドの姿がこの作品にはよく表れている。
中心人物Tom Ellardを軸に、Garry Bradbury、Richard Fielding、Stephen Jones、Robert Racicらが関わったバンドの文脈を踏まえると、「Since The Accident」はSevered Headsらしい変化の途中を示すタイトルとして見やすい。完全に実験音楽へ振り切るのでもなく、かといって素直なポップへ寄るわけでもない、その中間の張りつめた感じが印象に残る。
同時代の文脈
1983年という年は、シンセポップやインダストリアル、初期EBMが互いに影響を与え合っていた時期でもある。Severed Headsは、その中でオーストラリア発のグループとして、欧米のシーンと接続しながら独自の音作りを進めていた。Cabaret VoltaireやThrobbing Gristleの流れを思わせる要素と、当時のシンセポップの明快さが同居するあたりが、この時期の彼らの特徴として受け取られている。
ひとこと
「Since The Accident」は、Severed Headsの初期と中期をつなぐような位置にある作品。テープ、シンセ、反復、リズムの組み立てがそのままバンドの個性になっていて、1983年の電子音楽の空気感をそのまま切り取ったような一枚である。
トラックリスト
- A1 A Relic Of The Empire
- A2 A Million Angels
- A3 Houses Still Standing
- A4 Gashing The Old Mae West
- A5 Dead Eyes Opened
- A6 Golden Boy
- B1 Godsong
- B2 Epilepsy 82
- B3 Exploring The Secrets Of Treating Deaf Mutes
- B4 Brassiere, In Rome
- B5 Wasps
関連動画
Lene Lovich – Stateless (1978)
Lene Lovich『Stateless』
Lene Lovichの『Stateless』は、1978年に初出したニューウェイヴ期の重要作のひとつ。アメリカ・デトロイト生まれで、10代でイギリスへ渡ったLovichが、電子的な質感とロックの輪郭を行き来しながら、自分の個性を前面に出した作品として知られる。カナダ盤は1979年リリースで、オリジナルの登場から間を置かずに広まった一枚になる。
作品の輪郭
ジャンル表記はElectronic、Rockで、スタイルはLeftfield、New Wave、Synth-pop。実際の印象としては、シンセの冷たい響きと、ギターやリズムの硬さが同居する内容。ポップソングの形を取りながら、声の出し方やフレーズの置き方で、一般的なニューウェイヴ作品とは少し違う方向へ寄っている。音のまとまりよりも、ひっかかりのある配置が目立つ作り。
Lene Lovichという存在
Lovichは、後のニューウェイヴ・シーンで個性的な女性シンガーとして語られることの多い人物。アメリカ出身でありながらイギリスで活動を本格化させた経歴もあり、当時の英国ニューウェイヴの空気と強く結びついている。『Stateless』は、その初期キャリアを代表する位置づけの作品として見られることが多い。
同時代とのつながり
同時代の文脈で見ると、Patti SmithやSiouxsie Sioux、Debbie Harryのような、声や佇まいでロックの既成像をずらしていくアーティスト群と並べて語られやすい。とはいえ、Lovichはより歌い回しの癖が強く、曲の構造よりも発声そのものが印象を残すタイプ。ニューウェイヴ、シンセポップ、左寄りのポップ感覚が交差する地点にある作品といえる。
曲とエピソード
このアルバムは、発売後1年ほどのあいだに複数の版が出たことでも知られる。収録曲の一部は再録音やリミックスが行われ、地域によって内容が少しずつ異なる。盤によってはマトリクス表記に「Steve」が入っているものがリミックス版の目印になる、という細かな違いもある。こうした版の差異も含めて、当時のニューウェイヴ作品らしい流通の複雑さが見える一枚。
代表曲としては「Lucky Number」がよく挙げられる。アルバムの中でも認知度の高い楽曲で、Lovichの鋭い歌声と、リズムの立ち方がはっきり出た曲。作品全体の性格をつかむ入口として語られることが多い。
まとめ
『Stateless』は、1978年のニューウェイヴの空気を、Lene Lovich独自の声と感覚で切り取ったアルバム。電子音の冷たさ、ロックの硬さ、ポップソングとしてのわかりやすさが同時に並ぶ内容で、初期ニューウェイヴの一断面として見どころのある作品だ。
トラックリスト
- A1 Home (3:40)
- A2 Sleeping Beauty (3:00)
- A3 Lucky Number (2:47)
- A4 Too Tender (To Touch) (4:04)
- A5 Say When (2:49)
- B1 Writing On The Wall (3:08)
- B2 Telepathy (2:45)
- B3 Momentary Breakdown (3:18)
- B4 I Think We’re Alone Now (2:45)
- B5 One In A 1,000,000 (2:48)
- B6 Tonight (4:27)
関連動画
- LENE LOVICH “LUCKY NUMBER” 1978 STATELESS original with HQ sound
- LENE LOVICH “SLEEPING BEAUTY” 1978 STATELESS original with HQ sound
- LENE LOVICH “HOME” 1978 STATELESS original with HQ sound
- LENE LOVICH “TOO TENDER (TO TOUCH)” 1978 STATELESS original with HQ sound
- LENE LOVICH “SAY WHEN” 1978 STATELESS original with HQ sound
Jean-Pierre Decerf – Space Oddities 1975 – 1979 (2015)
Jean-Pierre Decerf「Space Oddities 1975 – 1979」について
Jean-Pierre Decerfは、フランスの電子音楽作曲家として知られる人物で、とくにライブラリー音楽の分野で語られることが多いアーティストです。この「Space Oddities 1975 – 1979」は、1975年から1979年にかけての音源をまとめた作品として2015年に登場したレコードで、電子音楽、ロック、ステージ&スクリーンの要素が交差する内容になっています。
作品の輪郭
タイトルどおり、宇宙的なイメージを軸にした楽曲群という印象の一枚です。スペースロック、サイケデリックロック、実験音楽、サウンドトラック的な感触が重なり、シンセサイザーや反復的なフレーズを中心にした構成が想像しやすい内容です。リズムは前に出すぎず、音色の変化やレイヤーの重なりで展開していくタイプの作品として受け取れます。
フランス産のライブラリー系作品らしく、曲単体の主張よりも、場面や映像に寄り添う役割が見えやすいところも特徴です。ロック的なバンド感と電子音の処理が並び、ジャンルの境界をまたぐ作りになっている点が、この作品の輪郭をつかみやすい部分です。
Jean-Pierre Decerfという位置づけ
Jean-Pierre Decerfの名前は、ポップスの表舞台というより、機能音楽や映像向け音楽の文脈で目にすることが多いです。そのため、この作品もアーティストの活動を知るうえで、当時の電子音楽とロック、そしてシネマティックな感覚がどのように結びついていたかを示す資料的な側面を持っているように見えます。
1970年代後半という時期は、シンセサイザーの存在感が増し、ロックと電子音楽が近づいていった時代でもあります。この作品も、その流れの中に置くと理解しやすい一枚です。具体的には、同時代のフレンチ・エレクトロニクスや、実験性を含んだサウンドトラック作品と並べて語られやすいタイプの音楽です。
サウンドの印象
- 電子音を軸にした構成
- ロック寄りの推進力を含む場面
- 宇宙的なイメージにつながる音色設計
- 映像音楽的な場面転換
- 実験性のあるフレーズ運び
全体としては、派手なフックを前面に出すというより、音の質感や配置で引っ張るタイプの作品に見えます。ジャンル表記にあるLeftfieldやExperimentalの要素も、そうした構成の中で自然に感じられるはずです。
まとめ
「Space Oddities 1975 – 1979」は、Jean-Pierre Decerfの電子音楽家としての側面と、ライブラリー音楽に根ざした実用性のあるサウンドが重なる作品です。2015年にレコードとしてまとまったことで、1975年から1979年にかけての音の流れをあらためて追える一枚になっています。フランスの電子音楽、スペースロック、サウンドトラック的感覚が交差する内容として、作品の輪郭はかなりはっきりしている印象です。
トラックリスト
- A1 Surrounding Seas (3:11)
- A2 Light Flight (3:20)
- A3 Blazing Skyline (3:26)
- A4 Leavin My Place (4:13)
- A5 The Cool Brain (2:07)
- A6 Black Safari (3:13)
- A7 Gates Of Pop Empire (1:51)
- B1 Dreams In The Wind (2:11)
- B2 Touch As Much (2:39)
- B3 Strange Form (5:23)
- B4 The Orion Belt (3:21)
- B5 Rainbow Rays (2:19)
- B6 Like The Wind You Are (2:57)
- B7 Litha (2:35)
関連動画
It’s Immaterial – Life’s Hard And Then You Die (1986)
It’s Immaterial「Life’s Hard And Then You Die」
1986年にUKで登場した、Liverpool出身のバンド、It’s Immaterialによる作品。ElectronicとRockを土台にしながら、Folk Rock、Leftfield、Downtempo、Synth-pop、Experimentalの要素をまたぐ内容で、当時の英国インディー周辺の空気を感じさせる一枚だ。
作品の輪郭
バンドはHenry Priestman、David Baynton-Power、Gillian Miller、John Campbell、Jarvis Whitehead、Jay Nortonらで構成されている。Liverpoolという土地柄もあって、英国的なギター・ロックの感触と、シンセやリズム・マシンを含む電子的な質感が並び立つ印象がある。
サウンドは、はっきりしたビートを前に出すというより、拍の置き方や音の間合いで聴かせるタイプに見える。ロックの骨格に、打ち込み的な流れや実験的な処理が重なり、曲によってはフォーク由来の語り口も感じられる構成だ。
1986年という時代の中で
1986年の英国では、シンセポップやダウンテンポ寄りの感覚、実験性を含んだポップスが広く並走していた時期でもある。この作品も、その文脈の中で、単純なギター・バンド作品としては収まりきらない位置にある。The Blue NileやOrchestral Manoeuvres in the Darkのような、音の配置に意識的な同時代のUKアクトを思わせる場面もありそうだ。
代表曲として知られる曲
It’s Immaterialといえば、「Driving Away From Home (Jim’s Tune)」がよく知られた曲として挙げられる。バンド名義の作品群の中でも印象に残る楽曲で、彼らの持つ語り口と、軽く流れるようなリズム感を伝える一曲として触れられることが多い。
ひとこと
「Life’s Hard And Then You Die」は、ロック、電子音、実験性が同じフレームの中に置かれた1986年の英国作品。Liverpoolのバンドらしい背景を持ちながら、ジャンルの境目を行き来する内容になっている。
作品全体としては、派手さよりも構成や質感に目が向くタイプのレコード、という印象。
トラックリスト
- A1 Driving Away From Home (Jim’s Tune) (4:12)
- A2 Happy Talk (5:29)
- A3 Rope (3:37)
- A4 The Better Idea (5:42)
- A5 Space (3:59)
- B1 The Sweet Life (4:38)
- B2 Festival Time (3:52)
- B3 Ed’s Funky Diner (3:05)
- B4 Hang On Sleepy Town (4:20)
- B5 Lullaby (6:21)
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Liquid Liquid – Optimo (1983)
Liquid Liquid – Optimo (1983)
Liquid Liquidの「Optimo」は、1983年にUSで発表された作品。99 Recordsを代表するバンドのひとつとして知られるLiquid Liquidらしい、パーカッシブな組み立てと、ロックとファンクの境目を行き来する感触がまとまった一枚だ。
作品の輪郭
サウンドは、ベース、ドラム、マリンバ、ボーカルが前に出る構成。リズムの反復を軸にしながら、音数は多くないのに拍の置き方で引っ張っていくタイプで、No WaveやLeftfieldの文脈に置かれるのも納得しやすい内容。録音も、各パートの輪郭が見えやすい作りで、打楽器的な質感がそのまま残っている印象だ。
Liquid Liquidという立ち位置
Liquid Liquidは、80年代初頭のUSアンダーグラウンドを語るうえでたびたび名前が挙がるグループ。特に「Cavern」のフレーズがGrandmaster Flash & The Furious Fiveの「White Lines」で参照された話でも知られている。そうした文脈の中で見ると、「Optimo」も、彼らのリズム志向がよく出た時期の作品として位置づけられる。
バンドの背景
もともとは、より実験色の強い別名義で活動していた流れからLiquid Liquidへと形を変えた経緯がある。そこから、よりパーカッションを中心にしたサウンドへ寄せていき、ライブでは観客に打楽器を持ち寄ってもらうこともあったという。Dennis Youngがマリンバを持ち込み、加入につながったというエピソードも、このバンドの音作りをよく示している。
同時代とのつながり
同じく80年代初頭のニューヨーク周辺の実験的なロック、ファンク、ダンス音楽の交差点にある作品として捉えやすい。ジャンル名でいえばRock、Funk / Soulにまたがりつつ、実際の手触りはかなり独特。後年の再評価や、DFAとの活動につながる流れを考えると、Liquid Liquidの初期像を示す重要なタイトルのひとつと言えそうだ。
クレジット
- アーティスト: Liquid Liquid
- タイトル: Optimo
- オリジナルリリース年: 1983
- リリース国: US
- メンバー: Dennis Young, Salvatore Principato, Scott Hartley, Richard McGuire
- ジャンル: Rock, Funk / Soul
- スタイル: Leftfield, No Wave
トラックリスト
- This Side
- A1 Optimo
- A2 Cavern
- Flip Side
- B1 Scraper
- B2 Out
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Mark Stewart – Hysteria (1990)

Mark Stewart『Hysteria』(1990)
Mark Stewartは、ブリストル出身のイングリッシュ・シンガー/ソングライター/アーティスト/プロデューサー。The Pop Groupの創設メンバーとして知られ、その後もさまざまなプロジェクトで活動を続けた人物です。『Hysteria』は1990年の作品で、Electronicを軸にLeftfieldやDubの要素を取り込んだ一枚として捉えやすい内容です。
作品の輪郭
この時期のMark Stewartは、バンド的なロックの枠よりも、音響やリズムの組み立てに重心を置いた表現が目立ちます。ビートは前に出すぎず、低音のうねりや空間の広がりで引っ張るタイプ。Dub由来の残響感や、輪郭を少し崩した音の重なりが印象に残る構成です。
録音の雰囲気は、乾いた質感だけでなく、音が壁のように積み上がる感じもあり、電子的な処理と手触りのあるノイズ感が同居している印象。整いすぎないリズムの揺れも、この作品の空気を形づくる要素になっています。
Mark Stewartの活動の中で
The Pop Group以降のMark Stewartは、ポストパンクの感覚を土台にしながら、ダブ、エレクトロニクス、実験的なプロダクションへと活動の幅を広げていきました。『Hysteria』は、その流れの中で電子音楽寄りの手法を前面に出した時期の作品として見えてきます。
アーティストの出自であるブリストルは、のちにダブやベースミュージック、ブロークンビートと結びついて語られることの多い土地ですが、この作品にもそうした都市的な低音感覚や、ジャンルをまたぐ構えが感じられます。1990年という時期らしい、ポストパンク以後の実験性とクラブ・ミュージック周辺の感覚が重なる位置づけです。
サウンドのポイント
- Electronicを基調にした構成
- Leftfieldらしい、定型に寄りきらないビート感
- Dub由来の残響、低音、空間処理
- 硬質さとざらつきが同居する音像
Mark Stewartの作品群の中では、電子的な質感とダブの空間感覚を強く意識しやすい一枚。90年代初頭の実験的なUKサウンドの流れの中で、彼の持つ鋭さがそのまま出ているようなタイトルです。
トラックリスト
- A Hysteria
- B1 My Possession
- B2 Hysteria Dub