The Trip – Caronte (1971)
The Trip『Caronte』について
イタリアのプログレッシブ・ロック・バンド、The Tripが1971年に発表した2作目が『Caronte』だ。バンドはイギリス系メンバーを中心にスタートし、その後イタリア人メンバーを加えながら独自の形を作っていったグループで、この作品では特にジョー・ヴェスコヴィのキーボードが前面に出てくる。ギターとオルガンを軸にした初期作から一歩進み、クラシック音楽の要素を取り込んだ構成へ寄っていく節目のアルバムとして位置づけられる一枚だ。
作品の位置づけ
デビュー作『The Trip』は、まだロック・ブルース色の強い内容だったが、『Caronte』ではバンドの輪郭がよりはっきりする。オープニングの「Caronte I」から、クラシック寄りのフレーズが入り、キーボード中心の展開が目立つ。続く「Two Brothers」も長尺曲としてアルバムの核を担っていて、この時期のThe Tripが英語圏由来のロック感覚とイタリアン・プログレの要素をつなぐ位置にいたことがわかる内容だ。
同時代のイタリアのプログレッシブ・ロックを思い浮かべると、のちによりシンフォニックな方向へ進むバンド群と並べて語られやすい。The Tripの場合は、まだ初期段階の荒さを残しつつ、キーボードの比重を増やしていく流れがはっきりしている点が印象的だ。
聴きどころ
- 「Caronte I」:冒頭からクラシカルな香りが立つ導入部
- 「Two Brothers」:アルバム内でも存在感のある長尺曲
- ギターよりもキーボードが曲の流れを作る場面の多さ
実際に聴くと、派手な技巧を前に出すというより、曲の展開そのものをじわじわ組み立てていくタイプのアルバムだと感じやすい。リフや旋律を追っていくうちに、オルガンやシンセ的な音色が主導権を握っていく場面があり、その移り変わりがこの作品の面白さになっている。
バンド史の中での意味
The Tripはこの後、メンバー変化を経ながらさらにキーボード主導の方向へ進み、次作『Atlantide』ではよりELPに近い感触も見せていく。そう考えると『Caronte』は、初期のロック・ブルース寄りの姿から、のちのより個性的なプログレ路線へ向かう中間点として見やすい。バンドの転換点として語られることのある作品だ。
盤について
今回の盤は1990年リリースの再発盤で、ゲートフォールド仕様。レーベル表記はNL 74299 / AKAY 26056/7となっている。オリジナルは1971年のイタリア盤で、作品そのものはその年のアルバムとして把握するのが自然だ。
エピソード
The Tripはデビュー期にリッチー・ブラックモアが在籍していたことでも知られる。『Caronte』の時点ではブラックモアは参加しておらず、バンドの中心はジョー・ヴェスコヴィへ移っている。1970年には映画『Terzo Canale – Avventura a Montecarlo』にもメンバーが出演しており、当時のイタリアのロック文化の周辺で活動していたことがうかがえる。
まとめ
『Caronte』は、The Tripがロック・ブルース寄りの初期形から、よりキーボード主体のプログレッシブ・ロックへ踏み込んでいく段階を記録したアルバムだ。オープニングから方向性が見えやすく、長尺曲を中心にバンドの変化が追える内容になっている。
トラックリスト
- A1 – Caronte I
- A2 – Two Brothers
- B1 – Little Janie
- B2 – L’Ultima Ora E Ode A J. Hendrix
- B3 – Caronte II