Booker T & The MG’s – McLemore Avenue (1970)
Booker T & The MG’s『McLemore Avenue』について
『McLemore Avenue』は、Booker T & The MG’sが1970年に発表したアルバムで、Stax Recordsの本拠地だったメンフィスの空気をそのまま閉じ込めたような一枚だ。Booker T. Jones、Steve Cropper、Donald “Duck” Dunn、Al Jackson Jr.を中心にしたこのバンドは、Staxのインハウス・バンドとして数多くの録音を支えながら、自身の名義でも「Green Onions」や「Hip Hug-Her」といったヒットを残している。
この作品は、そのキャリアの中でもかなり特徴的な位置にある。タイトルの通り、ビートルズの『Abbey Road』を全曲カバーしたアルバムで、しかも曲順や構成をかなり意識した作りになっている。しかもジャケットまで『Abbey Road』を思わせる構図でまとめられていて、オリジナル盤の時点でコンセプトがはっきりしている。
作品の性格
収録曲は、ビートルズの楽曲をBooker T & The MG’s流のインストゥルメンタル・ソウルとして再解釈したもの。原曲のメロディを追いながら、オルガン、ギター、ベース、ドラムの演奏で輪郭を組み直していくスタイルだ。歌がないぶん、曲の骨格やリズムの置き方が前に出る構成になっている。
Staxらしい乾いた音像と、メンフィス録音らしい手触りが特徴。ビートルズの楽曲を単に模倣するのではなく、南部のR&Bやソウルの文脈へ持ち込んだ内容として整理しやすい作品だ。
『Abbey Road』との関係
このアルバムは『Abbey Road』の全曲カバーで、アルバム全体を通して元作との対応が意識されている。曲順は入れ替えられているが、アルバム単位でビートルズ作品をなぞる設計になっている点が大きい。
ビートルズ側の楽曲提供クレジットには、Maclen MusicやHarrisong Musicが見える。カバーアルバムでありながら、原曲との結びつきが明確な一枚だ。
聴きどころ
この作品でまず目に入るのは、Booker T. Jonesのオルガンと、Steve Cropperのギターの組み合わせだ。そこにDonald “Duck” Dunnのベース、Al Jackson Jr.のドラムが入ることで、旋律をなぞるだけでなく、リズムの推進力が前に出る。
実際に聴くと、原曲のポップなフレーズが、より土の匂いのある演奏へ置き換わっていく感覚がある。特にメロディの強い曲ほど、インスト化によって構造が見えやすくなる印象だ。逆に、原曲のアレンジの細部を知っているほど、MG’sの解釈の仕方がはっきり見えてくる。
代表曲とのつながり
Booker T & The MG’sといえば、やはり「Green Onions」が代表曲として知られている。このアルバム自体はそのヒット曲路線とは少し違い、オリジナル曲集ではなくカバー作だが、バンドの演奏力を示す作品としてはわかりやすい位置にある。
Staxの看板バンドとして、Otis Redding、Wilson Pickett、Sam & Daveらの伴奏や制作にも深く関わってきた彼らが、同時代のロックの大作を自分たちの言葉に置き換えた、という見方もできる。
同時代の文脈
1970年前後は、ソウルやR&Bの側からロックの曲を取り込む動きが目立った時期でもある。その中で『McLemore Avenue』は、単発の流行ではなく、メンフィスのスタジオ・バンドがロックの大曲をインストゥルメンタルでまとめ上げた例として見ておきやすい。
比較対象としては、同じくソウルやR&Bの演奏力を軸にしたバンドや、カバーを通じて原曲を別の文脈へ移し替える仕事をしていたミュージシャンが思い浮かぶ。とはいえ、このアルバムはStaxの音とビートルズの楽曲がそのままぶつかるところに意味がある。
作品の位置づけ
Booker T & The MG’sにとっては、自分たちの代表曲や伴奏仕事とは別の角度から、バンドの実力を示したアルバムと言える。70年代初頭にはバンドとしての活動が終盤に向かっていくため、この一枚はキャリア後期のまとまった作品としても見やすい。
Rock & Roll Hall of Fame入りを果たしたグループの中でも、『McLemore Avenue』は単なる企画盤ではなく、演奏者としての視点が前面に出たアルバムとして記憶されやすい。ビートルズの『Abbey Road』を、メンフィスのソウル・バンドがどう受け止めたか。その答えの一つがこの作品だ。
基本情報
- アーティスト: Booker T & The MG’s
- タイトル: McLemore Avenue
- オリジナルリリース年: 1970年
- 国: US
- ジャンル: Funk / Soul
- スタイル: Rhythm & Blues, Soul
トラックリスト
- (Medley) (15:46)
- A2 – Something (4:07)
- (Medley) (7:25)
- (Medley) (10:39)