Bruce Springsteen – Greetings From Asbury Park N.J (1973)
Bruce Springsteen『Greetings From Asbury Park, N.J.』について
Bruce Springsteenのデビュー作『Greetings From Asbury Park, N.J.』は、1973年にオリジナルが発表されたアルバムです。ブルース・スプリングスティーンが「The Boss」と呼ばれる存在になる前、ニュージャージー州の海岸沿いの空気感と、歌詞を前面に出した作風をすでに示していた作品として知られています。E Street Bandとの関係が形になっていく前夜の記録でもあり、後年の大きなスケールのロックとは少し違う、言葉の密度が印象に残る一枚です。
作品の位置づけ
このアルバムは、スプリングスティーンのキャリアの出発点にあたる作品です。のちの代表曲群のような大きな合唱感やアリーナ・ロック的な広がりよりも、まずは語り口の強さ、人物描写、街の風景を切り取る視点が前に出る内容になっています。ニュージャージーのローカルな景色を背負ったシンガーソングライターとしての輪郭が、最初期の段階で見えるアルバムと言えるでしょう。
収録曲と聴きどころ
この作品には、のちにステージで長く歌われる曲も含まれます。とくに「Blinded by the Light」は、後年マンフレッド・マンのカバーでも広く知られることになった曲です。スプリングスティーン本人のヴァージョンでは、言葉の連なりが前へ前へと進む構成が目立ち、デビュー作らしい勢いがある内容です。
ほかにも、短いフレーズを積み重ねながら景色を描いていく曲が多く、ロックバンドの推進力と、シンガーソングライターとしての筆致が同居している印象です。派手な演出よりも、歌詞とリズムの進み方で引っぱるタイプのアルバムと受け取れます。
同時代の文脈
1973年という時期は、アメリカン・ロックの中でも、より個人的な視点や土地の匂いを持つ作品が重要になっていった時代です。スプリングスティーンもその流れの中で語られることが多く、同じくシンガーソングライター色の強いアーティストたちと並べて語られることがあります。ただ、このデビュー作では、のちの完成されたバンド・サウンドよりも、まず言葉の量と勢いが先に立っているのが特徴です。
1980年の日本盤について
今回の盤は1980年の日本盤再発で、帯付き、両面印刷のインサート付き、さらに“gimmick”仕様のポストカード風カバーで出ています。盤としてはオリジナル1973年盤とは別のリリースで、日本市場向けの装丁が加わった版です。左側に黒と青の帯が付いた4回目の日本再発盤という情報があり、見た目の仕様に特徴があります。
日本盤ならではの要素としては、ジャケットそのものの物理的な楽しさが大きいです。ポストカード風のカバーは、作品名にある“Asbury Park, N.J.”という地名の雰囲気ともつながっていて、レコードを手に取ったときの印象を強める作りになっています。
総括
『Greetings From Asbury Park, N.J.』は、Bruce Springsteenの原点を確かめるための一枚です。のちの大きな成功の前段階としてだけでなく、最初から言葉で風景を立ち上げる力を持っていたことがわかるアルバムでもあります。1973年のオリジナルと、1980年の日本盤再発とでは時代背景も装丁も異なり、その違いも含めて見どころのある作品です。
トラックリスト
- A1 – Blinded By The Light
- A2 – Growin’ Up
- A3 – Mary Queen Of Arkansas
- A4 – Does This Bus Stop At 82nd Street?
- A5 – Lost In The Flood
- B1 – The Angel
- B2 – For You
- B3 – Spirit in The Night
- B4 – It’s Hard To Be A Saint In The City