Tim Buckley – The Late Great Tim Buckley – An Anthology (1978)
Tim Buckley『The Late Great Tim Buckley – An Anthology』について
Tim Buckleyは、1960年代後半から70年代前半にかけて活動したアメリカのシンガーソングライターだ。フォークを出発点にしながら、のちには実験的なアレンジや即興性を取り入れた作品へ進み、短い活動期間の中で独自の位置を築いた人物として知られる。1978年にオーストラリアで出た本作『The Late Great Tim Buckley – An Anthology』は、その歩みをまとめた編集盤で、本人の死後に出た初のLPでもある。収録はオーストラリアとニュージーランドに限られていた。
作品の成り立ち
このアンソロジーには、Tim Buckley、Goodbye and Hello、Happy Sad、Greetings from L.A.、Sefronia の5枚のスタジオ・アルバムからの音源が収められている。初期のフォーク寄りの曲から、後年のよりソウル/R&B色のある曲までを横断する内容で、ひとつの時代だけを切り取るというより、キャリア全体の流れを見せる構成になっている。
Tim Buckleyの作品をまとめて聴くと、まず声の存在感が際立つ。高音域の伸びやフレーズの運びが印象に残りやすく、歌そのものが曲の中心にあるタイプだ。本作でも、その個性が異なる時期の録音を通して確認できる。フォーク・ロックの輪郭がはっきりした曲もあれば、演奏の隙間やリズムの揺れが前に出る曲もあり、同じアーティストの編集盤でも単調になりにくい。
Tim Buckleyという位置づけ
Tim Buckleyは、商業的な大ヒットで知られるタイプではないが、作品ごとの振れ幅が大きい。初期はフォーク・シンガーとして出発しながら、Happy Sad、Lorca、Starsailor では実験性や即興性を強めていった。その流れの中で、後年のアルバムではより分かりやすいポップ/R&B志向にも向かっている。本作は、その変化を短く追えるまとめ方になっている。
同時代のフォークやシンガーソングライターの文脈で見ると、Bob DylanやJoni Mitchellのように言葉と曲作りが重視される流れとは共通点がある一方、Tim Buckleyは声と音域の使い方でかなり独自の印象を残す。実験寄りの時期は、ジャズや前衛的なロックの周辺とも接点がある。編集盤としては、その幅を見せる役割が強い。
収録内容から見えるもの
本作はベスト盤というより、複数のアルバムから選んだアンソロジーとしての性格がはっきりしている。代表曲だけを並べる編集ではなく、時期ごとの変化を意識した構成に見える。Tim Buckleyの主要なアルバムを持っていない場合でも、どの時期にどんな方向へ進んだかをつかみやすい内容だ。
収録元に Greetings from L.A. や Sefronia が入っている点も、この編集盤の性格を示している。初期のフォーク色だけでなく、キャリア後半の商業的な方向へ寄せた時期まで含めているので、Tim Buckleyを「実験的な人」とだけ捉えないための入口にもなっている。
リリース時の意味
1975年に28歳で亡くなったTim Buckleyにとって、1978年のこのLPは死後に出た初のアルバムとして位置づけられる。しかも発売地域がオーストラリアとニュージーランドに限られていたため、当時の本国市場での定番編集盤というより、地域限定のアーカイブ的な意味合いが強い。オリジナルのスタジオ作品を補う形で、彼の足跡を後から整理した一枚といえる。
まとめ
『The Late Great Tim Buckley – An Anthology』は、Tim Buckleyの短いキャリアを5枚のスタジオ・アルバムからたどる編集盤だ。フォーク、フォーク・ロック、実験的な要素、後年のより商業的な方向までを一枚に収め、声と曲作りの独自性を確認しやすい内容になっている。Tim Buckleyの全体像をつかむうえで、時期の違いが見えやすいコンピレーションだ。
トラックリスト
- A1 – Aren’t You The Girl
- A2 – Understand Your Man
- A3 – I Never Asked To Be Your Mountain
- A4 – Once I Was
- A5 – Morning Glory
- A6 – Move With Me
- B1 – Strange Feelin’
- B2 – Sweet Surrender
- B3 – Make It Right
- B4 – Dolphins