Pink Floyd – A Momentary Lapse Of Reason = 鬱 (1987)
Pink Floyd「A Momentary Lapse Of Reason = 鬱」について
1987年に発表された、Pink Floydの13作目のスタジオ・アルバム。日本盤のタイトルは「鬱」で、英題のA Momentary Lapse Of Reasonをそのまま訳した形になっている。ロジャー・ウォーターズ脱退後の編成で制作された作品としても知られていて、バンドの流れの中では大きな転換点にある一枚。
Pink Floydは1960年代半ばにロンドンで結成されたイングリッシュ・ロック・バンド。サイケデリック・ロックから出発し、その後はプログレッシブ・ロックの代表的存在として語られることが多い。哲学的な歌詞、音響効果の使い方、長尺の構成、そして大規模なライヴ演出まで含めて、ロック史の中でも存在感の大きいグループ。
作品の位置づけ
このアルバムは1986年11月から1987年3月にかけて録音され、イギリスでは1987年9月7日に発売された。バンドにとっては、80年代後半の新しい体制を示す作品であり、David GilmourとNick Masonを軸にした制作色が前面に出ている。演奏面では、ギター、キーボード、シーケンス、電子音、ドラムが組み合わさり、従来のPink Floydらしい構築感を保ちながらも、当時の80年代的な録音感も見える内容。
サウンドは、硬めのドラム・サウンドと整ったシンセワーク、空間の広いギターが核。リズムは比較的はっきりしていて、音の輪郭も明瞭。長く引き伸ばすというより、曲ごとのフックや反復で進めていく場面が目立つ。プログレの要素を持ちながら、同時代のロック作品としての聴きやすさもある仕上がり。
代表曲とシングル
この時期を代表する曲としては「Learning to Fly」が挙げられる。アルバムからのシングルのひとつで、明快なリズムと伸びのあるメロディが印象に残る曲。ほかにも複数のシングルが切られていて、アルバム全体が作品単位だけでなく、曲単位でも広く届けられたことがうかがえる。
- 「Learning to Fly」
- 「On the Turning Away」
- 「One Slip」
特に「Learning to Fly」は、この時期のPink Floydを語るうえで外しにくい一曲。バンドの新しい局面を示す楽曲として、アルバムの顔のような存在になっている。
同時代の文脈
1987年という時期を考えると、プログレッシブ・ロックの初期の文法をそのまま引き継ぐというより、80年代のプロダクションの中でPink Floydらしさを再構成している印象がある。King CrimsonやGenesisの80年代以降の変化と同じく、70年代的な大型ロックの語法を、その時代の録音と編成で更新していく流れの中に置ける作品。
Pink Floydのディスコグラフィーの中では、ロジャー・ウォーターズ在籍期の作品群とは別の方向を示すアルバム。とはいえ、音の積み重ね方や広い空間の使い方には、バンドらしい手触りが残っている。1987年のPink Floydを知る入口としても、グループの変化を確認する一枚としても、位置づけのはっきりした作品。
トラックリスト
- A1 Signs Of Life
- A2 Learning To Fly
- A3 The Dogs Of War
- A4 One Slip
- A5 On The Turning Away
- B1 Yet Another Movie
- B1.2 Round And Around
- B2 A New Machine (Part 1)
- B3 Terminal Frost
- B4 A New Machine (Part 2)
- B5 Sorrow