Flairck – Gevecht Met De Engel (1980)
Flairck『Gevecht Met De Engel』について
『Gevecht Met De Engel』は、オランダのアンサンブル、Flairckが1980年に発表した作品。冬の1979年から1980年にかけて、WeespのDureco Studioで録音されている。Flairckは、ギター・ヴィルトゥオーソのErik Visserを中心に1978年に結成されたグループで、編成を固定しない形で活動してきた。フォーク、ジャズ、室内楽、さらにブルースの要素を含む音楽性で知られ、この作品もその流れの中にある一枚だ。
作品の輪郭
ジャンル表記はClassical、Folk、World, & Country、スタイルはNeo-Classical、Folk。Flairckらしいのは、楽曲の設計にアンサンブルならではの視点があるところで、複数のアコースティック楽器を使いながら、曲ごとにまとまりを作っていく構成。バンドのプロフィールにもある通り、メンバーが書いた音楽をアルバム単位のテーマに沿って組み立てる傾向が強く、この作品もその作り方がうかがえる。
タイトルの“Gevecht Met De Engel”はオランダ語で「天使との戦い」といった意味合いの言葉。作品全体の題名として、舞台作品や組曲を思わせる響きがある。Flairckのアルバムは、曲の並びよりも全体の流れで聴かれることが多いタイプで、この盤もその性格が前面に出ている。
Flairckというバンドの位置づけ
Flairckは、1970年代末から1980年代初頭のヨーロッパで広がった、ロック以外の器楽アンサンブルの潮流の中で語られることが多いグループ。アコースティック中心の編成で、民俗音楽の旋律感と室内楽的な書法を行き来する点は、同時代の民族音楽志向のアンサンブルや、プログレッシブ・フォークの文脈とも近い。オランダ発のグループとしては、緻密なアンサンブルと演劇的な構成に特徴がある。
この1980年作は、Flairckの初期の代表的な時期に置かれる作品のひとつ。バンドの基本的な輪郭、つまりアコースティック楽器を軸にした多層的な編成、旋律主導の展開、テーマ性のある構成が見えやすい時期の記録と言える。
聴きどころ
この作品でまず目を引くのは、楽器の重なり方。ギターを軸にしながら、笛類、弦、打楽器などが入れ替わるように前に出て、固定されたロックバンドの演奏というより、室内楽寄りのアンサンブルとして進む場面が多い。旋律がはっきりしていて、そこに装飾や対旋律が重なる作りがFlairckらしい。
また、フォークの素材をそのまま並べるのではなく、構成を組み立て直していく手つきがある。テンポや拍子の切り替え、音色の交代、静と動の置き方など、楽曲単位での設計がはっきりしている印象だ。実際に聴くと、音の数の多さよりも、どの楽器をどこで置くかという整理の良さが印象に残るタイプの作品。
同時代との関係
1980年前後のヨーロッパでは、フォークを下敷きにしながら、クラシックやジャズの要素を取り込むアーティストが各地にいた。Flairckもその流れにありつつ、オランダらしい端正さと、アンサンブルの組み立てに重点を置く点で独自性がある。比較対象としては、英国のフォーク・プログレ系、あるいは大陸ヨーロッパの器楽アンサンブルの文脈が思い浮かぶ。
ただし、Flairckは歌を前面に出すロックバンドというより、器楽中心の構成で世界を作るグループ。そこが同時代の多くのフォーク・ロック勢とは違うところだ。
リリース情報の整理
- アーティスト: Flairck
- タイトル: Gevecht Met De Engel
- オリジナルリリース年: 1980年
- リリース国: オランダ
- 録音: 1979年冬〜1980年冬、Dureco Studio(Weesp)
- ジャンル: Classical / Folk / World, & Country
- スタイル: Neo-Classical / Folk
まとめ
『Gevecht Met De Engel』は、Flairckの初期を代表する時期の一枚として、アコースティック編成の細かな組み立てと、テーマ性のある作りが確認できる作品。フォークの旋律感、室内楽的な整理、そしてヨーロッパの器楽アンサンブルらしい構築性が一つの盤にまとまっている。Flairckというグループの性格をつかむうえで、重要な位置にあるアルバムだ。
トラックリスト
- A1 – Oost-West Express (4:49)
- A2 – De Vlinder (7:25)
- A3 – Voor Antoinette (3:08)
- A4 – De Stoomwals (7:13)
- Gevecht Met De Engel
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Vytas Brenner – Hermanos (1974)
Vytas Brenner『Hermanos』について
『Hermanos』は、ベネズエラのギタリスト/キーボード奏者、Vytas Brennerが1974年に発表した作品である。電子楽器、ロック、ラテン、フォーク、そしてベネズエラの伝統音楽を交差させていく彼の初期活動を知るうえで、重要な位置にある一枚といえる。
Brennerは1946年にドイツのチュービンゲンで生まれ、1949年に家族とともにベネズエラへ移住した。のちに米国テネシー州で音楽を学び、電子音楽のコースも修めている。その経歴が示す通り、彼の音楽はローカルな民俗性だけでなく、米国の教育環境で身につけた作曲・編曲の感覚も含んだものになっている。
作品の位置づけ
『Hermanos』は、Brennerが1972年に結成した自身のバンド、La Ofrendaによる活動期と重なる時期の作品である。彼はこの時期から、エレクトリック/エレクトロニックな音色とアコースティック楽器、ピアノを組み合わせ、プログレッシブ・ロック、ラテンのリズム、ベネズエラの伝統音楽をひとつの流れにまとめていった。後年の代表的な仕事へつながる、初期の実験と整理の段階として見ることができる。
音の特徴
ジャンル表記としては Electronic、Rock、Latin、Folk、World & Country にまたがり、スタイルは Folk Rock、Latin、Prog Rock に置かれている。実際にこの時代のBrenner作品を追うと、単純なロック・バンドの演奏だけではなく、鍵盤のレイヤーや電子的な質感が前面に出る場面があり、そこにラテン系のリズムやフォーク寄りの旋律が重なる構成が目立つ。ベネズエラ産のプログレッシブ・ロックとして語られることがあるのも、そのあたりの作りに理由がある。
同時代の文脈で見ると、ラテンアメリカ各地で進んでいたロックのローカライズ、つまり英米由来のロックをその土地の民俗音楽やリズムに接続していく流れの中にある。Brennerの場合はさらに、電子音楽の訓練を受けた人物ならではの音色設計が加わる点が特徴的で、同じく民俗要素とロックを結びつけたアーティスト群の中でも、鍵盤主体の色合いが強い部類に入る。
曲について
この作品に大きく知られたヒット曲があるというより、アルバム全体でBrennerの語法を示すタイプの作品として捉えられる。曲単位での派手なシングル志向というより、連続する編曲や音色の切り替えを含めて聴くと輪郭が見えやすい。
補足
Brennerはその後もLa Ofrenda名義で1970年代を通じて活動を続け、1980年代以降も映画音楽、テレビ、広告、オーケストラとの共演など、幅広い仕事を残している。『Hermanos』は、そうした多方面での活動に先立つ時期の記録として、彼の出発点をよく示す作品である。
ベネズエラのロック史や、ラテン・プログレの流れをたどる際に名前が挙がる一枚。電子的な質感と土着的な要素を同居させた、1974年ならではの実験性が見える作品である。
トラックリスト
- A1 – Agua Clara
- A2 – Madrugada
- A3 – Amanecer
- A4 – Danza Con Pájaros
- A5 – Gavilán
- B1 – Pastos
- B2 – Ganado
- B3 – Estampida
- B4 – Ana Karina Rote
- B5 – Sentado En Una Piedra
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Aphrodite’s Child – It’s Five O’Clock (1970)
Aphrodite’s Child『It’s Five O’Clock』について
Aphrodite’s Childは、ギリシャ出身のロック・ポップ・サイケデリック・バンドで、1967年から1972年にかけて活動したグループだ。VangelisことEvangelos Papathanassiou、Demis RoussosことArtemios Venturis Roussosを中心に、ヨーロッパ圏で存在感を強めた。
『It’s Five O’Clock』は1970年に発表された2作目のアルバムで、バンドの代表作のひとつとして知られる作品だ。前作『End of the World』の流れを受けつつ、より整理されたポップ感と、当時らしいサイケデリックな色合いが同居している。Aphrodite’s Childのアルバムの中では、初期の勢いと曲作りのまとまりが見えやすい位置づけの一枚といえる。
作品の位置づけ
この時期のAphrodite’s Childは、シングルでの成功とアルバム志向の両方を持っていた。デビュー曲「Rain and Tears」は、パッヘルベルのカノンを下敷きにしたことで知られ、ヨーロッパ各国で大きなヒットになった。その成功を背負いながら作られた2作目が『It’s Five O’Clock』という流れだ。
アルバムタイトル曲「It’s Five O’Clock」は、作品を象徴する曲として扱われることが多い。ほかにも「Annabella」など、メロディを前に出した曲が並ぶ。全体としては、英語圏のポップ・ロックの形式の中に、地中海圏のグループらしい輪郭がにじむ内容だ。
サウンドと聴きどころ
このアルバムでは、ロックのバンド演奏を土台にしながら、サイケデリック・ロックの時代らしい響きが要所に入る。Vangelisの鍵盤は前に出すぎず、曲の骨格を支える役回りが中心だ。Demis Roussosの声は、曲のメロディをそのまま印象づけるタイプで、分かりやすいフックを作っている。
実際に聴くと、派手な展開で押すというより、曲ごとのメロディとコーラスの配置で聴かせる印象が強い。アレンジは1970年前後のポップ・ロックとしては比較的ストレートで、そこに少し歪んだ質感や浮遊感が加わる。サイケデリック期の作品としては、過度に実験的ではなく、曲の輪郭が追いやすい部類だ。
同時代とのつながり
Aphrodite’s Childは、同時代の欧州ロックの中でも、英語で歌うことで国境を越えて広がったグループだ。サイケデリック・ロックやポップ・ロックという軸で見ると、歌メロを重視する点ではThe Beatles以後の英国ポップ、鍵盤主体の組み立てではプログレッシブ・ロック前夜の空気とも接点がある。
ただし、この段階ではまだ大きく実験に振り切ってはいない。後年の『666』で見えるような前衛性はまだ控えめで、まずは楽曲の分かりやすさが前面にある。そういう意味では、バンドの変化の途中にある記録でもある。
再発盤としての見方
今回の日本盤は1978年リリース。オリジナルの1970年盤からは時間が空いている。付属インサート付きという点は、日本盤らしい丁寧な仕様として見てよさそうだ。音楽内容そのものは1970年の作品だが、日本で流通した盤としては、当時の再評価やカタログ整理の文脈で手に取られた可能性がある。
まとめ
『It’s Five O’Clock』は、Aphrodite’s Childの初期を代表するアルバムのひとつで、シングルヒットで知られるバンドのメロディ志向と、サイケデリック・ロック期の空気が同居した作品だ。代表曲「It’s Five O’Clock」を軸に、1970年前後のヨーロッパ産ポップ・ロックの輪郭が見えやすい一枚になっている。
トラックリスト
- A1 – It’s Five O’ Clock
- A2 – Take Up
- A3 – Take Your Time
- A4 – Annabella
- A5 – Let Me Love, Let Me Live
- B1 – Funky Mary
- B2 – Good Time So Fine
- B3 – Marie Jolie
- B4 – Such A Funny Night
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The Icicle Works – Evangeline (1987)
The Icicle Works「Evangeline」について
The Icicle Worksは、1980年にリヴァプールで結成されたUKグループで、1983年の「Love is a Wonderful Colour」で広く知られるようになったバンドだ。UKチャートではこの曲が最大のヒットになっている。Ian McNabbを中心に、当時のUKインディー/ロックの流れの中で活動していたグループで、この「Evangeline」は1987年の作品として出ている。
作品の位置づけ
「Evangeline」は、The Icicle Worksの1987年のリリース。バンドの初期の代表曲である「Love is a Wonderful Colour」から数年後の時期にあたり、よりアルバム単位でバンドの輪郭を追う流れの中にある1枚として見える。メンバーにはIan McNabb、Zak Starkey、Richard Naiff、Chris Sharrock、Chris Layhe、Paul Burgess、Roy Corkill、Dave Baldwin、Mark Revell、Dave Greenの名前が並ぶ。
内容と音の印象
収録は4トラック構成の12インチ盤。ロックを基調にした演奏で、インディー・ロックの枠に置かれる作品らしく、ギターの存在感と曲の推進力が前に出るタイプの記録として受け取れる。The Icicle Worksらしい、メロディを軸にした作り込みが見える作品だ。
実際に聴くと、華やかさよりも曲の運びとバンドのまとまりが先に来る。Ian McNabbの作曲家としての感触が前に出やすいバンドだが、この時期の作品でもその性格は保たれている。派手な装飾で押すというより、曲そのものの構成で聴かせる印象。
同時代の文脈
1980年代後半のUKロック/インディーの空気の中では、The Icicle Worksはメジャーな大ヒットを重ねるタイプというより、楽曲の質感で覚えられるバンドのひとつだ。リヴァプール出身という点でも、同じ都市圏から出てきた多くのUKバンドと並べて語られることが多い。
「Love is a Wonderful Colour」がバンド最大のヒットであることを踏まえると、「Evangeline」はその代表曲のような知名度で語られるというより、当時のバンドの活動を追ううえで押さえておきたい一作という位置づけになっている。
初回盤の仕様
初回プレスには巨大なポスターが付属していた。フロント・スリーヴには、ポスター付きの初回盤を示す白いステッカーが貼られており、「4 track 12″ BEG 181 TP includes poster」と記載されている。さらに、両ラベルとも「A SIDE」と表記されているが、B面側はミスプリントになっている。ランアウトはすべて手書き刻印だ。
まとめ
「Evangeline」は、The Icicle Worksの1987年の活動を切り取ったUK盤。初期ヒット「Love is a Wonderful Colour」で知られるバンドの、その後の時期を示す記録として見やすい。ポスター付き初回盤やラベルのミスプリントなど、物としての特徴もはっきりしている。
トラックリスト
- A – Evangeline
- B1 – Everybody Loves To Play The Fool
- B2 – Waiting In The Wings
- B3 – Evangeline (Demo Version)
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Stone The Crows – Stone The Crows (1970)
Stone The Crows『Stone The Crows』(1970)
Stone The Crowsの1970年作『Stone The Crows』は、スコットランド出身のロック・バンドによるデビュー・アルバムだ。1969年に活動を始め、1973年までの短い活動期間のあいだに4枚のスタジオ・アルバムを残しているが、その最初の1枚がこの作品になる。
メンバーにはMaggie Bell、Leslie Harvey、Jimmy McCulloch、James Dewar、Colin Allen、Ronnie Leahy、Steve Thompson、John McGinnisの名前が並ぶ。ブルース・ロックを軸にしたサウンドで、60年代末から70年代初頭の英国ロックの流れの中に置くと見えてくるバンドだ。
作品の位置づけ
デビュー盤ということもあって、バンドの輪郭を最初に示す役割が強い。Stone The Crowsはのちにいくつかのスタジオ作を出すが、このアルバムではまず、Maggie Bellの歌声と、ギターを中心にしたバンド・サウンドが前面に出る構成になっている。英国のブルース・ロックを語る文脈では、同時代のバンド群と並べて語られることが多いグループのひとつだ。
収録とレコード仕様
この盤はゲートフォールド仕様。ジャケットを開く形の作りで、当時のロック・アルバムらしいパッケージになっている。
レーベル面のクレジットには、A3が著作権管理下にあること、そして「Fred Stumble & The Icelandic Sheep Band」への謝辞が記されている。こうした文言も、70年代初頭のレコードらしい細部だ。
聴きどころとして見える点
このアルバムの核は、やはりMaggie Bellの歌唱にある。ブルースを下敷きにしたロックの中で、声そのものが強い存在感を持つタイプの作品だ。バンド全体としては、ギター、オルガン、リズム隊が前に出る編成で、曲ごとに熱量を保ちながら進む印象がある。
実際に耳を通すと、派手な装飾よりも、演奏のまとまりとボーカルの押し出しが印象に残る。70年という時期の空気、つまりブルース・ロックがハードな方向へ少しずつ寄っていく流れの中で、その場の演奏感を大事にした作りに感じられる。
同時代の文脈
Stone The Crowsは、英国のブルース・ロック系バンドの系譜の中で捉えやすい。女性ボーカルを前面に置いた点でも、同時代のロック・バンドの中では存在感がある。Maggie Bellの名前は、その後のロック・シーンでもしばしば言及される。
また、メンバーの顔ぶれを見ると、のちに別のバンドや活動で知られるミュージシャンも含まれており、当時の英国ロックの流動性も見えてくる。短い活動期間ながら、70年代初頭のロックの一断面を切り取ったような1枚だ。
まとめ
『Stone The Crows』は、Stone The Crowsの出発点となる1970年のデビュー・アルバム。ブルース・ロックを基調に、Maggie Bellの歌を軸へ置いた作品として把握しやすい。バンドの初期像を知るうえで重要な1枚、という位置づけのアルバムだ。
トラックリスト
- A1 – The Touch Of Your Loving Hand (6:01)
- A2 – Raining In Your Heart (5:10)
- A3 – Blind Man (5:09)
- A4 – The Fool On The Hill (4:13)
- B1 – I Saw America (17:28)
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The Church – Heyday (1985)
The Church『Heyday』(1985)
The Churchは、オーストラリアのロック・バンドとして知られるグループで、Steve Kilbeyを中心に1980年に始動した。初期は4人編成を経て、Marty Willson-Piperの加入でギター2本の体制が固まり、以後のバンド像を形づくっていく。その流れの中で出たのが、1985年作の『Heyday』である。
この作品は、The Churchの初期を代表するアルバムのひとつとして扱われることが多い。1985年という時期のバンドは、まだキャリアの土台を固めている段階で、ここでは後年の内省的な側面に向かう前の、演奏の輪郭がはっきりした時期の姿が見える。オーストラリア発のインディー・ロック、ギター主体のロック文脈の中で聴かれてきた作品でもある。
作品の位置づけ
『Heyday』は、The Churchのディスコグラフィーの中でも、初期の勢いとバンドの個性がまとまっている時期のアルバムとして見られる。Steve Kilbeyのソングライティング、Peter KoppesとMarty Willson-Piperのギターの絡み、そして当時のバンドが持っていたバンド・サウンドのまとまりが、この時点でかなり明確になっている。
後の代表曲で広く知られる時代に比べると、ここでは曲ごとのアレンジや演奏の組み立てが前面に出る。The Churchらしい、ギターのレイヤーを軸にした作りが確認できるアルバムという印象で語られることが多い。
同時代の文脈
1985年のロック/インディー・ロック周辺を見渡すと、英国やオーストラリアではギターを中心にしたバンドが多く活動していた時期である。The Churchもその流れの中で、派手な装飾よりも演奏の組み合わせで聴かせるタイプのバンドとして位置づけやすい。
同じくギターの重なりや楽曲の構造で聴かせるバンド群と並べて語られることはあるが、The Churchの場合はSteve Kilbeyの低めの歌唱と、2本のギターが作る線の多い音像が特徴になっている。
収録曲と代表曲について
この時期のThe Churchを語るときは、後年に知られる曲やアルバムとのつながりで触れられることが多い。『Heyday』そのものは、のちの代表曲である「Under the Milky Way」の時代より前の作品で、バンドの基礎体力がよく見える段階にある。
アルバム単位で聴くと、楽曲ごとにギターの配置やリズムの置き方が変わり、バンドの持つ柔らかさと硬さの両方が見える構成になっている。曲単体のヒットで押すタイプというより、アルバム全体の流れで印象を残すタイプの作品として受け止められてきた。
このカナダ盤について
今回の盤はカナダ盤で、WEA Music Of Canada Ltd.による製造・流通。プリントされたインナー・スリーブに歌詞が付く仕様である。1985年のオリジナル時期のリリースなので、当時の空気感をそのまま持つ初期プレスとして扱える。
音の細部やマスタリング差については盤ごとの確認が必要になるが、少なくともこの仕様からは、当時の流通形態とアルバムの初出時の形を追える。ジャケットやインナーを含めて、80年代中盤のロック作品らしいパッケージングになっている。
まとめ
『Heyday』は、The Churchの初期を代表する1985年作で、Steve Kilbeyを軸にしたソングライティングと、2本のギターが作るバンド・サウンドがはっきり出たアルバムである。後年の代表曲へつながるバンドの基礎が見える一枚、といった位置づけで語りやすい作品だ。
オーストラリア発のインディー・ロック、1980年代中盤のギター・バンドの文脈の中で聴くと、The Churchというバンドの輪郭がつかみやすい。
トラックリスト
- A1 – Myrrh (4:18)
- A2 – Tristesse (3:28)
- A3 – Already Yesterday (4:15)
- A4 – Columbus (3:48)
- A5 – Happy Hunting Ground (5:30)
- B1 – Tantalized (4:57)
- B2 – Disenchanted (3:53)
- B3 – Night Of Light (4:46)
- B4 – Youth Worshipper (3:45)
- B5 – Roman (3:55)
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Eela Craig – Hats Of Glass (1978)
Eela Craig『Hats Of Glass』について
Eela Craigは、1970年代から80年代にかけて活動したオーストリアのロック・バンドで、プログレッシブ・ロックを軸にジャズやクラシックの要素、さらに宗教的な歌詞を取り込んだグループだ。『Hats Of Glass』は1978年に発表された作品で、同年のバンド活動を代表する一枚として位置づけられる。
録音は1977年8月から11月にかけて行われており、オリジナルの発表は1978年。Eela Craigのキャリアを追うと、初期のシンフォニックな志向から、より洗練されたスタジオ作品へと進んでいく流れの中にある作品として見えてくる。
バンドの背景
Eela Craigは1970年にリンツで結成された。初期作ではEmerson, Lake & Palmer、King Crimson、Gentle Giant、Colosseumといった同時代の大物と比較されたことがあり、演奏力と構成の込み入ったロックを持ち味にしていたバンドだ。1972年にはチューリヒ室内管弦楽団との共演も行っており、当時のロック・バンドとしては珍しいオペラハウスでの演奏にもつながっていく。
1975年にはVertigo Recordsと契約し、以後はシングルやアルバムを発表するようになる。1978年は特に重要な年で、宗教的コンセプトを持つ『Missa Universalis』や、クリス・デ・バーグの「A Spaceman Came Travelling」のカバーも同年に出ている。そうした流れの中で『Hats Of Glass』も並ぶ。
作品の内容と聴きどころ
『Hats Of Glass』は、Electronic、Rockを基盤に、Art Rock、Synth-pop、Prog Rockの要素が並ぶ作品として整理されている。Eela Craigらしい鍵盤中心のアレンジと、ロック・バンドとしての推進力が同居するタイプのアルバムだ。
この時期のEela Craigは、シンフォニック・ロックの文脈に置かれやすい一方で、1970年代後半らしいシンセサイザーの比重も見える。プログレッシブ・ロックの長い構成感だけでなく、電子楽器を前に出したサウンドが作品の輪郭を作っている。
また、同時代のプログレ勢と比べると、イギリス勢の大仰さよりも、ドイツ語圏のバンドらしい緻密さや教会音楽的な感触がにじむ。Brucknerや宗教音楽との接点を持つ『Missa Universalis』の存在を踏まえると、『Hats Of Glass』も単なるロック盤ではなく、彼らの幅広い音楽的背景の延長線上にある作品として聴ける。
代表曲・話題曲について
1978年のEela Craigを語るうえでは、同年の「A Spaceman Came Travelling」がよく知られている。こちらはChris de Burgh曲のカバーで、バンドの透明感のあるアンサンブルと相性のよい楽曲として扱われてきた。『Hats Of Glass』自体の中でも、こうしたメロディ重視の感覚や、電子的な響きの扱いにバンドの特徴が出ている。
この時期の位置づけ
『Hats Of Glass』は、Eela Craigが1970年代後半に到達したスタジオ志向のまとまりを示す作品といえる。初期のプログレ的な実験性を引き継ぎつつ、シンセサイザーやロックの推進力を前面に出した時期の記録でもある。
その後、バンドは1980年代前半に活動が停滞し、1987年にはポップ寄りのシングル群を発表、最後のアルバム『Hit or Miss』へ進む。そうした後年の動きを見ると、『Hats Of Glass』は、バンドの中でも70年代的なプログレ路線と電子音響の接点を示す一枚として確認しやすい。
まとめ
Eela Craig『Hats Of Glass』は、オーストリアのプログレ・バンドが1978年に残した電子音とロックの結節点のような作品だ。ジャズやクラシックの影響、宗教音楽への関心、そして同時代のプログレ・バンドと比較される演奏志向が、バンドの背景としてそのまま反映されている。
1977年秋の録音という事実も含めて、70年代後半の空気をそのまま封じ込めた一作として見てよさそうだ。
トラックリスト
- A1 – A Spaceman Came Travelling (4:49)
- A2 – Hats Of Glass (10:25)
- A3 – Chances Are (5:26)
- B1 – Heaven Sales (2:53)
- B2 – Holstenwall Fair (8:10)
- B3 – Caught On The Air (3:52)
- B4 – (Remove Another Hat Of Glass And You Could Easily Find Assorted Kinds Of) Cheese (3:30)
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Curved Air – Phantasmagoria (1972)
Curved Air『Phantasmagoria』(1972)について
Curved Airは、1970年に結成されたイギリスのプログレッシブ・ロック・バンドで、1972年の『Phantasmagoria』はその初期を代表する作品のひとつだ。バンドの中心にいるのは、ヴォーカルのSonja Kristinaと、Darryl Way、Francis Monkmanらの個性の強い演奏陣。ストリングスやシンセサイザーも含めた編成で、当時の英国プログレらしい実験性と、歌曲としてのまとまりが同居しているアルバムとして知られている。
この作品は、Curved Airの2作目にあたり、前作『Air Conditioning』に続いてバンドの方向性をはっきり示した時期の録音だ。1972年3月、ロンドンのAdvision Studiosで録音され、例外のある曲を除いてそこで制作されている。ジャケットやクレジットからも、当時のスタジオ技術を積極的に使った作品であることが読み取れる。
作品の特徴
『Phantasmagoria』では、ロックの基本形に加えて、変拍子、クラシカルな旋律、電子音響的な処理が前面に出る。曲によってはアコースティックな響きよりも、編集やシンセサイザーの処理そのものが楽曲の構成要素になっている。特にB面の一部では、声をコンピュータで解析・加工したうえで使用しており、当時としてはかなり実験的な制作だ。
録音クレジットを見ると、E.M.S.(London)での作業や、Synthi 100 Synthesizerの使用が記されている。Peter Zinovieffの許可のもとで制作されたトラックもあり、電子音楽の文脈とも接点がある内容だ。プログレッシブ・ロックの中でも、演奏の技巧だけでなく音響処理まで踏み込んだ時期の作品として位置づけやすい。
収録曲にまつわるメモ
この盤のクレジットには、曲ごとの制作上の注記が残っている。
- Track A4には「Also featuring Doris the Cheetah」とある。曲のクレジット上の遊び心が見える部分。
- Track A5はE.M.S.で録音され、Synthi 100 Synthesizerでシーケンスされたと記されている。
- Track B2はSonja Kristinaの声をPDP 8/LコンピュータとSynthi 100で解析・処理した素材のみで構成されていると明記されている。
こうした記述からも、単なるバンド演奏の記録ではなく、スタジオそのものを使った実験が作品の中核にあることがわかる。曲名やクレジットの段階で、すでに音の作り方を見せているアルバムだ。
バンド内での位置づけ
Curved Airは、ヴァイオリンを前に出した編成や、Sonja Kristinaの歌唱で知られるバンドだが、『Phantasmagoria』ではその特徴がかなり明確に出ている。Darryl Wayのヴァイオリン、Francis Monkmanのキーボード、Sonja Kristinaの歌がそれぞれ別の役割を持ちながら、曲ごとに組み替わっていく印象がある。
この時期のCurved Airは、同時代の英国プログレの中でも、YesやGenesisのような大編成の組曲路線とは少し異なり、室内楽的な感触と電子音響をつなげる方向に特徴がある。比較対象としては、音の実験を積極的に取り入れたグループや、ヴァイオリンを含む編成のプログレ・バンドが思い浮かぶ。
代表曲について
『Phantasmagoria』からは、アルバム全体の流れの中で聴かれる曲が多いが、収録曲の中にはバンドの個性を示す楽曲が並ぶ。特定の一曲だけが切り出されるというより、演奏、歌、電子処理の組み合わせでアルバムとして印象が残るタイプの作品だ。ヒット曲中心の作りではなく、作品全体の構成を追う楽しみがある。
日本盤について
この日本盤は1972年のリリースで、バックカバーにはWarner-Pioneerのクレジットが入っている。オリジナルと同年のリリースなので、内容面では当時の作品性をそのまま伝える盤と見てよさそうだ。レコードの流通面では日本国内向けの仕様が付く時代の一枚で、ブックレットやジャケット表記の違いがコレクション上の見どころになることもある。
まとめ
『Phantasmagoria』は、Curved Airの初期を代表する1972年のアルバムで、プログレッシブ・ロックの演奏性と、スタジオ実験の両方がはっきり出た作品だ。ロンドン録音、電子音楽的な処理、Sonja Kristinaの声を素材にしたトラックなど、当時の技術を使い切る姿勢が記録されている。バンドの個性がそのままアルバムの構造になっている一枚、という印象が強い。
トラックリスト
- A1 – Marie Antoinette (6:20)
- A2 – Melinda (More Or Less) (3:25)
- A3 – Not Quite The Same (3:44)
- A4 – Cheetah (3:33)
- A5 – Ultra-Vivaldi (2:22)
- B1 – Phantasmagoria (3:15)
- B2 – Whose Shoulder Are You Looking Over Anyway? (3:24)
- B3 – Over And Above (8:36)
- B4 – Once A Ghost Always A Ghost (Dedicated To Al & Bena) (4:25)
Vangelis – Hypothesis (1978)
Vangelis『Hypothesis』(1978)について
『Hypothesis』は、Vangelis名義で1978年に出た作品。ギリシャ出身の作曲家、編曲家、キーボード奏者として知られる彼の初期活動を伝える1枚で、電子音楽、ジャズ、ロックの要素が交差する内容になっている。後年の映画音楽や大規模なシンセサウンドで広く知られる以前のVangelisを追ううえで、位置づけの見えやすい作品だ。
作品の背景
本作は1971年5月にロンドンのMarquee Studiosで録音された音源を収めたものとして扱われている。リリースは1978年のUK盤で、レーベル表記はA BYG Recording。グレー地にグリーン文字のラベルで出回った盤として知られている。
VangelisはAphrodite’s Childのメンバーとしても活動した人物で、1970年代前半からソロ名義やコラボレーションを通じて多くの作品を残した。『Hypothesis』は、その中でもかなり早い時期の記録にあたる。
音の印象
演奏の中心には、キーボードを軸にした即興的な流れがある。ジャズ・ロック寄りのリズム感を持ちながら、曲の進行はきっちり整理されるというより、音が連なっていくタイプ。電子的な音色と生楽器の反応が同じ場に置かれていて、実験性の強い作りだ。
後年のVangelisにある、旋律を大きく押し出す書き方とは少し距離がある。ここでは、音の質感や反復、展開のしかたに耳が向く。プログレッシブ・ロックの周辺にあった1970年代初頭の空気も感じやすい。
同時代の文脈
この時期のヨーロッパのロックや電子音楽には、即興性とスタジオ実験を組み合わせる動きが多い。Vangelisの初期作もその流れの中にあり、ジャズ・ロック、実験音楽、プログレッシブ・ロックの境界に立つ作品として見られることが多い。
同時代のアーティストでいえば、電子的なアプローチではクラウトロック周辺、即興性ではジャズ・ロック系のミュージシャンと並べて語られることがある。とはいえ、Vangelisはその後、映画音楽やシンセ主体のソロ作品で独自の位置を作っていくため、『Hypothesis』はその前段階の記録として読むと分かりやすい。
この作品の位置づけ
『Hypothesis』は、Vangelisのキャリアの中でも初期の試みを示す1枚。のちの代表作である『Chariots of Fire』や『Blade Runner』のような、広い空間を思わせるメロディ中心の作風とは異なるが、音響の扱い方や構成の発想には、後年につながる部分も見える。
また、この作品は本人の正式な許可なしに出た音源としても知られている。そうした経緯もあり、1971年の録音時点のVangelisを記録した資料的な性格が強い。
まとめ
『Hypothesis』は、Vangelisの初期を知るうえで重要な作品のひとつ。1971年録音、1978年リリースという経緯を持ち、電子音楽、ジャズ、ロックが交わる実験的な内容になっている。後年の大きな成功作とは別の場所にあるが、彼の出発点に近い姿を伝える1枚として押さえておきたい作品だ。
トラックリスト
- A – Hypothesis – Part 1 (16:00)
- B – Hypothesis – Part 2 (16:10)
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Junior Walker & The All Stars – Peace & Understanding Is Hard To Find (1973)
Junior Walker & The All Stars『Peace & Understanding Is Hard To Find』(1973)
Junior Walker & The All Starsが1973年に発表したアルバム。Motown周辺で活動してきた彼らのディスコグラフィーの中でも、70年代前半の時期を切り取る一枚として位置づけられる作品だ。アーティスト名の通り、中心にいるのはサックス奏者のJunior Walker。そこに Willie Woods、Phillip Wright、James Graves、Jerome Teasley、Victor Thomas が加わる編成で、R&Bとソウルを軸にしたバンド・サウンドを鳴らしている。
アーティストの背景
Junior Walker & The All Stars は、1960年代のMotownを代表するインストゥルメンタル寄りのR&Bグループのひとつ。もともとは「The Rhythm Rockers」として活動し、その後「The All Stars」となり、1961年にHuey P. Meauxの紹介でHarveyレーベルとつながった経緯がある。のちにFuqua系のレーベルがBerry GordyのMotownに吸収されると、1964年からMotown所属となった。
このグループの代表曲として知られるのが1965年の「Shotgun」。サックスのフレーズが前面に出た、短くも強い推進力のある曲としてよく語られる。以後も1972年までチャート上で活動を続け、1979年に解散した。
この作品の位置づけ
『Peace & Understanding Is Hard To Find』は、タイトル曲が初出となる1973年の作品。Junior Walker & The All Starsにとっては、60年代のヒット期を経たあと、70年代のソウル/ファンクの流れの中で作られたアルバムという見方ができる。Motownの看板のひとつとしての役割を担いながら、サックス主体のバンド・サウンドを保っている点が重要だ。
同時代の文脈で見ると、James Brown周辺のファンク、あるいは同じMotown系の緊張感あるソウル作品と並べて語られることがありそうだが、Junior Walkerの場合はやはりリードするサックスの音が中心にある。歌だけで押すというより、楽器の推進力が前面に出る作りが特徴になっている。
聴きどころ
実際に耳を通すと、まず印象に残るのはJunior Walkerのサックスの輪郭。音数で埋めるというより、短いフレーズを強く置いていく感触がある。そこにリズム隊がついて、ソウルのグルーヴを作る構成。バンドとしてのまとまりがあり、演奏の温度感で引っ張るタイプのアルバムだ。
タイトル曲「Peace & Understanding Is Hard To Find」は、作品の顔として受け取られやすい曲名。70年代前半らしい社会的な言葉を持ちながら、演奏面ではJunior Walkerの持ち味がきちんと出るタイプの一曲として聴ける。
代表曲とのつながり
Junior Walker & The All Starsを初めて辿ると、多くの人はまず「Shotgun」に行き着くはずだ。あの曲の勢い、サックスの押し出し、Motownの中でも少し異色の荒さ。その延長線上にあるのが、この1973年作という捉え方がしやすい。大ヒット曲の再現というより、バンドの持ち味を70年代仕様で保っている印象。
まとめ
『Peace & Understanding Is Hard To Find』は、Junior Walker & The All Starsの看板であるサックス・ソウルを1973年の感覚で記録したアルバム。Motown黄金期の代表曲で知られるグループが、70年代にどう鳴っていたかを確認できる一枚だ。派手な逸話よりも、バンドの演奏とグルーヴそのものに価値がある作品として捉えやすい。
トラックリスト
- A1 – I Ain’t Going Nowhere (3:35)
- A2 – I Don’t Need No Reason (2:44)
- A3 – It’s Alright, Do What You Gotta Do (3:29)
- A4 – It’s Too Late (2:54)
- A5 – Soul Clappin’ (4:25)
- B1 – I Can See Clearly Now (3:18)
- B2 – Gimme That Beat (Part 1) (3:27)
- B3 – Gimme That Beat (Part 2) (2:48)
- B4 – Country Boy (2:59)
- B5 – Peace And Understanding (Is Hard To Find) (3:05)
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Albert Hammond – Your World And My World (1981)
Albert Hammond / Your World And My World(1981)
Albert Hammondの1981年作『Your World And My World』は、ソフトロックやポップロックの流れの中で、メロディを前面に出した楽曲を並べたアルバムだ。British singer / composerとして知られるHammondは、ロンドン生まれでジブラルタル育ち。のちにアメリカへ拠点を移し、シンガーとしてだけでなく、ソングライターとしても活動を広げていった人物である。
アーティストとしての位置づけ
1981年という時期のAlbert Hammondは、すでにヒット曲を持つ作家・歌手として認知されていた時期に当たる。70年代にアメリカで活動を続けたあとに出た本作は、彼の持ち味である歌の流れの良さ、コード進行のわかりやすさ、そして声の柔らかさが、そのままアルバム単位でまとまった作品として捉えやすい。
同時代のアメリカ西海岸系のポップスや、同じくメロディ重視のシンガーソングライター作品と並べて語られることが多いタイプの1枚だ。派手な演出よりも、曲の骨格と歌で聴かせる作り。そういう意味で、Albert Hammondの作家性が見えやすいアルバムである。
音の印象
この作品は、バラード調の曲と、ポップ寄りの曲が自然につながっていく構成が目立つ。アコースティックな響きとバンド演奏のバランスがよく、耳に入ってくるのはまずメロディの明瞭さ。ソフトロック、フォークロック、ポップロックというタグどおり、ビートで押すというより、歌の線を丁寧に追わせる作りだ。
実際に聴くと、声の置き方がかなり素直で、フレーズの終わりまで崩さずに運ぶタイプの歌い方が印象に残る。音数が多すぎないぶん、コードの変化やコーラスの重なりが聴き取りやすい。派手な展開を求めるより、曲の中で少しずつ景色が動く感じのアルバムである。
代表曲・ヒット曲について
Albert Hammondの代表曲としては、単独のヒットだけでなく、作家として広く知られる楽曲が多い。本作そのものの中でも、アルバムの核になるのは歌メロを強く押し出したバラード群だ。タイトルの『Your World And My World』も、アルバム全体の性格を示すような、個人の感情をまっすぐに置いた響きがある。
Hammondはのちにソングライターとしての評価も強まり、2008年にはSongwriters Hall of Fame入りを果たしている。そうした経歴を踏まえると、このアルバムも「歌を作る人」としての手つきが見えやすい一作として位置づけられる。
同時代とのつながり
1981年のポップ/ロック周辺では、洗練されたアレンジと聴きやすいメロディを持つ作品が多い時期だった。Albert Hammondもその流れの中にいて、ロックの荒さよりも、ラジオ向きの整った構成を優先するタイプの作品を作っている。AOR的な感触や、シンガーソングライター系の落ち着いた作りと近い耳で聴けるアルバムだ。
同じくメロディ重視の男性ソロ作と比べても、Hammondは英国出身ながらアメリカで活動を続けた経歴が効いていて、英語圏のポップスの中心に自然に入り込むタイプの作家として見えやすい。
まとめ
『Your World And My World』は、Albert Hammondの歌と作曲の持ち味が、1981年時点のポップロックの枠組みの中でまとまったアルバムだ。曲単位でもアルバム単位でも、派手さよりも流れのよさが前に出る。ソフトロックやバラード系の感触を軸に、彼の作家性を追いやすい作品として受け取れる。
トラックリスト
- A1 – Your World And My World (3:48)
- A2 – Memories (3:12)
- A3 – When I’m Gone (4:22)
- A4 – Anyone With Eyes (3:22)
- A5 – World Of Love (2:08)
- B1 – I Want You Back Here With Me (3:34)
- B2 – Experience (3:24)
- B3 – Take Me Sailing (2:40)
- B4 – By The Night (4:28)
- B5 – I’m A Camera (2:13)
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Patrick Moraz – Human Interface (1987)
Patrick Moraz『Human Interface』(1987)について
Patrick Morazは、スイス出身のキーボード奏者。プログレッシブ・ロックとジャズの両方の文脈で知られる人で、Mainhorse、Refugee、Yes、そしてMoody Bluesでの活動でも名を残している。ソロ作は、その多彩な鍵盤ワークを前面に出した作品が多く、この『Human Interface』もその流れの中にある1987年作だ。
このアルバムはカナダ盤で、リリース年は1987年。記録上はカナダでプレスされており、スパインには「Printed In Canada」の表記がある。録音・制作面では、TimeCode Studiosで作曲、編曲、プログラミングが行われ、Blackbarn Studiosで演奏・録音・ミックスが行われたとクレジットされている。デジタル録音、ミックス、マスタリングを前提にした作品で、80年代後半らしい制作環境がはっきり見える一枚だ。
作品の位置づけ
Patrick Morazにとっては、バンド活動と並行して続けてきたソロ表現のひとつ。YesやMoody Bluesで知られる彼だが、ソロではより直接的にキーボード主体の音作りを展開してきた。『Human Interface』は、その中でも電子楽器と当時のデジタル機材を積極的に使った時期の作品として見てよさそうだ。
クレジットには、Kurzweil Music Systems、Korg、Apple Computer、Sony 3324など、当時のスタジオ機材やデジタル環境が並ぶ。Macintosh Computersの記載もあり、80年代後半のテクノロジーと音楽制作の接点がかなり前面に出たレコードになっている。
サウンドの印象
実際に聴くと、鍵盤のレイヤーを軸にした構成が中心で、プログレッシブ・ロック的な組み立て方と、電子音楽寄りの処理が同居している印象がある。バンド演奏の生々しさを押し出すというより、プログラミングや録音処理を含めて音像を作るタイプの作品だ。
この時期のMorazらしく、旋律だけでなく音色の切り替えやリズムの置き方に耳が向く内容。ギターロック中心の80年代プログレとは少し違って、キーボード奏者の視点が最後まで通っている感じがある。
同時代の文脈
1987年という年を考えると、シンセサイザーやデジタル録音がロックの制作現場に定着していった時期にあたる。『Human Interface』もその流れの中にあり、当時の高度なスタジオ機材を使った作品として位置づけやすい。プログレの系譜で見ると、70年代的な長尺志向そのままというより、80年代の録音技術や音色設計を取り込んだタイプの作品だ。
盤の情報
このカナダ盤では、内袋にマスタリング・クレジットとしてSteve Rooke at Abbey Roadの表記があるものの、実際にはこのカナダ盤にはそのまま当てはまらない可能性が示されている。実際のプレスとマスタリングはCBS Records Canada Ltd., Don Mills, Ontarioで行われたとされる。
また、内袋の片面にはCinema Recordsのプロモーション文面が使われている。こうした仕様は、当時の流通や印刷資材の事情がそのまま残ったものとして見ておくとよさそうだ。
まとめ
『Human Interface』は、Patrick Morazのキーボード奏者としての持ち味を、1987年のデジタル制作環境の中でまとめたソロ作品だ。YesやMoody Bluesでの経歴を知っていると、そこからさらに電子的でスタジオ志向の方向へ振れた一枚として聴ける。プログレッシブ・ロックの系譜と80年代後半の録音技術、その接点にある作品。
トラックリスト
- A1 – Light Elements (6:38)
- A2 – Beyond Binary (4:32)
- A3 – Cin-A-Maah (5:45)
- A4 – Stormtroops On Loops (1:14)
- A5 – Modular Symphony (1st Movement) (3:06)
- B1 – Go To Ophioplomel (4:06)
- B2 – Kyushu (11:03)
- B3 – Stressless (6:06)
- B4 – Hyperwaves (6:05)
関連動画
- Patrick Moraz – Light Elements
- Patrick Moraz – Beyond Binary
- Patrick Moraz – Cin-A-Mah
- Patrick Moraz – Stormtroops on Loops
- Patrick Moraz – Modular Symphony (1st Movement)
- Patrick Moraz – Go to Ophioplomel
- Patrick Moraz – Kyushu
- Patrick Moraz – Stressless
- Patrick Moraz – Hyperwaves
- Patrick Moraz – Go to Ophioplomel + Intro (bonus track)
Thors Hammer – Thors Hammer (1971)
Thors Hammer『Thors Hammer』について
Thors Hammerは、コペンハーゲン出身のデンマークのプログレッシブ・ロック・バンドで、1971年に1枚だけアルバムを残したグループとして知られている。ここで取り上げる『Thors Hammer』はその唯一のアルバムで、1971年のオリジナル盤はデンマークのMetronomeから出ている。のちの2010年盤はドイツ盤の再発で、オリジナルの録音をもとにした復刻盤という位置づけになる。
メンバーはJesper Nehammer、Michael Bruun、Henrik Bødtcher、Peter Nielsen、Simon Koppel、Henrik Langkilde。バンドのプロフィールとしては、この作品のあとに主要メンバーがまとまり、1970年代のAnacondaやTyggegummibandenの核になっていく流れが記録されている。
作品の基本情報
- アーティスト: Thors Hammer
- タイトル: Thors Hammer
- オリジナル・リリース: 1971年
- 2010年盤: ドイツ盤再発
- 録音: 1971年1月〜2月、コペンハーゲンのMetronome Studio
- レーベル表記: Original release by Metronome, Denmark 1971
- パッケージ: シングルジャケット、4ページ・インサート、ポリライン入りLPスリーブ
- 仕様: 1,000枚限定、手書きナンバリング入り
サウンドと時代背景
スタイルはジャズ・ロック、プログレッシブ・ロック。1971年という時期を考えると、北欧のロックが欧州のプログレ文脈に本格的に接続していく流れの中に置ける作品だ。デンマークの同時代バンドの中でも、演奏の組み立てや曲の展開を重視するタイプの一枚として見られることが多い。
ジャズ・ロック寄りの要素を含むプログレ作品として、同時代の英国勢と並べて語られることがある。とはいえ、単純に英米の模倣としてではなく、北欧ロックらしい整理されたアンサンブルと、録音年代相応の生々しい質感が前面に出るタイプのレコードといえる。
再発盤としての2010年盤
2010年盤は1971年オリジナルの再発で、収録内容の基本はオリジナル盤に沿っている。盤としては、限定1,000枚の手書きナンバー入り、4ページ・インサート付きという形でまとめられている。オリジナル盤の資料性を意識した作りで、作品そのものに加えて、当時の記録を手元で確認しやすい仕様になっている。
レコードのクレジットには、1971年の著作権表記と2010年の再発表記が併記されており、録音年と再発年の区別がはっきりしている。再発盤としては、オリジナルの記録をそのまま伝える方向のリリースと受け取れる。
位置づけ
Thors Hammerにとってこのアルバムは唯一のスタジオ・アルバムであり、バンドの名前をそのまま刻んだ自己紹介的な一枚でもある。のちにメンバーがAnacondaやTyggegummibandenへつながっていくことを考えると、単独作で終わったアルバムというより、70年代デンマーク・ロックの流れの起点のひとつとして見えてくる。
代表曲や広く知られたヒット曲については、この作品の情報からは特に前面には出ていない。アルバム全体で聴かれるタイプの作品として扱われることが多そうだ。
ひとこと
1971年の北欧プログレらしい記録性の強い一枚。唯一作、当時のスタジオ録音、のちの再発盤という要素がまとまっていて、バンドの歴史をたどる入口としても分かりやすいレコードだ。
トラックリスト
- A1 – Mexico (6:21)
- A2 – Not Worth Saying (13:05)
- B1 – Blind Gypsy Woman (5:02)
- B2 – Believe In What You Want (9:03)
- B3 – Evasive Dreams Beyond (3:32)
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Flue – Vista (1983)
Flue『Vista』について
Flueはオランダ出身のポストパンク・バンドで、1980年代に活動したグループだ。Torsoから作品を発表しており、冷たい質感のあるニューウェイヴ寄りのサウンドと、抑制の効いたメロディ、暗めの空気感をあわせ持つバンドとして知られている。
『Vista』は1983年にオランダで出た2作目のアルバムで、Flueにとっては1981年の『One and a Half』に続く長編作品になる。盤の仕様としては、黒白ラベルのオリジナル盤で、見開きジャケットという形態だ。
作品の位置づけ
Flueのディスコグラフィーはアルバム2枚が中心で、『Vista』はその後期にあたる1枚。バンドの音楽性をそのまま詰めたような位置にある作品として見てよさそうだ。プロフィール上でも、電子的な要素とロックの骨格を持ちながら、ニューヴェイヴやアートロックの要素に触れている。
メンバーはEdward Gijsen、Judith Smorenberg、Cor Bolten、Hans Wegman、Jerome Scharenborgの編成。ギター、シンセ、ベース、ドラムという基本構成に、シンセが前に出る場面もあるタイプのバンド像が浮かぶ。
サウンドの印象
実際に耳にすると、派手に押し切るというより、低めのテンションで進む楽曲が印象に残る。リズムは必要以上に前へ出ず、ギターとシンセが空間を詰めすぎないまま並ぶ感触がある。冷えた質感の中に、旋律がきちんと残る作りだ。
同時代のオランダ勢や、広い意味でのヨーロッパのコールドウェイヴ、ニューウェイヴと並べて語られることがあるのも納得しやすい。たとえば、硬質なリズム感や抑えた歌い回し、陰影のあるアレンジに耳が向くタイプだ。
『One and a Half』との関係
Flueのアルバムは『One and a Half』と『Vista』の2枚のみで、どちらもオリジナルはレコードのみの発表だ。現在は入手が難しい部類とされている。後年、『One and a Half』はデジタル・リマスターされ、7曲のボーナストラック付きで再発されているが、『Vista』はオリジナルの1983年盤が作品の基本形になる。
そのため、『Vista』はバンドの活動を追ううえで重要な一枚というより、Flueというグループの輪郭をそのまま示す記録に近い。初期ヨーロッパ・ポストパンクの空気を、オランダのローカルな文脈で聴ける作品でもある。
まとめ
『Vista』は、Flueの2作目にして最後のアルバム。Torso所属のオランダ産ポストパンクとして、冷たい質感と控えめなメロディを軸にした作品だ。黒白ラベルの見開きジャケットで出た1983年のオリジナル盤が、そのまま作品の代表的な形になっている。
トラックリスト
- A1 – Esmafarja (5:52)
- A2 – Some-Times (4:52)
- A3 – Legacy (3:15)
- A4 – Prolusion (4:31)
- B1 – Topic (5:18)
- B2 – Refuge (3:57)
- B3 – Passionate (4:28)
- B4 – Hermit (4:13)
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Wired Mind – Mindstate:Dreamscape (2015)
Wired Mind『Mindstate:Dreamscape』(2015)
UKのWired Mindによる『Mindstate:Dreamscape』は、2015年に登場した作品。リリース国もUKで、同年プレスの盤として流通している。ジャンル表記はRock、スタイルはPsychedelic Rock、Krautrock、Stoner Rock、Space Rock。タイトルからも分かる通り、意識の流れや浮遊感を軸にしたサイケデリック寄りの作品として位置づけられる一枚だ。
作品の概要
公開されている情報を見る限り、Wired Mindのアーティストプロフィールやメンバー情報は確認できない。とはいえ、Bandcampで作品群がまとまっていることから、2010年代のインディペンデントなロック・シーンの中で活動していたユニットと捉えられる。『Mindstate:Dreamscape』はその中でも、バンド名とタイトルの両方に「内面のイメージ」「夢の風景」を感じさせる要素があり、音像重視の作品であることを示している。
この時期のUKのサイケデリック/スペース・ロック周辺では、長尺の展開、反復するリフ、エフェクトのかかったギター、モーターリックな推進力を持つ演奏がよく見られる。『Mindstate:Dreamscape』も、そうした同時代の文脈に置いて見られる作品だろう。
盤の仕様
この盤は総数500枚のプレス。内訳は以下の通り。
- 透明イエローのDIE HARD版:100枚、HeviSike.com限定、刺繍パッチ付き、手書きナンバリング入り
- Kelly Green:200枚
- Halloween Orange:200枚
掲載情報上、この盤はHalloween Orange仕様のもの。バンドおよび流通経由で入手できるタイプとして案内されている。
サウンドの位置づけ
スタイル名だけを見ると、Psychedelic Rockの広がり、Krautrockの反復、Stoner Rockの重さ、Space Rockの浮遊感が並ぶ。こうしたタグが付く作品は、曲ごとのメロディよりも、リフの循環や音の厚み、演奏の持続感で聴かせることが多い。Wired Mindも、その文脈に収まるバンドとして扱われている。
同系統のUKバンドと比べると、2010年代には70年代回帰の要素を持つ作品が多く、サイケデリック・ロックの再解釈として聴かれるケースが目立つ。『Mindstate:Dreamscape』も、そうした流れの中の一枚として見ておくと整理しやすい。
曲について
今回確認できる範囲では、代表曲やシングル扱いの曲情報は見当たらない。収録曲の詳細が分かれば、曲ごとの構成やアルバム内での流れにも触れられるが、現時点では作品全体の提示にとどまる。
まとめ
『Mindstate:Dreamscape』は、2015年のUK発サイケデリック/クラウト寄りロック作品として捉えやすい一枚。限定色を含む500枚プレスという仕様も含め、インディペンデントな流通形態が色濃い。Wired Mindの作品群の中では、バンド名のイメージをそのまま音に置き換えたようなタイトルが印象に残る。
トラックリスト
- A1 – Road
- A2 – Jennifer’s Dream Of A Switchblade
- B1 – Wired Dream
- B2 – Woman
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Tides From Nebula – Safehaven (2016)
Tides From Nebula『Safehaven』について
『Safehaven』は、ポーランドのポストロック・バンド、Tides From Nebulaが2016年に発表した作品だ。欧州盤としてリリースされ、180gのブラック・ヴァイナルにCDを付属したLP+CD仕様になっている。リリース元はLong Branch Records。バンドの4人編成としては、Adam Waleszyński、Tomasz Stołowski、Przemysław Węgłowski、Maciej Karbowskiの名がクレジットされている。
Tides From Nebulaは、インストゥルメンタルを軸にしたポストロックの文脈で知られるバンドで、同時代の同系統のアクトと比べても、ギターのレイヤーを重ねる構成と、曲の起伏をはっきり作る展開が目立つタイプだ。『Safehaven』もその路線の延長線上にある作品として捉えやすい。
作品の位置づけ
このアルバムは、バンドにとって2016年時点の新作として出たタイトルで、作品名の通り“避難所”のような印象を持つタイトルがつけられている。収録曲の中では、故Piotr Grudzińskiに捧げられた「Home」が特記されている。こうした献辞のある曲が入っていることからも、単なる曲集というより、バンドにとって意味のある一枚として扱われていることがわかる。
音の印象
実際に聴くと、静かな立ち上がりから音が厚くなっていく作りと、リズム隊がしっかり曲を押し進める感触が印象に残る。ポストロックらしい長い呼吸を持ちながらも、ただ広がるだけでなく、フレーズの切り替えやダイナミクスの変化が明確だ。ギターは空間系の響きが前に出る場面がある一方で、リフとして輪郭を持たせる箇所もあり、曲ごとの表情を作っている。
この種の作品では、MogwaiやExplosions in the Sky、Russian Circlesあたりと同じ棚に並べて語られることが多い流れがあるが、Tides From Nebulaはそこに比較的タイトな構成感を持ち込むバンドとして見られやすい。
パッケージとクレジット
盤面は180gのブラック・ヴァイナルで、CDは紙スリーブ入り。ジャケット裏面には「SPV 269861 LP+CD」、背表紙には「269861 LP+CD」の表記がある。2016年当時のヨーロッパ盤として、Long Branch RecordsのクレジットとSPVの流通表記が入っている。
まとめ
『Safehaven』は、Tides From Nebulaのポストロックらしい構成美と、感情の起伏を明確に出す演奏がまとまった2016年作だ。献辞曲「Home」を含む点も含めて、作品全体にバンドの姿勢が見えやすい一枚になっている。
トラックリスト
- A1 – Safehaven
- A2 – Knees To The Earth
- A3 – All The Steps I’ve Made
- A4 – The Lifter
- B1 – Traversing
- B2 – Colour Of Glow
- B3 – We Are The Mirror
- B4 – Home (6:21)
- CD-1 – Safehaven (5:32)
- CD-2 – Knees To The Earth (5:17)
- CD-3 – All The Steps I’ve Made (4:48)
- CD-4 – The Lifter (6:04)
- CD-5 – Traversing (6:28)
- CD-6 – Colour Of Glow (3:31)
- CD-7 – We Are The Mirror (5:48)
- CD-8 – Home (6:21)
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Pallas – The Wedge (1986)
Pallas『The Wedge』について
『The Wedge』は、スコットランド・アバディーン出身のプログ・ロック・バンド、Pallasが1986年に発表した作品です。UKのプログ・ロック・リヴァイヴァルの文脈で語られることが多いバンドで、Marillion、Pendragon、IQ、It Bitesと並べて紹介されることもあります。70年代プログの要素を引き継ぎながら、80年代らしい音作りと構成感を持ち込んでいった世代の一枚として位置づけられる作品です。
バンドの流れの中での位置
Pallasは1976年にRainbowという名前で結成され、その後Ritchie BlackmoreによるRainbow名義の使用を受けてPallasへ改名した経緯を持ちます。『The Wedge』は、そうしたバンドの活動がUKのプログ・ロック再興の流れと重なっていた時期の作品です。メジャーシーンの大きな注目を集めるタイプというより、コアなファン層に支えられたバンドの代表的な時期を示すタイトルとして見られることが多いです。
アーティストのディスコグラフィーの中では、初期の勢いを受けて出てきた作品の一つとして捉えやすいです。のちにバンドは3作目のスタジオ・アルバム以降、レーベルや音楽メディアからの関心が薄れ、活動が半ば停滞した時期を迎えますが、『The Wedge』はその前段階にあたる1986年の重要な記録です。
作品の内容と盤の情報
この盤は1986年のUKリリースで、オリジナル作品と同年のプレスです。クレジット上では、全曲がAthenae Music Publishing Ltd.とVirgin Music (Publishers) Ltd.に帰属し、Smoothside Organisation制作、Made in England、歌詞入りの内袋付きという仕様になっています。80年代のLPらしい体裁で、歌詞を追いながら聴ける作りです。
メンバー表記には、Ronnie Brown、Paul Mackie、Mike Stobbie、Euan Lowson、Derek Forman、Niall Mathewson、Graeme Murray、Alan Reed、Colin Fraser、Craig Andersonの名前が並びます。Pallasは編成の厚みを活かしたアレンジで知られるバンドで、この時期の作品でも、楽器ごとの役割が明確な構成が想像しやすいです。
同時代の文脈
1986年のUKプログ・ロックは、70年代の大規模な商業的ピークとは違い、より限られたシーンの中で発展していた時期です。Pallasもその中にあり、MarillionやIQのように、長尺曲や展開の多い構成を80年代的な音像に落とし込む流れと近いところにいます。初期プログの直接的な模倣というより、当時のロック・プロダクションの中でプログの形式を維持している印象です。
聴きどころとして挙げやすい点
実際に聴くと、バンドの持つ緊張感と、曲展開をきちんと組み立てていく姿勢が前面に出るタイプの作品として受け取られることが多そうです。プログ・ロックでは、演奏の技巧だけでなく、曲の中で場面が切り替わる設計が重要になりますが、Pallasはその部分に重心を置くバンドとして語られてきました。
また、作品全体を通して、歌詞を載せた内袋が付くことからも、言葉と構成の両方を追う前提のアルバムだったことがうかがえます。音だけで押し切るタイプではなく、曲順を通して聴く意味がある作りの作品として扱われやすいです。
まとめ
『The Wedge』は、PallasがUKプログ・ロック再興の流れの中で発表した1986年作です。バンドの初期から中期にかけての動きを示す一枚であり、同時代のMarillion、Pendragon、IQ、It Bitesと並ぶ文脈で見えてくる作品でもあります。80年代のUKプログを追ううえで、Pallasというバンドの輪郭をつかむ手がかりになるタイトルです。
トラックリスト
- A1 – Dance Through The Fire (4:48)
- A2 – Throwing Stones At The Wind (5:15)
- A3 – Win Or Lose (4:37)
- A4 – The Executioner (Bernie Goetz A Gun) (5:38)
- B1 – A Million Miles Away (Imagination) (4:40)
- B2 – Ratracing (8:00)
- B3 – Just A Memory (5:30)
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Aguaviva – Cosmonauta (1972)
Aguaviva『Cosmonauta』について
『Cosmonauta』は、スペインのフォーク・プログレッシブ・バンド、Aguavivaの作品。オリジナルは1972年、今回の盤は2005年リリースの再発盤にあたる。録音はマドリードのStudios Celadaで行われ、ゲートフォールド仕様のスリーヴとインサート付き、限定盤として出ている。
Aguavivaは1967年にJosé Antonio Muñozを中心に結成されたグループで、プロデューサーのManolo Díazが強く関わったバンドとして知られる。70年代前半にはPepe Egeaが主要な作曲・編曲を担い、スペインのロックとフォークの接点にある作品を残した。メンバーの入れ替わりが多いのもこのグループの特徴で、この盤にも複数の歌手・演奏者が参加している。
作品の位置づけ
『Cosmonauta』は、Aguavivaの活動が充実していた時期の一枚として捉えやすい作品。彼らはスペイン語圏のシンガーソングライターや文学的な題材とも近い場所にいて、同時代のスペイン産プログレ、あるいはフォーク色の強いロック作品の流れの中で聴かれることが多い。Aguavivaの文脈では、コーラスや語りを含む構成、アンサンブル重視の作りがひとつの持ち味になっている。
同時代のスペイン・ロックでは、TrianaやMägo de Ozのような後年の派手な展開とは違い、より室内的で、編曲や歌の重なりに重心を置く作品群がある。Aguavivaもその系譜に置くと見えやすいバンドで、『Cosmonauta』もそうした70年代初頭の空気を反映したタイトルといえる。
サウンドの印象
この作品は、フォーク由来の歌唱と、プログレッシブ・ロック寄りの構成感が同居するタイプのアルバムとして理解しやすい。演奏面では、ギター、ピアノ、ドラム、ベースが土台を作り、その上に複数のボーカルが重なる形が想像しやすい。Aguavivaらしい集団的な歌の作りが、曲ごとの輪郭を決めている印象。
タイトルの「Cosmonauta」が示す通り、当時のロックに見られる宇宙的なイメージを持つ作品としても読めるが、内容の軸はあくまで歌と編曲にある。派手な技巧を前面に出すというより、曲の流れ、声の配置、アレンジの積み重ねで聴かせるタイプの一枚。
再発盤としての見どころ
2005年盤は、1972年オリジナルの再評価や再流通の文脈で手に取られることが多い盤。ゲートフォールド・スリーヴとインサート付きという仕様は、当時の作品の雰囲気を伝えるうえでうれしいところ。オリジナル期のスペイン盤に触れにくい場合でも、作品全体の手触りを追いやすい形になっている。
まとめ
『Cosmonauta』は、Aguavivaの持つ集団的な歌唱、フォークとプログレの接点、70年代スペイン・ロックの空気をまとめて感じやすい一枚。バンドの活動史の中でも、メンバーと編曲の力がよく出る時期の作品として見てよさそうだ。
- アーティスト: Aguaviva
- タイトル: Cosmonauta
- オリジナルリリース: 1972年
- 盤のリリース: 2005年
- 録音: Studios Celada, Madrid
- 仕様: Gatefold sleeve, insert, Limited Edition
トラックリスト
- A1 – Estallido Del Miedo
- A2 – Estallido De La Luz
- B1 – Estallido De La Maquina
- B2 – Estallido Del Silencio
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The Mops – 月光仮面 (1971)
The Mops『月光仮面』について
The Mopsの「月光仮面」は、1971年に日本でリリースされたシングル盤である。グループ・サウンズ期から活動してきた彼らが、サイケデリック路線のあとにたどり着いた時期の作品で、同年のバンドの代表曲としても知られる一枚だ。タイトル曲は特撮ヒーロー「月光仮面」を題材にした内容で、当時のノベルティ色も強い。
バンドの流れの中での位置づけ
The Mopsは、1960年代後半の日本のグループ・サウンズを代表するバンドのひとつで、サイケデリック期の存在感でもよく知られている。初期はベンチャーズ系のインストゥルメンタルを土台にしながら、その後はサイケデリック・ロックへ接近し、さらに1970年代に入るとブルース・ロック寄りのサウンドへ移っていった。この「月光仮面」は、そうした変化ののちに出た作品で、バンドの後期を語るうえで外せない曲になっている。
彼らの1971年の最大のヒットとしても扱われることが多く、シリアスなロック・バンドとしての顔とは別に、テレビや大衆文化と接続した企画性のある曲として記憶されている。
曲の内容とエピソード
タイトル曲「月光仮面」は、バンド自身が冗談めいた感覚で録音したとされるが、結果的にはヒットにつながった。The Mopsには、サイケデリック期の先鋭的な楽曲と並んで、こうした遊び心のあるシングルが残っているのが面白いところである。
カップリングは「Aja」。盤面表記の英題はこの2曲で、シングルとしてはコンパクトな構成だ。The Mopsの作品群の中では、アルバム単位の実験性よりも、当時のシングル文化らしい即効性が前に出た一枚といえる。
同時代とのつながり
The Mopsを語るときは、日本のグループ・サウンズや、当時の海外サイケデリック・ロックとの往復がよく話題になる。初期にはベンチャーズ的な演奏、サイケ期にはジェファーソン・エアプレインやドアーズ、アニマルズ周辺の影響が見え、その後の後期ではブルース・ロックへ寄っていく流れ。そうした中で「月光仮面」は、ロックバンドが日本の大衆的な題材を取り込んだ例としても見やすい作品である。
まとめ
『月光仮面』は、The Mopsの後期を代表する1971年のシングル盤であり、バンドのヒット曲としても位置づけられる。サイケデリック・バンドとして語られることの多い彼らだが、この曲では別の角度から当時のThe Mopsの動きが見える。グループ・サウンズからブルース・ロックへ移る流れの中で、彼らがどんな形で大衆性を持ち込んでいたかを示す一枚である。
トラックリスト
- A – 月光仮面 (3:20)
- B – アジャ (3:31)
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Tom Verlaine – Words From The Front (1982)
Tom Verlaine『Words From The Front』(1982)について
Tom Verlaineは、アメリカのシンガー/ソングライター/ギタリスト。Televisionの中心人物として知られ、その後のソロ活動でも、細い旋律と鋭いギターの運びを軸にした作品を残している。『Words From The Front』は1982年に発表されたソロ作品で、Verlaineの80年代前半を代表する一枚として位置づけられるアルバムだ。
この時期のVerlaineは、1970年代後半のニューヨーク・シーンで培った感覚を保ちながら、ソロならではの構成や音の置き方を進めている。ギターロックを基盤にしつつ、曲ごとの輪郭がはっきりしていて、演奏の細部を追う楽しみがある作品という印象になる。
作品の概要
- アーティスト: Tom Verlaine
- タイトル: Words From The Front
- オリジナルリリース年: 1982年
- ジャンル: Rock
- スタイル: Alternative Rock
- リリース国: Japan
- 日本盤の付属: 帯、4ページの歌詞/インフォメーション・インサート
日本盤としては、帯付きで4ページの歌詞/インフォメーション・インサートが付く仕様。80年代初頭の国内盤らしい、情報を補う作りになっている。
Tom Verlaineというアーティストの位置づけ
Tom Verlaineは、Televisionのギタリスト/ボーカリストとしてまず語られる人物だが、ソロではより個人的な作曲感覚が前に出る。Televisionがニューヨーク・パンク以後のロック史で重要視される一方、ソロ作品ではその延長線上にある、より繊細で構築的なソングライティングが聴ける。『Words From The Front』も、その流れの中に置ける作品だ。
同時代の文脈で見ると、1970年代末から1980年代初頭のアメリカン・ロックの中で、単純なパンクの速さだけではなく、ギターのフレーズや曲の間合いを重視する動きがあった。Verlaineはその中でも、James ChanceやRichard Hellのような直截さとは別の方向で、緊張感のあるギター中心の音を作っていた人物として見やすい。
聴きどころの方向性
このアルバムは、派手な即効性よりも、曲の進み方やギターの線の出し方に耳が向くタイプの作品だ。Tom Verlaineの声は感情を強く押し出すというより、語りかけるように進み、その上でギターが曲の輪郭を決めていく。ロックの基本形を使いながら、演奏の余白やフレーズの間で個性を出しているところが、この人らしさとして伝わる。
実際に聴くと、音数を詰め込むよりも、必要な場所にだけ音を置く感覚が目立つ。ロックでありながら、リズムやメロディの運びに少し距離を取ったような設計があり、そこがTelevision時代から続くVerlaineの持ち味につながっているように感じられる。
代表曲・ヒット曲について
Tom Verlaineのソロ作は、一般的な意味での大ヒット曲で語られることは多くない。一方で、アルバム単位で聴かれることの多いアーティストであり、『Words From The Front』もその流れにある。曲名単位で広く知られた代表曲を軸にするというより、全体の流れの中でVerlaineのギターと作曲の持ち味を追うアルバムといえる。
補足
Tom Verlaineは2023年に亡くなっているが、このアルバムはそのかなり前、1982年の時点で発表された作品。Televisionの解散後も、彼がギターロックの文脈で独自の音を続けていたことを示す一枚として見ることができる。
『Words From The Front』は、80年代初頭のロックの中で、ギターのフレーズ、曲の組み立て、声の置き方で個性を見せるTom Verlaineのソロ作品としてまとまっている。派手さよりも、演奏と構成の細部に耳が向くアルバムだ。
トラックリスト
- A1 – Present Arrived (5:20)
- A2 – Postcard From Waterloo (3:31)
- A3 – True Story (5:26)
- A4 – Clear It Away (4:11)
- B1 – Words From The Front (6:41)
- B2 – Coming Apart (3:00)
- B3 – Days On The Mountain (8:57)
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Van Der Graaf Generator – Godbluff (1975)
Van Der Graaf Generator『Godbluff』について
Van Der Graaf Generatorの『Godbluff』は、1975年に発表されたアルバムで、UKのプログレッシブ・ロックを語るうえで外せない1枚だ。バンドは1967年にピーター・ハミルらによって結成され、70年代前半から独自の緊張感を持った作品を重ねてきた。この作品は、その流れの中でも、編成を絞った後の再出発を強く印象づける内容になっている。
今回の盤は1983年リリースのUK盤で、ラベルには「℗ 1975 Charisma Records Ltd」「Distributed by Virgin Records Ltd.」「Manufactured in the UK」とある。バックカバーにはRockfield Studiosで1975年6月9日から29日にかけて録音・ミックスされたこと、George PeckhamがMaster Roomでカットしたこと、そしてバンド自身がプロデュースしたことが記されている。
作品の位置づけ
『Godbluff』は、Van Der Graaf Generatorにとって1970年代中盤の重要作のひとつだ。前作までの流れを受けつつ、音の密度と演奏の切迫感が前面に出ている。オルガン、サックス、ベース、ドラム、ボーカルがぶつかり合うように進む作りで、同時代の英国プログレの中でも、YesやGenesisのような整った展開とはかなり違う性格を持っている。
その一方で、King Crimsonのような構築性や、アート・ロック寄りの鋭さと並べて語られることも多い。長尺曲を軸にしながら、演奏の隙間や急な展開をそのまま作品の形にしているところが、このバンドらしいところだ。
収録曲の印象
このアルバムは全4曲構成で、1曲ごとの比重が大きい。特に冒頭の「The Undercover Man」や、アルバムを象徴する「Scorched Earth」は、バンドの緊張感の強い演奏とピーター・ハミルの歌の重さがよく出ている。続く「Arrow」や「The Sleepwalkers」も、メロディを追うというより、曲全体の圧力で聴かせるタイプの内容だ。
代表曲としては「Scorched Earth」を挙げることが多い。アルバムの中でもリズムの動きがはっきりしていて、バンドの攻めた側面がまとまっている。派手なヒット曲というより、作品の輪郭を決める曲という印象だ。
演奏と録音
録音はRockfield Studios。70年代のUKロックではおなじみの場所だが、この作品ではスタジオの整った響きよりも、演奏の生々しさのほうが前に出ている。クレジットを見ると、バンド自身がプロデュースし、Pat Moranがエンジニアを担当している。各楽器の役割がくっきりしていて、特にハミルのボーカルとデイヴィッド・ジャクソンのサックス、ヒュー・バントンのオルガンの関係が印象に残る。
なお、この1983年UK盤は、同じ作品の別マトリクス盤にかなり近いものの、リムテキストが少し異なり、末尾が「manufactured in the UK」になっている。再発盤としては、ラベル表記の違いが確認できるタイプだ。
Van Der Graaf Generatorらしさ
このバンドは、同じプログレでも装飾を重ねる方向より、音数を絞って圧を作る方向に強みがある。『Godbluff』でも、その持ち味ははっきりしている。派手な展開より、低いテンションを保ったまま進み、要所で一気に崩しにかかる流れ。ピーター・ハミルの歌詞世界と、演奏の不安定さがそのまま作品の力になっている。
70年代UKロックの中でも、知的な構成と感情の生々しさが同居した作品として見られることが多い。Van Der Graaf Generatorの中でも、バンドの個性がかなり明確に出たアルバムのひとつだ。
まとめ
『Godbluff』は、1975年のVan Der Graaf Generatorをそのまま切り取ったような作品だ。Rockfieldでの録音、バンド自身のプロデュース、4曲のみの構成、そして張りつめた演奏。UKプログレの中でも、整った美しさよりも、ぶつかるような手触りが前に出ているアルバムとして記憶される1枚だ。
トラックリスト
- A1 – The Undercover Man (7:23)
- A2 – Scorched Earth (9:49)
- B1 – Arrow (9:45)
- B2 – The Sleepwalkers (10:30)
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Haken – Fauna (2023)
Haken『Fauna』について
Hakenは、ロンドンで2007年に結成されたイギリスのプログレッシブ・メタル・バンドだ。2010年の『Aquarius』、2011年の『Visions』でシーン内の存在感を強め、2013年の『The Mountain』で国際的な評価を広げた。その後は、より重心の低いサウンドへ進みながらも、複雑な構成や変拍子、鍵盤主体の展開を軸にした作品を重ねてきた。『Fauna』は、そうした流れの中で2023年に登場した通算7作目のアルバムである。
作品の位置づけ
『Fauna』は、バンドの初期にあったプログレ・ロック寄りの感触へ戻りつつ、近年の重い音像も保った作品として語られることが多い。『Affinity』『Vector』『Virus』で強めてきたメタリックなアプローチの延長線上にありながら、曲ごとの色分けや展開の切り替えには、Hakenらしい70年代プログレ由来の感触も残る。アーティストの歩みの中では、過去の要素を整理して現在形にまとめた一枚、という位置づけになっている。
また、2022年にキーボードのピーター・ジョーンズが再加入してからのアルバムでもある。鍵盤の動きが曲の輪郭を作る場面は多く、バンドのアレンジ面での変化を追ううえでも重要な作品だ。
音楽的な特徴
この作品では、プログレッシブ・メタルらしい緻密なリズム、急なセクション転換、長めの構成がありつつ、メロディの運びは比較的わかりやすい。ギターはリフで押し切る場面と、フレーズの切り返しで空気を変える場面の両方が目立つ。リズム隊も細かく動き、楽曲の推進力を支えている。鍵盤は単なる装飾ではなく、展開の切れ目をつなぐ役割を担っている印象だ。
同時代のプログレッシブ・メタルの中では、Dream Theater系の技巧性、Porcupine Tree以降の構成感、Leprousのような現代的な緊張感と比較されることがあるタイプだが、Hakenはその中でも曲調の切り替えと音色の整理がはっきりしている。『Fauna』でもその傾向は続いている。
曲について
『Fauna』はコンセプトを前面に押し出したアルバムではないが、各曲の役割が明確で、アルバム全体としてのまとまりがある。シングルとして先行した楽曲は作品の入口として機能しており、複雑さだけでなく、フックのある部分を見せる作りになっている。特に表題のイメージを反映した曲群は、タイトルどおり生物や自然の気配を連想させる構成で、音の切り替えにもその感覚が出ている。
盤の仕様
- 2023年リリースのブラック・ヴィニール盤
- 見開きジャケット仕様
- LPブックレット付き
- ランアウト部は手書きとスタンプの併用が見られる
まとめ
『Fauna』は、Hakenが持つ技巧性と、初期からのプログレ・ロック的な流れを改めて結び直した2023年作だ。重さだけに寄らず、鍵盤を含むアンサンブルの動きで聴かせる点が、このバンドらしさとしてよく出ている。『The Mountain』以降の多彩さ、『Affinity』以降の硬質さ、その両方を踏まえた作品として見ると、バンドの現在地がつかみやすい一枚である。
トラックリスト
- A1 – Taurus
- A2 – Nightingale
- B1 – The Alphabet Of Me
- B2 – Sempiternal Beings
- C1 – Beneath The White Rainbow
- C2 – Island In The Clouds
- C3 – Lovebite
- D1 – Elephants Never Forget
- D2 – Eyes Of Ebony
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Summerhill – Lowdown (1988)
Summerhill『Lowdown』について
『Lowdown』は、UKのオルタナティヴ・ロック/ポスト・パンク・バンド、Summerhillによる1988年の作品。フロントマンは元Snakes of ShakeのSeori Burnettで、80年代半ばから90年代半ばにかけて活動した4人組の流れを持つバンドだ。リリース元はDiabolo Recordsで、Demonグループのレーベルに属する盤として出ている。
このレコードは、1988年8月の第1週にHullのFairview Studiosで録音されたことがクレジットされている。ジャケット裏面とラベルにはいずれも1988年の表記があり、UK盤として発行された。ランアウトには両面ともスタンパー表記に加えて、手書きで「A PORKY PRIME CUT.」のエッチングが入っている。
作品の位置づけ
Summerhillは、英国のオルタナティヴ・ロックとポスト・パンクの文脈に置かれるバンドで、この『Lowdown』もその流れの中にある1枚。メンバー表記にはWilson N. Scott、Tom Crook、Michael Sturgis、Iain Shedden、Keith Gilles、Seori Burnettの名前が並ぶ。バンドの編成や活動時期から見ても、80年代後半のUKインディー周辺の空気をそのまま反映した作品と受け取れる。
ジャンル表記にはRock、Pop、Folk、World, & Countryが並び、スタイルにはAlternative Rock、Pop Rock、Country Rockが挙がっている。演奏面では、ロックの骨格に加えて、メロディ重視の作りやアコースティックな要素が見える盤として整理できる。
収録内容に関するメモ
この盤では『I’ve Found a Friend』の1分8秒のアコースティック・ヴァージョンが、クレジットなしでアルバム後半の5曲目として収録されている。こうした扱いは、当時のLPで見られるささやかな追加要素のひとつで、盤を通して聴くと曲順の中で自然に挟み込まれている。
同時代の空気
1988年という時期は、UKのギター・バンドがインディー・シーンの中で多様化していた時代。ポスト・パンクの緊張感を引きずりつつ、よりメロディックな方向へ寄せる流れも強かった。Summerhillのようなバンドは、その交差点にある存在として見えてくる。
Seori Burnettが前身バンドSnakes of Shakeから続く人物であることを踏まえると、『Lowdown』は単なる単発作ではなく、80年代英国インディーの文脈の中で積み上げられた活動の一部として捉えやすい。派手なヒットシングルを前面に出すタイプというより、アルバム全体の手触りで聴かれる作品の印象だ。
盤の情報
- オリジナルリリース年: 1988年
- 盤のリリース年: 1988年
- リリース国: UK
- レーベル: Diabolo Records
- 録音: Fairview Studios, Hull
- 録音時期: 1988年8月第1週
- ランアウト: 両面とも手書きで「A PORKY PRIME CUT.」のエッチングあり
まとめ
『Lowdown』は、1988年のUKインディー・ロックの中で、Summerhillというバンドの輪郭をそのまま示すアルバム。ポスト・パンク由来の感触と、メロディックなロックの要素が同居する1枚で、アコースティック・ヴァージョンの『I’ve Found a Friend』のような小さな仕掛けも含まれている。80年代後半の英国バンド作品として、当時の制作環境やレーベルの空気まで含めて見えてくる盤だ。
トラックリスト
- A1 – Rosebud (3:30)
- A2 – I’ll Keep You In Mind (3:45)
- A3 – Lately (2:50)
- A4 – Knew I Would Return (4:20)
- B1 – It’s Gonna Be Alright (2:55)
- B2 – Hold Back The Heartache (3:30)
- B3 – Can’t Stay (3:20)
- B4 – Say Goodbye (3:30)
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Harold Budd – The Serpent (In Quicksilver) (1981)
Harold Budd『The Serpent (In Quicksilver)』について
Harold Buddは、アメリカ・ロサンゼルス出身の作曲家/ピアニストで、ソロ作と共同作業を合わせて長く活動した人だ。ジャズの影響を持ちながらも、ピアノの響きを中心にした静かな音作りで知られている。Brian EnoのObscureレーベルで発表した『The Pavilion of Dreams』以来、アンビエント以後の文脈でも語られることが多い。
『The Serpent (In Quicksilver)』は1981年作品として位置づけられる。録音は1980年から1981年にかけて、Poiema、Concorde、Music Grinder、Speakeasyで行われた。オリジナルはCantil RecordsからCantil 181として出た作品で、2013年盤はAll Saints RecordsによるUK盤再発になる。
作品の内容
クレジット上のジャンルはElectronic、スタイルはAmbient。Harold Buddの作品らしく、前面に出るのはリズムよりも音の持続や余韻のほうだ。ピアノの打鍵がすぐに消えず、空間の中に残るような作りで、曲が進んでも大きく盛り上げるより、細かな音色の変化を積み重ねていく構成が目立つ。
この時期のBuddは、純粋なピアノ小品だけでなく、電子的な処理やスタジオの響きを取り込んだ作品でも知られている。『The Serpent (In Quicksilver)』も、その流れの中にある1枚として見るとわかりやすい。
1981年作、2013年盤の位置づけ
2013年のAll Saints盤は再発盤で、表記上もオリジナルの1981年作をもとにしている。ジャケットにはダウンロードカードが付き、フロントシュリンクにハイプステッカーが貼られている。盤としては、当時の作品を新しい流通で手に取りやすくした再提示という性格が強い。
オリジナル盤と比べると、2013年盤は発売元が異なり、販売形態にデジタル配布の要素が加わっている点が特徴だ。音楽そのものは1981年の録音を収めた内容で、作品の核はそのままに流通だけが更新された形になる。
Harold Buddの中での位置
Harold Buddのキャリアの中では、『The Pavilion of Dreams』のような初期の重要作のあとに続く時期の作品として見られる。ピアノを軸にしながらも、より広い空間処理や電子音響の手触りを含む作品群の一つで、後年のアンビエント作品につながる中間地点のような存在だ。
同時代の周辺で言えば、Brian Enoや、空間性を重視するアンビエントの系譜と並べて語られることが多い。とはいえ、Buddの音はあくまでピアノの打鍵と残響が中心で、電子音そのものを前景化するタイプとは少し違う。
まとめ
『The Serpent (In Quicksilver)』は、1981年に録音・発表されたHarold Buddの作品を、2013年にAll Saints RecordsがUK盤として再発したものだ。静かなピアノ、空間の響き、最小限の展開という要素が並ぶ1枚で、Buddの作品世界を知るうえで重要な位置にある。
トラックリスト
- A1 – Afar (2:29)
- A2 – Wanderer (4:12)
- A3 – Rub With Ashes (1:54)
- B1 – Children On The Hill (5:02)
- B2 – Widows Charm (1:57)
- B3 – The Serpent (In Quicksilver) (4:03)