BAP – Vun Drinne Noh Drusse (1982)
BAP『Vun Drinne Noh Drusse』について
BAPは、ケルン出身のドイツ語ロック・バンドだ。ケルシュ方言を前面に出した作品で知られ、この『Vun Drinne Noh Drusse』は1982年の作品として扱われている。タイトルはケルシュ語で「内側から外側へ」といった意味合いの表現で、バンドの言語感覚と土地性がそのまま出た一枚だ。
作品としては、BAPがローカルな方言ロックの枠を越えて、ドイツのロック・シーンで存在感を広げていく時期の重要作に位置づけられる。Wikipediaや公式情報でも、BAPは“German Kölschrock group from Cologne”とされていて、まさにその特徴がよく表れたアルバムになっている。
作品の位置づけ
1980年代前半のドイツ語ロックは、英語圏のロックの影響を受けつつも、自分たちの言葉で歌う流れが強まっていた時期だ。BAPはその中で、ケルシュ方言を使いながらもバンド・サウンドをしっかり押し出し、地域色とロックの推進力を両立させてきたグループとして知られている。このアルバムも、その方向性をはっきり示す作品のひとつといえる。
代表曲やヒット曲としては、BAP全体では「Verdamp lang her」などがよく知られているが、この作品もその後のバンドの評価を支える時期の録音として見ることができる。
盤の内容と仕様
- レーベル表記: ℗ 1982 Musikproduktion West
- リリース国: Germany
- 盤のリリース年: 1984
- 仕様: ゲートフォールド・スリーブ
- 付属品: 12ページのブックレット
- 特典: 「BAP」と書かれた青地に白文字のポータブル・ステッカー
- ランアウト: スタンプ打ち
- ラベル表記: DMMあり
この盤は1982年作品の1984年プレスで、オリジナル時点のリリースとは別の版だ。収録内容そのものは作品として同じでも、ジャケット仕様やレーベル表記、DMM表記の有無などで版の違いが出るタイプのリリースになっている。提示情報では、DMM表記のないほぼ同一仕様の盤も存在する。
サウンドの印象
実際に針を落としたときの聴感としては、バンドの輪郭がはっきりしたロック・サウンドが中心だ。ギターの押し出し、リズムの前進感、そして母語であるケルシュ方言の発音が一体になって、歌の内容を言葉のまま前へ運ぶタイプの作りになっている。英米ロックの直系というより、土地の空気を残したままバンドとしてのまとまりを出している点がこの時期のBAPらしいところだ。
また、ゲートフォールド仕様と12ページのブックレット付きという点からも、単なる音源だけでなく、歌詞や世界観をまとめて見せる意図が感じられる。方言で歌うバンドでは、この手の付属資料が作品理解に結びつきやすい。
同時代の文脈
BAPは、ドイツ語圏のロックにおける地域言語の使い方という点で、SillyやPuhdysのような東西ドイツのロック・グループとも比較されることがあるが、BAPはより明確にケルシュ方言を軸にしている。バンド名義のロックでありながら、都市のローカル感を保ったまま広い聴き手へ届く形を作っていたのが特徴だ。
まとめ
『Vun Drinne Noh Drusse』は、BAPがケルンの方言ロックを代表する存在として歩んでいた時期を示す一枚だ。1982年作品としてのオリジナル性を持ちつつ、ここで紹介している盤は1984年プレスならではの仕様も備えている。ジャケット、ブックレット、ステッカーまで含めて、当時のBAPのパッケージングを確認できるリリースになっている。
トラックリスト
- A1 – Kristallnaach (4:56)
- A2 – Wellenreiter (2:20)
- A3 – Zehnter Juni (4:21)
- A4 – Wie ‘Ne Stein (4:26)
- A5 – Do Kanns Zaubere (4:34)
- B1 – Nit Für Kooche (Teil 1) (1:40)
- B2 – Nit Für Kooche (Teil 2) (4:03)
- B3 – Ahn ‘Ner Leitplank (4:14)
- B4 – Wenn Et Bedde Sich Lohne Däät (4:32)
- B5 – Eins Für Carmen Un En Insel (2:53)
- B6 – Koot Vüür Aach (3:29)
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A Bolha – Um Passo A Frente (1973)
A Bolha『Um Passo A Frente』について
『Um Passo A Frente』は、ブラジルのロック・バンド、A Bolhaが1973年に発表した1stアルバム。サイケデリック・ロック、プログレッシブ・ロック、ハード・ロック、ロックンロールの要素を含む作品として知られている。バンド名のA Bolhaは「The Bubble」という意味で、もともとは1965年にThe Bubblesとして活動を始めたグループだった。
2010年にポルトガルで出たこの盤は、オリジナルの1973年作を後年に再び聴ける形にしたもの。作品そのものは、A Bolhaにとって初のLPという位置づけになる。
バンドの背景
A Bolhaは、1965年にCesar LadeiraとRenato Ladeiraを中心に結成された。初期はカバー曲を演奏しており、1966年にはThe Rolling StonesやLos Shakersの楽曲を含むシングルをリリースしている。1970年にA Bolhaへ改名し、Renato Ladeira(キーボード)、Pedro Lima(ギター)、Arnaldo Brandão(ベース)、Gustavo Schroeter(ドラム)という編成になった。
その後、1971年にシングル『Sem Nada』を発表し、1973年に『Um Passo A Frente』を録音・リリース。続くLPは1977年の『É Proibido Fumar』になる。バンドはのちに長い空白を経て、2007年にCD『É so curtir』も出している。ブラジルのGal Costa、Erasmo Carlos、Caetano Veloso、Raul Seixasらと共演歴がある点も、この時代のブラジル・ロックの現場感を伝える。
作品の位置づけ
『Um Passo A Frente』は、A Bolhaがカバー中心の活動から、自分たちのオリジナルなロック表現へ踏み出した時期の記録として見える。タイトルどおり、バンドとして一歩前へ進んだ段階の作品、という受け止め方がしやすい。
1970年代前半のブラジル・ロック周辺では、英米のロックの影響を受けつつも、独自の感触を持つグループがいくつも出ていた。A Bolhaもその流れの中に置けるバンドで、同時代のブラジル勢を語るときに名前が挙がることがある。
盤としての2010年盤
この2010年盤は、オリジナルの1973年作を後年に再発したもの。したがって、作品の内容は1973年当時の録音を基準に考えるのが自然だろう。再発盤としては、オリジナル盤を探しにくい状況で作品に触れられる点に意味がある。
聴きどころとして見えやすい点
実際に耳を通すと、ギターを軸にしたロックの骨格の上で、キーボードが前に出る場面がある。演奏は直線的に進むだけでなく、曲ごとに展開をつけるタイプの作りになっている。ハードな手触り、サイケデリックな揺れ、プログレ的な構成意識が同居している点が、この時期のブラジル・ロックらしいところ。
歌ものとしての押し出しだけでなく、バンド演奏を聴かせる場面が目立つタイプのアルバムとして受け取れる。1960年代のカバー中心の経歴を踏まえると、演奏力の土台がしっかりしたうえで、オリジナル曲へ移った流れも想像しやすい。
関連する文脈
A Bolhaは、ブラジルのサイケデリック/プログレ/ハードロック周辺を語る際に触れられるバンドのひとつ。英米ロックの影響を起点にしながら、ブラジル独自の1970年代ロック史の中へ入っていく存在として見られることが多い。
『Um Passo A Frente』は、その入口としてもわかりやすい1枚。バンドの初期からの変化、1970年代前半の空気、そしてA Bolhaがオリジナル作品へ向かう流れがまとまっている。
トラックリスト
- A1 – Um Passo A Frente
- A2 – Razão De Existir
- A3 – Bye My Friend
- A4 – Epitafio
- A5 – Sem Nada (Bonus Track, Single Top Tape 1971)
- B1 – Tempos Constantes
- B2 – A Esfera
- B3 – Nesse Rock Forever
- B4 – 18:30 -Parte 1/Os Memadecons Cantavam Em Coro Chôôôô (Bonus Track, Single 1971)
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Fairport Convention – Moat On The Ledge (Live At Broughton Castle, August ’81) (1982)
Fairport Convention『Moat On The Ledge (Live At Broughton Castle, August ’81)』について
Fairport Conventionは、1967年に結成されたイングランドのフォーク・ロック・バンド。英米のフォーク・ソングをロック・バンド編成で鳴らす流れの中でも、かなり早い段階から存在感を示したグループで、このライブ盤はその長い活動の中でも、1981年の再結成公演を記録した作品として位置づけられる。タイトルどおり、場所はオックスフォードシャー州バナベリー近郊のBroughton Castle。バンドの歴史と、後のCropredy Festivalにつながる出来事をそのまま残した記録盤という性格が強い。
作品の成り立ち
収録は1981年8月15日。1979年の解散後、最初の再結集となった公演で、もともとは一度きりのイベントとして行われたものだったという。その後、この再結成公演は翌年も繰り返され、さらに毎年続く形になっていき、やがてCropredy Festivalへ発展していく。つまりこのレコードは、単なるライブ・アルバムというより、フェアポート・コンベンションの再始動を示す現場記録でもある。
録音後はWoodworm Studiosでミックスされており、ジャケットはブルー系の色調。カナダ盤として出ているのもこの情報の特徴で、同じタイトルでもレーベル表記やラベルの意匠に差がある版が確認されている。
バンドの文脈
Fairport Conventionといえば、イギリスのフォークを基盤にしながら、ロックの編成と演奏感を持ち込んだ代表的な存在。Sandy Denny、Richard Thompson、Dave Swarbrick、Dave Pegg、Simon Nicol、Dave Mattacksといった名前が並ぶだけでも、このバンドの履歴の厚みが見えてくる。メンバーの入れ替わりが多いグループだが、再結成の場でその系譜をまとめて確かめられるのがこの作品の面白さだろう。
同時代の英国フォーク・ロックの流れで見ると、Steeleye SpanやPentangleと並べて語られることが多いバンドだが、Fairport Conventionはより長く活動を重ね、ライブの現場でバンドの歴史そのものを更新していった印象がある。この盤は、その過程のひと区切りにあたる。
音の印象
ライブ盤なので、スタジオ作品のような整った音像というより、会場の空気感と演奏の流れが前に出るタイプの記録だ。アコースティック楽器の響きと、ロック・バンドとしての厚みが同居するのがFairport Conventionらしいところで、曲ごとの輪郭がはっきりしていく。録音会場が城の前ということもあり、屋外の開放感と、フォーク・ソングの素朴な輪郭がそのまま残っている。
実際に聴くと、バンドの歴史を知っているほど、各メンバーの役割が見えやすい。Richard Thompsonのギター、Dave Peggのベース、Dave Swarbrickのフィドルなど、各パートが曲の推進力として機能しているのがわかる。再結成直後の演奏ということで、過去曲の再現に終わらず、バンドの現在形を見せようとする意識も感じられる。
収録曲について
この作品はバンドの代表曲群をライブでまとめて聴けるタイプの一枚として扱える。Fairport Conventionのライブでは、伝統曲の流れとオリジナル曲の流れが地続きになりやすく、そこがこのバンドの持ち味でもある。特定の一曲だけが突出するというより、セット全体でバンドの履歴が立ち上がる構成だ。
代表曲として知られる「Matty Groves」や「Who Knows Where the Time Goes?」など、Fairport Conventionを象徴する曲群と結びつけて聴かれることが多い系統の作品でもある。歌ものの印象と、インストゥルメンタルの切り替えが自然で、ライブならではの進行が見えやすい。
この盤の位置づけ
『Moat On The Ledge』は、1970年代末の空白を経て、Fairport Conventionが再び公の場に立った瞬間を記録した作品として見やすい。単なる懐古ではなく、このあと続いていく再結成の流れの出発点に置かれる一枚だ。バンドの歴史を追ううえでは、スタジオ盤と並んで押さえたいライブ記録という位置づけになる。
カナダ盤としての本作は、1982年のリリース当時のかたちを伝える資料としても意味がある。Fairport Conventionの歩みを、再結成の現場から見せるライブ盤。そういう性格の作品だ。
トラックリスト
- A1 – Walk Awhile (4:08)
- A2 – Country Pie (3:23)
- A3 – Rosie (4:15)
- A4 – Matty Groves (9:30)
- B1 – Both Sides Now (3:25)
- B2 – Poor Will And The Hangman (5:37)
- B3 – The Brilliancy Medley / Cherokee Shuffle (3:27)
- B4 – Woman Or A Man (3:20)
- B5 – High School Confidential (4:20)
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Goat – New Games / Rhythm & Sound (2018)
Goat『New Games / Rhythm & Sound』について
Goatは大阪を拠点に活動する実験的ロック・バンドで、変拍子の多用や反復、細かなリズムの組み立てで知られるグループである。2024年に日本盤として出た本作『New Games / Rhythm & Sound』は、2013年作『New Games』と2015年作『Rhythm & Sound』からの楽曲をまとめたコンピレーションで、Goatの初期から中期にかけての流れを一枚で追える内容になっている。
作品の位置づけ
2018年の作品として整理されている音源を軸にしつつ、収録曲自体はそれ以前のアルバム由来である。つまり、Goatの新作というよりは、バンドの既発曲を改めてまとめた編集盤という位置づけになる。作品全体を通して、ミニマルな反復と生演奏の緊張感が前に出ていて、電子音的な処理とバンド・アンサンブルの硬い噛み合わせがはっきりしている。
収録内容の流れ
ライナーノートにある通り、A面のA1、A2は『New Games』由来、B面のB1からB3は『Rhythm & Sound』由来である。盤の構成としても、前半と後半で作品の出自が分かれていて、Goatの時期ごとの違いを聴き比べやすい。どちらの曲も、ギターやドラムのフレーズを短く区切って積み上げていく手つきが共通していて、Math Rock、Experimental、Minimalの要素がそのまま演奏の設計に出ている。
聴きどころ
実際に聴くと、派手な展開で押すタイプではなく、同じ動きを少しずつずらしながら進む曲作りが目立つ。音数は多くないのに、各パートの噛み合わせで密度が出るところがGoatらしい。ロックの編成を使いながら、リズムの置き方や間の取り方にかなり意識が向いている印象で、演奏の精度がそのまま曲の輪郭になっている。
同時代の文脈
大阪発の実験的バンドという点では、日本のアンダーグラウンド・シーンにおける変則的なロックや反復音楽の流れの中で語られることが多いグループである。海外のミニマル・ロックやポスト・ハードコア、数学的な構成感を持つバンドとも比較されやすいが、Goatはその中でも演奏のきっちりした輪郭と、打楽器的な推進力が前に出るタイプに見える。
代表曲について
本作は編集盤なので、特定のヒット曲を押し出す形式ではない。ただし、『New Games』と『Rhythm & Sound』の収録曲は、Goatの初期から中期の特徴を示す重要な音源として位置づけられるだろう。バンドの入口としても、既発音源の整理としても、活動の流れを確認しやすい一枚である。
盤としての特徴
2024年の日本盤で、ハイプステッカー付きのリリースである。オリジナルの各作品から曲を抜き出して再構成した内容なので、単独作というよりは、Goatの既発音源の性格をまとめたアーカイブ的な性格が強い。2013年と2015年の素材を、2018年の編集単位として束ね、2024年の盤として流通した形である。
まとめ
『New Games / Rhythm & Sound』は、Goatの持つ反復、緊張感、精密なアンサンブルを、時期の異なる楽曲で見渡せるコンピレーションである。大阪の実験的バンドとしての輪郭が、そのまま音の作り方に出ている一枚だと言える。
トラックリスト
- A1 – New Games (9:28)
- A2 – Std (12:31)
- B1 – Solid Eye (10:43)
- B2 – Ghosts Part 1 (3:40)
- B3 – On Fire (8:10)
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Hatfield And The North – The Rotters’ Club = ロッタース・クラブ (1975)
Hatfield And The North『The Rotters’ Club』について
Hatfield And The Northは、カンタベリー・シーンを代表するイングランドのプログレッシブ・ロック・バンドで、ジャズの要素や実験性を取り込んだ独特の演奏で知られる。『The Rotters’ Club』はそのセカンド・アルバムで、オリジナルは1975年3月7日にUKでリリースされた作品。ここで取り上げるのは日本盤で、1978年発売、邦題は『ロッタース・クラブ』。オビとライナーノーツ付きのシングル・ジャケット仕様で、国内向けの体裁になっている。
バンドの位置づけ
Hatfield And The Northは1972年に結成され、活動期は主に1972年から1975年まで。デイヴ・スチュワート、リチャード・シンクレア、ピップ・パイル、フィル・ミラーらを中心に、鍵盤とギター、ベース、ドラムが密接に絡むアンサンブルを築いた。カンタベリー・シーンの中でも、CaravanやSoft Machine周辺と並べて語られることが多いバンドで、ジャズ・ロック寄りの緻密な演奏と、英国ロックらしいユーモア感覚の同居が持ち味として挙げられる。
この2作目は、バンドの短い活動期間の中でも重要な位置にあるアルバムで、スタジオでの完成度を押し出した作品として扱われている。1975年1月から2月にかけて、サットンのSaturn Studioで録音・ミックスされている。
サウンドの特徴
『The Rotters’ Club』は、ジャズ、ロック、アート・ロック、ジャズ・ロック、プログレッシブ・ロックの要素が、演奏の中で細かく行き来する内容。派手に前へ出るタイプのロックではなく、楽器同士の受け渡しや、拍のずらし方、メロディの置き方に耳が向く作品だといえる。カンタベリー系らしい、知的な組み立てと軽妙な空気感が同居する1枚。
実際に聴くと、各パートが「主役」を奪い合うのではなく、短いフレーズをつなげながら曲の形を作っていく感触が強い。キーボードとベース、ドラムの会話が細かく、フレーズの切り替えも多い。音の密度はあるが、演奏の輪郭が比較的見えやすいのもこのバンドらしいところ。
代表曲として触れられる曲
このアルバムでは、〈Share It〉や〈The Yes No Interlude〉、組曲的な流れを持つ〈Mumps〉などが知られる。中でも〈Mumps〉は長めの構成で、Hatfield And The Northのアンサンブルの持ち味が出やすい曲として挙げられることが多い。短い断片をつなぐような作りと、演奏の切り替えの細かさが印象に残る。
日本盤について
今回の日本盤は1978年のリリースで、オリジナル盤から少し時間を置いてからの登場。盤面のクレジットには「℗ Virgin Records Ltd 1975」「© Virgin Music (Publishers) Ltd 1975」「Ⓚ Victor Musical Industries, Inc. ℗ ’78」とあり、作品自体は1975年作として扱われている。ライナーノーツの日付は77.12.29。ジャケットはシングル仕様で、当時の国内盤らしい作りになっている。
同時代の文脈
1970年代半ばの英国プログレは、大作志向やシンフォニックな流れだけでなく、カンタベリー・シーンのようにジャズ寄りの感覚を持つグループも並走していた。Hatfield And The Northは、その中でも演奏の精密さと遊び心が同時に見えるバンドとして位置づけられる。Soft Machine、Caravan、National Healthといった名前と並べて語られることが多いのも納得しやすい。
まとめ
『The Rotters’ Club』は、Hatfield And The Northの2作目として、短命ながら濃い活動期の到達点のひとつになっているアルバム。1975年のオリジナル録音をベースに、日本では1978年に発売された盤で、国内のライナーやオビ付きで流通した1枚。カンタベリー・シーン、ジャズ・ロック、プログレッシブ・ロックの交点にある作品として、バンドの輪郭をつかむうえで重要なアルバムだといえる。
トラックリスト
- A1 – Share It = シェアー・イット (3:02)
- A2 – Lounging There Trying = ラウンジング・ゼア・トライング (3:10)
- A3 – (Big) John Wayne Socks Psychology On The Jaw = ビッグ・ジョン・ウェイン・ソックス・サイコロジー・オン・ザ・ジョウ (0:46)
- A4 – Chaos At The Greasy Spoon = カオス・アット・ザ・グリージィ・スプーン (0:30)
- A5 – The Yes No Interlude = ザ・イエス・ノー・インタールード (7:02)
- A6 – Fitter Stoke Has A Bath = フィッター・ストーク・ハズ・ア・バス (7:38)
- A7 – Didn’t Matter Anyway = ディドゥント・マター・エニウェイ (3:03)
- B1 – Underdub = アンダーダブ (3:55)
- Mumps = マンプス
関連動画
- Hatfield and The North ► Mumps [HQ Audio] The Rotters’ Club, 1975
- Share It
- Lounging There Trying
- [Big] John Wayne Socks Psychology On The Jaw
- Chaos At The Greasy Spoon
- The Yes No Interlude
- Fitter Stoke Has A Bath
- Didn’t Matter Anyway
- Under Dub
- Mumps: Your Majesty Is Like A Cream Doughnut (Quiet) / Lumps / Prenut / Your Majesty Is Like A…
David Kilgour & The Heavy Eights – Bobbie’s A Girl (2019)
David Kilgour & The Heavy Eights『Bobbie’s A Girl』について
『Bobbie’s A Girl』は、ニュージーランドのミュージシャン、David KilgourがThe Heavy Eightsを従えて2019年に発表したアルバムだ。リリース国もニュージーランドで、紫色のヴァイナル盤として出ている。録音、ミックス、マスタリングは2015年から2018年にかけて行われた。
David Kilgourは、ニュージーランドのロック史の中で長く活動を続けてきた人物で、The Heavy Eightsとの組み合わせでは、バンドとしてのまとまりを保ちながらも、彼自身の作曲やギターの感触が前に出る構図になっている。ロックを基盤にしつつ、サイケデリック・ロックとフォーク・ロックの要素が見える一枚だ。
作品の輪郭
このアルバムは、David Kilgourのソングライティングを軸に、Alan Haig、Tony de Raad、Tane Tokona、Thomas Bellを含む編成で形になっている。演奏の輪郭は比較的はっきりしていて、ギター、リズム、歌が同じ画面の中で並ぶタイプの作品に見える。派手な装飾で押すというより、曲の流れとバンドの呼吸で聴かせる作りだ。
2015年から2018年までの長い期間をかけて仕上げられている点も、この作品の性格を示している。短期間で勢いよく固めたアルバムというより、時間をかけて音像や曲順を整えた印象がある。
音の印象
David Kilgourの作品は、ニュージーランドのギターロックやアンダーグラウンド・ポップの文脈で語られることが多い。The Heavy Eightsとの共演でも、その系譜は見えやすい。歪みを強く押し出す場面より、ギターのフレーズの重なりや、歌の置き方で引っぱるタイプのサウンドに近い。
サイケデリック・ロック的な感触は、音の揺れや反復の中に出やすく、フォーク・ロック的な面は、曲そのものの骨格や語り口に表れているような作品だ。ニュージーランドの同時代のインディー/ギターロックと比べても、過度に現代的な加工へ寄せず、演奏の手触りを残した作りが特徴になっている。
盤の仕様
- 2019年リリースのニュージーランド盤
- 紫色のヴァイナル仕様
- フル・アルバムのダウンロードカード付き
- ランアウトはエッチング
同年に出た盤としては、作品の初出時点の仕様を反映したものと見てよさそうだ。カラー盤とダウンロードカード付きという点からも、アナログとデジタルの両方で楽しむ前提のリリースになっている。
位置づけ
David Kilgourにとっては、長く続くソロ/バンド活動の中で、近年のバンド編成によるアルバムの一つという位置づけになる。個人名義の作家性を保ちながら、The Heavy Eightsという演奏集団の色も入った作品だ。ニュージーランドのロックが持つ、内省とギター・バンド感の両方が見えやすい一枚として捉えられる。
曲単位の代表性やヒット曲に触れるよりも、アルバム全体の流れで聴くタイプの作品だと言えそうだ。ロック、サイケデリック・ロック、フォーク・ロックの交点に置かれた、David Kilgourらしいギター・アルバムという印象でまとまっている。
トラックリスト
- A1 – Entrance
- A2 – Smoke You Right Out Of Here
- A3 – Crawler
- A4 – Threads
- A5 – Coming In From Nowhere Now
- B1 – Spotlight
- B2 – Swan Loop
- B3 – If You Were Here And I Was There
- B4 – Looks Like I’m Running Out
- B5 – Ngapara
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The Wild Swans – Bringing Home The Ashes (1988)
The Wild Swans『Bringing Home The Ashes』について
The Wild Swansは、1980年にリヴァプールで結成されたポストパンク・バンド。Paul Simpsonを中心に動きながら、Ian Broudie、Ian McNabb、Chris Sharrock、Les Pattinsonら、後にそれぞれ別の場面でも名前が見えてくるメンバーが関わったグループとしても知られている。
『Bringing Home The Ashes』は、1988年に出たデビュー・アルバム。タイトル曲「Bringing Home The Ashes」をはじめ、「Whirlpool Heart」「The Worst Year Of My Life」などを収録した作品で、The Wild Swansの初期像をまとめて確認できる1枚になっている。
作品の位置づけ
1980年代後半のUKロック/ニュー・ウェイヴの流れの中に置くと、このアルバムはポストパンクの出自を残しつつ、曲作りを前面に出した内容として捉えやすい。The Wild Swansは活動の継続性よりも、メンバーの移り変わりや断続的な存在感で語られることも多く、その中で『Bringing Home The Ashes』は最初のまとまった記録という意味を持つ。
同時代のリヴァプール周辺のバンド群、たとえばThe Teardrop ExplodesやEcho & the Bunnymen、あるいは後に別の形で広く知られることになるメンバーの経歴を思うと、このアルバムにも当時のUKインディー/ニュー・ウェイヴの空気がそのまま残っている。とはいえ、単に地域性だけで片づく作品ではなく、Paul Simpsonのバンドとしての輪郭が見えやすい内容でもある。
収録曲と注目点
タイトル曲「Bringing Home The Ashes」は、この作品の顔として扱われることが多い。加えて「Whirlpool Heart」「The Worst Year Of My Life」もアルバムの中心に置かれている曲で、作品説明でも名前が挙がる定番曲になっている。
曲名だけを追っても、感情の起伏や日常の摩擦をそのまま切り取るような作りが見えてくる。派手な装飾より、楽曲単位の輪郭で聴かせるタイプのアルバムとして理解しやすい。
2023年盤について
今回の盤は、2023年リリースのオランダ盤。Music On Vinylによる180グラム仕様のオーディオファイル・ヴァイナルで、インサート付き。さらに、1000枚限定の個別番号入り、トランスルーセント・グリーン・カラー・ヴァイナルという仕様になっている。
オリジナルの1988年盤と比べると、作品そのものは同じデビュー・アルバムだが、2023年盤はアナログ再発としての体裁がはっきりしている。重量盤、インサート、限定カラーヴァイナルというパッケージ面の違いが大きい。
メンバーについて
クレジットに挙がる名前には、Ian Broudie、Ian McNabb、Chris Sharrock、Les Pattinson、Paul Simpson、Rick Maymi、Jeremy Kellyなどが並ぶ。関わった顔ぶれの広さは、このバンドが単独の固定メンバーだけで語りにくいことも示している。
まとめ
『Bringing Home The Ashes』は、The Wild Swansのデビュー作として、1980年代UKニュー・ウェイヴ/ポストパンクの文脈に置きやすいアルバム。2023年盤はMusic On Vinylの再発仕様で、限定カラー盤としての存在感もある。作品の核は1988年のデビュー・アルバムにあり、その輪郭を現在のアナログ盤で改めて確認できる一枚、という位置づけになる。
トラックリスト
- A1 – Young Manhood (3:51)
- A2 – Bible Dreams (3:17)
- A3 – Bitterness (3:39)
- A4 – Archangels (3:22)
- A5 – Northern England (3:29)
- B1 – Whirlpool Heart (3:00)
- B2 – Bringing Home The Ashes (3:49)
- B3 – Mythical Beast (3:15)
- B4 – Now And Forever (3:09)
- B5 – The Worst Year Of My Life (4:18)
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Renaissance – Prologue (1972)
Renaissance『Prologue』について
『Prologue』は、Renaissanceが1972年に発表した3作目のアルバムだ。イギリス・ロンドンで始まったバンドが、メンバーを大きく入れ替えながら、シンフォニック・ロックとプログレッシブ・ロックの方向へ進んでいく途中の作品にあたる。録音は1972年6月から7月にかけてロンドンのNova Sound Studiosで行われ、Capitol Recordsからリリースされた。
この時点のRenaissanceは、初期メンバー中心の編成ではなくなっている。Keith RelfやJim McCartyの名前はバンドの出発点として重要だが、『Prologue』では新しい顔ぶれが前に出る。のちに長くバンドを支えるAnnie Haslamが参加するのも、この時期以降の流れとして大きい。
作品の位置づけ
『Prologue』は、Renaissanceが初期のバンド像から、より組曲的でクラシック音楽寄りの構成を持つグループへ寄っていく過程を示す一枚だ。次作以降に続く、Haslamを中心とした黄金期への橋渡しという見方ができる。バンド史の中では、編成変化の後に新しい方向性を形にした時期の記録として重要だ。
サウンドと内容
実際に聴くと、ギター、キーボード、ベース、ドラムが前に出るロックの土台の上で、曲の展開に余白を持たせた作りが目立つ。演奏の主張はあるが、単純に音数で押すタイプではなく、パートごとの受け渡しで進んでいく場面が多い。プログレッシブ・ロックの文脈で語られるのはそのためだろう。
同時代の英国プログレ勢、たとえばYesやGenesis、Camelのようなバンドと並べて語られることがあるが、Renaissanceは女性ヴォーカルを軸にした点で少し輪郭が違う。『Prologue』でもその後の代表作につながる特徴が見え始める。
ヒット曲・代表曲について
このアルバムは、Renaissanceの中でもシングルヒットで知られる時期より前の作品だ。のちに1978年の『A Song for All Seasons』からの「Northern Lights」でUKトップ10入りするが、『Prologue』はそうした広い知名度の前段階にある。代表曲集というより、バンドの方向性を固めていく途中のアルバムとして捉えやすい。
アナログ盤としての情報
このUS盤は、Winchester, VAプレスの個体だ。ラベル表記にはCapitolの社名表記があり、1972年当時のキャピトル盤らしい仕様になっている。記載上は℗ 1972 Capitol Records, Inc.、Nova Sound Studiosでの録音、そしてMick Parsonsへの献辞が確認できる。
まとめ
『Prologue』は、Renaissanceの初期から中期へつながる変化が見える作品だ。メンバー交代のあとに、バンドの持ち味をどう組み立て直したかという点がはっきり出ている。シンフォニック・ロック、プログレッシブ・ロックの流れを追ううえで、1972年という時点の空気がそのまま入った一枚と言える。
トラックリスト
- A1 – Prologue (5:39)
- A2 – Kiev (7:39)
- A3 – Sounds Of The Sea (7:09)
- B1 – Spare Some Love (5:05)
- B2 – Bound For Infinity (4:17)
- B3 – Rajah Kahn (11:14)
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Jimmy Webb – Angel Heart (1982)
Jimmy Webb『Angel Heart』について
『Angel Heart』は、アメリカのソングライター、Jimmy Webbが1982年に発表した作品。ジャズやロックの文脈でも語られることの多い作曲家というより、ポップスの作り手としての顔が前に出た1枚で、ここでは歌ものとしてのJimmy Webbをそのまま聴ける内容になっている。
Jimmy Webbは、1946年8月15日生まれ、オクラホマ州エルク・シティ出身のアメリカ人作曲家。Glen CampbellやRichard Harris、The 5th Dimensionなど、さまざまな歌い手に曲を書いてきた人物で、ポップ・ミュージックの定番曲を数多く生み出したことで知られる。この『Angel Heart』は、そうした作家としてのキャリアの流れの中にある1982年の作品で、本人の歌声で曲を聴ける点が大きい。
作品の位置づけ
Jimmy Webbの仕事は、他者に提供する楽曲で広く知られている一方、自身の名義でもいくつかのアルバムを残している。『Angel Heart』は、その中でも1980年代初頭の時期に出た作品として見ることができる。作曲家としての緻密なメロディ感や、言葉を置く位置のはっきりした作りが、本人の歌唱を通じて見えやすい1枚という印象につながる。
同時代のポップ・ヴォーカル作品と並べると、派手なアレンジで押すタイプというより、曲そのものと歌の運びを軸にした作りが目に入る。ソングライターが自作を歌うアルバムとして、作品の重心はかなり明確だ。
内容の印象
ジャンル表記はPop、スタイルはVocal。タイトルどおり歌を中心に据えた作品で、Jimmy Webbらしい作曲の輪郭をそのまま味わえる。聴きどころは、旋律の流れと歌詞の運びが自然に結びついているところ。ヒット曲を前面に出したベスト盤的な構成ではなく、アルバムとして曲を追うタイプの作品として受け取れる。
実際に聴いた感覚として書くなら、曲ごとの表情を大きく変えながらも、書き手としての視点が最後までぶれにくい。メロディの置き方、フレーズの区切り、歌の語り口に、作曲家本人ならではの癖が出る。
Jimmy Webbという名前とのつながり
Jimmy Webbの代表的な楽曲としては、Glen Campbellが歌った「Wichita Lineman」「By the Time I Get to Phoenix」「Galveston」などがよく知られている。そうしたソングライターとしての印象を持っていると、『Angel Heart』は「他人に書いた曲を書く人」ではなく、「自分の声で曲をどう置くか」を見せる作品として聴こえてくる。
作曲家としての実績が先に語られる人だけに、歌うアルバムではメロディの設計そのものが前景化するのが面白いところ。1982年という時期の作品としても、彼の作家性を確認できる位置づけにある。
日本盤について
このレコードは日本リリースの盤。作品自体は1982年のものとして扱える。日本で流通した盤としては、当時の国内仕様で聴かれた可能性がある一方、作品の核はJimmy Webb本人の楽曲と歌唱にある。
まとめ
『Angel Heart』は、Jimmy Webbという大物ソングライターの作家性を、本人の歌でたどれる1982年のポップ・ヴォーカル作品。ヒット曲の再演ではなく、アルバム単位で彼のメロディ感と語り口を追うタイプの内容として受け止めやすい。作曲家としてのキャリアを知っているほど、曲の置き方や歌の運びに目がいく1枚だ。
トラックリスト
- A1 – Angel Heart (3:23)
- A2 – God’s Gift (3:51)
- A3 – One Of The Few (4:27)
- A4 – Scissors Cut (4:41)
- A5 – Work For A Dollar (5:32)
- B1 – His World (4:33)
- B2 – Our Movie (3:51)
- B3 – Nasty Love (4:26)
- B4 – In Cars (3:33)
- B5 – Old Wing Mouth (3:48)
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Javier Solís – Sus Grandes Grandes Hits (1978)
Javier Solís『Sus Grandes Grandes Hits』について
Javier Solísは、メキシコを代表する歌手のひとりで、boleroとrancheraを行き来する歌唱で知られる人物だ。俳優としても活動しており、1960年代のメキシコ音楽と映画をつなぐ存在でもある。『Sus Grandes Grandes Hits』は、そのJavier Solísの代表曲をまとめたコンピレーション盤として捉えやすい作品で、1978年にメキシコでリリースされている。
Javier Solísは1931年生まれ、1966年に34歳で死去しているため、1978年盤は本人の没後に出た編集盤という位置づけになる。オリジナルの活動期を直接追うアルバムではなく、すでに広く知られていた歌声をまとめて聴くための一枚という性格が強い。
Javier Solísという歌手の輪郭
本名はGabriel Siria Levario。若いころから歌の競技会に出場し、のちにレコード契約を結んで録音活動を始めた。1950年代後半にはアメリカや中南米でも評価を広げ、bolero-rancheraと呼ばれる新しい歌い方の先駆けのひとりとして扱われている。
この時代のメキシコの大衆歌謡では、Pedro InfanteやJorge Negrete、Lucha Villa、Lola Beltránといった名前がよく並ぶが、Javier Solísはその中でも、より柔らかいボレロの語り口と、rancheraの情感をつなぐ歌手として語られることが多い。
『Sus Grandes Grandes Hits』の性格
タイトルが示す通り、内容はヒット曲集、あるいは代表曲集として理解しやすい。こうした編集盤では、単独のアルバム作品というより、Javier Solísの歌声の特徴を短い時間で確かめるための入口になりやすい。
1978年というリリース年もあり、録音当時の空気をそのまま閉じ込めたオリジナル盤というより、後年に彼の人気を再確認するために組まれたコンピレーションの文脈が強い。メキシコ国内での発売という点でも、地元で長く親しまれてきたレパートリーを改めてまとめた一枚と見てよさそうだ。
代表曲と聴きどころ
Javier Solísの代表曲としては、「Sombras」や「Llorarás, llorarás」、また「Payaso」などがよく知られている。こうした曲では、声を強く押し出すというより、言葉の後ろにある感情を保ったまま進める歌い方が印象に残る。
実際に聴くと、オーケストラの伴奏に対して歌が前に出すぎず、旋律の区切りでしっかり間を取る場面が目立つ。boleroの滑らかさと ranchera の抑えた張りが同居する感じで、派手な技巧よりもフレーズの運びで聴かせるタイプの歌手だと分かる。
同時代とのつながり
Javier Solísは、メキシコ歌謡の中でも、伝統的なrancheraの枠にボレロの語法を持ち込んだ世代として位置づけられる。Mariachiや映画音楽の文脈と近くありながら、歌い方そのものはかなり私的で、悲しみや未練をまっすぐに置いていく。
そのため、Pedro Infanteのような映画スター的なranchera歌手、あるいはLola Beltránのような力強い女性歌唱と比べると、Javier Solísはもう少し内側に寄った表現で聴かれることが多い。そこが、この人の録音が再編集盤でも残り続ける理由のひとつに思える。
まとめ
『Sus Grandes Grandes Hits』は、Javier Solísの録音を代表曲ベースでたどるためのメキシコ盤コンピレーションだ。没後に出た1978年盤という点も含めて、彼の歌声が長く聴かれていたことを示す資料的な性格もある。boleroとrancheraのあいだを自然に行き来する歌唱を、まとめて確認できる一枚だ。
トラックリスト
- A1 – Sombras
- A2 – El Loco
- A3 – Entrega Total
- A4 – Las Rejas No Matan
- A5 – Payaso
- A6 – Carabela
- B1 – Llorarás, Llorarás
- B2 – Amigo Organillero
- B3 – Adelante
- B4 – Cuatro Cirios
- B5 – Renunciación
Pearls Before Swine – Balaklava (1968)
Pearls Before Swine『Balaklava』について
Pearls Before Swineの『Balaklava』は、1968年に発表された作品。Tom Rappを中心にしたアメリカのフォーク・サイケデリア・バンドが残した2作目で、グループの初期像をはっきり示すアルバムとして知られている。フォークを土台にしながら、録音の扱い方や曲順の流れに独特の緊張感がある1枚。
このバンドは1965年にフロリダ州オー・ギャリーで結成され、1967年から1971年にかけて6枚のアルバムを残したあと、Tom Rappはソロ活動へ進んでいく。『Balaklava』は、その初期カタログの中でも特に名前が挙がりやすい作品で、Pearls Before Swineを語るときの中心的なアルバムのひとつ。
作品の位置づけ
デビュー作『One Nation Underground』に続く本作は、バンドの方向性をさらに明確にした内容。フォーク・ロックの枠に収まりきらない録音や構成があり、当時のサイケデリック・フォークの中でも、内省的で実験的な側面が前に出る。後年のシンガーソングライター系フォークともつながるが、同時に1960年代末のアンダーグラウンド感も強い作品。
同時代の文脈で見ると、Tim BuckleyやThe Incredible String Band、Comusのような、フォークを出発点にしながら曲の輪郭や音響をずらしていく動きと重なる部分がある。とはいえ、Pearls Before Swineはより素朴な演奏と不穏な題材の組み合わせに特徴がある。Tom Rappの声も、派手に押し出すというより、言葉をそのまま置いていくタイプ。
収録曲と聴きどころ
『Balaklava』では、A面からB面へ進むにつれて、曲ごとの温度差や録音の質感が積み上がっていく。特にA6の「Suzanne」が重要な曲で、1929年にグアダルーペで録音された78回転盤の音源を、特殊な再処理でステレオ化して収録している。アルバムの中で急に時間が巻き戻るような感触があり、作品全体の空気を大きく変える場面。
タイトルの『Balaklava』は、クリミア戦争のバラクラヴァの戦いを連想させる。アルバム全体にも、戦争や死、宗教画、歴史の断片を手元に引き寄せるような感覚がある。ジャケットにはブリューゲル「死の勝利」の一部が使われていて、音だけでなく視覚面でも作品の方向が示されている。
盤の仕様とイタリア盤について
この盤はイタリア製で、Base Recordのクレジットがある。ジャケットはシングル・カバー仕様。内袋には歌詞がスタンプ印刷されており、A面とB面で配置が工夫されている。オリジナルの1968年作としての内容を、そのままヨーロッパ盤の体裁でまとめた形。
イタリア盤らしい点としては、制作クレジットが明記されていること、そしてジャケットまわりの情報量が多いことが挙げられる。作品そのものはアメリカのフォーク・サイケデリアだが、流通やプレスの面ではヨーロッパ盤ならではの存在感がある。
音の印象
実際に聴くと、華やかさよりも、音の隙間や録音の素朴さが先に残る。アコースティック楽器の輪郭ははっきりしていて、そこに少しだけ不穏な揺れが入る。派手なリフや大きなサビで押す作品ではなく、言葉の置き方や曲間の空気で引っ張るタイプ。Tom Rappの歌い方も、感情を盛るというより、乾いた調子で語る印象が強い。
また、古い録音素材を挟み込むことで、アルバム全体に時間のズレが生まれている。フォーク・ロックとしてのまとまりがありながら、サイケデリック・ロックらしい編集感覚も見える作品。
まとめ
『Balaklava』は、Pearls Before Swineの初期を代表する1968年作。フォークを軸にしながら、戦争、死、古い録音、宗教画といった要素をひとつのアルバムに並べた内容で、Tom Rappの作家性がよく出ている。派手なヒット曲で押す作品ではないが、バンドの輪郭を知るうえでは重要な1枚。
トラックリスト
- A1 – Trumpeter Landfrey…. (0:33)
- A2 – Translucent Carriages (4:00)
- A3 – Images Of April (2:38)
- A4 – There Was A Man (2:52)
- A5 – I Saw The World (3:24)
- A6 – Guardian Angels (3:00)
- B1 – Suzanne (4:54)
- B2 – Lepers And Roses (5:19)
- B3 – Florence Nightingale…. (0:15)
- B4 – Ring Thing (2:20)
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Big Big Train – Bard (2002)
Big Big Train『Bard』について
Big Big Trainは、イングランド南部ボーンマスを拠点に活動するUKのプログレッシブ・ロック・バンド。1990年にGreg Spawtonを中心に始まり、長く英国的な叙情と構築性を軸に作品を重ねてきた。『Bard』は2002年に発表された作品で、2000年から2001年にかけてMuscliff(Bournemouth)とNomansland(New Forest)で録音されている。2025年盤は、その内容を2023年から2024年にかけてRob AubreyがAubitt Studiosでリミックス/リマスターした再発盤になる。
作品の位置づけ
『Bard』は、Big Big Trainの初期から中期への移行を知るうえで重要なタイトル。2002年時点のラインナップにはMartin Read、Sean Filkins、Phil Hoggらが関わっており、現在の編成とはかなり異なる。以後のバンドが築いていく大規模な組曲感や英国史・風景画的な題材の前段階として、初期の輪郭を見せる作品といえる。
同時代のUKプログレ再興の流れで見ると、IQ、Pendragon、The Flower Kingsといったバンド群と並べて語られることが多いタイプの作品だが、Big Big Trainはそこにさらに英文学的な語り口や、フォーク寄りの質感を持ち込んでいる印象がある。『Bard』でも、その基礎になる書き方がすでに見えている。
2025年再発盤の特徴
この2025年リイシューは、オリジナルのマルチトラック・データをもとに新しいPro Tools環境へ移し替え、Rob Aubreyが新たにミックスとリマスターを行ったもの。Greg Spawtonのノートによると、移行時に一部のバッキング・ヴォーカルとパーカッションのデータが失われており、そこはPhil Hoggがパーカッションを再録、Jo Michaelsが2024年にAubitt Studiosで失われたヴォーカルを録り直して補っている。さらに、Headlandsでは当初構想されていた男女デュエットの形を補うため、同じセッションでJo Michaelsのヴォーカルが追加されている。
また、Mellotronやオルガンの音色は現代的なサンプルに差し替えられ、Moog Taurusペダルも加えられている。つまり、2025年盤は単なる音質改善というより、オリジナル録音を土台にしつつ、欠損部分の補修と一部音色の更新を含む再構築版になっている。
サウンドの印象
『Bard』は、Big Big Trainらしい多層的なアレンジと、英国産プログレの文脈にある硬質さを持つ一方で、後年の作品ほど大編成に寄り切ってはいない。歌、キーボード、ギターが順に前へ出てくる場面が多く、曲の骨格が比較的見えやすい。2025年盤ではその輪郭がさらに整理されているように受け取れる。
実際に聴くと、音の分離がよく、ヴォーカルと各楽器の位置関係が追いやすい。特に再ミックスによって、当時の録音にあった密度を保ちながらも、現在の再発盤らしい明瞭さが前に出ている。初期作にありがちな“古さ”よりも、制作の手触りを見直した盤として聴こえるタイプ。
曲目に触れて
再発ノートで言及されているThe Last English Kingは、2024年のライヴ・ヴァージョンが収録されている。Big Big Trainの作品群の中では、歴史や物語性を帯びた曲作りを示す要素のひとつで、バンドが後年に発展させていく「英国の物語」を先取りする題材として見られる。
Headlandsのデュエット構想の話も、この作品が単なる初期作ではなく、曲ごとのアイデアを積み上げながら作られていたことを示している。完成版に至るまでの制作過程が再発盤で補足されているのは、このタイトルの重要な点だろう。
メンバー
- Greg Spawton – guitars, keyboards, bass, backing vocals
- Andy Poole – bass, keyboards, guitars
- Martin Read – vocals
- Sean Filkins – vocals
- Nick D’Virgilio – drums, backing vocals
- David Longdon – vocals, flute, keyboards, guitars
- Dave Gregory – guitars
- Rikard Sjöblom – guitars, keyboards, accordion, backing vocals
- Danny Manners – keyboards
- Steve Hughes – drums
- Phil Hogg – drums
- その他、後年のメンバー・関係者が再発制作に参加
まとめ
『Bard』は、Big Big Trainの初期の録音を収めた2002年作品であり、2025年再発盤ではオリジナル素材をもとに新しいミックスと補修作業が施されている。現在のバンド像を知ってから聴くと、のちの大きな構成美や物語性に向かう途中の姿が見えやすい。英国プログレの文脈の中でも、バンドが自分たちの言葉を固めていく過程を映した一枚として位置づけられる。
トラックリスト
- A1 – The Last English King
- A2 – Broken English
- B1 – This Is Where We Came In
- B2 – Harold Rex Interfectus Est
- B3 – Blacksmithing
- B4 – Malfosse
- B5 – Love Is Her Thing
- B6 – How The Earth From This Place Has Power Over Fire
- B7 – A Short Visit To Earth
- C1 – For Winter
- D1 – A Long Finish
- D2 – Headlands
- D3 – The Last English King (2024 Live Recording)
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El Alamo – Malos Pensamientos (1971)
El Alamo「Malos Pensamientos」について
El Alamoは、ペルーのリマで活動したサイケデリック/プログレッシブ・ロック・バンドで、活動時期は1970年から1972年までとされる。メンバーはRicardo Allison、Arturo Montenegro、Tino Pow Sang、Jaime Salinas、Luis Iturry。
「Malos Pensamientos」は1971年にペルーのDECIBELレーベルから出た作品で、2007年にイタリアで再発された盤が流通している。
作品の位置づけ
この作品は、El Alamoの活動期の中でも当時のペルー・ロックの空気をそのまま伝える一枚として位置づけられる。70年代初頭の南米ロックは、英米のサイケデリック・ロックやファンクの影響を受けながら、各地のローカルな感覚を強く残していた時期で、El Alamoもその文脈にあるバンドだと見られる。
リマ出身という背景も含めて、ペルーの同時代ロックを語るうえでは外せない存在のひとつだろう。国ごとのロックがまだ固まりきっていない時代の録音として、地域性と当時の流行が同じ盤の中に並ぶタイプの作品である。
サウンドの印象
ジャンル表記はRock、Latin、Funk / Soul、スタイルはPsychedelic Rock、Funk。こうしたクレジットどおり、ロックの骨格にラテン系のリズム感とファンク寄りの動きが重なる構成が想像しやすい。サイケデリック・ロックの作品としては、ギターやオルガンの使い方、曲の展開、演奏の間合いが聴きどころになりやすいタイプだろう。
実際に耳にすると、当時の南米盤らしい、演奏の勢いと素朴な録音感の組み合わせが印象に残ることが多い。英米の洗練されたプロダクションとは違い、バンドの手触りが前面に出やすい作品群の中に入る一枚、と言えそうだ。
オリジナル盤と再発盤
オリジナルは1971年にペルーでDECIBEL(LPND 1143)から発売された。今回の盤は2007年のイタリア盤で、オリジナル盤の再流通にあたる。再発盤としては、当時の南米ロックを海外で聴き直す流れの中に置かれるタイトルだ。
盤のリリース年が2007年でも、作品そのものは1971年のものとして扱うのが自然だろう。つまり、音源の時代は70年代初頭、流通の形は2007年盤という整理になる。
同時代の文脈
1971年前後のペルーや南米のロックでは、サイケデリック・ロックとファンク、ラテン的なリズムが混ざる例が少なくない。El Alamoもその流れの中にあり、同時代の英米ロックをなぞるだけではない、ローカルな色合いを持つ作品として見られる。
バンドの活動期間が短いこともあって、El Alamoはディスコグラフィーの量で語るタイプではない。むしろ、1枚ごとの記録性が強いグループとして捉えるのが合っている。
まとめ
「Malos Pensamientos」は、1971年のペルー産サイケデリック/プログレッシブ・ロックの一断面を伝える作品。ラテン、ファンク、ロックの要素が同居する盤として、El Alamoというバンドの時代性と地域性をそのまま残した一枚である。
トラックリスト
- A1 – Candy (3:35)
- A2 – Can You See Me (3:18)
- A3 – Pusher Men (3:18)
- A4 – Good Night (3:40)
- A5 – Sweet My Woman (6:45)
- B1 – Listen Me (5:10)
- B2 – I Cry (3:14)
- B3 – Borgoña (4:00)
- B4 – Malos Pensamientos (6:08)
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Emerson, Lake & Palmer – In Concert (1979)
Emerson, Lake & Palmer『In Concert』について
Emerson, Lake & Palmerは、1970年に結成されたイングランドのプログレッシブ・ロック・バンドで、Keith Emerson、Greg Lake、Carl Palmerの3人による編成が基本となっている。クラシック音楽やジャズの要素を取り入れた作曲、技巧の高い演奏、そして大きな会場を前提にした派手なライヴ・パフォーマンスで知られるグループである。
『In Concert』は、1979年にUSでリリースされたライヴ・アルバム。モントリオールのOlympic Stadiumで録音された作品で、活動初期から続いてきたELPの大規模なライヴ表現をそのまま記録した内容になっている。バンドとしては1970年代末の重要な時期にあたる作品で、同年のオリジナル・リリースとして位置づけられる。
作品の位置づけ
Emerson, Lake & Palmerにとって、この時期のライヴ盤はスタジオ作とはまた別に、3人編成の演奏力とアレンジの密度を確認できる資料的な意味合いが強い。ELPはスタジオでも大曲志向が目立つが、ライヴではその構成の複雑さがさらに前面に出る。1979年という時期を考えると、プログレッシブ・ロックが全盛期から変化していく流れの中で、バンドの代表的なスタイルを記録した一枚とも言える。
同時代のプログレッシブ・ロック・バンドと比べると、YesやGenesisが比較されやすいが、ELPはキーボードを中心にした押しの強いアンサンブルと、クラシック作品の引用や大仰な展開で独自性がはっきりしている。『In Concert』でも、その路線がライヴの場でどのように鳴っていたかを確かめられる。
収録曲と代表曲
このリリースからはシングルも切られており、収録曲の中に作品の顔となる楽曲が含まれていることがうかがえる。ELPのライヴ盤では、既発の代表曲が演奏の核になることが多く、バンドのカタログをライヴ形式でたどる役割も持っている。
Keith Emersonのキーボード、Greg Lakeのボーカルとベース、Carl Palmerのドラムがそれぞれ明確に聞き取れる編成で、3人だけとは思えない音の広がりを作るのがELPの持ち味である。ライヴ盤としては、その分離の良さや、曲間のつなぎ方、場内のスケール感が印象に残るタイプの作品だろう。
盤の特徴
US盤として出たリリースで、レーベル表記にはAtlantic Recording Corp.の製造クレジットが見られる。ジャケットによってはゴールドのプロモーション・スタンプが付くものもあり、同じ1979年の盤でも見た目に差がある。さらに、別仕様のプレスも存在するため、コレクションの対象としては版違いを確認する楽しみもある。
まとめ
『In Concert』は、Emerson, Lake & Palmerが1970年代に築いたライヴ・バンドとしての性格を、1979年の時点で記録したアルバムである。技巧、構成力、会場のスケール感、その3点がまとまった作品で、ELPというバンドの輪郭をつかむうえで分かりやすい一枚と言えそうだ。
トラックリスト
- A1 – Introductory Fanfare (0:51)
- A2 – Peter Gunn (3:30)
- A3 – Tiger In A Spotlight (3:58)
- A4 – C’Est La Vie (4:06)
- A5 – The Enemy God (Dances With The Black Spirits) (2:39)
- A6 – Knife Edge (4:47)
- B1 – Piano Concerto No. 1 Third Movement: Toccata Con Fuoco (6:26)
- B2 – Pictures At An Exhibition (15:29)
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Konk – The Sound Of Konk (Tales Of The New York Underground 1981-88) (2004)
Konk『The Sound Of Konk (Tales Of The New York Underground 1981-88)』について
Konkは、1980年にニューヨークで結成されたバンドで、ポストパンク/ニューウェイヴとディスコが並走していた時代の空気の中から出てきた存在だ。アフロビート、ジャズ、ファンク、ヒップホップまでを射程に入れたサウンドで、パーカッションを前に出したリズムと、シンプルで強いベースラインが特徴とされる。ニューヨークのポストパンク・ダンスシーンの一角を担ったグループとして、Liquid Liquid、Bush Tetras、ESG、The Peech Boys、The Lounge Lizardsらと同じ文脈で語られることが多い。
『The Sound Of Konk (Tales Of The New York Underground 1981-88)』は2004年にUKで出た作品で、タイトルからも分かる通り、1981年から1988年にかけてのKonkの動きをまとめた内容になっている。2004年時点でこのタイトルが初めて世に出たリリースで、盤にはプリント入りのインナー・スリーブが付属している。
作品の位置づけ
Konkは、ニューヨークのダンス志向のアンダーグラウンド・シーンを語るうえで外しにくいバンドだ。ポストパンクの硬さと、ディスコの身体性が同じ場で混ざり合っていた時代のグループであり、その中でもかなり打楽器的なアプローチが目立つ。The Sound Of Konkは、そうしたバンドの輪郭を年代記のように追えるタイトルで、シーンの記録としての意味合いも強い。
メンバーにはDana Vlcek、Shannon Dawson、Richard Edson、Ken Sitz、Geordie Gillespie、Angel Quinones、Scott Gillis、Jonathan Schneider、La Pointeの名前が並ぶ。Richard Edsonは映画方面でも知られる人物で、当時のニューヨークの音楽シーンが、バンドの枠を越えて広がっていたことも感じさせる。
サウンドの特徴
このバンドの音は、いわゆる「踊れるポストパンク」の文脈で捉えやすい。ビートは前に出ていて、ベースは短く、反復は多い。そこにギターやパーカッションが細かく噛み合う構成で、派手なメロディで押すタイプではない。ニューヨークの同時代バンドと比べても、ESGのミニマルなグルーヴやLiquid Liquidの打楽器感、Bush Tetrasの切れ味と近い空気を共有している。
タイトルにある「New York Underground」という言葉どおり、メジャーなヒット曲中心の作品というより、シーンの質感をまとめて追うタイプの内容だ。曲単位で大きく歌うというより、リズムの積み重ねで場を作る印象が強い。
聴きどころ
実際に耳を通すと、まず感じるのは音数の整理のされ方だ。各パートが前に出すぎず、それでもリズムの推進力は落ちない。ベースが土台を作り、ドラムとパーカッションが細かく動き、上モノは余白を残す。この手のダンス・パンク/アート寄りファンクではよくある設計だが、Konkはその中でも身体の動きに直結する組み立てになっている。
また、アフロビート由来の反復、ジャズ的な間合い、ファンクの粘り、ヒップホップ以後の感覚が一つの流れに見えるのも面白いところだ。ジャンル名を並べるだけでは見えにくいが、実際の鳴り方はかなりリズム中心で、当時のニューヨークのクラブやライブハウスの空気を思わせる。
同時代との関係
Konkを語るとき、同時代のニューヨーク勢との比較は分かりやすい。Liquid Liquidの反復の強さ、ESGのストイックなダンス感、The Peech Boysのクラブ寄りの感触、Lounge Lizardsのアート感覚など、近い場所にいたバンドの名前が自然に浮かぶ。Konkはその中でも、よりパーカッションの輪郭がはっきりしたグループとして見られやすい。
David Byrneらがまとめたニューヨークのポストパンク・シーンに関する本でも触れられているとのことで、この時代の記録としての価値もある。単独の名盤というより、街の動きと一緒に聴くタイプの作品という印象。
まとめ
『The Sound Of Konk (Tales Of The New York Underground 1981-88)』は、1980年代前半から後半にかけてのニューヨーク・アンダーグラウンドの一断面を、Konkというバンドを通してたどれる作品だ。ポストパンク、ディスコ、ファンク、アフロビート、初期ヒップホップが交差していた時代の質感が、リズム中心の作りの中にまとまっている。シーンの中でKonkがどう鳴っていたか、その輪郭をつかむには分かりやすいタイトルと言える。
トラックリスト
- A1 – Baby Dee (6:02)
- A2 – Elephant (4:16)
- A3 – Soka Loka Moki (6:37)
- B1 – Love Attack (3:58)
- B2 – Konk Party (3:53)
- B3 – Your Life (7:22)
- C1 – Machina Jam (8:07)
- C2 – What U Want (Plus DJ Mixers) (7:40)
- D1 – Alien Jam (3:38)
- Bonus Tracks
- D2 – Konk Party (DJ Mixers) (3:48)
- D3 – Baby Dee (Live) (8:16)
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Writing On The Wall – The Power Of The Picts (1969)
Writing On The Wall『The Power Of The Picts』について
Writing On The Wallは、スコットランドのエディンバラ出身のロック・バンドで、活動時期は1967年から1973年まで。もともとはThe Jury名義で始まり、1968年初頭にWriting On The Wallへ改名している。『The Power Of The Picts』は1969年に発表された作品で、バンドの初期を代表する1枚として扱われることが多い。
音の軸はハード・ロックとサイケデリック・ロック。60年代末らしい、重さのあるギターと、時代特有の開放感をあわせ持った内容で、ブリティッシュ・ロックの流れの中では、Deep PurpleやEarly Jethro Tull、あるいは同時代のサイケ寄りハード・ロック作品と並べて語られることがある。
作品の位置づけ
バンドはマネージャーのBrian Waldmanの後押しでロンドンへ移り、Middle Earth Clubで演奏を重ねていた時期にBBCのJohn Peel向けセッションも行っている。そうした活動の流れの中で出てきたのがこのアルバムで、グループの初期活動をまとめた重要作という位置づけになりやすい。
また、メンバーにはWilly Finlayson、Linnie Paterson、Robert “Smiggy” Smith、Jake Scott、Bill Scott、Jimmy Hush、Alan Greenhalghが名を連ねる。編成の厚みもあって、バンドとしてのまとまりを感じさせるタイプの作品。
収録曲と注目点
この盤では、A4にあたる曲が「Composer Unknown」とクレジットされているが、実際にはPeter Thorogood作の「Aries – The Fire-Fighter」のカバーとして知られている。こうしたクレジットの扱いも、60年代末のアンダーグラウンド寄り作品らしい面白さのひとつ。
タイトル曲の『The Power Of The Picts』は、アルバム全体の印象を象徴する曲名として目を引く。ピクト人を題材にしたタイトルは、英国内の歴史や神話性を意識した60年代末のロック作品らしい方向性を感じさせる。
再発盤について
手元の盤は1980年代半ばの再発盤で、ハンガリーのHungarotonで製造されたものとして知られている。オリジナル盤は1969年のリリースなので、同じタイトルでも初出時の盤とは製造時期が異なる。再発盤ではジャケットやレーベル表記、プレスの違いが見られることがある。
まとめ
『The Power Of The Picts』は、Writing On The Wallの初期活動を示す1969年作で、ハード・ロックとサイケデリック・ロックが混ざった時代性の強いアルバム。バンドのロンドン進出、BBCセッション、Middle Earth Clubでの活動といった背景を踏まえると、単なるデビュー期の1枚というより、当時の英国ロックの現場感をそのまま映した作品として見えてくる。
トラックリスト
- A1 – It Came On A Sunday (4:10)
- A2 – Mrs. Cooper’s Pie (4:50)
- A3 – Ladybird (4:48)
- A4 – Aries (6:02)
- B1 – Bogeyman (3:10)
- B2 – Shadow Of Man (6:30)
- B3 – Taskers Successor (3:35)
- B4 – Hill Of Dreams (3:10)
- B5 – Virginia Waters (5:50)
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The Stylistics – Heavy (1974)
The Stylistics『Heavy』(1974)
The Stylisticsは、1970年代のUSソウルを代表するグループのひとつ。1968年結成のフィラデルフィア出身グループで、滑らかなコーラスと、いわゆるフィリー・ソウルらしい整ったアレンジで知られている。この『Heavy』は1974年に発表された作品で、グループの充実期に位置するアルバムだ。
作品の位置づけ
1970年代前半のThe Stylisticsは、ラヴ・ソングを軸にした洗練されたソウル・グループとして人気を広げていた時期にあたる。『Heavy』もその流れの中にある1枚で、メロディの明快さと、ボーカルの重なり方を前面に出した作りが印象に残る。グループの持ち味が、アルバム単位でもはっきり出ている時期の記録という見方ができる。
メンバー表記にはRaymond Johnson、Russell Thompkins, Jr.、Airrion Love、Herb Murrell、James Dunn、James Smithの名前が並ぶ。Russell Thompkins, Jr.のファルセットは、このグループを語るうえで外せない要素で、The Stylisticsの音像を決定づけた部分でもある。
サウンドと聴きどころ
録音はMedia Sound Recording Studios、マスタリングはMasterdisk Corporationで行われている。1974年のソウル作品らしく、演奏とコーラスのバランスが整っていて、各楽器の輪郭も比較的つかみやすい。ボーカルを中心に据えた構成で、リズム隊はその土台を支える役回りにある。
この時期のThe Stylisticsは、同時代のハーモニー・ソウルやフィリー・ソウルの流れの中で語られることが多い。例えばThe DelfonicsやThe Spinnersのような、コーラスの美しさや編曲の丁寧さを重視するグループと近い文脈に置かれることがある。ただし、The Stylisticsの場合は、より高い声の抜け方と、メロディの運びのわかりやすさが耳に残りやすい。
曲について
『Heavy』の収録曲の中で特定のシングル曲については、ここでは確認できる範囲の情報に限ると、アルバム全体のまとまりがまず目立つ。ヒット曲を単独で押し出すというより、グループの持ち味をアルバムの流れで聴かせる性格が強い作品として捉えやすい。
なお、The Stylisticsは一般に「You Are Everything」「Betcha by Golly, Wow」「Break Up to Make Up」などで知られているグループで、この『Heavy』もそうした代表曲群でイメージされる完成度の延長線上にある時期の作品といえる。
日本盤について
今回の盤は日本でリリースされた1974年盤。オリジナルと同年のリリースなので、時代感はそのままに受け止めやすい。日本盤として手に取る場合、当時の国内流通の文脈で聴かれていた1枚という点も面白い。70年代ソウルの空気を、そのままの年代で追える資料性がある。
まとめ
The Stylistics『Heavy』は、1970年代前半のソウル・グループらしい整ったコーラスと、メロディ重視の作りが見えるアルバム。グループの代表的な魅力であるRussell Thompkins, Jr.の歌声を軸に、フィリー・ソウル周辺の洗練された感触がまとまっている。派手な装飾よりも、歌とアレンジの組み立てで聴かせるタイプの作品だ。
トラックリスト
- A1 – The Miracle (4:22)
- A2 – She Did A Number On Me (4:02)
- A3 – Star On A TV Show (4:10)
- A4 – Heavy Fallin’ Out (5:18)
- B1 – What’s Happenin’, Baby? (3:40)
- B2 – Go Now (3:27)
- B3 – Don’t Put It Down Til You Been There (3:23)
- B4 – Hey Girl, Come And Get It (3:30)
- B5 – From The Mountain (4:08)
関連動画
- The Stylistics – Hey Girl, Come And Get It
- The Stylistics – From the Mountain
- The Stylistics – Heavy Fallin’ Out
- The Stylistics – The Miracle
- The Stylistics – She Did a Number On Me
- The Stylistics – Star On a TV Show
- The Stylistics – What’s Happenin’, Baby?
- The Stylistics – Go Now
- The Stylistics – Don’t Put It Down Til You Been There
Jimmy Smith – Rockin’ The Boat (1963)
Jimmy Smith『Rockin’ The Boat』について
『Rockin’ The Boat』は、アメリカのオルガン奏者 Jimmy Smith が1963年に発表した作品です。Blue Note からのリリースで、録音は1963年2月7日。ハモンドB-3オルガンを主軸にした Jimmy Smith の持ち味が、そのまま前面に出た一枚です。ジャンルとしてはジャズ、スタイルとしてはハード・バップとソウル・ジャズに位置づけられています。
Jimmy Smith は、ジャズにおけるハモンドB-3オルガンの存在感を大きく押し上げた人物として知られています。1928年生まれ、2005年没。ピアノではなくオルガンを主役に据えた演奏で、ブルーノート周辺のジャズ文脈でも重要な存在になったミュージシャンです。
1963年のJimmy Smith
1963年という時期の Jimmy Smith は、Blue Note の録音群の中でも、オルガン・ジャズの定番的な語法をしっかり示している時期にあたります。ハード・バップの推進力と、ソウル・ジャズ寄りの親しみやすいフレーズ感、その両方が同居するのがこの時代の特徴です。
『Rockin’ The Boat』も、そうした流れの中にある作品として見られます。タイトルから受ける印象どおり、リズムのうねりを前に出した作りのアルバムとして捉えやすい一枚です。
Blue Note盤としての位置づけ
この作品は Blue Note Records, Inc. のクレジットがあるUS盤で、当時のジャズ・レーベルらしい、演奏の芯をきっちり捉えた録音として知られる系統です。Blue Note の60年代前半は、オルガン・コンボの作品も多く、Jimmy Smith はその中心にいるプレイヤーのひとりでした。
同時代のオルガン・ジャズでは、Brother Jack McDuff や Shirley Scott なども重要な名前ですが、Jimmy Smith はその中でも特に「ハモンドB-3をジャズの主役にした人」として語られることが多いです。『Rockin’ The Boat』も、その文脈の中で聴かれることの多いタイトルです。
内容の印象
実際に聴くと、Jimmy Smith の左手の低音と足鍵盤の動き、右手の短いフレーズの切り返しが、バンド全体の推進力を作っていくタイプの演奏であることがわかります。オルガンの音色が前に出るぶん、単なる伴奏ではなく、リズム隊そのものを引っ張る感触が強い作品です。
派手な技巧を見せるというより、グルーヴの持続とフレーズの言い回しで聴かせる場面が中心で、60年代初頭のブルーノートらしい、実演感のあるジャズの空気が残っています。
作品の聴きどころ
- ハモンドB-3オルガンの低音が作る推進力
- ハード・バップ由来の明確なリズム感
- ソウル・ジャズにつながる、耳に残りやすいフレーズ運び
- Blue Note らしい、コンボ演奏のまとまり
まとめ
『Rockin’ The Boat』は、Jimmy Smith が1963年に残した、オルガン・ジャズの重要な時期を示す一枚です。Blue Note の録音として、ハード・バップとソウル・ジャズの要素をまといながら、Jimmy Smith らしいハモンドB-3の存在感をはっきり伝える作品として位置づけられます。
トラックリスト
- A1 – When My Dream Boat Comes Home
- A2 – Pork Chop
- A3 – Matilda, Matilda!
- B1 – Can Heat
- B2 – Please Send Me Someone To Love
- B3 – Just A Closer Walk With Thee
- B4 – Trust In Me
関連動画
ピラニア軍団 – ピラニア軍団 (1977)
ピラニア軍団『ピラニア軍団』について
『ピラニア軍団』は、俳優・川谷拓三を中心に、志賀勝、室田日出男、小林稔侍、白井孝史、寺内文夫、高月忠、広瀬義宣、片桐竜次、司裕介らが名を連ねる作品で、オリジナルは1977年の日本盤として登場したレコードだ。2024年盤はその作品を改めて聴ける形にしたリリースで、録音は東映京都撮影所録音スタジオ、キングレコード第二スタジオ、音響ハウス第二スタジオ、サンライズスタジオで行われている。
メンバーの顔ぶれを見ると、いわゆる音楽グループというより、東映京都撮影所周辺の空気をそのまま閉じ込めたような企画盤としての性格が強い。俳優陣の名前がずらりと並ぶところに、この作品の立ち位置がよく出ている。映画やテレビの現場に近い人たちが集まり、当時の歌謡・ファンク・ソウルの感触を持つ音源としてまとめられた一枚、という見え方がしやすい。
作品の輪郭
本作は、日本のローカルな芸能文化と、70年代後半のポップス/ファンクの感覚が交差するタイプのレコードだ。東映京都撮影所録音スタジオでの録音というクレジットも、その背景をはっきり示している。クレジットに渡瀬恒彦、橘麻紀、東映株式会社、東映京都撮影所への謝辞があるのも、作品が映画・撮影所の人脈と密接につながっていたことを物語る。
川谷拓三については、キャニオンレコードの厚意により収録された旨が記されている。こうした注記からも、単独のバンド作品というより、当時の周辺関係者の協力で成立した記録性の高い盤として受け取れる。
聴きどころとして見えやすい点
ジャンル表記は Funk / Soul、Pop。とはいえ、作品全体を細かく聴き込んでいくと、一般的なバンド作品とは少し違う質感が出やすい。演奏や歌のまとまりだけでなく、キャラクターの強さや台詞回しのような雰囲気が前に出るタイプのレコードとして捉えやすい。
70年代の日本では、俳優や映画人が音楽作品に関わる例は珍しくなく、同時代の歌謡曲やコミックソング、あるいは映画発の企画盤の流れとも重なる。本作もその文脈の中で見ると、東映作品の周辺にあった熱量や遊び心を音にした一枚として位置づけやすい。
2024年盤について
2024年盤は、1977年オリジナルの内容を現代に再提示する形のリリースだ。オリジナル盤と再発盤の違いについては、この情報だけでは具体的な仕様差までは追えないが、少なくとも作品本体は1977年の制作物として扱うのが自然だろう。
まとめ
『ピラニア軍団』は、東映京都撮影所の空気感、俳優たちの存在感、70年代後半の日本のポップス/ソウル感覚が一つにまとまった作品だ。ヒット曲を軸に聴くタイプというより、作品の成り立ちや人の集まり方そのものに面白さがあるレコードで、クレジットを追うだけでも当時の現場の雰囲気が見えてくる。
トラックリスト
- A1 – その他大勢の仁義を抱いて (3:00)
- A2 – 役者稼業 (3:29)
- A3 – 悪いと思っています (3:27)
- A4 – 俺(れーお) (3:10)
- A5 – 死んだがナ (2:37)
- A6 – だよね (3:57)
- A7 – ソレカラドシタイブシ (3:10)
- B1 – はぐれピラニア (3:16)
- B2 – 有難うございます (4:08)
- B3 – やめましょう (2:25)
- B4 – 菜の花ダモン (5:34)
- B5 – 村歌~わしゃ知らん節~ (1:55)
- B6 – 関さん (3:29)
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Dave Stewart & Barbara Gaskin – Broken Records – The Singles (1987)
Dave Stewart & Barbara Gaskin『Broken Records – The Singles』について
『Broken Records – The Singles』は、Dave StewartとBarbara Gaskinによるシングル集で、1987年の作品だ。日本盤は同年にMIDI Inc.からリリースされている。タイトルどおり、ふたりが発表してきたシングル曲をまとめた内容で、Dave Stewart & Barbara Gaskinというユニットの活動を短い曲の連なりで追える1枚になっている。
アーティスト名のDave Stewartは、同名異人が複数いる中で、Barbara Gaskinとのデュオとして知られるほうだ。1970年代の実験色のある活動を経て、1980年代に入るとシンセポップ寄りのサウンドでポップな楽曲を展開していく流れがある。Barbara Gaskinの透明感のある歌声と、Dave Stewartの鍵盤主体のアレンジが組み合わさることで、電子音中心でありながら歌ものとしての輪郭がはっきりしているのがこのユニットの特徴といえる。
作品の位置づけ
このコンピレーションは、アルバムというより「代表的なシングルをまとめた記録」に近い。1980年代前半から中盤にかけての活動を見通すうえで、入口になりやすい構成だ。ふたりの名前を知っていても、どの曲がシングルとして外に出ていたのかを一覧できる形なので、活動の流れをつかみやすい。
特に1981年の「It’s My Party」は、このデュオの代表曲として広く知られている。レスリー・ゴアのヒット曲のカバーとして発表され、Barbara Gaskinのボーカルと、硬質すぎないシンセポップの編成が印象に残る1曲だ。こうした既成曲の扱いと、オリジナル曲を行き来するところも、このユニットの面白さになっている。
サウンドの印象
サウンドは、1980年代のシンセポップの文脈に置けるものだ。打ち込みやシンセの音色が前に出る一方で、メロディはきちんと歌として立っている。電子音楽的な処理が主役になりすぎず、ポップソングとしての分かりやすさが残る作り。派手な装飾よりも、曲の骨格を見せるタイプのアレンジだ。
同時代の英国シンセポップを思い浮かべると、派手なイメージ戦略で押すタイプというより、曲の構造や声の置き方で聴かせる側に近い。Depeche ModeやPet Shop Boysのような大きな波と同じ時代感を持ちながら、Dave Stewart & Barbara Gaskinは、より室内的で、鍵盤中心の組み立てが印象に残る。
日本盤としての見どころ
この日本盤には帯、印刷インナー、インサートが付属している。1980年代の国内盤らしい丁寧なパッケージで、当時の洋楽シングル集を日本で聴くための作り込みが感じられる。MIDI Inc.からのリリースで、1987年の日本市場に向けてまとまった形で出されたことが分かる。
オリジナルの1987年作品として見ても、シングル集という形式は、ユニットの活動を凝縮して伝える役割が強い。アルバム単位の起伏とは少し違い、曲ごとのキャラクターを順に聴ける構成になっている点が、このタイトルの読みどころだ。
まとめ
『Broken Records – The Singles』は、Dave Stewart & Barbara Gaskinの1980年代のシングル曲をまとめたコンピレーションだ。シンセポップ、ポップ、電子音楽の要素を持ちながら、Barbara Gaskinの歌とDave Stewartの鍵盤アレンジが前に出る、ふたりの持ち味が分かりやすい内容。代表曲「It’s My Party」を含め、デュオの歩みを短く整理して確認できる1枚として位置づけられる。
トラックリスト
- A Sides
- A1 – I’m In A Different World (3:53)
- A2 – Leipzig (4:09)
- A3 – It’s My Party (3:47)
- A4 – Johnny Rocco (3:13)
- A5 – Siamese Cat Song (3:53)
- A6 – Busy Doing Nothing (4:23)
- B Sides
- B1 – Rich For A Day (4:21)
- B2 – Waiting In The Wings (3:47)
- B3 – The Emperor’s New Guitar (4:15)
- B4 – The Hamburger Song (3:12)
- B5 – Henry And James (3:32)
- B6 – The World Spins So Slow (4:13)
Triana – Sombra Y Luz (1979)
Triana『Sombra Y Luz』について
Trianaは、スペイン・セビリアで1974年に結成されたアンダルシアン・ロック・バンドだ。本作『Sombra Y Luz』は1979年に発表された作品で、バンドの代表的な時期を示す一枚として知られている。アンダルシア地方の音楽的要素をロックに取り込んだTrianaの持ち味が、はっきり出たアルバムである。
盤としては1984年リリースのものが流通している。録音は1978年末から1979年初頭にかけて、マドリードのEstudios Sonolandで行われた。ジャケットはシンプルスリーブで、見開きではない仕様になっている。
Trianaというバンドの立ち位置
Trianaは、Jesús de la Rosa、Juan José Palacios “Tele”、Eduardo Rodríguez Rodwayを中心に形になったグループだ。スペインの70年代ロックの中でも、フォークやアンダルシア由来の響きを取り入れたバンドとして語られることが多い。英米のプログレッシブ・ロックと、地元の旋律や感覚を結びつけた点に特徴がある。
この作品が出た1979年は、Trianaにとって活動の中盤にあたる時期で、すでに独自の路線が固まっていた頃だ。初期の試行錯誤を経て、バンドの語法がまとまってきた段階の記録と見てよさそうだ。
内容の印象
『Sombra Y Luz』は、曲ごとの展開をじっくり追うタイプのアルバムとして受け取れる。演奏は派手に前へ出るというより、リズムと旋律の流れを保ちながら進む印象が強い。Jesús de la Rosaの歌と鍵盤を軸に、ギターとベース、ドラムがしっかり支える構図である。
Trianaの作品全体に言えることだが、歌ものとしての芯を保ちながら、演奏の組み立てにプログレッシブ・ロック的な広がりがある。曲が急に別の方向へ飛ぶというより、同じ空気の中で少しずつ場面が変わっていくタイプの作りだ。
実際に聴くと、音の抜け方や間の取り方に当時のスペイン・ロックらしい質感がある。英米の有名プログレと比べると、より歌の存在感が近い。アンダルシア由来の旋律が前面に出る場面では、Trianaらしい輪郭が見えやすい。
同時代の文脈
1970年代後半のスペインでは、ロックが各地で独自の形を作っていった時期にあたる。Trianaはその中でも、プログレッシブ・ロックと地元の感覚を結びつけた代表格として位置づけられることが多い。比較の対象としては、英米のプログレ勢よりも、同じく地域性を強く打ち出した欧州のロック・バンドを思わせる部分がある。
ただし、Trianaの音楽は単純な模倣ではなく、スペイン語の歌詞、旋律の運び、演奏の間合いが作品の中心にある。そこがこのバンドの個性であり、『Sombra Y Luz』でもその特徴は確認しやすい。
作品の位置づけ
Trianaのディスコグラフィーの中では、バンドの作風が安定していた時期の記録として見ることができる。後年の再評価でも、Trianaらしさを知る入口のひとつとして参照されることが多いアルバムである。
なお、Jesús de la Rosaは1983年に事故で亡くなっており、バンドのオリジナル期はそこで大きな区切りを迎えた。そうした背景を踏まえると、『Sombra Y Luz』はTrianaの活動が充実していた時期の一枚として、静かに存在感を持つ作品だと言えそうだ。
まとめ
- アーティスト: Triana
- 作品: 『Sombra Y Luz』
- オリジナル発表年: 1979年
- 盤のリリース年: 1984年
- 録音: 1978年末〜1979年初頭、Estudios Sonoland(マドリード)
- ジャンル表記: Rock
- スタイル表記: Psychedelic Rock, Prog Rock
Trianaの中でも、アンダルシアン・ロックの輪郭をつかみやすい作品である。スペインの70年代ロックの流れをたどるうえで、外せない一枚として語られることが多い。
トラックリスト
- A1 – Una Historia (5:06)
- A2 – Quiero Contarte (5:00)
- A3 – Sombra Y Luz (7:40)
- B1 – Hasta Volver (10:40)
- B2 – Tiempo Sin Saber (5:21)
- B3 – Vuelta A La Sombra Y La Luz (5:20)
関連動画
- TRIANA – UNA HISTORIA (SOMBRA Y LUZ – 1979)
- TRIANA – QUIERO CONTARTE (SOMBRA Y LUZ – 1979)
- TRIANA – SOMBRA Y LUZ (SOMBRA Y LUZ – 1979)
- TRIANA – HASTA VOLVER (SOMBRA Y LUZ – 1979)
- TRIANA – TIEMPO SIN SABER (SOMBRA Y LUZ – 1979)
- TRIANA – VUELTA A LA SOMBRA Y A LA LUZ (SOMBRA Y LUZ – 1979)
- TRIANA – Una historia – (Sombra y luz – 1979)
Vangelis – Heaven And Hell (1975)
Vangelis / Heaven And Hell
ギリシャ出身の作曲家、Vangelisによるアルバム「Heaven And Hell」。オリジナルは1975年の作品で、この日本盤は1976年にRVCから発売されたプレスになる。電子音楽を軸にしながら、現代音楽的な構成や実験的な手触り、さらにオーケストラ的な広がりまで含んだ作品で、Vangelisの初期代表作のひとつとして知られている。
作品の位置づけ
Vangelisは、Aphrodite’s Childのメンバーとして知られたのち、ソロで独自の音楽を築いていった人物。この「Heaven And Hell」は、そのソロ期における大きな節目のような1枚で、シンセサイザーを中心に据えた作りながら、単なる電子音の実験に留まらない内容になっている。後年の映画音楽で広く知られる前段階にある作品として見ると、作曲家としての輪郭がかなりはっきり出ている盤だと思う。
特に、クラシック寄りの構成感と、当時のプログレッシブ・ロック周辺で共有されていたダイナミックな展開が同居しているのが印象的。電子音楽という枠に入る作品ではあるが、音の置き方や曲の流れは、いわゆるシンセポップ的なものとはかなり違う。
聴きどころ
このアルバムでよく触れられるのが、組曲的な流れを持つタイトル曲「Heaven and Hell」。アルバム全体の核になる曲で、パートごとに表情が変わり、静かな部分と強く押し出す部分の落差がある。旋律の分かりやすさと、音響的な広がりが両立している点がポイントだろう。
実際に聴くと、音の重なり方はかなり立体的で、シンセの持続音、打楽器的な音、旋律線がぶつかり合いながら進む感覚がある。派手なメロディで押し切るというより、音の層が少しずつ積み上がっていくタイプの作り。ヘッドホンで聴くと、左右の配置や残響の使い方が見えやすい盤でもある。
また、Vangelisらしいメロディの明快さもあるので、前衛寄りの電子音楽に振れ切ってはいない。難解さよりも、構成の大きさや音色の変化で引っ張る作品という印象だ。
同時代の文脈
1970年代半ばは、シンセサイザーを前面に出した作品が徐々に増えていった時期で、電子音楽とロック、クラシックの境界がかなり揺れていた。「Heaven And Hell」もその流れの中にあるが、クラウトロック系の反復感や、英国プログレ周辺の大作主義とも少し距離を取りつつ、独自の組み立てをしている。
同時代のアーティストでいうと、電子音の使い方ではKlaus SchulzeやTangerine Dreamの名前が思い浮かぶし、構成の大きさではイエスやエマーソン・レイク・アンド・パーマーのようなプログレ勢とも比較されやすい。ただしVangelisの作品は、演奏の技巧を見せる方向より、音楽全体の流れを設計する方向に重心がある。
日本盤について
この日本盤は帯付きで、歌詞インサートが日本語と英語の両方で付属する仕様。RVC Corporationによる日本製プレスで、℗1976 RCA Recordsのクレジットが入っている。オリジナルの1975年作品に対して、こちらは1976年の日本盤として流通したものになる。
日本盤ならではの情報としては、帯や解説、インサートの存在が大きい。英語詞ではない作品なので、歌詞というよりは、作品の構成やタイトルの意味を確認する補助として機能するタイプの付属物だろう。
まとめ
「Heaven And Hell」は、Vangelisのソロ作の中でも、電子音楽・現代音楽・実験性・オーケストラ的なスケール感がまとまっている1枚。のちの映画音楽で広く知られる前に、彼がどのように大きな音の設計をしていたのかを見せる作品でもある。タイトル曲を中心に、1970年代の電子音楽の広がりをそのまま体現しているような内容だ。
トラックリスト
- A1 – Heaven And Hell (Part 1) (16:59)
- A2 – So Long Ago, So Clear (5:46)
- B – Heaven And Hell (Part 2) (21:15)
関連動画
Cathy Young – A Spoonful Of Cathy Young (1969)
Cathy Young『A Spoonful Of Cathy Young』について
Cathy Youngの『A Spoonful Of Cathy Young』は、1969年に発表されたファースト・アルバムである。Cathy Youngはカナダ出身のシンガー/ソングライターで、この作品は彼女の初期キャリアを知るうえで重要な1枚にあたる。ロック、フォーク、ブルース・ロックの要素を含む内容で、60年代末のシンガー・ソングライター作品として捉えやすい作品名でもある。
作品の位置づけ
このアルバムは、後年の活動につながる出発点の作品として見ると分かりやすい。Cathy Youngはのちに1973年の『Travel Stained』を発表し、1974年にはJuno AwardのBest New Artistを受賞している。そうした流れの中で、このデビュー作は彼女の表現の原点を示すタイトルといえる。
サウンドの印象
資料上のジャンル表記はロック、フォーク、ワールド/カントリー、スタイルはフォーク・ロックとブルース・ロックである。60年代末の北米の女性シンガー・ソングライター作品に見られる、アコースティックな手触りとロック寄りの演奏が並ぶタイプの作品として受け取りやすい。派手な売り込みよりも、曲そのものと歌声を前に出す作りのアルバムとして想像しやすい。
収録曲と代表曲について
この作品について、広く知られたヒット曲や代表曲を特定できる情報は見当たらない。アルバム全体で聴かれるタイプの1枚として扱われることが多い作品といえる。
同時代とのつながり
時代背景としては、フォーク・ロックやシンガー・ソングライター系の作品が広がっていた時期で、女性ボーカルのアルバムも数多く生まれていた頃である。そうした文脈では、Janis Joplinのようなブルース寄りの歌唱、あるいはJoni Mitchell周辺にあるソングライティング重視の流れと、部分的に重なる聴こえ方をするかもしれない。ただし、Cathy Young自身はこの作品で独自の立ち位置を示している。
盤の仕様について
今回のUS盤はハードカバー仕様のスリーブで、ラベル違いの版として流通している。スパイン表記はない。オリジナル盤と再発盤の細かな差異を追う楽しみもあるタイプのタイトルである。
まとめ
『A Spoonful Of Cathy Young』は、Cathy Youngのキャリア初期を示す1969年のデビュー・アルバムであり、フォーク・ロックとブルース・ロックの要素を持つ作品である。後年の受賞歴につながる出発点として、彼女の歌とソングライティングを確認できる1枚といえる。
トラックリスト
- A1 – Spoonful (6:15)
- A2 – Misfit Matilda (2:00)
- A3 – This Life (3:02)
- A4 – Everyone’s A Dealer (4:13)
- A5 – Circus (2:56)
- B1 – Mr. Moth (2:50)
- B2 – Colour That Lightning (3:57)
- B3 – 3 Billion Lovers (1:56)
- B4 – Understanding Changes Misunderstood (3:55)
- B5 – Following In Front (2:55)
- B6 – Melody Plot (3:35)
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Bridget St. John – Ask Me No Questions (1969)
Bridget St. John『Ask Me No Questions』について
Bridget St. Johnのデビュー作『Ask Me No Questions』は、1969年にUKのDandelionレーベルから出た作品だ。John Peelがプロデュースを手がけたことでも知られ、Bridget St. Johnの初期キャリアを代表する一枚として位置づけられている。2010年には再発盤も出ており、こちらには歌詞インサートが付属している。
Bridget St. Johnの出発点
Bridget St. Johnはロンドン出身のシンガー・ソングライターで、1969年から1972年にかけてJohn PeelのDandelionレーベルで録音した3枚のアルバムで特によく知られている。自身でもギターを弾き、John Martynをギターの手本として挙げている。John Peelからは「the best lady singer-songwriter in the country」と評されたこともある。
『Ask Me No Questions』は、その最初の作品。後の『Songs for the Gentle Man』や『Jumble Queen』につながる、Bridget St. Johnの出発点として聴かれるアルバムだ。
作品の性格
このアルバムは、フォーク・ロックを軸にした内容として語られることが多い。編成や音作りは比較的シンプルで、歌とギターを中心に据えた作りが特徴になっている。過剰な装飾よりも、曲そのものと歌の運びが前に出るタイプの作品だ。
同時代のUKフォーク周辺では、Nick DrakeやJohn Martyn、Vashti Bunyanのように、個人の声やギターの弾き方が作品の印象を大きく決めるアーティストが並ぶ。Bridget St. Johnもその流れの中で語られることが多く、この作品でもそうした文脈が感じられる。
2010年盤について
2010年盤はオリジナルの1969年盤を基にした再発盤として扱える。今回確認できる範囲では、歌詞インサート付きでの発行が特徴だ。盤としては、オリジナルの作品内容を現在の形で聴ける再提示という性格が強い。
曲目の聴きどころ
代表曲としては、タイトル曲の「Ask Me No Questions」がまず挙がる。作品全体の入口としてもわかりやすい曲名で、アルバムの輪郭を示す存在だ。Bridget St. Johnの初期作では、メロディの運びとギターの弾き語り感覚が作品の軸になっていて、このアルバムでもその持ち味が前面に出ている。
関連エピソード
Bridget St. Johnはこの後、BBC RadioやJohn Peelのセッションを数多く残し、UKの大学やフェスティバル回路で活動を続けた。1974年にはMelody Makerの読者投票で女性シンガーとして上位に入るなど、当時の評価も高い。のちにはニューヨークへ移り、長く表舞台から離れる時期もあるが、1999年のNick Drake追悼コンサート出演や、2006年の日本ツアーなどで再び注目を集めた。
まとめ
『Ask Me No Questions』は、Bridget St. Johnの初期像をそのまま伝えるデビュー作だ。UKフォークの流れ、John Peel周辺の文脈、そして自身の歌とギターを中心にした作りが重なる一枚として、1969年当時の空気をよく映している。2010年再発盤では、その作品を歌詞付きで改めて辿れる形になっている。
トラックリスト
- A1 – To B Without A Hitch (3:04)
- A2 – Autumn Lullaby (2:57)
- A3 – Curl Your Toes (2:56)
- A4 – Like Never Before (3:11)
- A5 – The Curious Crystals Of Unusual Purity (3:56)
- A6 – Barefeet And Hot Pavements (2:42)
- B1 – I Like To Be With You In The Sun (2:31)
- B2 – Lizard-Long-Tongue Boy (3:04)
- B3 – Hello Again (Of Course) (4:08)
- B4 – Many Happy Returns (2:13)
- B5 – Broken Faith (4:55)
- B6 – Ask Me No Questions (7:48)
関連動画
- To B Without a Hitch
- Autumn Lullaby
- Curl Your Toes
- Like Never Before
- The Curious Crystals of Unusual Purity
- Barefeet and Hot Pavements
- Bridget St. John -[7]- I Like To Be With You In The Sun
- Lizard-Long-Tongue Boy
- Bridget St. John -[9]- Hello Again Of Course
- Bridget St. John -[10]- Many Happy Returns