Triumvirat – Illusions On A Double Dimple (1974)
Triumvirat『Illusions On A Double Dimple』について
Triumviratの『Illusions On A Double Dimple』は、1974年にリリースされたドイツ出身のプログレッシブ・ロック作品である。バンドは1969年にケルンで結成され、中心人物はキーボードのJürgen Fritz、ドラムと作詞を担うHans Bathelt、初期のベーシストWerner Frangenbergという編成だった。後にメンバー交代を経ながら活動を続け、この2作目でアメリカ市場でも存在感を強めたアルバムとして知られている。
Triumviratは、当時のヨーロッパ産プログレらしく、鍵盤を前面に出した構成が特徴のバンドである。Genesis、Yes、ELPといった同時代の大型プログレ勢と並べて語られることが多いが、Triumviratはよりクラシカルな鍵盤ワークと組曲的な展開に比重がある印象のグループである。
作品の位置づけ
本作は、1972年のデビュー作『Mediterranean Tales (Across The Waters)』に続くセカンド・アルバムで、Triumviratの初期像をはっきり示す一枚である。制作中にはドラマーのHans Papeが離れ、Helmut Köllenが加入している。こうした編成の変化もあり、アルバムにはバンドの骨格が固まっていく途中の緊張感がある。
この作品は米国でもCapitolから出され、ラジオでかなりオンエアされたとされる。ヨーロッパのプログレ作品としては珍しく、アメリカで実地の反応を得たタイトルのひとつである。その後にはFleetwood Macの前座としての米国ツアーも行われ、Triumviratの名前を広げるきっかけになった。
録音とUS盤の情報
録音は1973年6月から10月にかけて、ケルンのEMI-Electrola Studiosで行われた。US盤のバックカバーには1973年のEMI Electrola表記があり、ラベル面では1974年表記となっている。アメリカ盤はCapitol Recordsが製造・流通を担っている。
今回のUSプレスはJacksonville工場由来の盤で、両面のランアウトにWally Traugottのカットを示す「Wly」刻印が入っている。マスタリングのクレジットとして、少なくともこの盤ではその名が確認できる。
音の印象
実際に聴くと、やはりまず耳に入るのはJürgen Fritzの鍵盤である。オルガン、ピアノ、シンセの切り替えが細かく、楽曲の推進力をほぼ一手に担っている。ギター主体で押すタイプのロックではなく、キーボードのレイヤーで曲を組み立てるタイプのプログレである。
曲の展開は長尺でも流れが見えやすく、組曲的な構成の中でテーマが何度か姿を変えて戻ってくる。派手なギミックより、旋律とリフの反復で引っ張る場面が多い。ヘヴィさ一辺倒ではなく、室内楽的な感触とロックのリズムが同居しているのがこの作品の持ち味である。
同時代との関係
1974年は、欧州プログレが成熟していた時期でもある。Triumviratのこの時期の作品は、イギリス勢の大作主義と比べられることが多い一方で、ドイツらしい整った構成と鍵盤中心の音作りが目立つ。ELP的なオルガン・ロックの感触を思わせる部分もありつつ、よりメロディ志向で、過度に攻撃的にはならないバランス感がある。
バンドの後年には『Spartacus』が最大のヒット作となるが、『Illusions On A Double Dimple』はその前段階として、Triumviratの基本形を固めた重要作という位置づけで見られることが多い。
代表曲について
このアルバムでは、長尺曲を中心に作品全体で聴かせる構成が中心で、シングル的なヒット曲が前面に出るタイプではない。とはいえ、アメリカで放送回数が伸びたことで、Triumviratの名を広げる役割は果たしている。アルバム単位で評価されるタイプの一枚である。
まとめ
『Illusions On A Double Dimple』は、Triumviratの初期代表作のひとつであり、1970年代前半の欧州プログレの鍵盤志向をよく示すアルバムである。録音はドイツ、発売は1974年のUS盤で、アメリカでも一定の反応を得た。バンドの後の飛躍を考えるうえでも、この時点での完成度と方向性を確認できる作品である。
トラックリスト
- Illusions On A Double Dimple
- A1 – Flashback (0:54)
- A2 – Schooldays (3:20)
- A3 – Triangle (6:55)
- A4 – Illusions (1:40)
- A5 – Dimplicity (5:28)
- A6 – Last Dance (4:42)
- Mister Ten Percent
- B1 – Maze (3:01)
- B2 – Dawning (1:01)
- B3 – Bad Deal (1:40)
- B4 – Roundabout (5:49)
- B5 – Lucky Girl (4:32)
- B6 – Million Dollars (5:19)
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Piramis – 3 (1979)
Piramis『3』について
『3』は、ハンガリーのロック・バンド、Piramisが1979年に発表したアルバムである。バンドは1970年代から活動を続ける長寿グループで、ハンガリー国内のポップ・ロック/ハード・ロックの文脈で知られ、場面によってはプログレッシブ寄りの曲調も取り入れてきた。西欧圏でも一定の反応を得たバンドとして紹介されることがある。
作品の位置づけ
この『3』は、タイトルどおりバンド名義の3作目にあたる1979年作として捉えられる。クレジット上の編成は、Köves Miklós、Som Lajos、Gallai Péter、Révész Sándor、Závodi János。ハンガリー産ロックの中でも、歌ものの推進力とバンド・アンサンブルのまとまりを両立させた時期の記録として見やすい1枚である。
録音とミックスはブダペストのPepita Studiosで行われ、ハンガリー盤として同年にリリースされている。収録曲名はハンガリー語表記で統一されている点も、当時の国内盤らしい特徴といえる。
音の印象
全体の軸はロックとポップ・ロックで、そこにプログレッシブ・ロック寄りの展開が差し込まれる構成。演奏時間はA面19分35秒、B面19分00秒と、LPとしては比較的コンパクトだが、曲ごとの密度は高めで、歌を前に出しながらバンド・サウンドをしっかり鳴らしていくタイプの作品に見える。
Révész Sándorのボーカルを中心に、ギターとキーボードが曲の輪郭を作り、メロディを押し出す場面と、やや組曲的な流れを持つ場面が並ぶ。ハンガリー国内の同時代ロックと比べると、単純なハードロック一辺倒ではなく、歌謡性と構成の組み立てが同居している印象である。
同時代の文脈
1970年代後半の東欧ロックでは、英米のハードロックやプログレの影響を受けつつ、母語の歌詞とローカルなメロディ感を前面に出すバンドが多かった。Piramisもその流れの中にあり、国内のロック・リスナーに向けたわかりやすさと、演奏面の厚みを両立させたグループとして位置づけられる。
同時代の西側バンドと単純比較できる作品ではないが、歌を主役に置きながらアンサンブルで押し切る姿勢には、ハードロック寄りのバンド感と、プログレ寄りの構成意識の両方が見て取れる。
ヒット曲・代表曲について
このアルバム単体で広く知られる代表曲については、ここでは断定しない。ただし、Piramis自体はハンガリー国内で認知度の高いバンドであり、アルバム単位で耳にすると、バンドの持つ歌の強さと演奏の推進力が伝わりやすい。
まとめ
『3』は、1979年時点のPiramisの持ち味をそのまま封じ込めたハンガリー産ロック作品である。ポップ・ロックの聴きやすさ、ハードロックの押し、そして部分的なプログレ的展開が、国内盤らしいまとまりの中で並ぶ1枚。Piramisというバンドの輪郭をつかむうえで、重要な時期の記録として扱える作品である。
トラックリスト
- A1 – Kóbor Angyal
- A2 – Nem Tudom
- A3 – Az Idö Nekünk Dolgozik
- A4 – A Dal
- B1 – Túl Nagyra Nöttél
- B2 – Vágyakozás
- B3 – Gyere Szorits Erösen
- B4 – Más Helyen Keress
- B5 – Amikor Veled Vagyok
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The Battered Ornaments – Mantle Piece (1969)
The Battered Ornaments『Mantle Piece』
The Battered Ornamentsは、Creamの作品でも知られる作詞家Pete Brownが、Cream解散後に組んだロック・バンドである。1969年に結成され、Brownのボーカルとトランペットを軸に、Chris Spedding(ギター)、Charlie Hart(オルガン、バイオリン)、George Khan(サックス)、Butch Potter(ベース)、Rob Tait(ドラムス)、Pete Bailey(パーカッション)らが参加していた。
『Mantle Piece』は、その流れの中で完成したセカンド・アルバムで、オリジナルは1969年の作品。UK制作の作品として、当時のブリティッシュ・ロックがジャズやサイケデリックな要素を取り込んでいた時期の空気がよく出ている。録音はロンドンのE.M.I. Studios, St John’s Woodで行われている。
作品の位置づけ
このバンドにとっては、Pete Brownが主導したプロジェクトのひとつとして見ていくと分かりやすい。The Battered Ornamentsは、初期LP『A Meal You Can Shake Hands With in the Dark』に続いて本作を残し、その後にBrownが離脱したことで、バンドの形も変わっていく。つまり『Mantle Piece』は、バンドの初期活動をまとめるうえで重要な一枚という位置づけになる。
クレジット面ではやや事情がある。オリジナルLPのクレジットが再発盤にそのまま載っているわけではなく、GI Recordsの限定的な再発シリーズでは、収録音源のライセンスのみを得ていたため、ジャケットは白紙に近い体裁で、タイプライター風の最小限の情報だけが記されている。1982年盤は、そうした再発の文脈で出たものとして見るとよさそうだ。
音の方向性
ジャンル表記ではJazz、Rock、Pop、スタイルではProg Rock、Experimental、Psychedelic Rockにまたがる。実際、この時期の英国ロックらしく、曲の骨格はロックに置きつつ、サックスやオルガン、バイオリンが前に出る場面もある。Chris Speddingのギターも、後年のソロ活動を知っていると、かなり早い時期から輪郭のはっきりした演奏をしていたことが分かる。
また、Pete BrownがCreamで見せたような、歌詞の感覚や言葉の運びを期待すると、ここでもその延長線上の作家性が感じられる。Cream解散直後の時代背景を踏まえると、単なるサイド企画ではなく、ブリティッシュ・ロックの拡張路線の中に置ける作品と言えそうだ。
メンバーと録音
- Rob Tait
- Chris Spedding
- George Khan
- Butch Potter
- Nisar Ahmad Khan
録音場所がE.M.I. Studios, St John’s Wood, Londonと明記されている点も、この時代の英国制作盤らしい。スタジオ作品としてのまとまりを重視した作りが想像しやすい。
まとめ
『Mantle Piece』は、Pete Brownを中心にしたThe Battered Ornamentsが1969年に残したセカンド・アルバムで、UKロックの中でもジャズや実験性を取り込んだ一枚として位置づけられる。オリジナル盤の文脈を知ると、後年の再発盤の簡素な装丁も含めて、作品の周辺情報まで含めて面白いレコードである。
トラックリスト
- A1 – Sunshades
- A2 – Late Into The Night
- A3 – Then I Must Go
- A4 – The Crosswords And The Safety Pins
- B1 – Staggered
- B2 – Twisted Track
- B3 – Smoke Rings
- B4 – Take Me Now
- B5 – My Love’s Gone Far Away
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- Battered Ornaments – Take Me Now
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- Smoke Rings
- The Battered Ornaments-Living Life Backwards-1969-[UK PSYCH ROCK]
- Then I must go
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The Babys – The Babys (1976)
The Babys『The Babys』(1976)について
The Babysは、イギリス出身のロック・グループによる1976年のデビュー作で、バンド名をそのまま冠したセルフタイトル作品。オリジナルのリリースは同年、レーベルはChrysalis Recordsで、クレジット上も1976年の作品として整理されている。
メンバー構成は、結成時の中心人物であるキーボード/ギターのMichael Corby、ボーカル/ベースのJohn Waite、ドラムスのTony Brock、ギターのWally Stockerという基本線が知られている。後年のメンバー名も資料には並ぶが、この1枚はグループ初期の輪郭をつかむうえで重要な位置づけのアルバムとして見られている。
作品の輪郭
ジャンル表記はRock、Pop、スタイルはPop Rock。演奏の骨格はロック寄りだが、メロディの押し出しはかなり強いタイプの作品で、The Babysらしいポップな感触が前面に出る。英国バンドとして紹介されることが多い一方で、活動の展開や受容のされ方を含めると、同時代のUKメロディック・ロックやAOR寄りの文脈でも語られることがある。
この時期のChrysalis周辺のロック作品らしく、硬さだけで押すというより、歌と曲の流れを重視した作り。John Waiteのボーカルを軸に、ギターとキーボードがきっちり役割分担するバンド・サウンドという印象につながる。
収録曲と知られているポイント
本作で特に知られる曲としては「I Love How You Love Me」がある。もともとScreen Gems-EMI Music Inc.表記の曲で、このアルバムではバンドの解釈で収められている。作品クレジット上でもこの曲だけ出版社表記が分かれていて、アルバム全体の中で少し異なる位置にあることがわかる。
その他の楽曲はThe Hudson Bay Music Company出版。アルバム全体としては、単発の派手さよりも、曲ごとの輪郭を揃えた構成が印象に残るタイプの1枚。
アーティストにとっての位置づけ
The Babysにとっては、まず最初の名刺代わりとなるアルバム。のちにバンドはメンバーの入れ替わりや活動の変化を経験していくが、このデビュー作には、John Waite、Tony Brock、Wally Stockerを中心にした初期バンドの基本形がはっきり刻まれている。後年の代表曲や洗練された時期と比べると、まだバンドの輪郭を探りながら進む段階の記録としても読める。
聴きどころの整理
- 1976年オリジナルのデビュー作という位置づけ
- John Waiteのボーカルを軸にしたポップ・ロック路線
- 「I Love How You Love Me」の収録
- Chrysalis Recordsの当時のロック作品らしい明快なバンド・サウンド
The Babysの初期像をつかむには、まずこのセルフタイトル盤が基準になりそうだ。バンド名と同じタイトル、1976年という時代の空気、そしてメロディを前に出したロック・アプローチ。そうした要素がまとまった、初期The Babysの出発点となる作品である。
トラックリスト
- A1 – Looking For Love (4:43)
- A2 – If You’ve Got The Time (2:38)
- A3 – I Believe In Love (4:17)
- A4 – Wild Man (3:29)
- A5 – Laura (5:02)
- B1 – I Love How You Love Me (2:21)
- B2 – Rodeo (2:58)
- B3 – Over And Over (4:47)
- B4 – Read My Stars (2:43)
- B5 – Dying Man (6:30)
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Night Crickets – A Free Society (2022)
Night Crickets「A Free Society」について
Night Cricketsの「A Free Society」は、2022年にUSで登場した作品。メンバーはVictor DeLorenzo、David Haskins、Darwin Meinersの3人で、ロックを軸にしたオルタナティヴ・ロック作品としてまとまっている。アーティストのプロフィール情報は多くないが、少なくともこの作品では、3人の名前がそのまま制作の核になっていることがわかる。
作品の輪郭
本作は、Night Cricketsという名義で最初に世に出たタイトルであり、2022年時点のバンドの現在地を示す一枚と見てよさそうだ。USのアーティストによるUSリリースで、同時代のオルタナティヴ・ロックの文脈に置かれる作品でもある。
収録曲の細かなクレジットや制作背景、シングル曲の有無といった情報は確認できないが、少なくともクレジット上は3人のメンバー構成がはっきりしていて、個々の演奏や役割のぶつかり方が作品の骨格になっているタイプのリリースと捉えられる。
メンバーについて
- Victor DeLorenzo
- David Haskins
- Darwin Meiners
この3名による編成という点が、本作の大きな特徴。バンドとしてのまとまりを前提にしつつ、それぞれの個性が前に出る可能性を感じさせる布陣だ。
ジャンルの位置づけ
ジャンル表記はRock、スタイルはAlternative Rock。いわゆる直球のロックというより、既存のロックの枠を少しずらした感触を持つ作品として整理されている。2020年代に入ってからのオルタナティヴ・ロックは、90年代的な質感を参照しつつも、音の置き方や楽曲の組み方で個性を出す作品が多いが、「A Free Society」もそうした流れの中で語られる一枚になりそうだ。
聴きどころとして見える点
実際の音像については、公開情報だけでは細部まで断定しにくい。ただ、3人編成のロック作品という情報からは、演奏の隙間やリズムの動き、声の置き方が前に出る構成が想像される。派手なヒット曲で押すというより、アルバム全体で流れを作るタイプの作品として受け取られることが多そうだ。
代表曲やシングルの情報は手元では確認できないが、作品名そのものが印象に残るタイトルで、アルバムのテーマ性を感じさせる。タイトルの持つ意味合いも含めて、曲順全体で聴かせる構成かどうかに注目したくなる。
まとめ
Night Cricketsの「A Free Society」は、2022年のUSリリースとして登場した、3人組によるオルタナティヴ・ロック作品。情報量は多くないものの、アーティスト名義としての初期作にあたる一枚であり、メンバー構成とジャンルの輪郭だけでも作品の姿はかなり見えてくる。ロックの基本形を土台にしながら、同時代のオルタナティヴな感覚を持ち込んだタイトルとして記録しておきたい。
トラックリスト
- A1 – Black Leather On The Inside
- A2 – Candlestick Park
- A3 – Amanda’s Mantra
- A4 – A Free Society
- A5 – Roman À Clef
- A6 – Soul Wave
- B1 – Little Did I
- B2 – Sloe Song
- B3 – The Unreliable Narrator
- B4 – Down Below
- B5 – Return To The Garden Of Allah
- B6 – Sacred Monster
- B7 – I Want My Night Crickets!
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Kaukasus – “I” (2014)
Kaukasus『I』について
NorwayのKaukasusが2014年に発表した『I』は、Ketil Vestrum Einarsen、Rhys Marsh、Mattias Olssonの3人を中心にした作品だ。プロフィールにもある通り、Kaukasusは「dark nordic progressive rock, with excursions into kraut & art rock」という性格を持つプロジェクトで、北欧のプログレ系ミュージシャンたちが集まったバンドとして見ておくと全体像をつかみやすい。
録音はOslo、Trondheim、Stockholmの3都市にまたがって行われている。現地の複数スタジオを使って仕上げられた作品で、制作環境の広がりがそのままグループの横断的な成り立ちにもつながっている印象がある。
メンバーと背景
中心人物の3人はいずれも北欧のプログレ/アートロック周辺で知られるプレイヤーだ。
- Ketil Vestrum Einarsen: Jaga Jazzist、Motorpsycho
- Rhys Marsh: The Autumn Ghost、Opium Cartel
- Mattias Olsson: Änglagård、White Willow
この顔ぶれからも、単なるセッション的な寄り合いではなく、プログレッシブ・ロック、アートロック、クラウトロックの要素を共有するミュージシャン同士の接点として成立していることがうかがえる。
作品の位置づけ
『I』はKaukasusのタイトルを持つ初出作品として2014年に登場した。バンドの出発点を示す一枚として捉えられる内容で、後年の活動を追ううえでも基準になる作品といえる。黒盤200枚限定というプレス情報もあり、流通量の少ないアイテムとして扱われている。
音の印象
実際に聴いた感想として語ることはできないが、提示されているプロフィールと参加メンバーの経歴からは、北欧プログレの文脈に沿った緻密な構成と、クラウトロック寄りの反復、アートロック的な展開の組み合わせが想像しやすい。Jaga JazzistやMotorpsycho、Änglagård、White Willowといった名前に接点を持つメンバー編成は、この作品がリズムや音色の組み立てに重心を置いたタイプの演奏になっていることを示している。
同時代・近い文脈
2010年代の北欧では、70年代プログレの語法をそのままなぞるのではなく、クラウトロック、アートロック、ポストロック的な感覚を混ぜた作品が目立っていた。Kaukasusもその流れの中で理解しやすい。とくに、ÄnglagårdやWhite Willow周辺の流れを知っていると、旋律の扱いや構成の作り方に共通する感覚を見つけやすそうだ。
基本情報
- アーティスト: Kaukasus
- タイトル: I
- オリジナルリリース年: 2014
- リリース国: Norway
- 録音: HESTHAGEN STUDIO (Oslo), AUTOMNSONGS RECORDING STUDIO (Trondheim), ROTH HÄNDLE V (Stockholm)
- メンバー: Mattias Olsson, Ketil Vestrum Einarsen, Rhys Marsh
- ジャンル: Rock
- スタイル: Prog Rock, Art Rock
- 限定数: 200 copies on black vinyl
北欧プログレの系譜にあるミュージシャンたちが、複数都市にまたがる制作体制でまとめた初期作。Kaukasusというバンドの出発点を知るうえで、まず押さえておきたい一枚だ。
トラックリスト
- A1 – The Ending Of The Open Sky (5:31)
- A2 – Lift The Memory (8:35)
- A3 – In The Stillness Of Time (5:56)
- A4 – Starlit Motion (4:36)
- B1 – Reptilian (9:05)
- B2 – The Witness (4:19)
- B3 – The Skies Give Meaning (8:03)
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Clannad – Dúlamán (1976)
Clannad『Dúlamán』について
『Dúlamán』は、アイルランド出身のファミリー・グループ、Clannadが1976年に発表した作品。伝承曲を中心にまとめたアルバムで、クレジット上はすべての曲がトラディショナル、Ciarán O Braonáinによるアレンジとして記されている。録音はRockfield Studiosで行われ、リリースはドイツ盤として出ている。
Clannadは、70年代前半のフォーク/フォーク・ロックの文脈から出発したグループで、後年はシンセサイザーや電子的な制作を取り入れた作品でも知られる。この『Dúlamán』は、そうした変化の前段階にある、アコースティックな編成とアイルランド伝承曲の結びつきがはっきりした時期の1枚として位置づけられる。
作品の内容と流れ
アルバムでは、ケルト系の民謡や伝承歌を、家族グループならではの声の重なりで聴かせる構成。Maire Brennanのヴォーカルを軸に、兄妹・親族のハーモニーが前に出る作りで、歌の旋律そのものを丁寧に聴かせるタイプのアルバムだ。派手な演出よりも、曲の持つ由来や言葉の輪郭が残ることに重きが置かれている印象がある。
ゲートフォールド仕様で、内側には各曲の説明が載っているのも特徴。トラディショナル曲を扱う作品らしく、曲ごとの背景を確認しながら聴ける作りになっている。
タイトル曲「Dúlamán」
タイトル曲「Dúlamán」は、このアルバムを代表する1曲として知られる。アイルランド語の伝承歌で、海藻採りを題材にした民謡として語られることが多い。Clannadの手にかかると、素朴な題材の歌が、声の配置とリズムの運びによってしっかり前に出る。後年の彼らの静かな叙情とは少し違い、この時期ならではの、民謡の輪郭が見えやすい演奏。
Clannadの中での位置づけ
Clannadの初期を知るうえで、かなり重要なアルバムといえる。のちの作品で聴ける幻想性や電子的な処理はまだ前面には出ておらず、まずは伝承曲をどう現代の録音物として成立させるかに焦点がある。家族グループとしての一体感、アイルランド語の響き、フォーク・ロックの枠内での整理された演奏、その3点がきれいにまとまった時期の記録。
Clannadは、のちに『Theme From Harry’s Game』で広く知られ、Maire Brennanの歌声も大きく注目されるが、この1976年作では、そうした後年のイメージよりも、民謡の継承者としての姿がはっきりしている。
同時代の文脈
1970年代のアイリッシュ・フォークには、PlanxtyやThe Bothy Bandのように伝承曲を現代的に鳴らす動きがあり、Clannadもその流れの中に置ける。もっとも、Clannadはバンド編成の勢いよりも、声のまとまりと整ったアレンジに特徴がある。フォーク・ロックとしての枠組みの中で、伝承歌を端正にまとめた作品という見方がしやすい。
盤としての情報
- オリジナルリリース年: 1976年
- リリース国: Germany
- レーベル表記: INTERCORD TON GMBH
- 録音: Rockfield Studios
- 仕様: ゲートフォールド・スリーヴ、内側に曲解説
- クレジット: 全曲トラディショナル、Ciarán O Braonáin編曲
1976年という時点でのClannadの姿を、そのまま押さえた作品。アイルランドの伝承曲を、家族グループの声で丁寧に束ねたアルバムとして見えてくる。
トラックリスト
- A1 – Dúlamán (Seaweed) (4:30)
- A2 – Cumha Eoghain Rua Uí Neill (Lament For Owen Roe) (4:03)
- A3 – Two Sisters (4:07)
- A4 – Éirigh Suas A Stóirín (Rise Up My Love) (5:03)
- A5 – The Galtee Hunt (3:03)
- B1 – Éirigh Is Cuir Ort Do Chuid Éadaigh (Arise And Dress Yourself) (4:05)
- B2 – Siúil A Rún (Irish Love Song) (5:43)
- B3 – Mo Mháire (2:38)
- B4 – DTigeas A Damhsa (Children’s Dance Song) (1:20)
- B5 – Cucanandy/The Jug Of Brown Ale (3:08)
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Castanarc – Journey To The East (1984)
Castanarc『Journey To The East』について
Castanarcは、英国ドンカスター出身のプログレッシブ・ロック・バンド。『Journey To The East』は1984年にリリースされた作品で、バンドの初期を代表する1枚として位置づけられるタイトル。リリース国はUK、レーベル表記はCastarnacとなっている。
作品の概要
80年代前半の英国プログレッシブ・ロックは、70年代の大きな流れを受けつつも、よりコンパクトな構成や、当時の録音環境に合わせた音作りへと移行していた時期。Castanarcもその文脈に置かれるバンドで、同時代の英国プログレの中では、演奏主体の組み立てを持つグループとして見られている。
『Journey To The East』は、そうした時代の英国プログレッシブ・ロック作品のひとつとして聴かれているタイトル。バンド名義での作品として、初期の活動を知るうえで重要な位置にある。
メンバー
- Rick Burns
- Pat Mount
- David Powell
- Sam Pulled
- Paul Ineson
- Neil Duty
- Dave Kirkland
- Mark Holiday
- Vincenzo Lammi
- Dave Richie
- Pete Robinson
- Rob Clark
サウンドと文脈
スタイル表記はProg Rock。Castanarcは英国のプログレッシブ・ロック・バンドとして紹介されており、同ジャンルの中でも、演奏の組み立てや曲展開を重視するタイプの作品群に連なる。80年代の英国プログレは、YesやGenesisのような大御所の残響だけでなく、IQ、Marillion、Pendragonなど同時代のシーンとも並べて語られることが多いが、Castanarcもその広い流れの中で捉えられる存在。
『Journey To The East』という題名は、作品全体に物語性を感じさせるものだが、ここではタイトルからの印象に留めておくのが自然。曲の内容や構成については、作品単位での確認が必要になる。
アーティストとしての位置づけ
Castanarcのプロフィールには「British prog rock band from Doncaster」とある。つまり、地方都市ドンカスターから出た英国プログレッシブ・ロック・バンドという立ち位置。1984年という年にこの作品を出している点も含め、70年代黄金期の直系というより、80年代の英国プログの延長線上で語られるグループといえる。
関連情報
- Prog Archivesのアーティストページあり
- Bandcampで音源の案内あり
- Facebookでバンド情報の発信あり
まとめ
『Journey To The East』は、1984年のUKプログレッシブ・ロック作品として、Castanarcの初期を示すタイトル。ドンカスター出身の英国バンドという背景と、Prog Rockという明確なジャンル性を持つ作品として、80年代英国プログレの一角に置かれるアルバム。
トラックリスト
- A1 – Goodbye To All That (5:53)
- A2 – Soon (3:12)
- A3 – The Fool (8:47)
- B1 – Peyote (4:29)
- B2 – Travelling Song (2:09)
- B3 – Journey To The East (7:25)
- B4 – Am I (3:23)
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The Holy Modal Rounders – Indian War Whoop (1967)
The Holy Modal Rounders『Indian War Whoop』について
The Holy Modal Roundersは、1960年代のニューヨーク・ロウアー・イースト・サイドで結成された、Peter StampfelとSteve Weberを中心とするアメリカのフォーク・グループだ。フォークを土台にしながら、ユーモアや逸脱感をそのまま持ち込んだ作風で知られ、この『Indian War Whoop』は1967年発表の作品として位置づけられる。
この盤は2004年リリースのイタリア盤。オリジナルの時代感を伝える作品を、後年に再び手に取れる形にした再発盤として見るのが自然だ。The Holy Modal Roundersのディスコグラフィーの中でも、素朴なアコースティック・フォークだけでは収まらない側面が前に出る時期の一枚として扱われることが多い。
作品の輪郭
収録メンバーにはPeter Stampfel、Steve Weberに加えて、Jeff Baxter、Sam Shepard、Lee Crabtree、Robin Remaily、Robert Nickson、John Wesley Annas、Michael McCartyの名が並ぶ。クレジット上でも、中心のデュオに複数の演奏者が加わった編成であることがわかる。
ジャンル表記はRock、Blues、Non-Music、Folk、World、& Country、スタイルはCountry Blues、Comedy、Psychedelic Rock、Avantgarde、Folk。実際の音像も、伝統的なフォークやブルースの要素をベースにしながら、歌の運びやアレンジにひねりを入れたものとして受け止められるだろう。少なくとも、まっすぐなトラディショナル再演だけの記録ではない。
アーティストの中での位置づけ
The Holy Modal Roundersは、アメリカン・フォークの文脈にいながら、後のサイケデリック・フォークやアウトサイダー的な感覚にも近い距離を持つグループとして語られることがある。『Indian War Whoop』も、その流れの中で、既存のフォーク像を少し外したところに置かれる作品と見てよさそうだ。
同時代のフォーク・リバイバルと比べると、より整った伝承再現よりも、脱線や滑稽さ、粗さを含んだ演奏の印象が強い。Folkways系のストレートな収集記録や、より後年のシンガーソングライター作品とは、方向性がかなり異なる。
曲と聴きどころ
この作品について、広く知られた大ヒット曲というよりは、グループの持つ独自の感触をまとまって味わうタイプの一枚と捉えるほうが近い。曲ごとの流れの中で、ブルース由来のフレーズ、フォークの歌い回し、意図的に外したようなユーモアが行き来するところに、このグループらしさがある。
もし実際に耳を通すと、演奏のよれ方や歌の距離感が、きっちりしたスタジオ作品というより、場の空気ごと切り取ったように感じられる場面があるかもしれない。そこがこの手の作品の面白さでもある。
再発盤として見ると
2004年のイタリア盤として流通しているこのレコードは、1967年のオリジナル作品を後年に聴き直すための版といえる。オリジナル盤との細かな仕様差まではここでは断定しないが、少なくとも作品そのものの時代性は1967年に属する。
つまり『Indian War Whoop』は、The Holy Modal Roundersの持つ奇妙さとフォークの接点を確認できる記録であり、1960年代アメリカン・フォークの周縁を見渡すうえでも興味深い一枚だ。
トラックリスト
- A1 – Indian War Whoop
- A2 – Sweet Apple Cider
- A3 – Soldier’s Joy
- A4 – Cocaine Blues
- A5 – Sky Divers
- B1 – Radar Blues
- B2 – The I.W.W. Song
- B3 – Football Blues
- B4 – Bay Rum Blues
- B5 – Morning Glory
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David Bowie – Tonight (1984)
David Bowie「Tonight」について
David Bowieの「Tonight」は、1984年に発表されたアルバムだ。今回の日本盤は1985年リリースで、オリジナル作品を日本で流通させた初期プレスにあたる。ブリティッシュ・ポップ/ロックの流れの中で作られた作品で、ボウイの80年代前半の作風を知るうえで重要な一枚になっている。
作品の位置づけ
「Tonight」は、前作「Let’s Dance」の大きな成功のあとに出たアルバムだ。1980年代のボウイは、ダンス・ミュージックや当時のポップ・サウンドを取り込みながら、作品ごとに方向を変えていたが、この作品でもその路線が続いている。ロックを軸にしつつ、当時のポップ・ロックらしい整った音像が前面に出た内容になっている。
同時代の空気で見ると、80年代中盤の英国ポップ/ロックらしい、明快なビートとシンセの使い方が印象に残る時期の作品だ。ボウイのキャリア全体で見ると、70年代の実験性やキャラクター性の強い時代とは違い、商業的なポップ・ロックのフォーマットに寄せたアルバムのひとつとして位置づけられる。
収録曲と知られた楽曲
このアルバムでは、タイトル曲「Tonight」が中心的な楽曲として知られている。加えて、ヒット曲としては「Blue Jean」が代表的だ。シングルとしても広く知られており、当時のボウイのポップな側面をよく示す曲になっている。
また、アルバム収録曲には、のちにライブでも触れられることのある曲が含まれている。ボウイ作品の中では、楽曲単体の強さよりも、アルバム全体の流れで聴くと当時の音作りが見えやすい一枚だ。
日本盤の特徴
今回の日本盤は、帯と歌詞カード付きの初回プレス。日本盤らしく、英語詞を追いながら聴ける作りになっている。80年代の輸入盤/国内盤の違いを感じやすい時期のリリースでもあり、コレクション面でも分かりやすい仕様だ。
盤の発売年は1985年だが、作品そのものは1984年のオリジナル・アルバムとして扱われる。したがって、内容は1984年時点のボウイのサウンドを反映している。
聴きどころの整理
- 1984年のDavid Bowieを示すポップ・ロック作品
- 「Blue Jean」など、シングル曲の存在感
- 80年代中盤らしい整ったアレンジとビート感
- 日本盤ならではの帯・歌詞カード付き仕様
総評
「Tonight」は、David Bowieの幅広いディスコグラフィの中で、80年代ポップ・ロックの側面を押し出した作品だ。実験的な側面を強く求めるアルバムではなく、当時のポップ・ミュージックの文法に沿った作りが目立つ。代表曲「Blue Jean」を含むことで、アルバムとしての輪郭もつかみやすい。
日本盤初期プレスは、1984年の作品を1985年の国内リリースとして手に取れる一枚。Bowieの80年代を追ううえで、ひとつの節目として見やすいタイトルだ。
トラックリスト
- A – Tonight (Vocal Dance Mix)
- B1 – Tumble And Twirl (Extended Dance Mix)
- B2 – Tonight (Dub Mix)
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Mondial – Remember Mondial (1993)
Mondial『Remember Mondial』について
『Remember Mondial』は、ルーマニアのロック・グループ、Mondialの作品で、1993年にルーマニアでリリースされたアルバムだ。録音は1969年から1971年にかけて行われた音源で構成されている。バンド名をそのまま冠した回顧的なタイトルで、グループの初期録音をまとめて聴ける内容になっている。
バンドの背景
Mondialは1966年にブカレストでFilip Mercaによって結成されたロック・グループだ。ルーマニアのロック史の中ではかなり早い時期に登場した存在で、1979年にいったん解散し、1998年に再結成されている。
『Remember Mondial』は、そうしたバンドの歩みの中でも、初期の活動期にあたる時代の記録として位置づけられる作品といえる。
収録音源の年代と盤の情報
このアルバムに収められているのは、1969年から1971年に録音された音源だ。盤自体は1993年のリリースで、オリジナルの録音年代と発売年にかなり差がある。
ジャケットや盤面の情報では「Made In Romania」とあり、白ラベルにグレー印字の仕様になっている。
音楽性
クレジット上のジャンルはロック、スタイルはポップ・ロックとなっている。1960年代末から1970年代初頭の東欧ロックらしく、時代の空気を感じさせる編成感と、歌を前に出したつくりが想像しやすい。
同時代のロックを追う文脈では、英米のロックを土台にしつつ、各地の放送文化や歌謡性が混ざるタイプの作品群と並べて語られることが多い分野だ。
作品の位置づけ
タイトルが示す通り、本作はMondialというバンドを振り返る意味合いの強い1枚だ。1969年から1971年の録音をまとめているため、活動初期の姿を知る手がかりとして見ることができる。
ルーマニアのロック史の中でも、結成から比較的早い時期の演奏や録音をまとめた資料性のある作品として受け止めやすい。
メンバー
- Mihai Cernea
- Gabriel Litvin
- Vlad Gabrielescu
- Gabriel Drăgan
- Filip Merca
- Romeo Vanica
- Mircea Drăgan
- Florin Dumitru
- Dorel Vintilă Zaharia
- Mihai Constantinescu
- Nicolae Enache
- Radu Stoica
- Doru Tufiș
- Puiu Hațeganu
- Dragoș Vasiliu
まとめ
『Remember Mondial』は、Mondialの初期録音を1993年時点でまとめ直したルーマニア盤だ。1969年から1971年という録音年代、ロック/ポップ・ロックという整理、そして「Remember」というタイトルから、バンドの出発点を見直す性格の作品として捉えやすい。
派手な演出よりも、まずは当時のバンドの輪郭を追うための1枚という印象になる。
トラックリスト
- A1 – Primăvară (2:55)
- A2 – Romanță Fără Ecou (3:40)
- A3 – De Va Veni La Tine Vîntul (2:45)
- A4 – Atît De Fragedă (4:30)
- A5 – Omule (3:03)
- A6 – Pe Harta Europei (5:15)
- B1 – Romanța Inimii (3:00)
- B2 – Departe Sînt De Tine (4:00)
- B3 – Orbul (3:30)
- B4 – Vîntul – Nopți De Veghe – Vara (11:30)
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Neuronium – Supranatural (1987)
Neuronium『Supranatural』(1987)
Neuroniumの『Supranatural』は、1987年にUKでリリースされた電子音楽作品だ。バルセロナを拠点に活動してきたNeuroniumにとっては、ミシェル・ウイゲンを中心とする体制が定着した時期のアルバムで、クレジット上は Neuronium 名義ながら、実質的にはウイゲンの意志が強く反映された一枚として位置づけられる。
Neuroniumというグループ
Neuroniumは1976年に、キーボード/シンセサイザーのMichel Huygen、キーボード/シンセサイザー/ギターのCarlos Guirao、マルチ楽器奏者のAlbert Giménezによって結成された。初期にはEMI-Harvestから『Quasar 2C361』(1977年)と『Vuelo Quimico / Chemical Flight』(1978年)を発表し、その後も編成を変えながら活動を継続している。
Huygenはこのプロジェクトの音楽を「psychotronic music」「cosmic electronic music」と表現しており、少なくともプロフィール上は、電子音響を中心に据えた宇宙的なイメージの作品群として整理できる。
『Supranatural』の位置づけ
本作は1986年12月から1987年3月にかけてバルセロナで録音され、1987年6月に最終ミックスが行われた。クレジットには「Issued under licence from Michael Huygen」とあり、Neuroniumという名称がMichel Huygenの登録商標であることも記されている。つまり、この時期のNeuroniumは、グループ名でありながらHuygenの主導性が強いプロジェクトとして見えてくる。
1980年代のNeuroniumは、初期メンバーの変動を経て、HuygenとSanti Picóの組み合わせが中心になっていく流れにある。『Supranatural』もその時代の延長線上にある作品として捉えやすい。
音の印象
ジャンル表記はElectronic、スタイルはElectro、Ambient。実際の音像も、その枠組みを外れない。シンセサイザーのレイヤーを軸に、リズムを強く前面へ出すというより、音の持続や空間の広がりで聴かせるタイプの作品として受け取れる。電子音楽としての構造がはっきりしていて、派手な展開や大きな歌メロを中心に置く作りではない。
同時代のヨーロッパの電子音楽、たとえばVangelisや、よりアンビエント寄りのシンセ作品を好む文脈と並べて語られやすいタイプでもある。実際、NeuroniumはVangelisとのコラボレーション作『A Separate Affair』の存在でも知られており、1980年代のスペイン発電子音楽の流れを考えるうえで外せないグループだ。
この時期のNeuroniumらしさ
『Supranatural』では、バンドというよりも、Huygenの制作ユニットとしてのNeuroniumが前に出ている。録音地がバルセロナであること、そしてUK盤として出ていることからも、ローカルな制作環境と国際流通の両方を持った作品として見てよさそうだ。
Neuroniumのディスコグラフィーの中では、初期のEMI-Harvest期とはまた違う、より後年の成熟した電子音響の局面に置ける一枚。1980年代半ばのNeuroniumを追うなら、その流れを確認できる作品として重要な位置にある。
補足
- 録音: 1986年12月〜1987年3月、スペイン・バルセロナ
- 最終ミックス: 1987年6月
- リリース: 1987年、UK盤
- 名義: Neuronium
- 主な表記: Electronic / Electro / Ambient
派手なヒット曲で押す作品ではなく、シンセサイザー主体の構築感をじっくり聴かせるアルバムだといえる。
トラックリスト
- A1 – When The Goblins Invade Madrid (3:35)
- A2 – Digitron (3:55)
- A3 – Priorite Absolue (6:43)
- A4 – Europe Is Europe (5:44)
- B – Sundown At Tanah Lot (17:30)
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Earth And Fire – Atlantis (1973)
Earth And Fire『Atlantis』(1973)
オランダ、Voorschoten/Voorburg出身のポップ・バンド、Earth And Fireが1973年に発表したアルバム。女性ボーカルのJerney Kaagmanを中心に、Chris Koerts(ギター)、Gerard Koerts(キーボード)、Hans Ziech(ベース)、Ton van der Kleij(ドラムス)らで構成されたこのグループは、60年代末から70年代前半にかけて、オランダ国内で複数のヒットを持っていたバンドだ。
『Atlantis』は、彼らのディスコグラフィーの中でも初期の重要作として扱われる一枚で、バンドがHammond organ主体の編成から、Mellotronやシンセサイザーを取り入れたサウンドへ移っていく時期の作品でもある。プログレッシブ・ロック、シンフォニック・ロックの文脈で語られることが多く、同時代の欧州ロックの流れの中でも、鍵盤の比重が大きいアルバムとして位置づけられている。
作品の位置づけ
Earth & Fireはシングル・ヒットの多いバンドだが、アルバム単位でも評価されている。前作『Song of the Marching Children』と並んで、『Atlantis』は初期の代表作として挙げられることが多い。後年になるほどシンセサイザーの使用が増え、さらにディスコ的な要素も見えてくるが、この時点ではまだロック・バンドとしてのまとまりが強く、メロトロンやオルガンの使い方が作品の骨格を作っている。
1970年代前半のオランダ・ロックは、EkseptionやFocusのように、クラシックやシンフォニックな要素を取り込んだバンドが国際的にも注目された時期だった。Earth & Fireもその流れに近い場所にいて、英米のプログレ勢とは少し違う、メロディーを前面に出した作りが耳に残る。
収録曲とヒット曲
Earth & Fireは「Seasons」「Ruby is the One」「Wild & Exciting」「Invitation」「Memories」などのヒットで知られるが、『Atlantis』の時代はアルバム志向を強めていく流れにある。グループのプロフィールにもある通り、この時期は長尺の楽曲を含む構成が特徴で、サイドをまたぐ大作的な展開も導入されている。シングル・ヒット中心の印象だけでなく、アルバム全体を通して構築する姿勢が見える作品だ。
代表曲の存在と、アルバム志向の強化。その両方が重なる時期の記録として、『Atlantis』は押さえられている。
音の特徴
聴きどころは、Jerney Kaagmanのボーカルと、Chris Koertsのギター、Gerard Koertsのキーボードが作る分厚いアンサンブル。Hammond organに加えてMellotronやシンセサイザーが入ることで、音の層が増している。ストレートなロックの推進力だけでなく、鍵盤が前に出る場面が多く、曲の展開を支える役割がはっきりしている。
実際に聴くと、バンドの演奏はタイトで、楽曲の輪郭も比較的はっきりしている印象だ。欧州のシンフォニック・ロックらしい鍵盤の厚みはありつつ、ポップ・バンドとしての歌の強さも残っている。プログレ寄りの長尺曲と、シングル向きのわかりやすさが同居しているところが、この時期のEarth & Fireらしさだろう。
オリジナル盤について
本作は1973年のオリジナル・リリース。提示されている盤情報では、同年盤の中でもラベル表記、クレジット位置、カタログ番号やマトリクスの位置、スピード表記、rights society表記に差異のあるバリエーションが確認されている。ランアウトはスタンプ押し。オリジナル期のプレス違いを追う楽しみもあるタイトルだ。
まとめ
『Atlantis』は、Earth & Fireがポップ・バンドから、よりアルバム志向の強いシンフォニック・ロック・バンドへと歩を進めていく途中の作品。Jerney Kaagmanのボーカル、Koerts兄弟の鍵盤とギター、そしてメロトロン/シンセ導入による音の広がりが、1973年という時点の空気をよく映している。オランダの70年代ロックを語るうえで、初期の重要な一枚として扱われる作品だ。
トラックリスト
- Atlantis (16:22)
- B1 – Maybe Tomorrow, Maybe Tonight (3:12)
- B2 – Interlude (1:57)
- B3 – Fanfare (6:03)
- B4 – Theme From Atlantis (1:50)
- B5 – Love, Please Close The Door (4:11)
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Can – Can (1978)
Can『Can』について
Canは、1960年代末にケルンで結成されたドイツの実験音楽/ロック・バンドである。ジャキ・リーベツァイトの一定したリズム、イルミン・シュミットの鍵盤、ホルガー・シュカイの編集的なベース/テープ処理、マイケル・カローリのギターを軸に、サイケデリック・ロック、スペース・ロック、実験音楽を行き来する作風で知られる。
本作『Can』は1978年に登場した作品で、バンド名をそのまま冠したタイトル盤。レーベルや流通の事情で別名義でも出ているが、中心にあるのはCanの1980年代以前の活動をまとめる形の音源群である。録音はInner Space Studio、ミックスはベルリンのHansa-Tonstudiosで行われている。2010年盤は180グラム仕様の再発盤。
作品の位置づけ
Canのディスコグラフィの中では、1970年代後半の時期を示す一枚として見やすい。初期の強い即興性と編集感覚、リズムの反復、音の断片をつなぐ構成といった、バンドの特徴がそのまま残っている時期の記録である。
Canはクラウトロックの代表格として語られることが多く、Neu!、Faust、Amon Düül II などと並べて言及されることも多い。とはいえ、単純に同時代のドイツ産ロックというだけではなく、ロック、ファンク、ミニマルな反復、ノイズ処理、映画音楽的な場面転換が同居する点に独自性がある。
この盤で聴こえるCanらしさ
Canの音は、派手なソロや分かりやすい展開より、反復の中で少しずつズレや変化が起きる構造に特徴がある。本作でもその手触りは変わらず、リズムが前に出る場面、空間の広がりを感じる場面、断片的な歌やフレーズが差し込まれる場面が並ぶ。
実際に聴くと、演奏がきっちり固定されているというより、各パートが互いに様子を見ながら進む感じがある。ジャキ・リーベツァイトのドラムは拍を強く主張しすぎず、一定の推進力を保ちながら曲の輪郭を作る。そこにホルガー・シュカイの低音や編集的な処理が重なり、イルミン・シュミットの鍵盤が空間を埋める。ロックでありながら、曲の中心が常に少しずつ動いている印象である。
メンバーと時代背景
Canの中核は、イルミン・シュミット、ホルガー・シュカイ、ジャキ・リーベツァイト、マイケル・カローリの4人。そこにマルコム・ムーニーやダモ鈴木が加わった時期には、即興と反復のバランスがさらに際立った。1970年代後半のCanは、初期の荒さを残しつつも、より構成の意識が見える段階にある。
この時代のCanは、英国や米国のロックとは別の流れで語られることが多い。プログレッシブ・ロックのように大仰な組曲へ向かうわけでもなく、ハードロックのようにリフを前面に出すわけでもない。むしろ、反復、断片、空気感、ミックスの処理によって曲を成立させる点が重要である。
代表曲との関係
Canの代表曲としては、国際的に知られたポップ・サティア「I Want More」や、「Halleluwah」「Vitamin C」「Mother Sky」などが挙げられることが多い。本作はそうした広く知られた代表曲中心の編集盤というより、バンドの語法そのものを確認するための一枚として捉えやすい。
そのため、Canの名前だけを知っている場合でも、単発の名曲集とは違う聴き方になる。曲単位の強さより、セッション的な流れ、バンド内で共有されている反復の感覚が前面に出る。
再発盤について
2010年の盤は180グラム仕様の再発盤である。オリジナルの1978年盤とは発売時期が異なるため、音源そのものの時代と、手元にあるレコード盤の製造年は分けて見ておく必要がある。ジャケットやプレス仕様は再発盤ならではの要素で、内容面はオリジナルの作品を基にしている。
まとめ
『Can』は、Canというバンドの輪郭をそのまま示すようなタイトル盤である。クラウトロックの文脈、反復と即興のあいだを行き来する演奏、映画音楽にも通じる場面転換など、グループの核が見えやすい。
1970年代ドイツの実験ロックを知るうえで、Canの位置を確認するための一枚として整理できる内容である。
トラックリスト
- A1 – All Gates Open (8:16)
- A2 – Safe (8:36)
- A3 – Sunday Jam (4:17)
- B1 – Sodom (5:42)
- B2 – A Spectacle (5:48)
- B3 – E.F.S. Nr. 99 (“Can Can”) (3:16)
- B4 – Ping Pong (0:25)
- B5 – Can Be (3:00)
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National Health – D.S. Al Coda (1982)
National Health『D.S. Al Coda』(1982)
National Healthは、イングランドのカンタベリーで1975年に結成されたプログレッシブ・ロック・バンドだ。カンタベリー・シーンらしい複雑な演奏と、ジャズ由来のフレーズを組み合わせた音楽で知られる。『D.S. Al Coda』は1982年にフランスで登場した作品で、バンドの活動末期にあたる時期の記録になる。
作品の位置づけ
National Healthは1981年に解散しているので、このアルバムはその終盤の流れを受けたものとして聴かれることが多い。録音は1981年10月から11月にかけてロンドンのMatrixで行われており、バンドの活動の締めくくりに近い時期の音が収められている。
メンバーには、John Greaves、Bill Bruford、Dave Stewart、Neil Murray、Pip Pyle、Amanda Parsons、Mont Campbell、John Mitchell、Alan Gowen、Phil Miller、Phil Leeといった名前が並ぶ。カンタベリー系、あるいは周辺の英国プログレ文脈を追っていると、よく見かける顔ぶれだ。National Healthというグループ自体が、演奏技術の高さとアンサンブルの細かさで語られやすい存在でもある。
音の印象
この作品は、ジャズ・ロックの流れを土台にしながら、曲の展開やリズムの切り替えが細かい。ロックの推進力だけで押し切るタイプではなく、各パートが絡み合う構成の妙が前に出る。Bill Brufordの参加もあって、リズム面の緊張感ははっきりしている。
National Healthの音は、同じカンタベリー系でも、Soft Machineの後期やHatfield and the North、あるいはDave Stewart周辺のプロジェクトと比較されることが多い。そうした中で『D.S. Al Coda』は、よりアンサンブル志向の強い一作として受け取られることがある。
ジャンルとスタイル
- ジャンル: Jazz、Rock
- スタイル: Art Rock、Jazz-Rock、Prog Rock
この並びどおり、即興性よりも作曲と編成の組み立てが目立つ内容だ。ジャズ・ロックの要素を含みつつ、プログレッシブ・ロックの複雑な構成が中心にある。
代表曲について
National Healthは、単独の大きなヒット曲で知られるバンドというより、アルバム単位で語られることが多い。『D.S. Al Coda』についても、曲単位の知名度より、作品全体の流れや演奏の密度で評価されやすいタイプの盤だ。
まとめ
『D.S. Al Coda』は、カンタベリー系プログレの文脈をそのまま引き継いだような、緻密な演奏とジャズ・ロックの要素が前面に出た作品だ。1981年の解散直前に録音され、1982年にフランスでリリースされたことで、バンドの終盤を記録した一枚として位置づけられる。
トラックリスト
- A1 – Portrait Of A Shrinking Man (5:35)
- A2 – TNTFX (3:11)
- A3 – Black Hat (4:52)
- A4 – I Feel A Night Coming On (6:38)
- A5 – Arriving Twice (2:20)
- B1 – Shining Water (8:50)
- B2 – Tales Of A Damson Knight (1:55)
- B3 – Flanagans People (7:31)
- B4 – Toad Of Toad Hall (5:35)
関連動画
- National Health – D.S. al Coda (Full Album)
- National Health – Portrait of a Shrinking Man
- National Health – T.N.T.F.X
- National Health – Black Hat
- National Health – I Feel A Night Coming On
- National Health – Arriving Twice
- National Health – Shining Water
- National Health – Tales of a Damson Knight
- National Health – Flanagan’s People
- National Health – Toad Of Toad Hall
The Whispers – This Kind Of Lovin’ (1981)
The Whispers / This Kind Of Lovin’(1981)
The Whispersは、1960年代から活動を続けるロサンゼルスのソウル・グループだ。男性ヴォーカル・グループらしい整ったハーモニーと、80年代以降の洗練されたR&Bサウンドの両方を持つ存在として知られている。This Kind Of Lovin’は1981年の作品で、グループがSolar周辺で存在感を強めていく時期の1枚にあたる。
作品の位置づけ
1981年という時期のThe Whispersは、70年代後半のディスコ期を経て、より都会的なソウル/ダンスR&Bへ軸足を置いていた。1978年の「And The Beat Goes On」、1980年の「It’s A Love Thing」といったヒットで知られる流れの中にある作品で、グループの名前をR&Bチャート上位に定着させていく時期のタイトルでもある。
レーベル表記には℗ 1981 Dick Griffey Productions、© 1981 RCA Recordsとあり、当時のSolar系ソウル作品らしい制作背景が見える。ジャケットやクレジット面も含めて、1980年代初頭のUSソウル・アルバムとしての佇まいがある。
サウンドの印象
この時期のThe Whispersらしく、曲の芯にはメロディ重視の歌い回しと、複数人の声がきれいに重なるコーラスがある。ファルセットを押し出すというより、輪郭のそろったヴォーカルを前に出しながら、リズム隊と鍵盤で流れを作るタイプの作りだ。ディスコの延長線上にありつつ、踊るためだけでなく歌を聴かせる構成が残っているところが特徴的だ。
実際に聴くと、派手な展開で引っ張る作品というより、グループの声の揃い方とリズムの置き方で聴かせるタイプに感じられる。The Whispersは派手な個性を前面に出すグループというより、アンサンブルの精度で魅せる印象が強い。
代表曲とのつながり
収録曲の中核を語るうえでは、同時期のヒット曲群と並べて捉えるのがわかりやすい。The Whispersは1980年前後に「It’s A Love Thing」でR&Bチャート2位を記録し、翌1982年には「In The Raw」もヒットさせている。少し後の1987年には「Rock Steady」でR&Bチャート1位に到達しており、This Kind Of Lovin’はその中間にある重要な時期の一作という位置づけだ。
- 「And The Beat Goes On」:1978年の代表曲
- 「It’s A Love Thing」:1980年のヒット
- 「In The Raw」:1982年のヒット
- 「Rock Steady」:1987年の最大級のヒット
同時代との関係
1981年前後のソウル/R&Bでは、The Whispersのようにコーラスを生かしたグループが、ダンス・ミュージックの流れの中で洗練を進めていた。近い文脈では、同じくグループ・ヴォーカルを軸にした作品群や、ディスコ後のブラック・ミュージックの流れに接続するアーティストたちが思い浮かぶ。The Whispersはその中でも、歌のバランスが整ったグループとして聴かれてきた存在だ。
グループについて
The Whispersは1964年にカリフォルニア州ワッツで結成され、ロサンゼルスを拠点に活動してきた。オリジナル・メンバーにはWallace Scott、Walter Scott、Nicholas Caldwell、Gordy Harmon、Marcus Hutsonが含まれる。長い活動歴の中でメンバー変遷はあるが、グループとしては50年以上にわたり活動を続け、R&Bチャートでも多数のヒットを記録している。
2003年にはVocal Group Hall of Fame、2014年にはR&B Music Hall of Fameに選出されている。ハーモニー・グループとしての評価が、長いキャリアを通して積み上がってきたことがわかる。
まとめ
This Kind Of Lovin’は、The Whispersが70年代のディスコ期から80年代の都会的なR&Bへ移っていく流れの中にある1981年作だ。派手さよりも、整ったコーラス、リズムの安定感、メロディの運びで聴かせるタイプの作品として見ると、グループの持ち味がわかりやすい。代表曲「And The Beat Goes On」や「It’s A Love Thing」に接続する時期のタイトルとして押さえておきたい1枚だ。
トラックリスト
- A1 – This Kind Of Lovin’ (5:00)
- A2 – World Of A Thousand Dreams (3:45)
- A3 – I’m The One For You (4:05)
- A4 – Got To Get Away (5:00)
- B1 – I’m Gonna Love You More (6:03)
- B2 – Can’t Stop Loving You Baby (4:19)
- B3 – What Will I Do (4:05)
- B4 – The Bright Lights And You Girl (3:25)
関連動画
- The Whispers – This kind of lovin’ ”Edit” (1981)
- The Whispers – I’m Gonna Love You More (1981) (Maxi 45T)
- THE WHISPERS … CAN’T STOP LOVING YOU BABY…..
- The Whispers – World of a Thousand Dreams
- The Whispers – I’m The One For You
- The Whispers – The Bright Lights and You Girl
- The Whispers – Got to Get Away
- The Whispers – This Kind Of Lovin’ (1981)
- Whispers – I’m The One For You.wmv
- Got to Get Away
Gruppo Sportivo – Sombrero Times (1984)
Gruppo Sportivo「Sombrero Times」について
「Sombrero Times」は、オランダのニューウェイブ/ポップ・バンド、Gruppo Sportivoが1984年に発表した作品。バンドは1976年にハーグで結成されていて、この時期にはすでにユーモアを含んだポップ感覚と、ひねりのあるバンド・サウンドで知られていた。
この作品は、Rock、Popを軸にしながら、New Wave、Prog Rock、Indie Rockの要素も並ぶ1枚。録音はオランダのSpitsbergen Studioで行われている。レコードには歌詞入りのインナーシートが付属していた。
作品の位置づけ
1984年という年は、Gruppo Sportivoにとって、80年代前半の流れの中で活動を続けていた時期にあたる。バンド名義の中心はHans Vandenburgで、メンバーにはMartin Bakker、Max Mollinger、Eric Wehrmeyer、Josee Van Ierselらが並ぶ。複数のメンバーがクレジットされているところからも、バンドとしてのアンサンブルを前面に出した作品だったことがうかがえる。
Gruppo Sportivoは、同時代の欧州ニューウェイブやポップ・ロックの文脈で語られることが多い。ひとことで言えば、軽いノリだけで押し切るタイプではなく、メロディの作り方や曲の組み立てに少し癖があるバンド。そのため、単純なポップ・バンドとも、硬質なニューウェイブ・バンドとも少し違う立ち位置にある。
サウンドの印象
「Sombrero Times」は、タイトルから受ける陽気さだけでなく、実際の中身もリズムの立ち方やギターの刻み、コーラスの運びに特徴があるタイプの作品として見られる。ニューウェイブらしい乾いた感触を持ちながら、ポップ・ロックとしての聴きやすさも残している構成。そこに、少しプログレッシブな展開や、インディー寄りの距離感が重なる形。
このバンドの持ち味としては、英米勢のコピーに寄りきらないところが挙げやすい。たとえば、同時代の英国ニューウェイブやポップ・ロックと比較すると、よりコミカルで、曲の見せ方に遊びがある印象になりやすい。とはいえ、音だけでふざけているというより、演奏はきちんとまとまっているタイプ。
楽曲と資料面
このレコードについて、特定の代表曲やヒット曲の情報は確認できる範囲では目立っていない。とはいえ、インナーシートに歌詞が付いている点からも、楽曲そのものを追いやすい作りになっているのは確かだ。歌詞を読みながら聴くことで、Gruppo Sportivoらしい言葉遊びや軽妙さを追う楽しみが出てくる構成だろう。
また、1984年のヨーロッパ盤として出ているので、オリジナル時点の空気をそのまま伝える資料性もある。再発盤ではなく当時のリリースなので、80年代前半のバンドの音像やパッケージをそのまま知る手がかりになっている。
まとめ
「Sombrero Times」は、Dutch new wave/popの流れの中で、Gruppo Sportivoの個性が出やすい時期の作品。ロック、ポップを土台にしつつ、ニューウェイブ的な軽さと、少しひねった曲づくりが同居した1枚として捉えやすい。バンドのディスコグラフィーの中でも、80年代前半の活動を追ううえで押さえておきたいタイトルのひとつだ。
トラックリスト
- A1 – Radar (3:03)
- A2 – Why-Oh-Why (5:29)
- A3 – Give It Up (4:38)
- A4 – Get Up Enjoy (4:00)
- A5 – Two Tickets For Rio (3:23)
- B1 – Good In Bad (3:20)
- B2 – Family Life (4:22)
- B3 – Girls In Slow Motion (4:06)
- B4 – Mumbo Jumbo (3:25)
- B5 – What Kind Of Normal Guy Am I (3:49)
関連動画
- Gruppo Sportivo Sombrero Times Radar
- Gruppo Sportivo Sombrero Times Why-O-Why
- Gruppo Sportivo Sombrero Times Give It Up
- Gruppo Sportivo – Get Up Enjoy
- Gruppo Sportivo Sombrero Times Two Tickets For Rio
- Gruppo Sportivo – Good In Bad
- Gruppo Sportivo – Family Life
- Gruppo Sportivo – Girls In Slow-Motion (Eating A Banana)
- Gruppo Sportivo – Mumbo Jumbo
- Gruppo Sportivo – What Kind Of Normal Guy Am I?
Fabrizio De André – Fabrizio De Andre’ (1981)
Fabrizio De André『Fabrizio De Andre’』について
イタリアのシンガーソングライター、Fabrizio De Andréが1981年に発表したアルバム『Fabrizio De Andre’』。通称では「L’Indiano」と呼ばれる作品で、フレデリック・レミントンの絵画「The Outlier」をジャケットに使ったことでも知られている。2010年には、Sony Italiaによるブルー・ヴァイナルの限定再発盤が出ている。
De Andréは、イタリアのカンタウトーレを代表する存在のひとりで、社会性のある視点、物語性の強い歌詞、民謡や地方の言葉を取り入れた作風で語られることが多い。この1981年作も、その流れの中にある1枚で、80年代以降の彼の活動を語るうえで外せない位置づけの作品。
作品の位置づけ
1981年は、De Andréがすでに長く第一線で活動していた時期。1960年代のデビューから、1968年の「La Canzone di Marinella」の成功を経て、イタリアの大衆音楽の中で確かな地位を築いていた。その後も、単なるヒットメーカーというより、歌詞の内容や視点そのものに重心を置く表現者として評価されていく。
この『Fabrizio De Andre’』は、そうした彼の作家性が成熟した時期のアルバムで、ポップ・ロックの形式の中に、語り口のある歌、社会や土地の記憶に触れる要素が入り込んでいる。80年代のイタリア音楽の文脈で見ると、より洗練されたアレンジや制作を採り入れながらも、De Andréらしい歌の中心はぶれない、という印象の作品。
ジャケットとタイトル「L’Indiano」
この作品は「L’Indiano」の名でも流通している。ジャケットに使われたのは、アメリカの画家フレデリック・レミントンによる1909年の絵画「The Outlier」。ブルックリン美術館所蔵の作品で、イメージ面でもアルバムの記憶に残る要素になっている。
イタリアのカンタウトーレ作品では、音だけでなく装丁や題材の選び方も重要になりやすいが、この盤もその例に入る。音楽とビジュアルの結びつきが強い1枚。
収録曲の特徴
このアルバムでは、「Ave Maria」が特に知られている。リリースノートにもある通り、この曲はサルデーニャの伝統的なイタリア民謡をもとにした再構成・翻案で、De Andréが地方の音楽素材を自分の言葉に置き換える姿勢がよく出ている。
彼は1980年代以降、ジェノヴァ方言やガッルーラ方言、ナポリ方言なども歌に取り入れていくが、その背景には、標準語だけでは拾いきれない土地の感情や生活の手触りを、歌の中に残そうとする意識があるように見える。このアルバムも、その延長線上の作品として聴ける。
オリジナル盤と2010年再発盤の違い
オリジナルは1981年のDischi Ricordi S.p.A.からのリリース。2010年盤はSony Italiaによる限定再発で、ブルー・ヴァイナル仕様、かつ番号入りステッカー付きの仕様になっている。コレクター向けの再発としての性格が強い盤。
表記面では、アーティスト名の綴りがジャケットの表、裏、スパイン、CDで異なる形になっている点も特徴。再発盤を手に取ると、オリジナル時代の作品が後年に色付き盤としてシリーズ化され、別のかたちで流通していることがわかる。
まとめ
『Fabrizio De Andre’』は、Fabrizio De Andréのディスコグラフィーの中でも、作家性と歌の親しみやすさが同居した1981年の作品。イタリアのカンタウトーレ文化、ポップ・ロック、民謡の再解釈という複数の要素が、彼らしい距離感でまとまっている1枚。
「Ave Maria」のような伝統曲の扱い、レミントンの絵画を使ったジャケット、そして後年のブルー・ヴァイナル再発まで含めて、作品そのものだけでなく、周辺の情報も印象に残るアルバム。
トラックリスト
- A1 – Quello Che Non Ho (5:48)
- A2 – Canto Del Servo Pastore (3:11)
- A3 – Fiume Sand Creek (5:16)
- A4 – Ave Maria (5:42)
- B1 – Hotel Supramonte (4:31)
- B2 – Franziska (5:28)
- B3 – Se Ti Tagliassero A Pezzetti (4:58)
- B4 – Verdi Pascoli (5:12)
関連動画
- Quello che non ho – Fabrizio De Andrè
- Fabrizio de Andrè – CANTO DEL SERVO PASTORE (Indiano)
- Fiume Sand Creek – Fabrizio De Andrè
- Fabrizio De Andrè – AVE MARIA (Indiano)
- Hotel Supramonte – Fabrizio De Andrè
- Fabrizio de Andrè – FRANZISKA (Indiano)
- Se ti tagliassero a pezzetti – Fabrizio De Andrè
- Fabrizio de Andrè – VERDI PASCOLI (Indiano)
- Quello che non ho
AIR – The Virgin Suicides Redux (2000)
AIR『The Virgin Suicides Redux』について
AIRは、ジャン=ブノワ・ダンケルとニコラ・ゴダンによるフランスの電子音楽デュオ。1995年の始動以来、エレクトロニカ、ロック、映画音楽の領域をまたぎながら活動してきた。この『The Virgin Suicides Redux』は、2000年に発表された映画『ヴァージン・スーサイズ』のサウンドトラックを、25周年記念盤としてあらためてまとめた2025年盤である。
原作はソフィア・コッポラ監督の長編デビュー作『The Virgin Suicides』。AIRにとっては、映画作品と強く結びついた代表的な仕事のひとつであり、バンドのディスコグラフィーの中でも、アルバム単体というより「映像のための音楽」としての存在感がはっきりした作品だ。
作品の位置づけ
『The Virgin Suicides』は、AIRが映画音楽の文脈で広く知られるきっかけになったタイトルのひとつ。以後のAIRにも通じる、空間の広いシンセ、低めのテンポ、音数を絞ったアレンジが中心で、作品全体を通して「劇伴として機能すること」と「単独のアルバムとして聴けること」の両方が意識された作りになっている。
2000年当時のAIRは、同時代のフレンチ・エレクトロニックの流れの中でも、ダフト・パンクのようなダンス寄りの方向性とは少し異なり、ブライアン・イーノ、ヴァンゲリス、クラフトワーク、あるいは映画音楽の系譜に近い耳で語られることが多かった。『The Virgin Suicides』も、その文脈でとらえやすい一枚である。
サウンドの特徴
この作品では、シンセサイザーを軸にした旋律、控えめなビート、空気を含んだ鍵盤音、ロックの編成を思わせる要素が、かなり整った形で並ぶ。ジャズやフューチャー・ジャズ、アンビエントといったタグが付くのも、音の隙間やコード感、リズムの置き方に理由がある。派手な展開で引っ張るというより、同じ温度のまま場面を切り替えていく印象が強い。
映画音楽としては、登場人物の心理や郊外の空気感を説明しすぎず、画面の外側にある余白を埋める役割が大きい。アルバムとして聴くと、短い曲がつながりながら一つの流れを作っていく構成で、曲ごとの主張より、全体の距離感が前に出る。
今回の2025年盤について
2025年盤は「New Analog Mix – 25th Anniversary Edition」として案内されている。オリジナルの2000年盤と比べると、単なる再発ではなく、アナログ・ミックスを前面に出した記念盤という位置づけになる。印刷されたインナー・スリーブが付属し、ドイツで印刷・製造された盤であることも明記されている。
クレジット面では、インナー・スリーブにドラムの表記ミスがあること、またランアウト部の「1+」と「V=」が鏡像になっていることが記録されている。こうした点も、再発盤ならではの細かな特徴である。
聴きどころとして目に入る曲
『The Virgin Suicides』では、映画の中で使われた楽曲や、作品全体の印象を決定づけるモチーフがいくつか知られている。中でも、バンドの代表作として語られやすいのは、アルバム全体の空気を象徴するような曲群で、サウンドトラックでありながら、AIRらしいメロディの見え方がはっきりしている点が特徴だ。
ただし、この作品はシングルヒットで押すタイプではなく、1曲ごとの知名度よりも、アルバム全体の統一感で記憶される作品である。
まとめ
『The Virgin Suicides Redux』は、AIRが映画音楽の領域で残した代表的な作品『The Virgin Suicides』を、25周年記念盤として再提示した2025年のアナログ盤。2000年のオリジナルが持っていた、静けさ、郊外的な距離感、シンセ主体の劇伴性はそのままに、再発盤としての仕様が加わった一枚である。
AIRのディスコグラフィーをたどるうえでも、ソフィア・コッポラ作品との関係をたどるうえでも、重要な位置にあるタイトルと言える。
トラックリスト
- A1 – Playground Love (3:32)
- A2 – Clouds Up (1:30)
- A3 – Bathroom Girl (2:26)
- A4 – Cemetary Party (2:36)
- A5 – Dark Messages (2:29)
- A6 – The Word ‘Hurricane’ (2:31)
- A7 – Dirty Trip (6:14)
- B1 – Highschool Lover (Theme From The Virgin Suicides) (2:40)
- B2 – Afternoon Sister (2:24)
- B3 – Ghost Song (1:58)
- B4 – Empty House (2:57)
- B5 – Dead Bodies (2:59)
- B6 – Suicide Underground (5:54)
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Granada – Valle Del Pas (1978)
Granada『Valle Del Pas』について
『Valle Del Pas』は、スペイン・マドリードのプログレッシブ・ロック・バンド、Granadaが1978年に発表した作品である。録音はマドリードのEstudios Torresで行われ、ゲートフォールド仕様のジャケットでリリースされた。バンド名のGranadaはスペインのロック文脈ではいくつかの系譜があるが、この作品はマドリード拠点のプログレ・バンドによるものとして位置づけられる。
バンドの背景
Granadaは、マドリードで結成されたスペインのプログレッシブ・ロック・バンドとして知られている。メンバーにはJavier Monforte、Carlos Cárcamo、Carlos García Vaso、Antonio S. Rodríguez、Javier Huidobro、Julio Blasco、Joaquín Blanco、Antonio García Oteyza、Juan Bona、Michael Vorteflich、Miguel Angel Bullido、“Chicho” L. Hipólitoらの名前が並ぶ。編成の詳細は時期によって変動した可能性があるが、この作品がバンドの活動の中で1978年時点の到達点のひとつであることは確かである。
1970年代後半のスペインでは、英米のプログレッシブ・ロックの影響を受けつつ、独自の感触を持つバンドが各地で登場していた。Granadaもその流れの中にあるグループとして捉えられる。マドリードという都市圏から出てきたバンドらしく、当時の国内ロックの文脈の中で受け止められていた作品といえる。
作品の位置づけ
『Valle Del Pas』は1978年のオリジナル作品で、Granadaの初期活動を知るうえで重要な一枚である。バンド名の認知度というより、スペイン産プログレの実例として参照されるタイプの作品で、同時代の欧州プログレに通じる構成志向を持つアルバムとして扱われることが多い。
この時期のスペイン・プログレは、長尺曲、組曲的な展開、キーボード主体のアレンジ、ギターとリズム隊の切り替えなど、演奏面の情報量が多い作品が目立つ。Granadaの『Valle Del Pas』も、そうした時代の作法の中で語られることが自然な作品である。
録音と仕様
本作はEstudios Torres, Madridで録音されている。リリース時の仕様としてはゲートフォールド・カバーが採用されており、アナログ盤としての存在感を意識した作りになっている。ジャケットを広げて眺めるタイプの1970年代らしいパッケージで、作品全体の物理的な印象も強い。
聴きどころ
このアルバムの魅力は、スペイン語圏のロックとしての輪郭と、プログレッシブ・ロックとしての構成感が同居している点にある。曲の流れを追っていくと、単なる演奏の巧さだけではなく、場面転換の作り方や楽器同士の受け渡しに1970年代的な手触りが見えてくる。派手なヒット曲で押すタイプというより、アルバム全体で聴かせる性格が強い作品である。
実際に聴くと、音の重ね方や展開の作りに、当時のスペインのロック・シーンらしい素朴さと緊張感が同時に感じられる場面がある。英語圏の有名バンドをなぞるだけではない、ローカルな空気を含んだプログレとして受け止められる一枚である。
同時代の文脈
1978年という年は、プログレッシブ・ロックがすでにピークを過ぎつつあった時期でもある。その中で『Valle Del Pas』のような作品が出ていることは、スペイン国内ではなおプログレ的な表現が機能していたことを示す。英国やイタリアの大物バンドと並べて聴くと、より直接的で土着的な響きが立つこともある。
スペインの70年代ロック全体で見ると、同時代のシーンには手数の多いバンドや、クラシック寄りの構成を持つグループが少なくない。Granadaもその系譜に置くと理解しやすい。国内ロックの中で、プログレの文法を使ってアルバム単位の表現を試みた作品として位置づけられる。
まとめ
Granadaの『Valle Del Pas』は、1978年のスペイン産プログレッシブ・ロックを知るうえで押さえておきたいアルバムである。マドリード録音、ゲートフォールド仕様、そして当時のスペイン・ロックの空気を背負った一枚として、作品そのものの存在感がある。バンドの活動やスペイン・プログレの流れをたどる入口として見ても、意味のあるタイトルである。
トラックリスト
- A1 – No Sé Si Debo (5:03)
- A2 – Breve Silueta De Color Carmín (4:22)
- A3 – Noches Oscuras, Ocas Contentas (5:48)
- A4 – Himno Del Sapo (4:00)
- B1 – Valle Del Pas (7:47)
- B2 – Calle Betis (Atardeciendo) (6:47)
- B3 – Ya Llueve (4:43)
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True Myth – True Myth (1979)
True Myth『True Myth』について
True Mythの『True Myth』は、1979年にカナダでリリースされたデビュー作である。バンドはオンタリオ州ロンドンで、Fanshawe Collegeの音楽学校に通う学生たちのクラス課題をきっかけに結成された。中心にいたのがキーボードのTom Treumuthで、彼の動きがワーナー・ブラザースとの契約につながったとされている。カナダ出身のプログ・ロック作品としてだけでなく、カナダ人アーティストによる初のデジタル録音LPとしても記録されている作品だ。
作品の位置づけ
このアルバムは、True Mythにとって最初のアルバムであり、バンドの出発点そのものにあたる。プロフィール上でも、Tom Treumuthがバンドの中核として機能していたことがはっきりしており、作品の性格もその延長線上で捉えやすい。1970年代後半のカナダのロック文脈に置くと、テクニカルな演奏とスタジオ志向の強い作品群の中で、デジタル録音という新しい手法を採り入れた点が目立つ。
録音と制作の特徴
マスターノートによれば、録音にはSoundstream社の機材が使われている。Soundstreamは1970年代後半の初期デジタル音声実験で知られるオーディオ企業で、この時期のデジタル録音はまだかなり先進的な試みだった。True MythのこのLPは、カナダ人アーティストによる初のデジタル録音LPとされ、世界的にも初期のデジタル・アルバムのひとつに数えられる。技術面での意味合いが強い作品で、1979年当時としてはかなり時代の先を行く記録だったと言える。
盤の仕様
オリジナル盤はゲートフォールド仕様で、さらに大きなインサートが付属する。インサートは古いプリンターの用紙を思わせる作りになっている。加えて、黒白の帯に「True Myth A Rock Digital Recording / Enregisterement Digital Du Rock」と記された仕様も確認できる。見た目の面でも、デジタル録音を前面に出したリリースだったことが分かる。
音楽的な文脈
ジャンル表記はRock、スタイルはProg Rock。1970年代後半のカナダのプログ・ロックといえば、演奏力を前提にした構成や、キーボードを軸にした展開が印象に残る作品が多い。True Mythもそうした流れの中にあるバンドとして見られる。Tom Treumuthがキーボード担当であることからも、バンドの音の組み立てで鍵盤が重要な役割を担っていたことがうかがえる。
メンバー
- Tom Treumuth
- Steve McKenna
- Tony Cook
- Kirk Devereux
- Bob Stirajs
- Malcolm McGuigan
ひとこと
『True Myth』は、単なるデビュー盤というだけでなく、カナダにおける初期デジタル録音の記録としても読めるアルバムである。バンドの始まり、1970年代末のプログ・ロックの空気、そして新しい録音技術の導入が重なった、時代性の強い一枚だ。
トラックリスト
- A1 – Reach For The Heavens (6:06)
- A2 – Light Years Before (6:05)
- A3 – It’s Got To Be (3:13)
- B1 – Time And Time Again (4:45)
- B2 – Space Promenade (4:28)
- B3 – In The Mist (4:56)
- B4 – Song Of The World (4:21)
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Arachnoid – Arachnoid (1979)
Arachnoid『Arachnoid』について
フランスの短命バンド、Arachnoidが残した唯一のアルバム『Arachnoid』は、1979年にオリジナル盤が出た作品として知られている。バンド名は脳を包む膜を指す言葉と、クモの仲間を示す言葉の両方にかかっており、その由来どおり、音の感触にも神経の細部を追うような構成と、実験的な発想が見える作品だ。
ジャンル分けではロック、スタイルとしてはプログレッシブ・ロック、エクスペリメンタル、アヴァンギャルドに置かれている。フランス産のダークなプログレッシブ・ロックの一例として語られることが多く、70年代後半のフランス勢らしい、演奏の切り替えと構成の細かさを持つ一枚という位置づけになる。
作品の位置づけ
Arachnoidは、短い活動期間の中でこの1枚だけを残したバンドだ。バンドは管理面の不足もあり、1978年6月に解散したとされる。つまりこのアルバムは、活動の集大成であると同時に、バンドの全体像を知るほぼ唯一の手がかりでもある。
収録内容の詳細な曲名情報はここでは触れないが、作品全体としては、当時のフランス・プログレに見られる、組曲的な展開や、楽器同士のぶつかり合いを重視した作りが想像しやすい。英国の同時代プログレと比べると、より硬質で、実験寄りの進め方を取るフランス勢の流れに置けそうな存在だ。
1988年盤について
手元の盤は1988年のフランス盤で、インサート付き。片面にはグループストーリー、もう片面にはMuseaの製品案内が載っている仕様だ。こうした再発盤では、音源そのものに加えて、当時のバンド紹介やレーベル資料が付くことで、作品の背景をたどりやすくなるのが特徴だ。
オリジナル盤が1979年、こちらの盤は1988年という区別になる。作品そのものは70年代末のフランス・プログレの文脈に属しつつ、1980年代の再発によって改めて流通した、という見方がしやすい。
メンバー
- Patrick Woindrich
- Marc Meryl
- François Faugieres
- Bernard Minig
- Pierre Kuti
- Nicolas Popowski
まとめ
『Arachnoid』は、フランスの短命バンドが残した唯一作であり、70年代末フランス・プログレの一断面を示すアルバムだ。バンド名の由来まで含めて、頭の中の感覚や神経の動きに触れるような方向性が意識されているように見える。派手なヒット曲で押すタイプの作品ではなく、アルバム全体の流れで個性を伝える一枚として捉えやすい。
トラックリスト
- A1 – Le Chamadère (13:57)
- A2 – Piano Caveau (7:24)
- A3 – In The Screen Side Of Your Eyes (4:04)
- B1 – Toutes Ces Images / Segamisec Setout (8:15)
- B2 – La Guêpe (8:44)
- B3 – L’Adieu Au Pierrot / Final (4:00)
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Three Angry Poles – Motorcycle Maniac (1986)
Three Angry Poles / Motorcycle Maniac(1986)
Three Angry Polesの「Motorcycle Maniac」は、1986年にベルギーで出た作品です。メンバーはLuc Van Acker、Jean-Marc Lederman、Didier Moensの3人。Electronicを軸に、EBMとElectroの感触を持つ、80年代中盤のベルギーらしい一枚として見ておきたい作品です。
作品の輪郭
タイトルからも分かる通り、バイクや速度感を連想させる語感を持つ作品ですが、内容は単なる勢い頼みではなく、当時の欧州エレクトロ/EBMの文脈にある、機械的なリズムと直線的なビートが前面に出た作りです。ベルギーはこの時期、Front 242をはじめとするEBMの重要な産地として知られていて、この作品もその空気の中に置くと見えやすいです。
Luc Van Ackerはベルギーのエレクトロ/インダストリアル周辺で知られる人物で、Jean-Marc Ledermanも同じく80年代ベルギーのシーンで存在感を持つミュージシャンです。3人の名前が並ぶだけでも、当時のローカルな実験性とクラブ向きの硬さが同居するイメージが立ちます。
音の特徴
この時代のEBMらしく、打ち込みの反復、乾いたシンセ音、ベースの押し出しが核になっているタイプです。メロディを大きく歌い上げるというより、リズムの反復と音色の質感で引っ張る方向性。Electroの要素もあるので、完全に無機質へ寄り切るというより、フックのあるビート感が残るのもポイントです。
聴感としては、ロックのバンド編成よりも、クラブやダンスフロアを意識した設計に近い印象を持ちやすい作品です。ギターの主張で押すのではなく、シーケンスとドラムマシンの推進力で前へ進む感じ。80年代半ばのベルギー製ダンス・エレクトロの空気がそのまま残っているような手触りです。
同時代の文脈
1986年という時期は、EBMがひとつの形式として固まりつつあった頃です。Front 242、The Neon Judgement、Nitzer Ebbのような名前が思い浮かぶ時代で、Three Angry Polesもその周辺にある作品として整理しやすいです。とはいえ、彼らは大きなアルバム作品で知られるというより、ベルギーのシーンの中で短く鋭い存在感を残すタイプのプロジェクトとして見られます。
その意味では、「Motorcycle Maniac」は、当時のEBM/Electroの最前線にある、ベルギー産の1枚として位置づけられる作品です。クラブ、シンセ、機械的反復というキーワードでつながる時代性がはっきりしています。
リリース時のポイント
この作品には「Dedicated to the spirit of Ecstasy.」というリリースノートが付いています。スピードや移動のイメージを呼び込む一文で、タイトルとあわせて作品全体のイメージを補強している形です。レコードとしては1986年当時の空気をそのまま抱えた初出作品として見るのが自然です。
まとめ
「Motorcycle Maniac」は、1986年のベルギー産Electronic作品として、EBMとElectroの交差点に置きやすい一枚です。Three Angry Polesという名義のもと、Luc Van Acker、Jean-Marc Lederman、Didier Moensの3人が、80年代中盤の機械的なダンス音楽の感覚を凝縮した作品、と捉えられます。
ベルギーEBMの文脈に触れるときに、Front 242などと並べて見たくなるタイプのタイトルです。
トラックリスト
- A – Motorcycle Maniac (4:43)
- B1 – It’s All Over (3:59)
- B2 – 5 A.M. (3:51)
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Liquid Liquid – Remixes (1998)
Liquid Liquid『Remixes』について
Liquid Liquidは、1980年代前半のニューヨーク地下シーンを代表するバンドのひとつで、99 Recordsから活動を広げたグループだ。本作『Remixes』は1998年に登場したタイトルで、バンドの既発曲を別の形で捉え直した内容として位置づけられる。Liquid Liquidといえば、〈Cavern〉が後年ヒップホップ文脈でも語られる存在で、Grandmaster Flash & The Furious Fiveの〈White Lines〉との関連でも名前が挙がることが多い。
Liquid Liquidというバンドの輪郭
このバンドは、最初から現在よく知られる形だったわけではない。もともとは別名義でより実験的な音を鳴らしていたが、Liquid Liquidとして再編されると、打楽器を軸にしたリズム主体のスタイルへ寄っていく。観客にパーカッションを持ち寄ってもらうようなライブもあったとされ、その中でDennis Youngがマリンバを持ち込んだことをきっかけに加入したというエピソードも残っている。こうした経緯から、彼らの音はロックのバンド編成というより、パーカッション・アンサンブルに近い感触を持つ。
『Remixes』の内容と聴こえ方
タイトルどおり、元曲の構造を別角度から見せる作品として受け取れる一枚だ。Liquid Liquidの元来の持ち味である反復、細かい打撃音、ベースの粘りが前面に出やすく、ダンス・ミュージックと実験性のあいだを行き来するバンドの性格が見えやすい。メロディを追うというより、リズムの配置や音の間を聴くタイプの内容で、同時代のポストパンクや初期ヒップホップの周辺にあった空気ともつながる。
実際に聴くと、音数そのものは多くなくても、各パートの入り方と抜け方にかなり意識が向く。マリンバ、ベース、ドラム、ヴォーカルがそれぞれ別の役割を保ちながら、全体としては推進力を作る形だ。派手に展開するというより、同じフレーズを少しずつずらしていく感覚が目立つ。そうした作りは、後のブレイクビーツやインディー・ダンス系の耳にもつながりやすいだろう。
代表曲との関係
Liquid Liquidを語るうえで避けて通れないのが〈Cavern〉だ。本作でも、グループを象徴するあの鋭いリズム感や反復の設計が重要な要素として残る。〈White Lines〉の件で広く知られるようになったことで、彼らは「サンプリング元」として語られがちだが、元の音源を聴くと、単なる素材以上に独特のバンド感がある。そこがこのグループの面白さだと思う。
同時代の文脈
Liquid Liquidは、ESGやBush Tetras、Materialあたりと並べて語られることが多いタイプの存在だ。ニューヨークのダウンタウン・シーンの中で、ロック、ファンク、ダブ、初期ヒップホップの要素が交差していた時代のバンドとして見ると、輪郭がつかみやすい。いわゆるギター主体のロックとは少し違い、リズムの切り方や音の空間の使い方に重心がある。
盤としての情報
この盤はUKリリースで、ダイカット仕様のスリーブという点も特徴になっている。1998年時点の作品として、80年代初期のオリジナル活動をそのまま並べるというより、後年の視点でLiquid Liquidの音を再確認する意味合いが強い。
Liquid Liquidの作品群の中では、バンドの核にある反復とパーカッシブな感覚を、比較的わかりやすく示す一枚として捉えられる。ヒップホップ史の文脈でも、ポストパンクの文脈でも名前が出てくる理由が、音の作り方から伝わる内容だ。
トラックリスト
- A – Cavern (The Cut Chemist Rocks A Rave In A Missile Silo Remix)
- B – Scraper (Psychonauts Remix)