Guru Guru – UFO (1970)
Guru Guru『UFO』について
Guru Guruは、1968年にドイツで結成されたクラウトロック・バンドで、Mani Neumeierを中心に活動してきたグループだ。政治性や風刺を含んだロックから出発し、その後は実験性の強い作品を次々と発表していく。『UFO』はその初期にあたる1970年の作品で、バンドの出発点を知るうえで重要な一枚として位置づけられる。
この盤は1996年にドイツで出た再発盤で、レーベル表記では1970年録音・1996年発行という形になっている。オリジナル時点の空気をそのまま伝える内容として、初期クラウトロックの流れをたどる際に外せないタイトルのひとつだ。
作品の内容と初期Guru Guruの輪郭
『UFO』には、当時のロックの枠を押し広げるような長尺演奏と、即興的な展開が目立つ。曲ごとの構成に頼るというより、演奏の流れそのものを聴かせるタイプのアルバムで、反復、ノイズ、間の取り方が前面に出る。のちのクラウトロック作品に通じる要素が、この時点ですでにかなりはっきりしている。
バンドの初期はライブ中心で始まり、スタジオ録音に入ったのがこのデビュー作の時期にあたる。以後の作品ではプロデューサーとの協働も始まるが、『UFO』はその前段階にあるため、より荒さと自由度が強く感じられる構成だ。
聴感上の特徴
実際に耳に入るのは、ドラムの推進力、ベースの粘り、ギターや電子音のぶつかり合いだ。ロックのビートを土台にしながら、途中から演奏が崩れたり、別の方向へ逸れたりする。その変化が曲の展開としてそのまま残されている印象がある。
派手なメロディを追う作品ではなく、演奏の持続とズレを楽しむタイプの内容だ。後年の整ったサイケデリック/プログレッシブな録音と比べると、もっと生々しく、ライブ感の強い手触りがある。
同時代の文脈
1970年前後の西ドイツでは、Can、Amon Düül II、Faust、Neu! などと並んで、ロックを英米の模倣から切り離そうとする動きが進んでいた。Guru Guruもその流れの中にいて、特に『UFO』では、後のクラウトロックで定着する反復志向や即興性が、かなり早い段階で見えている。
同時代のバンドの中でも、Guru Guruはユーモアや演奏の暴れ方が前に出る場面があり、同じクラウトロックでも、Canの編集的な緊張感やNeu!の直線的な推進力とは少し違う手触りがある。
アルバムの位置づけ
『UFO』はGuru Guruの初期像をそのまま示す作品だ。のちにメンバー交代を重ねながら活動が続いていくが、この時点では、バンドが何を目指していたのかがかなりはっきり出ている。デビュー作として、グループの基礎を知る入口になっている。
代表曲を一曲で語るというより、アルバム全体の流れで聴く作品だ。タイトル曲を含め、曲単位よりも演奏の連なりが印象に残る内容で、初期クラウトロックの記録として見ても存在感がある。
再発盤について
この1996年盤は、オリジナル1970年盤の再発として流通したものだ。盤面表記にある通り、著作年は1970年、盤の発行は1996年で、ドイツ盤として再度リリースされている。
再発盤では、当時の録音をそのまま聴ける点がいちばん大きい。初期クラウトロックの生々しい演奏と、1960年代末から1970年代初頭の空気が残る一枚として、作品の輪郭はかなり明確だ。
まとめ
Guru Guru『UFO』は、ドイツの初期クラウトロックを語るうえで外せないデビュー作だ。ロック、電子音、即興性がひとまとまりで鳴っていて、バンドのその後の長い活動の出発点にもなっている。作品としては、整った完成度よりも、当時の現場感や実験の始まりが見える内容だ。
トラックリスト
- A1 – Stone In (5:42)
- A2 – Girl Call (6:15)
- A3 – Next Time See You At The Dalai Lhama (6:10)
- B1 – Ufo (10:15)
- B2 – Der LSD-Marsch (8:25)
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The Cocoon – While The Recording Engineer Sleeps (1989)
The Cocoon『While The Recording Engineer Sleeps』について
The Cocoonはドイツのグループで、Gunter Hampel、Matthias Arfmann、Rüdiger Klose、Jürgen Gleueの4人による作品としてこの『While The Recording Engineer Sleeps』を残している。1985年にStudio Harderbergで録音されており、フリー・ジャズとサイケデリック・ロックの接点にある内容として位置づけられる1枚だ。
タイトル曲のように、録音現場の気配をそのまま作品名に取り込んだ作りも印象に残る。特に“Teenage Dope Slaves”はIdiot Studioで録音されており、ほかの曲とは別の場所で収録されたことが記されている。こうした記録からも、まとまりのあるスタジオ作品というより、セッションの流れや場の空気をそのまま閉じ込めたタイプのアルバムとして見えてくる。
作品の位置づけ
オリジナルの制作時期は1985年、盤としてのリリースは2015年。つまり、1980年代半ばの音を後年に聴ける形で残した作品と受け取れる。The Cocoonのキャリア全体の中では、当時のドイツの実験音楽、即興演奏、ロック的なエネルギーが交わる地点を示す記録として扱える。
Gunter Hampelはジャズ/フリー・インプロヴィゼーションの文脈で知られる人物で、この作品でもその流れが土台にある。一方で、ロック寄りの粗い推進力や反復の感触も入り込んでいて、単純なジャズ作品とも、ロック作品とも言い切りにくい構成になっている。
同時代の文脈
1980年代のドイツでは、ジャズの即興性とロックの身体性をまたぐ試みがいくつも生まれていた。The Cocoonもその延長線上で聴ける。比較対象としては、フリー・ジャズの開放感と、クラウトロック以降の反復感、さらにサイケデリックな音の伸びを併せ持つ作品群が思い浮かぶ。とはいえ、このアルバムはそうした要素を整然と並べるのではなく、録音の現場感を残したまま進んでいく印象が強い。
聴きどころ
この盤は、曲の完成度を前に出すというより、演奏の呼吸や音のぶつかり方を追う楽しさがあるタイプだ。ドラム、管楽器、ギター、ベースの距離感が近く、即興の流れがそのまま記録されている感じがある。とくに“Teenage Dope Slaves”は、タイトルの強さもあって、アルバムの中でも少し異なる輪郭を持つ曲として受け取れそうだ。
再発盤が2015年に出ているため、現在この作品に触れる場合はその盤で聴くことになる。音源そのものは1985年録音なので、後年の再発であっても、作品の核は80年代半ばのセッションにある。録音年と盤の発売年が異なる点は、このアルバムを見るうえで押さえておきたいところだ。
まとめ
『While The Recording Engineer Sleeps』は、ドイツのフリー・ジャズとサイケデリック・ロックの交差点に置かれる作品。4人編成の演奏、1985年録音という時代性、そして録音場所をまたいだ収録という事実が、そのまま作品の輪郭になっている。派手なヒット曲を狙うアルバムではなく、セッションの記録として読むと見えやすい1枚だ。
トラックリスト
- A1 – Ventilator Changes Into Airplane (5:23)
- A2 – I Can See Voices (5:50)
- A3 – Bag Lady (5:15)
- A4 – Seems Like I Can’t LSD Your Mind (3:57)
- B1 – The Ritual Of The Boogie Transformation (7:56)
- B2 – While The Recording Engineer Sleeps (5:27)
- B3 – The Shadow Man (4:52)
- B4 – Teenage Dope Slaves (6:55)
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John Wetton – Wetton Manzanera (1987)
John WettonとManzaneraの名前が並ぶ1987年作
「Wetton Manzanera」は、John Wetton名義で1987年に日本で出た作品。レコーディングは1986年3月から8月にかけて、イングランドのSurreyにあるGalery Studioで行われている。タイトルからも分かる通り、John Wettonと、元Roxy Musicのギタリストとして知られるPhil Manzaneraの関係が前面に出た一枚という位置づけになっている。
John Wettonは、1970年代の英国ロックをいくつも渡り歩いたベーシスト、シンガー、ソングライター。King Crimson、Roxy Music、U.K.、Asiaといったバンド歴があり、プレイヤーとしての存在感と、歌い手としての芯のある声で知られてきた人物だ。この盤も、そうしたWettonのキャリアの流れの中で見ていくと輪郭がつかみやすい。
作品の位置づけ
1987年という時期のJohn Wettonは、ハードなプログレッシブ・ロックの文脈だけでなく、より歌を中心にした作品へと軸足を置いていた時期。ここではPhil Manzaneraとの組み合わせが核になっていて、WettonのボーカルとManzaneraのギターがどう噛み合うかが聴きどころになっている。
1970年代のWettonを思い浮かべると、King CrimsonやU.K.時代の緊張感の強い演奏がまず出てくるが、この1987年作では、その路線をそのまま引き継ぐというより、曲の輪郭を立てて聴かせる作りの印象が強い。日本盤として出た1987年リリースという点でも、当時の国内ロック/AOR/ポップロックの受け止め方と重なる部分がありそうだ。
John Wettonの声とPhil Manzaneraのギター
Wettonの歌は、低めの音域に重心があり、輪郭がはっきりしている。こうした声質は、派手に張り上げるタイプではなくても、メロディをしっかり前に出せるのが特徴だ。一方のManzaneraは、Roxy Musicで知られる通り、音数を詰め込みすぎず、フレーズの置き方で曲の空気を作るタイプのギタリストとして語られることが多い。
この組み合わせは、ロックの中でも演奏の密度だけで押すというより、歌とギターの役割分担で聴かせる形に向いている。Wettonのキャリアを追っていると、U.K.やAsiaのような大きな編成のバンドでの存在感とは別に、こうした人物同士の呼吸で進む作品にも魅力がある。
同時代の文脈
1980年代半ばの英ロックには、プログレッシブ・ロックの系譜を持つミュージシャンが、より整った曲構成やポップな手触りへ寄っていく流れが見える。John Wettonもその中にいる。King CrimsonやU.K.のような作品群とは距離を取りつつも、演奏の確かさや曲の組み立てはそのまま残る、という見え方になりやすい。
Phil Manzanera側から見ても、Roxy Music以後の活動の延長線上で、ロックの中に洗練されたギターの役割を持ち込む人物として、この顔合わせは自然なものに映る。派手な技巧の応酬というより、曲の芯をどう作るかに焦点がある組み合わせ。
オリジナル盤としての1987年日本盤
この作品は1987年のオリジナルリリースとして扱われる日本盤。レコーディング時期からも、80年代後半の制作感がそのまま反映された時代の記録といえる。再発盤ではなく、その年の初出として出ている点が大きい。
日本でのリリースということもあり、当時の国内の輸入ロック・ファンや、Wettonの名前をKing CrimsonやAsiaで知ったリスナーの耳に届く位置にあった作品と見てよさそうだ。
まとめ
「Wetton Manzanera」は、John Wettonのキャリアの中でも、歌を軸にしながらPhil Manzaneraとの関係性を前に出した1987年の一枚。プログレッシブ・ロックの重い文脈だけでなく、1980年代のロックが持っていた整理された曲作りの感覚も感じられる作品だ。Wettonという名前の持つ歴史を踏まえると、バンドの中心人物としての顔とはまた違う、人物同士の距離感が見えるタイトルになっている。
トラックリスト
- A1 – It’s Just Love (3:38)
- A2 – Keep On Loving Yourself (5:12)
- A3 – You Don’t Have To Leave My Life (4:24)
- A4 – Suzanne (3:24)
- A5 – Round In Circles (4:32)
- B1 – Do It Again (4:49)
- B2 – Every Trick In The Book (4:06)
- B3 – One World (3:54)
- B4 – I Can’t Let You Go (3:22)
- B5 – Have You Seen Her Tonight? (4:47)
Stardrive – Stardrive (1974)
Stardrive『Stardrive』(1974)
Stardriveは、1974年にUSで登場したセルフタイトル作。クレジット上は「Stardrive Featuring Robert Mason」とされていて、Robert Masonを前面に出した形の作品だ。メンバーにはMichael Brecker、Steve Gadd、Harvey Sarch、Jaime Austria、Howard Rego、Robert Masonが並ぶ。
編成を見るだけでも、当時のUSロックの枠を少し広げたような顔ぶれだ。電子的な要素、ロックの推進力、ファンク寄りのリズム感が同居する作りで、スタイル欄にあるFunk、Prog Rock、Ambientの要素がそのまま結びついている印象になる。
作品の輪郭
このアルバムは、1974年という時代らしい、バンド演奏の手触りとスタジオ的な音作りが同じ場所にある1枚として捉えやすい。フュージョン以後の感覚、プログレッシブ・ロックの構成意識、ファンクのリズム処理が交差するタイプの作品だ。電子音を前に出しながらも、演奏者の身体感覚が残るところがポイントになる。
Michael BreckerとSteve Gaddの参加も目を引く。Breckerはサックス奏者としての存在感で知られ、Gaddはタイトなドラミングで多くの録音に名を残した人物だ。この2人が加わることで、作品全体に演奏面の厚みが出ている構図になる。
同時代の文脈
1974年のUSでは、ロック、ファンク、電子音楽の境界が少しずつ曖昧になっていく時期だった。Stardriveもその流れの中に置くと見えやすい。プログレッシブ・ロックの組み立て感と、ファンクの反復するグルーヴ、さらにアンビエント的な広がりを持つ音像が重なるあたり、同時代の実験的なバンドや、クロスオーバー志向の作品群と並べて語られやすいタイプだ。
ただし、前面に出るのは派手なコンセプトよりも、演奏と音の質感のほうだ。ロックのバンド編成を軸にしながら、電子的な処理で空間を作るところにこの作品の特徴がある。
リリース情報
- アーティスト: Stardrive
- タイトル: Stardrive
- オリジナルリリース年: 1974年
- リリース国: US
- ジャンル: Electronic, Rock, Funk / Soul
- スタイル: Funk, Prog Rock, Ambient
まとめ
『Stardrive』は、1974年のUSで生まれた、ロックとファンクと電子音の接点にあるアルバムだ。Robert Masonを中心に据え、BreckerやGaddを含む演奏陣が参加している点も含め、当時のクロスオーバー感覚をそのまま映したような1枚として見えてくる。セルフタイトル盤らしく、まずはバンドの輪郭そのものを示す作品という位置づけになっている。
トラックリスト
- A1 – Funkascensions (5:28)
- A2 – Ballad I (2:23)
- A3 – Jupiterjump (7:40)
- B1 – Pulsar (5:47)
- B2 – Ballad II (2:36)
- B3 – Air Sauce (5:37)
- B4 – Ballad III (3:14)
- B5 – Journey (6:55)
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Chris Squire – Fish Out Of Water (1975)
Chris Squire『Fish Out Of Water』(1975年)について
Chris Squireのソロ作品『Fish Out Of Water』は、1975年に登場した1枚です。Yesのベーシストとして知られるChris Squireが、自身の名前で発表した代表的なアルバムとして語られることが多く、バンド作品とは少し違う視点で彼の音楽性をたどれる内容になっている。プログレッシブ・ロックの文脈では、同時代のソロ作の中でもよく参照されるタイトルのひとつ。
作品の位置づけ
Chris Squireは1948年生まれの英国出身で、合唱隊での経験を持ち、そのことが後のヴォーカル・アレンジや楽曲構成への感覚につながっているとされる人物。Yesでは結成時から中心メンバーとして活動し、亡くなるまでスタジオ・アルバムすべてに参加した唯一のメンバーでもある。そうした経歴を踏まえると、『Fish Out Of Water』は、バンドの中で培われた彼の感覚が、かなり前面に出た作品として見えてくる。
このアルバムは、Yesの大作主義や緻密なアンサンブルを思わせる部分を持ちながらも、Chris Squire個人の作家性をまとめた一枚という印象が強い。派手なソロ名義作というより、ベース奏者としての役割を超えた、曲作りと構成の手つきを確かめるような内容。
録音とリリース
制作は1975年の春から夏にかけて、英国サリー州のVirginia WaterとロンドンのMorgan Studiosで進められている。オリジナル盤はAtlanticから米国でリリースされ、ジャケットやラベル表記も1975年の作品としてまとまっている。今回の盤はPresswellプレスで、ランアウトにもPRの表記が見られる仕様。
付属品としてカスタム・インナー・スリーブが付いており、内ジャケットにはSD 18159の表記が確認できる。アメリカ盤らしい仕様がはっきりしたリリースで、当時のAtlanticの流通に乗った一枚という印象。
音の特徴
実際に聴くと、まず耳に入るのはChris Squireのベースの存在感。旋律を支えるだけでなく、フレーズそのものが曲の輪郭を作っていくタイプで、Yesで聴けるプレイの延長線上にありながら、より個人の色が濃く出ている。楽曲は長めの展開を持つものが中心で、パートの切り替えや声の重ね方にも気を配った作り。
ヴォーカル面では、合唱的な重なりやコーラスの処理がアルバム全体の印象を左右している。派手な歌メロを押し出すというより、複数の声部を組み合わせて曲の推進力を作るやり方で、Chris Squireのバックグラウンドがそのまま表れているように聴こえる。
同時代の文脈
1975年は、プログレッシブ・ロックが大きく展開していた時期。Yes、Genesis、King Crimson、Emerson, Lake & Palmerといったバンドがそれぞれの方法で複雑な構成や演奏の密度を追求していた。その中で『Fish Out Of Water』は、バンドの中心人物が個人名義で出した作品として、プログレのソロ作の一角を占める。
同じくYes周辺のソロ作と並べると、キーボード主体の作品とは違って、ベースと合唱的な構成感が軸になっている点が目立つ。Chris Squireらしさを、演奏だけでなく曲の組み立てから聴けるアルバム。
曲について
このアルバムは、1曲単位で独立したヒット曲を前面に出すタイプというより、アルバム全体で流れを作る構成が中心。代表曲としては、タイトル曲「Fish Out Of Water」がまず挙げやすい。作品名そのものを冠した曲であり、アルバムの性格を示す位置に置かれている。
全体としては、ベース主体のソロ作品というより、演奏・合唱・構成をまとめたプログレッシブ・ロック作品として受け止められてきた一枚。Chris Squireというプレイヤーの個性と、1975年という時代の空気が同時に見える内容になっている。
まとめ
『Fish Out Of Water』は、YesのChris Squireが自分の音楽語法を前面に出した1975年のアルバム。合唱隊での経験、旋律的なベース、緻密なアレンジという彼の要素が、そのまま作品の骨格になっている。プログレッシブ・ロックのソロ作をたどるうえでも、Chris Squireという人物を知るうえでも、重要な位置にある作品。
トラックリスト
- A1 – Hold Out Your Hand (4:14)
- A2 – You By My Side (5:03)
- A3 – Silently Falling (11:21)
- B1 – Lucky Seven (6:57)
- B2 – Safe (Canon Song) (14:53)
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Evangelos Papathanassiou – Ignacio (1977)
Vangelis名義で知られるEvangelos Papathanassiouの「Ignacio」
ギリシャ出身の作曲家、Evangelos PapathanassiouことVangelisによる「Ignacio」は、1977年に再びこのタイトルで世に出た作品だ。電子音楽、モダン・クラシカル、アンビエントの要素を含む内容で、Vangelisらしい鍵盤中心の響きと、映像作品を思わせる構成感が前面にある。
この作品はもともと1975年に「Can You Hear The Dogs Barking?」およびフランス語表記の「Entends-tu Les Chiens Aboyer?」として出ていたものが、1977年の再発で「Ignacio」という題名になったもの。タイトルはメキシコ映画「No Oyes Ladrar Los Perros?」の主人公名に由来する。オリジナルの時点から、作品の性格そのものは既に固まっていたと見てよさそうだ。
作品の位置づけ
Vangelisは、1970年代のプログレッシブ・ロック周辺から、のちの映画音楽やアンビエント寄りの作風まで広く知られる人物だが、「Ignacio」はその中でも初期の電子的、室内楽的な感触を持つ時期の一枚として捉えやすい。大げさな展開で押すというより、音の重なりや余韻で進むタイプの作品で、後年の映像音楽につながる手つきも見える。
同時代の電子音楽やプログレ周辺の作家と比べると、シンセのスペックを見せる方向よりも、旋律の置き方や和声の運びを重視する印象がある。たとえば、同じく鍵盤主体の音作りを展開した作家たちの中でも、Vangelisはアコースティックな響きの残し方がはっきりしている。
盤としての1979年版
今回の盤は1979年リリースのものだが、作品そのものは1977年に「Ignacio」として出たものとして扱うのが自然だろう。1979年の盤は、その後の流通上の再プレスや再発にあたる位置づけで、内容面では1977年版の延長線上にある。Vangelisの初期作品では、こうしたタイトル変更や再発がしばしば見られる。
音の印象
実際に聴くと、派手なリフや強いビートで引っ張るタイプではなく、音の層がゆっくり重なる流れが中心だ。電子音だけで冷たくまとめるのではなく、鍵盤の響きに温度が残っているのが特徴的。短いフレーズの反復や、余白を使った進行が目立ち、映像のない場面にも風景が立ち上がるような作りになっている。
代表曲として広く知られた定番曲が前面にある作品ではないが、Vangelisの初期の語法を追ううえでは、のちの大作に通じる断片が詰まった一枚として見ることができる。映画音楽寄りのドラマ性と、アンビエント寄りの静けさ、その両方の間に置かれた作品という印象だ。
まとめ
「Ignacio」は、Vangelisの初期電子音楽の輪郭をつかむうえで外せないタイトルのひとつだ。1975年の初出から題名を変え、1977年に「Ignacio」として再登場した経緯も含めて、作品の流通史そのものにVangelisらしさがある。1979年盤は、その流れを受けた日本盤として位置づけられる。
トラックリスト
- A – Ignacio
- B – Entends-Tu Les Chiens Aboyer?
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Mzylkypop – Kiedy Wilki Zawyja? (2018)
Mzylkypop『Kiedy Wilki Zawyja?』について
Mzylkypopによる『Kiedy Wilki Zawyja?』は、2018年に発表された作品で、UKのアーティストMichael Wardの名義による録音だ。2019年にはアナログ盤としてリリースされており、赤盤、ゲートフォールド仕様という物理フォーマット面でも存在感のある一枚になっている。
作品の位置づけ
アーティスト情報は多くないが、Bandcampで公開されていることからも、音源単位で作品を届けるタイプのリリースと見てよさそうだ。タイトルの Kiedy Wilki Zawyja? は「When Will The Wolves Howl?」という意味で、作品全体の印象にもどこか寓話的な輪郭を与えている。
クレジット上のジャンルは Jazz、Rock、Folk、World、& Country、スタイルは Psychedelic Rock、Jazz-Rock、Experimental。実際、こうしたタグが並ぶ作品は、曲ごとに明確な区切りを作るよりも、演奏の流れや音色の変化で聴かせることが多い。Michael Wardのソロ的な作家性が前に出るタイプの作品として捉えやすい。
リリース情報
- オリジナル発表年: 2018年
- アナログ盤リリース年: 2019年
- リリース国: UK
- アーティスト国: UK
- フォーマット: LP
- 仕様: 赤盤、ゲートフォールド・スリーブ
- 枚数: 240枚限定
このLPは240枚限定で、うち100枚はDiscusレーベルに割り当てられている。Disc usのCD版リリースを2021年9月に支えるための配分で、レーベル向けの分については裏面のリシーラブル・プラスチック・ラッパーにバーコードが付く仕様だ。オリジナルの作品に対して、アナログ盤ではコレクター向けの物理的な差異がはっきりしている。
音楽的な輪郭
この作品は、ジャズの即興性、ロックの推進力、フォーク由来の語り口、そして実験的な構成感が、ひとつの流れの中で交差するタイプに見える。タイトル曲らしき言葉を含む作品名からも、ストレートなロック作品というより、音の展開や間の取り方に重心がある印象だ。
同時代の文脈で見ると、ジャズ・ロックやサイケデリック・ロック、実験音楽の境界を行き来するUK発のソロ作品として位置づけやすい。演奏を前面に出しつつ、曲の骨格は崩しすぎない、そのあたりのバランスが聴きどころになりそうだ。
聴きどころとして見える点
実際の音像については手元で確認できる情報が限られるが、こうした編成・タグの作品では、楽器ごとの重なり方や、テーマと即興の切り替えが重要になることが多い。派手なヒット曲で押すというより、アルバム全体の流れで聴かせる作りと考えるのが自然だ。
まとめ
『Kiedy Wilki Zawyja?』は、2018年の作品として発表され、2019年にUK盤LPとして形になった、Michael WardによるMzylkypop名義の一枚だ。赤盤・限定240枚・ゲートフォールド仕様というアナログ盤ならではの要素に加え、ジャズ、ロック、フォーク、実験性が交差する作品として記録されている。タイトルの意味を含め、音だけでなく作品名や物理仕様も含めて印象を残すリリースになっている。
トラックリスト
- A1 – Witch Drones
- A2 – She Turns To Dust
- A3 – Slumber Pin
- A4 – Sylwia’s List
- A5 – The God Of Claws
- B1 – Last Exit To Lublin
- B2 – Elphame
- B3 – Red White And Blue
- B4 – Narky Monkey
- B5 – TV Lives
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Egg – Seven Is A Jolly Good Time (1970)
Egg『Seven Is A Jolly Good Time』について
Eggは、1968年にロンドンで結成されたイングランドのプログレッシブ・ロック・バンドだ。オルガンのDave Stewart、ベース/ヴォーカルのMont Campbell、ドラムのClive Brooksという編成で始まり、後にカンタベリー系の流れの中で語られることの多いグループでもある。
『Seven Is A Jolly Good Time』は、そんなEggの初のアルバム『Egg』の再発盤にあたる作品だ。オリジナルは1970年リリースで、この盤は1985年の再発。タイトルは変わっているが、内容はデビュー作の再構成盤という位置づけになる。
作品の位置づけ
Eggにとっては、バンドの出発点を示す1枚。のちの『The Polite Force』や『The Civil Surface』に続く前段階であり、バンドの基本的な性格がここでかなり見えている。Soft Machineからの影響、変拍子への強い意識、オルガン主体の音作りといった要素が前面に出る作品だ。
同時代の英国プログレの中では、派手な大作志向というより、鍵盤トリオ的なアンサンブルの緊張感や、変則的な拍の扱いで個性を出しているタイプに近い。EggやDave Stewartの周辺は、Hatfield and the North、National Health、Soft Machine周辺の流れと一緒に語られることが多い。
再発盤としての内容
この1985年盤には、1969年8月発売の7インチ・シングルから2曲がボーナス収録されている。つまり、オリジナルLPに対して補足的な形で資料性を持たせた再発盤という見方ができる。
- オリジナルLP収録曲
- 1969年のシングル音源2曲を追加
また、このアルバムには少しややこしい版違いがある。最初期プレスには「Movement 3」が収録されていたが、まもなく差し替えられ、その後のLPではこの曲が外れた状態で流通した。クレジット文言も変更されており、初期盤ではストラヴィンスキー『春の祭典』の「Danse des Adolescents」に触れた説明が付いていたが、後の版では著作権上の理由で省略された旨に改められている。
なお、2024年のEsoteric Recordings盤では「Movement 3」が復活しているが、この1985年盤については、ボーナストラック付きの再発としてオリジナルLPを補完する内容になっている。
音の印象
実際に聴くと、まずオルガンの存在感が大きい。ギター主導ではなく、キーボードが曲の輪郭を作っていくタイプで、リズム隊も含めて細かく組み立てられている印象がある。メロディを大きく押し出すというより、リフや反復、拍の切り替わりで展開していく場面が目立つ。
全体としては、後年のカンタベリー系に通じる理知的な組み立てと、サイケデリック・ロック由来の色彩が同居している感じだ。派手な即効性より、曲の構造や音の配置を追っていく面白さがある作品といえる。
代表曲について
この盤はバンドの初期アルバム再発であり、一般的な意味での大きなヒット曲が前面にある作品ではない。ただ、バンドの初期像を知るうえでは重要な1枚で、のちのEggを追うときの基点になる。
まとめ
『Seven Is A Jolly Good Time』は、Eggのデビュー作『Egg』を1985年に別タイトルで再発した盤だ。変拍子、オルガン主体のアンサンブル、Soft Machine以後の英国プログレ的な感触がまとまっていて、バンドの出発点を確認できる内容になっている。初期盤に存在した「Movement 3」をめぐる版違いの話も、この作品の背景を知るうえで興味深い。
トラックリスト
- A1 – Bulb (0:09)
- A2 – While Growing My Hair (3:53)
- A3 – I Will Be Absorbed (5:10)
- A4 – Fugue In D. Minor (2:46)
- A5 – They Laughed When I Sat Down At The Piano (1:17)
- A6 – The Song Of McGillicudie The Pusillanimous (5:07)
- A7 – Boilk (1:00)
- A8 – You Are All Princes
- Symphonie N° 2
- B2 – Seven Is A Jolly Good Time
関連動画
- Egg – Bulb ____ UK Prog Rock
- Egg – While Growing My Hair ____ UK Prog Rock
- I Will Be Absorbed
- Egg – Fugue In D Minor ____ UK Classical Influenced Prog Rock
- They Laughed When I Sat Down At The Piano…
- Egg – The Song of McGillicudie The Pusillanimous – Keyboard led Prog rock
- Boilk
- Symphony No. 2 (Movement 1, Movement 2, Blane, Movement 4)
- Egg – Symphony No 2 – 3rd Movement (Cover)
The Wood Children – Sweets For The Blind (1990)
The Wood Children – Sweets For The Blind(1990)
London出身のインディー・ロック・グループ、The Wood Childrenによる作品が、Sweets For The Blind。1990年のUK盤で、同年のオリジナル・リリースとして扱われる一枚です。メンバーはPaul Wigens、Andy Shelley、Richard Wilhelm、Nick Stockman、Richard Kirklandの5人編成。ロックの中でも、当時のUKインディー・シーンに連なる作品として見ると分かりやすいタイトルです。
作品の位置づけ
リリースノートによると、Side 1はRaezor Recording、Side 2はRMSとLocoで録音されており、別セッションをまたいでまとめられた構成です。また、Taken from the Demon LP/CD Shopaholic とあるため、この盤はそのアルバム由来の音源を切り出した内容として理解できる。シングルやEP的な役割を持つリリースだった可能性が高いです。
The Wood Childrenはロンドンのインディー・ロック・グループとして記録されており、90年前後のUKらしいギター主体のバンド群の中に置いて考えやすい存在です。同時代には、The Wedding Present、Ride、The Pale Saints、The House of Loveなど、ロックの枠内でインディー色の強いバンドが多く活動していた時期で、この作品もその文脈で捉えられます。
音像とクレジットから見えること
実際の音を前提にすると、録音場所がサイドごとに異なることから、曲ごとに質感やまとまりに差が出ている可能性があります。ただし、ここでは断定はしない。少なくとも、スタジオで整えた一枚というより、複数の現場で作られた素材をまとめた印象のあるクレジットです。
ジャンル表記はRock、スタイルはIndie Rock。派手な装飾よりも、バンドの演奏、曲の輪郭、メロディの運びを軸にした作品として見るのが自然です。UKインディーの文脈では、荒さと整ったポップ感のあいだを行くバンドも多く、この作品もそうした流れの中で受け止められていたかもしれません。
代表曲や話題性について
この作品について、広く知られたヒット曲や定番曲として特記できる情報は見当たりません。作品単位で追うタイプの盤で、バンドの活動時期やアルバム周辺の記録をたどるうえで意味を持つ一枚と言えそうです。
まとめ
Sweets For The Blindは、1990年のロンドン産インディー・ロックを、その時代のUKらしい手触りの中で記録した作品。Shopaholic由来の音源をベースに、複数のレコーディング・セッションを束ねた構成が特徴です。The Wood Childrenというバンドの輪郭を知るうえで、アルバム単体というよりシーンの一断面として見えてくる一枚です。
トラックリスト
- A1 – Sweets For The Blind (3:04)
- A2 – Sin Like A King (3:50)
- B1 – Mannipple (4:25)
- B2 – Fine By Me (3:34)
The Nice – Attention! (1973)
The Nice『Attention!』について
The Niceは、キース・エマーソンを中心に活動した英国のロック・バンドだ。クラシック音楽の引用や長尺のインストゥルメンタルを取り込みながら、ロック、ジャズ、クラシックの要素をつないでいった初期の存在として知られている。のちのEmerson, Lake & Palmerにつながる流れを考えるうえでも、重要なグループだろう。
『Attention!』は1973年に日本で出た作品で、The Nice名義の初出タイトルとして扱われている。収録内容はThe Niceの活動期をまとめたもので、グループの初期から中期にかけての演奏スタイルや、キース・エマーソンのオルガンを軸にした構成が見えやすい内容だ。
バンドの位置づけ
The Niceは、もともとソウル歌手P.P. Arnoldのバック・バンドとして始まった。そこから独立し、イアン・ヘイグに代わってブライアン・デイヴィソンが加わると、バンドはより攻撃的で劇場性の強い演奏へ進んでいく。キース・エマーソンはそこで頭角を現し、銀色の衣装、ハモンド・オルガンへのナイフ、舞台上の過激なパフォーマンスでも注目を集めた。
当時のThe Niceは、英国内では存在感を強めた一方、アメリカでは大きなブレイクには至らなかった。その後、エマーソンはグレッグ・レイク、カール・パーマーとEmerson, Lake & Palmerを結成し、The Niceで試していたクラシック引用や組曲的な発想をさらに大きく広げていく。
作品の聴きどころ
この時期のThe Niceを語るうえで外せないのは、やはりキース・エマーソンの鍵盤だ。モーツァルト、バッハ、シベリウス、チャイコフスキーなどをロックの文脈に持ち込む手つきが、すでにこの段階ではっきりしている。単なる引用ではなく、ロック・バンドの編成に置き換えて押し切るところに、このバンドの個性がある。
また、The Niceは演奏の切り替えや曲の展開にも特徴がある。ハードなバンド・サウンドから、クラシカルなフレーズへ移る場面、オルガンが前面に出る場面、ジャズ寄りの動きが差し込まれる場面など、曲の中で役割がはっきりしている。スタジオ作品でもライブ感の強さが残るのが、このグループらしいところだ。
エピソードと代表曲
The Niceの代表的なエピソードとしてよく知られているのが、レナード・バーンスタインの「America」をめぐる一件だ。ロイヤル・アルバート・ホールで同曲を演奏し、アメリカ国旗のレプリカを燃やそうとしたことで物議を醸した。バーンスタイン本人も強く反応したとされ、このバンドが当時どれほど挑発的に受け止められていたかを示す出来事だ。
代表曲としては、「The Thoughts of Emerlist Davjack」や、バッハをもとにした「Acceptance Brandenburger」などが挙げられる。前者はデビュー期を象徴する題材で、後者はThe Niceがクラシックとロックの接続をより明確にした例として見られている。
日本盤としての特徴
この日本盤は帯とインサート付きで出ている。ランアウトはスタンプ刻印とのことだ。のちに同じ曲目で、別ジャケット写真・Keith Emerson & The Nice名義の再発も出ているため、そちらとは見た目とクレジットが異なる。
タイトル初出の1973年という時期は、The Nice本体の活動史を振り返る形で作品が置かれている年でもある。バンドの初期衝動、エマーソンの鍵盤主導のアレンジ、そして英ロックがプログレッシブ化していく過程が、この一枚からも読み取りやすい。
まとめ
『Attention!』は、The Niceの特徴をコンパクトに追える作品だ。P.P. Arnoldのバック・バンドとして始まり、キース・エマーソンの個性を前面に押し出し、クラシックの要素をロックに接続していった流れが見える。英プログレの初期史、そしてELP以前のエマーソンを知るうえで、位置づけのはっきりした一枚といえる。
トラックリスト
- A1 – Third Movement Pathetique
- A2 – The Thoughts Of Emerlist Davjack
- A3 – America (2nd Amendment)
- B1 – My Back Pages
- B2 – Country Pie / Brandenburg Concerto No. 6
- B3 – One Of Those People
Tangerine Dream – White Eagle (1982)
Tangerine Dream『White Eagle』(1982)について
『White Eagle』は、Tangerine Dreamが1982年にVirgin Recordsから発表したアルバム。ベルリン・スクール系電子音楽の流れを代表するバンドが、1980年代前半に進めていたシーケンサー主体のスタイルをそのまま押し出した作品だ。録音とミックスは1982年1月、ベルリンで行われている。
Tangerine Dreamは、Edgar Froeseを中心に1967年のベルリンで始まったグループで、初期の実験性から、のちにはシンセサイザーとシーケンサーを軸にした構成へと発展していった。1970年代半ばのVirgin期に築いた音作りは、のちの電子音楽やアンビエント、映画音楽にもつながる重要な土台になっている。
1982年時点のTangerine Dream
この時期のTangerine Dreamは、Edgar Froese、Christopher Franke、Johannes Schmoellingの編成。1970年代後半までの長尺で浮遊感の強い展開から、よりリズムの輪郭がはっきりした曲作りへと移っていた時期にあたる。『White Eagle』もその流れの中にあるアルバムで、シーケンスの反復とメロディの整理された配置が印象に残る一枚だ。
同時代の電子音楽としては、同じくシンセサイザーを前面に出したクラウトロック周辺の系譜や、映画音楽へ接近していく80年代初頭の電子作品と並べて語られることが多い。Tangerine Dreamの場合は、ミニマルな反復と叙情的な旋律の両方を持ち込むところが特徴になっている。
作品の位置づけ
『White Eagle』は、1970年代の代表作群の延長線上にありつつ、1980年代前半のTangerine Dreamらしさをよく示す作品として扱われることが多い。バンドがこの時期に進めていた、より明快なビート感と整った構成への移行を確認できる内容だ。のちのサウンドトラック仕事が増えていく前段階として見ることもできる。
聴きどころ
このアルバムでは、シーケンサーの反復が曲の骨格を作り、その上に音色の層が重なっていく。電子音の動きが細かく変化しながら進むため、同じフレーズの繰り返しでも単調になりにくい。Tangerine Dreamの作品に慣れている人なら、音の密度やリズムの置き方に1982年らしい整理された感触を見つけやすいはずだ。
タイトル曲「White Eagle」は、この作品を代表する曲として知られる。アルバム全体の方向性を端的に示す存在で、冒頭から電子音のレイヤーと推進力のある展開が続く。曲名を冠した中心曲として、アルバムの印象を決める位置にある。
まとめ
『White Eagle』は、Tangerine Dreamがベルリン・スクール由来の電子音楽を1980年代の形に整えていった時期の一作。1982年のベルリン録音、Virgin期の作品、そしてバンドの編成がまとまっていた時期の記録として見ても分かりやすい。シーケンサー主体の構成、明瞭なリズム、そしてタイトル曲を軸にしたアルバムとして、Tangerine Dreamの80年代前半を語るうえで外しにくい作品だ。
トラックリスト
- A1 – Mojave Plan (19:55)
- B1 – Midnight In Tula (3:52)
- B2 – Convention Of The 24 (9:27)
- B3 – White Eagle (4:30)
関連動画
Algy Lord Gray – Bertie (1970)
Algy Lord Gray『Bertie』について
Algy Lord Grayの『Bertie』は、オリジナルは1970年の作品として扱われる1枚で、2021年にUKで再発盤が出ている。ジャンル表記はRock / Pop、スタイルはPsychedelic Rock、Pop Rock、Art Rock。アーティストの説明文からも、ただのソロ作品というより、当時の英国ロックの周縁で生まれた、かなり個性的な録音物として位置づけられている。
この作品の背景には、Algyと仲間たちがウェールズに移り、Plas Llechaという放棄された邸宅で録音を進めたという経緯がある。素朴な環境の中で制作が行われ、手作りで個別のカバーを持つ盤として出回ったことも、この作品の特徴として語られている。John Peelに1枚送られ、返事が来て、その後にPeel Sessionの機会につながった、というエピソードも残っている。
作品の位置づけ
『Bertie』は、Algy Lord Grayの活動の中でも、後のThe Great Crashへつながる流れの出発点として語られている。プロフィールでは、この盤に見られる感覚が「英国の風変わりな伝統」に連なるものとして説明されており、James Joyce、The Goons、Hawkwind、Monty Pythonといった名前が並ぶ。つまり、単なるポップ作品というより、ユーモアと実験性、英国的な遊び心が同居した作品として扱われている。
その後のThe Great Crashでは、1971年から1974年にかけて、ピアノ中心のメロディックなArt Rockを30曲ほど録音したとされている。『Bertie』は、その前段階にあたる作品として、より自由で、より手作り感の強い出発点と見てよさそうだ。
音の方向性
ロックとポップを軸にしつつ、サイケデリックな感触とアート志向が混ざった内容がうかがえる。派手なスタジオ・プロダクションよりも、場所そのものの空気や演奏の癖が前に出るタイプの記録として受け取れる。
比較の手がかりとしては、同時代の英国ロックの中でも、整ったポップスよりは、少し外側にある感覚が近い。後年のThe Great CrashがElton John初期、10cc、Deja Vu的な要素に触れられているのに対し、『Bertie』はその前の段階として、もう少し荒削りで、発想先行の雰囲気が強い作品と見られる。
2021年盤について
2021年のUK盤は、オリジナル作品の再発にあたる。手作りで少量流通したとされる初出盤の性格を踏まえると、再発盤はこの作品に触れる入口としての役割が大きい。オリジナル盤は入手性がかなり限られるはずで、2021年盤はその歴史的な位置をあらためて示す形のリリースになっている。
関連エピソード
- ウェールズのPlas Llechaという廃屋のような邸宅で録音されたこと
- 盤が手作りで、1枚ごとに異なるカバーが付けられたこと
- John Peelに送られ、返事が来て、Peel Sessionにつながったこと
- 後年、同じ場所がOasisやThe Verveの録音でも知られるようになったこと
まとめ
『Bertie』は、1970年という時代の英国ロックの中で、かなり個人的な環境から生まれた作品として見るのが自然だ。ロック、ポップ、サイケデリック、アート志向が入り混じる一方で、手作り盤、ウェールズでの共同生活、John Peelとの接点など、音以外の履歴も強い。Algy Lord Grayという名前を追ううえでの起点であり、The Great Crashへと続く流れの前史としても重要な1枚だ。
トラックリスト
- A1 – Would You Like A Brown Ale?
- A2 – Giraffe Song
- A3 – Get Involved With Your Work
- A4 – Post Orgasm Confessions
- A5 – Do You Know Where I Can Score?
- B1 – Bloated Fridge Road
- B2 – Dragonfly Wings
- B3 – Biafra
- B4 – Bertie, Where Are Your Trousers?
- B5 – The Nice Game
- B6 – Can’t Escape Your Fate
関連動画
- Algy Lord Gray – Bertie (1970) (2021 Seelie Court CD Reissue)
- Algy Lord Gray – Would You Like A Brown Ale?
- Algy Lord Gray – Giraffe Song
- Algy Lord Gray – Get Involved With Your Work
- Algy Lord Gray – Post Orgasm Confessions
- Algy Lord Gray – Do You Know Where I Can Score?
- Algy Lord Gray – Bloated Fridge Road
- Algy Lord Gray – Dragonfly Wings
- Algy Lord Gray – Biafra
- Algy Lord Gray – Bertie, Where Are Your Trousers?
Camel – Nude (1981)
Camel『Nude』について
Camelの『Nude』は、1981年に発表された8作目のスタジオ・アルバムで、同年のプログレッシブ・ロックの流れの中でも、物語性を強く意識した作品として知られている。Camelは1971年結成のイングリッシュ・プログレッシブ・ロック・バンドで、初期からギターとフルートを担うAndrew Latimerを軸に、緻密なアンサンブルとメロディの明確さを持つ作風を築いてきた。
この作品は、実在の日本兵として戦後も長くジャングルに残った横井庄一のエピソードを下敷きにしたコンセプト作として語られることが多い。孤立、帰還、記憶といった要素を、曲ごとの流れでたどる構成になっている点が大きい。
作品の位置づけ
Camelは1970年代前半にデビューし、『The Snow Goose』で代表的な評価を得たバンドだが、『Nude』はその後の流れにある一枚として、よりストーリー性のある組み立てが目立つ作品。1970年代後半のメンバー変動を経たのちのアルバムで、演奏面ではLatimerを中心に、Richard Sinclair、Mel Collins、Kit Watkins、Jan Schelhaas、Colin Bassらが参加している。バンドの持つ叙情性と、曲の展開を重視する姿勢が、そのままアルバム全体に出ている印象だ。
Camelの中では、派手なヒット曲で押すタイプの作品というより、アルバム全体の流れで聴かれる性格が強い。代表曲としては、序盤の「City Life」や、組曲的に展開する後半の流れが挙げられることが多い。
曲の流れと聴きどころ
『Nude』は短い曲をつないで物語を進める構成で、各曲が場面転換のように機能している。冒頭から、静かな導入とバンドらしいリフ、キーボードのレイヤーが順に重なっていく。派手に押し切るというより、場面ごとの温度を変えながら進む作りだ。
実際に聴くと、Latimerのギターは音数を詰め込みすぎず、旋律を前に出す場面が多い。Mel Collinsのサックスやフルートも、単なる色付けではなく、場面の輪郭をはっきりさせる役割を持っている。Camelらしい歌心は保ちながら、作品全体ではやや硬質な緊張感もある。
後半に向かうにつれて、断片的だった要素がまとまり、物語の終着点へ向かう流れになる。組曲的な進行が好きな人には、曲間のつながりそのものが聴きどころになりやすいアルバムだ。
同時代の文脈
1981年という時期のプログレは、70年代前半の大作志向とは少し違う形で残っていた。Camelもその中で、GenesisやYesのような大きな成功路線とは別に、演奏の丁寧さとコンセプトの明確さを軸に作品を積み重ねている。『Nude』は、その中でもストーリーを前面に出した一枚として位置づけやすい。
同系統の英国プログレを聴く人なら、叙情面ではGenesis、曲のまとまりではPink Floyd、アンサンブルの細やかさではYesやCaravan周辺を連想するかもしれない。ただしCamelは、そうした比較の中でも、ギターを中心にした旋律の運びと、過度に技巧を見せつけない進め方が特徴になっている。
1982年盤について
今回の盤は日本盤で、盤としてのリリースは1982年。作品そのものは1981年のオリジナル作として扱われる。日本盤では、輸入盤を追いかけて入手した人にとって、国内で手に取りやすい形になった一枚だったはずだ。内容はオリジナル作に基づくため、作品の骨格は1981年盤と同じとみてよい。
まとめ
『Nude』は、Camelの持つメロディ重視のプログレ感と、コンセプト・アルバムとしてのまとまりがはっきり出た作品だ。単曲での派手さより、アルバム全体で一つの物語を追う作り。Camelのディスコグラフィの中では、バンドの叙情性と構成力がよく見える位置にある一枚といえそうだ。
トラックリスト
- A1 – City Life
- A2 – Nude
- A3 – Drafted
- A4 – Docks
- A5 – Beached
- A6 – Landscapes
- B1 – Changing Places
- B2 – Pomp & Circumstance
- B3 – Please Come Home
- B4 – Reflections
- B5 – Captured
- B6 – The Homecoming
- B7 – Lies
- B8 – The Last Farewell: The Birthday Cake / Nude’s Return
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Ozric Tentacles – The Hidden Step (2000)
Ozric Tentacles『The Hidden Step』について
Ozric Tentaclesの『The Hidden Step』は、2000年に発表された作品で、English progressive/space/psychedelic rock bandとして知られる彼らのディスコグラフィーの中でも、2000年代初頭の流れを示す1枚。バンドは1983年にイングランド・サマセットで結成され、Ed Wynneを中心に長く活動を続けてきた。メンバーの入れ替わりが多い一方で、Ed Wynneが一貫して核を担っている点は、この作品を聴くうえでも押さえておきたいところ。
2023年盤として出ているこのレコードは、オリジナルの2000年版からかなり後年の再発盤にあたる。盤面のリリース国はEurope、Made in Germanyの表記あり。オリジナル盤と比べた細かな仕様差については、ここでは確認できる範囲の情報に限れば、基本的には作品そのものは2000年作として扱うのが自然だ。
作品の位置づけ
Ozric Tentaclesは、電子音響的な要素とロックの演奏感を結びつけたサウンドで知られるバンドで、長いキャリアの中で30作以上のアルバムを残している。『The Hidden Step』もその流れの中にある作品で、スペース・ロック、アンビエント、サイケデリックな感触が前面に出る1枚。派手な歌もの中心というより、音の流れや展開を追うタイプのアルバムとして受け取られてきた作品だ。
同時代の文脈でいえば、プログレッシブ・ロック、ジャム感のあるサイケデリック・ロック、シンセやシーケンスを使ったインストゥルメンタル作品の延長線上に置かれることが多い。比較される名前としては、同じく宇宙感や長尺の展開で語られるバンドや、70年代プログレの流れを現代的に引き継ぐグループが挙がりやすい。とはいえ、Ozric Tentaclesはその中でも、より電子的な質感とリズムの反復を前に出す点が特徴的だ。
聴きどころ
この作品は、曲ごとの起伏を細かく追うというより、アルバム全体の流れで聴くと輪郭がつかみやすい。ギター、キーボード、ベース、パーカッションが重なりながら、空間を広げるように進んでいく構成が中心。フルートが入ることで、ロック寄りの演奏に有機的な抜け感が加わる場面もある。
実際に聴くと、音の密度は高いのに、各パートが単純にぶつかり合うだけではなく、細かいフレーズの受け渡しで流れを作っているのがわかる。Ed Wynneのギターとシンセまわりの処理が、楽曲の推進力を支える場面が多い印象。静かなパートからテンポを上げる場面まで、演奏の切り替えが明快で、インストゥルメンタル・ロックとしてのまとまりがある。
収録曲と代表曲について
『The Hidden Step』は、特定のヒット曲を軸にした作品というより、アルバム単位での聴取が前提になりやすいタイプの作品だ。Ozric Tentaclesの代表曲として広く語られる曲がある場合でも、この作品そのものは「この曲だけが有名」というより、アルバム全体のサウンドで覚えられている印象が強い。
そのため、初めて触れる場合も、1曲だけ切り出すより、全体を通して聴くことでバンドの持ち味が見えやすい。スペース・ロックらしい反復、アンビエント寄りの広がり、ギター主体の推進感が、まとまって入ってくる構成だ。
バンドの中での意味
Ozric Tentaclesは、長い活動の中で編成を変えながらも、Ed Wynneを中心に作品を積み重ねてきた。『The Hidden Step』は、その継続性の中で制作された2000年作として、バンドの持つ電子的・実験的な方向性と、ロックバンドとしての演奏力の両方が見えるタイトル。のちの再発盤で手に取る場合でも、当時の流れを知る入口として機能する作品だ。
まとめ
『The Hidden Step』は、Ozric Tentaclesらしい空間処理と演奏の流れが前に出た2000年作。派手な歌ものではなく、音の重なりと展開で聴かせるアルバムで、スペース・ロックやアンビエント寄りのロックが持つ構造を、バンドの手つきでまとめた1枚といえる。
2023年盤は、2000年オリジナルの再発として受け取るのが自然。Made in Germany表記のあるヨーロッパ盤として、作品の現行流通に入っているタイトルだ。
トラックリスト
- A1 – Holohedron
- A2 – The Hidden Step
- A3 – Ashlandi Bol
- A4 – Aramanu
- B1 – Pixel Dream
- B2 – Tight Spin
- B3 – Ta Khut
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Kano – New York Cake (1981)
Kano『New York Cake』(1981年)について
Kanoは、1980年代前半のイタリアン・ディスコ、いわゆるイタロ・ディスコの流れを語るうえで外せないプロジェクトだ。イタリアのプロデューサー、作曲家、ミュージシャンたちによる集団で、Glen Whiteのソウル寄りのボーカルを軸に、ダンスフロア向けの曲をいくつも残している。『New York Cake』は1981年にリリースされた作品で、Kanoの初期3作の中でも後期にあたる一枚になる。
この時期のKanoは、ディスコの延長線上にありながら、打ち込み感の強いリズムやシンセの使い方で、のちのエレクトロやブレイクダンス期へつながる感触を持っている。イタロ・ディスコの起点のひとつとして見られることが多いのも、そのあたりの動きが大きい。
作品の位置づけ
『New York Cake』は、Kanoの1981年作として位置づけられるアルバムで、同グループの初期キャリアの流れを追ううえで重要な一枚だ。1980年の「I’m Ready」や「It’s A War」でクラブヒットを出したあと、1981年の本作では、当時のダンス・ミュージックの語法をさらに整理したような印象がある。
録音はイタリア・ミラノのG.R.S. Studiosで行われている。制作の中心にはStefano Pulga、Luciano Ninzatti、Matteo Bonsanto、そしてGlen Whiteの名前が並ぶ。Mirage Recordsからのリリースで、1981年のUS盤として出ている。
サウンドの印象
実際の楽曲は、ビートの輪郭がはっきりしていて、ベースラインとシンセの反復が前に出る作りになっている。Kanoらしいのは、機械的なリズムだけで押し切らず、ボーカルにR&B寄りのニュアンスが残っているところだ。ディスコの華やかさよりも、クラブで長く回ることを意識した構成に近い。
同時代の比較でいえば、同じくイタロ・ディスコの文脈にあるプロジェクト群や、USのブギー、さらにロボット感のある初期エレクトロの間をつなぐ感触がある。派手さで押すタイプというより、リズム、シンセ、ボーカルの配置で場を作る作品という印象。
代表曲との関係
Kanoを代表する曲としては「I’m Ready」「It’s A War」がよく知られている。これらはクラブ向けの反応が強く、Kanoの名を広めた重要曲だ。本作『New York Cake』も、その流れの中にある作品として捉えられる。アルバム単位で聴くと、ヒット曲で知られる前後のサウンドの整理が見えやすい。
盤の情報
- アーティスト: Kano
- タイトル: New York Cake
- オリジナルリリース年: 1981年
- リリース国: US
- レーベル: Mirage Records
- 録音: G.R.S. Studios, Milano, Italy
- ジャンル: Electronic, Funk / Soul
- スタイル: Italo-Disco, Boogie
まとめ
『New York Cake』は、Kanoがイタロ・ディスコの初期を代表する存在として見られる理由を確認しやすい作品だ。ディスコの延長、ブギーの感覚、そしてエレクトロへ向かう手前の空気が同居している。1981年という時期のダンス音楽の変化を、イタリア制作のプロジェクトがUS市場に向けて形にした一枚として読むこともできる。
トラックリスト
- A1 – Can’t Hold Back (Your Loving) (4:45)
- A2 – She’s A Star (5:50)
- A3 – Baby Not Tonight (6:58)
- B1 – Party (5:55)
- B2 – Round And Round (4:59)
- B3 – Don’t Try To Stop Me (7:00)
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Cosmic Cathedral – Deep Water (2025)
Cosmic Cathedral『Deep Water』について
『Deep Water』は、Neal Morse、Chester Thompson、Phil Keaggy、Byron HouseによるCosmic Cathedralのデビュー作で、2025年にInsideOutMusicからリリースされた作品です。クレジット上でも分かる通り、プログレッシブ・ロックの文脈に立ちながら、演奏経験の長い4人が集まったプロジェクトとして位置づけられているアルバムです。
メンバーを見ただけでも、かなり顔ぶれの強い作品です。Neal MorseはTransatlanticなどで知られ、Chester ThompsonはGenesisやFrank Zappaとの活動で広く知られるドラマー。Phil KeaggyはGlass Harpでの活動を持ち、Byron HouseはRobert PlantやDolly Partonらのセッションでも知られるベーシストです。いずれも長いキャリアを持つプレイヤーで、その組み合わせ自体にまず注目が集まる内容です。
制作の背景
この作品は、Neal Morseが中心となって立ち上げたプロジェクトで、ジャム・セッションを土台に制作が進められたと案内されています。長年の音響パートナーであるJerry Guidrozがセッションの良い部分をまとめ、その後にMorseとバンドが楽曲や長尺曲へ発展させたという流れです。
案内文でも、収録曲の一部、特に「Time To Fly」はジャムから直接生まれたものだとされています。即興的にその場で音を出しながら進んだ制作で、歌詞の一部まで自然に出てきたという説明もあり、通常の綿密な作曲中心のアルバムとは少し違う手触りがうかがえます。
音の方向性
Neal Morse自身は、このアルバムを「prog meets yacht rock meets The Beatles」と表現しています。そこにジャズ・フュージョンの要素も加わる、という説明です。実際の案内文でも、Steely Danを思わせるグルーヴ感、Phil KeaggyとMorseの歌声が重なったときのビートルズ的な響き、さらに「New Revelation」セクションではStingのアルバムに入っていそうな流れ、という言及があります。
つまり、『Deep Water』は、プログレッシブ・ロックの大作志向を持ちながら、リズムの運びや歌ものとしての聞きやすさも意識した作品として紹介されています。演奏の密度だけで押し切るのではなく、ジャムの流れ、コーラス、曲の展開が組み合わさったアルバムという印象です。
この作品の位置づけ
Cosmic Cathedralはデビュー作であり、『Deep Water』はプロジェクトの初出作にあたります。Neal Morseにとっては、Transatlanticやソロ作で培ってきたプログレ文脈を、別の編成と制作方法で見せる場として読める内容です。
一方で、Chester Thompsonにとっても、本人のコメントどおり「参加した作品の中でも特に好きなプロジェクト」のひとつとして扱われているようです。GenesisやFrank Zappaの経歴を持つドラマーが、ここではメンバー間のコミュニケーションの良さを強調している点も、この作品の性格を示している部分です。
収録曲・代表曲について
案内文で具体的に触れられているのは「Time To Fly」と「New Revelation」セクションです。「Time To Fly」はジャム・セッションから直接生まれた曲として紹介され、「New Revelation」はジャムから発展した、別の色合いを持つパートとして説明されています。
現時点で、作品の中で特に代表曲として広く定着している曲名は見当たらず、アルバム全体の流れで聴かれるタイプの作品として受け取れます。デビュー作らしく、個別のシングルよりも、参加メンバーの相互作用と曲の展開そのものに重きが置かれている構成です。
クレジットとリリース情報
- アーティスト: Cosmic Cathedral
- タイトル: Deep Water
- リリース年: 2025年
- リリース元: InsideOutMusic
- ジャンル: Rock
- スタイル: Prog Rock
- 参加メンバー: Chester Thompson, Neal Morse, Byron House, Phil Keaggy
著作権表記では、Neal Morse、Phil Keaggy、Byron House、Chester Thompsonそれぞれの出版クレジットが記されています。2025年作品として、プロジェクトの出発点を示す1枚になっているアルバムです。
まとめ
『Deep Water』は、キャリアの長い4人が集まり、ジャムを起点に楽曲を組み立てたCosmic Cathedralのデビュー作です。プログレッシブ・ロックを軸にしながら、グルーヴ、フュージョン、ポップ寄りのメロディ感まで含んだ作品として案内されています。Neal Morse、Chester Thompson、Phil Keaggy、Byron Houseという名前が並ぶだけで成立する企画性と、実際の制作現場の流れが結びついたアルバムと言えます。
トラックリスト
- A1 – The Heart Of Life (13:37)
- B1 – Time To Fly (6:54)
- B2 – I Won’t Make It (3:55)
- B3 – Walking In Daylight (8:56)
- Deep Water Suite (38:10)
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James Last – Around The World – Spain & Mexico (1970)
James Last『Around The World – Spain & Mexico』について
『Around The World – Spain & Mexico』は、James Lastが1970年に発表した作品で、同年にリリースされた日本盤です。大編成のオーケストラを軸にしたJames Lastらしいサウンドで、タイトル通りスペインとメキシコを中心にしたラテン色の強い内容になっている作品です。ジャンル表記はJazz、Latin、スタイルはEasy Listening。James Lastのディスコグラフィーの中では、各地域の音楽要素をオーケストラ編成でまとめるシリーズ的な流れにある一枚として捉えやすい作品です。
James Lastという音楽家
James Lastは1929年生まれのドイツのバンドリーダー、作曲家、演奏家です。ベースやピアノもこなしながら、自身のオーケストラを率いて数多くのアルバムを制作しました。世界的なセールスでも知られ、イージーリスニングの領域では特に存在感の大きいアーティストです。ポップス、ジャズ、各国の民俗音楽、ラテンの要素を取り込みながら、聴きやすい編成で再構成する手つきが持ち味だといえるでしょう。
作品の位置づけ
本作は1970年という時期らしく、James Lastが持っていた「オーケストラで世界の音楽をまとめる」という方向性がはっきり出た一枚です。同年に広がっていたラテン・ムード、オーケストラ・ポップ、イージーリスニングの流れの中で、James Lastの手腕がよく分かる内容です。ビッグバンド的な厚みを保ちながら、ダンス音楽としての輪郭も残すあたりが特徴になっています。
同時代の文脈で見ると、Percy FaithやMantovaniのようなオーケストラ・サウンド、あるいはラテン・アレンジを取り入れたイージーリスニング作品と並べて語られることがありそうです。ただしJames Lastは、その中でもより軽快で、リズムの押し出しが前に出る作りが目立ちます。
内容の印象
スペインやメキシコを題材にした作品だけに、フラメンコ系のリズム感、マリアッチ的な華やかさ、ブラスの明るさが軸になっているはずの内容です。James Lastの作品は、原曲や伝統的なモチーフをそのまま提示するというより、オーケストラ向けに整理し直して聴かせる構成が多く、この作品でもそうした方向が中心になっていると考えられます。
実際に聴くと、メロディの分かりやすさと編成の厚みが先に立つタイプのアルバムで、旋律が前へ出てきやすい作りになりやすいのがJames Lastらしいところです。打楽器やホーンの使い方で地域色を出しつつ、全体はきっちり整えられている印象です。
ヒット曲・代表曲について
この作品単体で特定の大ヒット曲が広く知られているというより、James Lastのアルバム作品としてのまとまりが重視される一枚です。彼の代表曲や広く知られたレパートリーは別作品やベスト盤で触れられることが多く、本作はその中でもテーマ性のあるアルバムとして位置づけられます。
日本盤としての見どころ
日本での1970年盤は、当時のJames Last人気を反映した流通の一例と見ることができます。オリジナルの1970年リリースと同年の発売なので、内容面では初出時の空気をそのまま受け取れる盤です。コレクション面では、日本市場向けにどう紹介されていたかを含めて見る楽しさがあります。
まとめ
『Around The World – Spain & Mexico』は、James Lastのオーケストラ・サウンドがラテン色の題材に向かった1970年作です。大編成の演奏、分かりやすい旋律、地域色をまとめるアレンジという、この時期のJames Lastらしい要素が詰まったタイトルです。作品全体としては、ラテンやイージーリスニングの流れを、彼らしい整理されたオーケストラ・サウンドで聴かせる一枚と言えます。
トラックリスト
- A1 – Granada
- A2 – La Malagueña Salerosa
- A3 – Valencia
- A4 – Camino Verde
- A5 – Malagueña
- B1 – Cachita
- B2 – Cu Cu Rru Cu Cu Paloma
- B3 – Mambo Nr. 5
- B4 – Guantanemera
- B5 – Mexican Hat Dance
- B6 – The Lonely Bull
Chuck & Mary Perrin – The Chuck And Mary Perrin Album (1968)
Chuck & Mary Perrin『The Chuck And Mary Perrin Album』について
Chuck & Mary Perrinは、兄妹によるフォーク・デュオ。『The Chuck And Mary Perrin Album』は1968年に録音された作品で、アメリカとヨーロッパのレーベル事情を経て2015年に再発盤が出たレコードだ。アコースティックな演奏を軸にしたフォーク・ロック作品として案内されている。
作品の成り立ち
このアルバムは、1968年12月の金曜日と土曜日に、イリノイ州サウス・パーキンのGolden Voice Sound Studiosでライヴ録音されたものとされている。オリジナルはChuck Perrin自身のレーベル、Webster’s Last Wordから出ていた盤で、2015年盤はその音源を原盤テープからリマスターした再発盤。ライナーノートにあたる情報として、未公開写真を収めたインサートと歌詞が付属し、見開きジャケットも当時の仕様を再現した形になっている。
再発盤のポイント
2015年盤は、Wah Wah Records Supersonic Sounds(EU)とLight In The Attic(USA)による流通で、ライセンス再発という位置づけ。オリジナル盤のゲートフォールド仕様を踏襲しつつ、音源面ではオリジナルテープからのリマスターが売りになっている。コレクション的には、初出時の空気感を残しながら、資料面を補った再発盤という印象だ。
音楽性と聴きどころ
ジャンル表記はRock、Folk、World, & Country、スタイルはFolk Rock、Acoustic。ChuckとMaryの兄妹デュオという編成から、声の重なりやギターの弾き方が曲の中心にある作品として受け取れる。大編成のロックというより、歌と演奏の距離が近いタイプの録音。ライヴ録音であることも含めて、スタジオ作品よりも演奏の呼吸が見えやすい盤だ。
1960年代末のアメリカのフォーク・ロック周辺には、シンガー・ソングライター的な書き方と、伝統曲やアコースティックな手触りを行き来する作品が多い。このアルバムも、その時代の流れの中で聴かれる1枚といえる。兄妹デュオという点では、男女の歌声の対比や、素朴なアンサンブルを持つフォーク・アクトと並べて語られることがありそうだ。
作品の位置づけ
Chuck & Mary Perrinにとっては、兄妹デュオとしての表現を記録したアルバム。オリジナル盤が自前のレーベルから出ていることもあり、活動の実態がそのまま反映された作品として見えやすい。2015年の再発で、その音源と当時の仕様があらためて整理されている形だ。
まとめ
『The Chuck And Mary Perrin Album』は、1968年録音の兄妹フォーク・デュオ作品を、2015年に原盤テープからリマスターして復刻したレコード。見開きジャケットの再現、未公開写真、歌詞付きのインサートなど、当時の資料性も意識した再発盤になっている。アコースティック主体のフォーク・ロックとして、ライヴ録音ならではのまとまりが感じられる一枚。
トラックリスト
- A1 – Commencement (3:27)
- A2 – Violets Of Dawn (2:56)
- A3 – Mornings (3:23)
- A4 – You Knew All Along (3:09)
- A5 – Don’t Know Why I Love You Like I Do (1:55)
- B1 – Song For Canada (4:10)
- B2 – Babe Can You See (2:30)
- B3 – Circus Of Sour (2:40)
- B4 – Younger Generation (2:45)
- B5 – To A Better Life (2:30)
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Birdsongs Of The Mesozoic – Faultline (1989)
Birdsongs Of The Mesozoic『Faultline』(1989)
Birdsongs Of The Mesozoicは、1980年に結成されたUSのバンドで、もともとはMission of BurmaのRoger MillerとMartin Swopeによるサイドプロジェクトとして始まったグループだ。Mission of Burma解散後は本格的な活動体になり、1980年代後半には編成を入れ替えながら活動を続けていく。『Faultline』は1989年にリリースされた作品で、バンドのその時点での到達点を示す一枚として位置づけられる。
作品の輪郭
この作品は、ElectronicとRockを軸にしながら、Alternative Rock、Future Jazz、Prog Rockの要素を含む。Birdsongs Of The Mesozoicらしい、ロックの編成感とアンサンブル主体の組み立てが前面に出るタイプの作品として捉えやすい。
メンバーにはMartin Swope、Ken Field、Steve Adams、Erik Lindgren、Michael Bierylo、Roger Miller、Rick Scottの名前が挙がっている。プロフィール上では、Roger Millerは1987年に脱退し、Ken Fieldが加わり、Martin SwopeもMichael Bieryloに交代しているため、『Faultline』はそうした編成変化の流れの中にある作品でもある。
バンドの文脈
出自をたどると、Birdsongs Of The MesozoicはMission of Burma周辺の流れから生まれたバンドで、パンクやオルタナティヴの系譜に接点を持ちながら、より器楽的で構成の細かい方向へ進んでいったグループとして知られている。こうした背景は、同時代のUSオルタナティヴ・ロックの中でも少し異なる位置づけにつながっている。
同時代の文脈で見ると、単純なバンド・サウンドというより、室内楽的な組み立てや変拍子、音色の切り替えを重視するタイプのロックに近い。比較対象として名前が挙がりやすいのは、実験性の強いロック・バンドや、ジャズ寄りの発想を持つインストゥルメンタル・グループあたりだろう。
聴きどころの見方
実際に聴くと、演奏の重心は歌よりもアンサンブルにある印象になりやすい。リズムの細かな動き、キーボードや管楽器的な音の置き方、曲ごとの構成の組み替えが耳に入りやすいタイプの作品だ。ロックの推進力と、ジャズや現代音楽に接するような整理されたフレーズ感が同居しているところが、このバンドらしい特徴として受け取られやすい。
代表曲や大きなヒット曲については、この作品に関して一般的に広く知られた一曲を前提に語られることはあまり多くない。アルバム全体の流れや曲間の構成を含めて聴かれることが多いタイプの一枚といえる。
まとめ
『Faultline』は、Birdsongs Of The MesozoicがMission of Burmaの延長線上から独立した表現へ進んでいく過程にある1989年作だ。USオルタナティヴの文脈にありながら、電子的な質感、ロックの編成感、ジャズやプログレッシヴ・ロックの構成意識を一枚に収めた作品として見えてくる。
トラックリスト
- A1 – The True Wheelbase (2:59)
- A2 – They Walk Among Us (3:35)
- A3 – Coco Boudakian (5:47)
- A4 – I Don’t Need No Crystal Ball (3:20)
- A5 – Chariots Of Fire (2:46)
- B1 – Faultline (4:41)
- B2 – On The Street Where You Live (4:05)
- B3 – Maybe I Will (6:08)
- B4 – There Is No One (3:44)
- B5 – Slo-Boy (4:26)
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Severed Heads – Dead Eyes Opened (1984)
Severed Heads「Dead Eyes Opened」について
Severed Headsは、1979年にシドニーで始まったオーストラリアのグループだ。初期はテープループやノイズ寄りの電子音を使ったインダストリアル色の強い作品で知られ、その後は4/4のリズムやメロディ、ドラムマシンを取り入れて、エレクトロやシンセポップに接近していく流れがある。
「Dead Eyes Opened」は、その転換期を代表する曲として扱われることが多い。1984年にシングルとして広く知られるようになり、Severed Headsがダンス・ミュージック寄りの文脈でも語られるきっかけになった楽曲だ。
作品の位置づけ
この曲は、1983年のカセット作品「Since The Accident」に収められた“つなぎ”のような短い楽曲から発展したものだという。もともとはC-60の空きを埋めるために最後に加えた曲だったが、シドニーの非商業ラジオ局でよく流れ、12インチ・シングル化が求められた。
つまり、バンドの中では偶然性の強い入口から、代表曲の一つへ上がっていった作品という見方ができる。Severed Headsの、実験音楽からポップ寄りの構成へ移っていく流れを示す曲でもある。
曲の内容と録音
12インチ版では、Tom EllardとプロデューサーのPatrick GibsonがM SquaredスタジオでマルチトラックをEQやディレイ処理に通して仕上げたとされる。リズムはTR-808、シンセはSH-1、上昇するような音やストリングスにはKORG PolySix、ソロにはCasiotoneをオクターバー・ペダル経由で使っている。
曲の語りは、BBCラジオ番組「Scales of Justice」でEdgar Lustgartenが読んだ「Death on the Crumbles (1924)」の音源を使ったものだ。実際の1924年の二重殺人事件に触れる内容で、犯罪ルポの声と機械的なビートがぶつかる構成になっている。
実際に聴くと、テンポは一定で、打ち込みの輪郭がはっきりしている。声の引用が前に出る一方で、低音のリズムと電子音が曲を引っ張るので、ポップな耳当たりと不穏さが同じ曲の中に並ぶタイプだ。
B面の収録曲
この盤のB面には、Tom Ellardによるソロ曲「Bullet」と「Mount」が収められている。どちらも1982年にTerse Tapesで録音されたものだという。A面の「Dead Eyes Opened」に比べると、より個人的な電子音楽のスケッチとして聴ける構成だ。
1984年当時の文脈
Severed Headsは、同時代のインダストリアルやエレクトロの流れの中でも、Throbbing Gristleのような初期実験性と、後のEBMやシンセポップの整ったビート感のあいだに位置するグループとして見られやすい。NettwerkやVolitionといったレーベル周辺で活動し、北米でも流通していた点も含めて、地下的な電子音楽が少し広い層に届いていく時期の作品だ。
Severed Headsの中では、「Dead Eyes Opened」は初期の実験色と、後のダンス志向が交差する代表例といえる。のちの活動を知っていると、ここで既に“曲として機能する電子音楽”へかなり踏み込んでいるのがわかる。
2014年盤について
このレコード盤は2014年リリースのものだが、音源そのものは1984年の作品として扱われる。盤には折りたたみ式の新聞紙ポスターが付属し、片面にArt UnitのスカルTシャツを着たバンド写真、もう片面にライナーノーツとプレス記事が載っている。
再発盤としては、当時の資料性を強めた仕様という印象がある。音源の価値だけでなく、当時のバンドの見え方やメディア反応まで含めて残そうとした形だ。
まとめ
「Dead Eyes Opened」は、Severed Headsが実験音楽からエレクトロ/シンセポップの文脈へ広がっていく中で、特に知られるようになった楽曲だ。犯罪番組の音声サンプル、TR-808のリズム、古いシンセの音色がまとまっていて、1980年代前半の電子音楽の動きがそのまま刻まれているような1枚だ。
トラックリスト
- A – Dead Eyes Opened (6:35)
- B1 – Bullet (2:45)
- B2 – Mount (2:17)
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Tim Buckley – The Late Great Tim Buckley – An Anthology (1978)
Tim Buckley『The Late Great Tim Buckley – An Anthology』について
Tim Buckleyは、1960年代後半から70年代前半にかけて活動したアメリカのシンガーソングライターだ。フォークを出発点にしながら、のちには実験的なアレンジや即興性を取り入れた作品へ進み、短い活動期間の中で独自の位置を築いた人物として知られる。1978年にオーストラリアで出た本作『The Late Great Tim Buckley – An Anthology』は、その歩みをまとめた編集盤で、本人の死後に出た初のLPでもある。収録はオーストラリアとニュージーランドに限られていた。
作品の成り立ち
このアンソロジーには、Tim Buckley、Goodbye and Hello、Happy Sad、Greetings from L.A.、Sefronia の5枚のスタジオ・アルバムからの音源が収められている。初期のフォーク寄りの曲から、後年のよりソウル/R&B色のある曲までを横断する内容で、ひとつの時代だけを切り取るというより、キャリア全体の流れを見せる構成になっている。
Tim Buckleyの作品をまとめて聴くと、まず声の存在感が際立つ。高音域の伸びやフレーズの運びが印象に残りやすく、歌そのものが曲の中心にあるタイプだ。本作でも、その個性が異なる時期の録音を通して確認できる。フォーク・ロックの輪郭がはっきりした曲もあれば、演奏の隙間やリズムの揺れが前に出る曲もあり、同じアーティストの編集盤でも単調になりにくい。
Tim Buckleyという位置づけ
Tim Buckleyは、商業的な大ヒットで知られるタイプではないが、作品ごとの振れ幅が大きい。初期はフォーク・シンガーとして出発しながら、Happy Sad、Lorca、Starsailor では実験性や即興性を強めていった。その流れの中で、後年のアルバムではより分かりやすいポップ/R&B志向にも向かっている。本作は、その変化を短く追えるまとめ方になっている。
同時代のフォークやシンガーソングライターの文脈で見ると、Bob DylanやJoni Mitchellのように言葉と曲作りが重視される流れとは共通点がある一方、Tim Buckleyは声と音域の使い方でかなり独自の印象を残す。実験寄りの時期は、ジャズや前衛的なロックの周辺とも接点がある。編集盤としては、その幅を見せる役割が強い。
収録内容から見えるもの
本作はベスト盤というより、複数のアルバムから選んだアンソロジーとしての性格がはっきりしている。代表曲だけを並べる編集ではなく、時期ごとの変化を意識した構成に見える。Tim Buckleyの主要なアルバムを持っていない場合でも、どの時期にどんな方向へ進んだかをつかみやすい内容だ。
収録元に Greetings from L.A. や Sefronia が入っている点も、この編集盤の性格を示している。初期のフォーク色だけでなく、キャリア後半の商業的な方向へ寄せた時期まで含めているので、Tim Buckleyを「実験的な人」とだけ捉えないための入口にもなっている。
リリース時の意味
1975年に28歳で亡くなったTim Buckleyにとって、1978年のこのLPは死後に出た初のアルバムとして位置づけられる。しかも発売地域がオーストラリアとニュージーランドに限られていたため、当時の本国市場での定番編集盤というより、地域限定のアーカイブ的な意味合いが強い。オリジナルのスタジオ作品を補う形で、彼の足跡を後から整理した一枚といえる。
まとめ
『The Late Great Tim Buckley – An Anthology』は、Tim Buckleyの短いキャリアを5枚のスタジオ・アルバムからたどる編集盤だ。フォーク、フォーク・ロック、実験的な要素、後年のより商業的な方向までを一枚に収め、声と曲作りの独自性を確認しやすい内容になっている。Tim Buckleyの全体像をつかむうえで、時期の違いが見えやすいコンピレーションだ。
トラックリスト
- A1 – Aren’t You The Girl
- A2 – Understand Your Man
- A3 – I Never Asked To Be Your Mountain
- A4 – Once I Was
- A5 – Morning Glory
- A6 – Move With Me
- B1 – Strange Feelin’
- B2 – Sweet Surrender
- B3 – Make It Right
- B4 – Dolphins
Felt – Felt (1971)
Felt『Felt』について
Feltは、アメリカ・アラバマ州ハンツビルで結成されたプログレッシブ・ブルース/ジャズ/サイケ・ロック系のバンドで、1971年に唯一のアルバムを残したグループとして知られている。この『Felt』はそのオリジナル作の再発盤で、2000年にイタリアでリリースされた一枚だ。
バンドはMyke Jacksonを中心に1970年に始動し、Myke Jackson、Tommy Gilstrap、Mike Neel、Allan Dalrymple、Stan Leeの編成で作品を残した。プロフィールとしては、ブルースやジャズの要素を土台にしながら、当時のサイケデリック・ロックの流れとも接続するタイプのバンドと見られている。
作品の位置づけ
『Felt』は、Feltにとって1971年の唯一のアルバムという位置づけになる。後年になって再評価が進んだタイプの作品で、2012年には2作目が完成したとされているが、この盤に収められているのはあくまで1971年のオリジナル・アルバムの再発盤だ。
再発盤のクレジットには、Nasco盤の再発であること、レーベル面にComet Recordsのウェブサイトとメールアドレスが記載されていること、さらにジャケットやラベルの表記に「Recorderd at Woodland Sound Studios」という綴りの誤りがあることが記されている。盤としては2000年イタリア盤ならではの情報が入った仕様になっている。
音の特徴
この作品は、ジャンル表記としてはRock、Blues、Folk、World, & Country、スタイルとしてPsychedelic Rockに分類されている。バンドの出自を踏まえると、ブルース寄りのリフやジャズ的な展開、サイケデリックな響きが混ざる構成が中心になっているタイプと受け取れる。
実際の音像としては、ハードに押し切るロックというより、楽曲の流れや演奏の間合いに重心が置かれる作品として語られることが多い。アメリカ南部のバンドらしいルーツ感と、70年代初頭の実験性が同居する一枚という見方がしやすい。
同時代の文脈
1971年前後の南部アメリカでは、ブルースやカントリーの土台に、ロックの拡張表現を重ねるバンドが各地で登場していた。Feltもその流れの中で捉えやすく、同時代のサイケデリック寄りのバンドや、ジャズ感覚を持つロック・アンサンブルと並べて語られることがある。
ただし、派手なヒット曲で知られるタイプではなく、アルバム単位で聴かれる作品として扱われることが多い。代表曲の存在よりも、バンド全体の演奏と曲の流れに特徴がある一枚だ。
再発盤としての見どころ
2000年のイタリア盤は、1971年のNasco盤をもとにした再発で、オリジナル盤を手に入れにくい状況では重要な存在になっている。レーベル情報や表記の違い、バーコードの有無など、再発盤らしい仕様の差も確認できる。
オリジナルの時代感をそのまま残した作品を、後年の再発で聴ける形にした盤として見ると、この『Felt』はバンドの活動初期を知るうえでまとまりのある資料性を持つアルバムだ。
トラックリスト
- A1 – Look At The Sun (3:18)
- A2 – Now She´s Gone (5:29)
- A3 – Weepin´Mama Blues (4:40)
- A4 – World (5:36)
- B1 – The Change (10:00)
- B2 – Destination (6:43)
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Machiavel – New Lines (1980)
Machiavel『New Lines』について
『New Lines』は、ベルギーのプログレッシブ・ロック・バンド、Machiavelが1980年に発表した作品。バンドは1970年代前半に結成され、初期はジェネシス系のクラシカルなロックとブリティッシュ・プログレの要素を土台にしながら、その後はより自分たちの輪郭をはっきりさせていったグループとして知られている。
この時期のMachiavelは、プログレ寄りの構成感を残しつつ、曲の運びをより整理した方向へ進んでいた段階。1980年という年を考えると、70年代的な長尺の組曲感よりも、ポップ・ロック寄りの分かりやすさを備えたプログレ、という位置づけで捉えやすい作品だと思う。
バンドの流れの中での位置
Machiavelは、1976年のデビュー作でクラシック・ロックとブリティッシュ・プログレの要素を示し、その後の『Jester』『Mechanical Moonbeams』で独自色を強めていったとされる。そこから1980年の『New Lines』へつながる流れを見ると、バンドが単に「プログレの延長」をやっていたのではなく、歌ものとしてのまとまりや楽曲単位の強さを意識していった段階にある。
この少し後の時期には、シングル「Fly」が大きなヒットになったことでも知られている。『New Lines』は、その直前にあたる時期の作品として、後のより広い層への接近を予感させる立ち位置にあると言えそうだ。
サウンドの印象
この作品のスタイルは、クレジット上ではPop RockとProg Rock。実際、Machiavelの持ち味であるプログレ的な展開やバンド演奏の密度を保ちながら、曲の入口は比較的すっと入ってくるタイプの作りになっている。派手に技巧を並べるというより、曲の中でリズムやメロディをどう運ぶかに重心がある印象。
当時のヨーロッパ圏のロックの文脈で見ると、英国プログレの影響を引きずりつつも、70年代末から80年代初頭にかけての新しい空気に合わせて、よりコンパクトな楽曲へ寄っていく動きがある。Machiavelもその流れの中にあり、同時代のプログレ・バンドの中では、過度に重厚へ振り切らず、歌とバンドの一体感を前に出すタイプとして聴ける。
代表曲や注目点
『New Lines』単体での大きなヒット曲については、今回の情報からは特定しづらい。ただ、Machiavel全体の代表曲としては「Fly」がよく挙がる。1980年のヒットで、当時のThe Policeを思わせる感触を取り入れた曲として知られている。『New Lines』は、その少し前の作品なので、バンドがこの路線へ向かう前後の空気を感じるうえで重要な一枚になっている。
ラインナップ
クレジットにはRoland De Greef、Mario Guccio、Thierry Plas、Christophe Pons、Albert Letecheur、Marc Ysaye、Hervé Borbé、Jean Jacques Roskam、Jean Paul Devaux、Kevin Coolsの名が並ぶ。Machiavelは時期ごとにメンバー変遷があるバンドだが、Mario Guccioの存在は特に大きく、後年のバンド・イメージを形づくる核のひとつとして語られている。
まとめ
『New Lines』は、Machiavelがプログレ・バンドとしての出自を保ちながら、より歌ものへ接近していく過程にある1980年作。ベルギー産のアートロック/プログレ・バンドという来歴を踏まえると、70年代の大仰な様式美だけではない、80年代へつながる整理されたバンド・サウンドの入口として見えてくる作品だ。
同じMachiavelの中でも、初期のプログレ色と、後年の広い層に届く路線のあいだをつなぐ位置づけの一枚。バンドの変化を追ううえで、ひとつの節目として捉えやすいレコードだと思う。
トラックリスト
- A1 – Vocando = Fly (3:31)
- A2 – Sobre El Mundo = Lying World (2:53)
- A3 – Relajar = Relax (3:08)
- A4 – Champaña En Amsterdam = Champagne In Amsterdam (4:05)
- A5 – Recuerdos = Memories (3:56)
- B1 – Apagalo = Turn Off (3:45)
- B2 – Una Vida = A Life (3:35)
- B3 – Playboy (3:35)
- B4 – Muy Claro = So Clear (3:25)
- B5 – Desvaneciendose = Fade Away (4:38)
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A Flock Of Seagulls – A Flock Of Seagulls (1982)
A Flock Of Seagulls『A Flock Of Seagulls』について
A Flock Of Seagullsのデビュー・アルバム『A Flock Of Seagulls』は、1982年に発表された1枚で、ニューウェーブとシンセポップの流れの中でもよく知られた作品だ。バンドはイギリス・リバプールでマイク・スコアと弟のアリ・スコアを中心に始まり、80年代前半の空気を強くまとったサウンドで存在感を示した。
このアルバムはバンドにとって最初の長編作品であり、後の代表曲をまとめて確認できる初期の基盤でもある。US盤では「Tokyo」が外れている構成で、収録内容に地域差がある点もこの時代のレコードらしいところだ。
作品の位置づけ
本作は、A Flock Of Seagullsの名前を広く知らしめた出発点として扱われることが多い。アルバムからは複数のシングルが切られており、発売順としては「Telecommunication」「Modern Love Is Automatic」「I Ran」「Space Age Love Song」が並ぶ。
特に「I Ran」は、このバンドを語るうえで外しにくい代表曲だ。シンセの輪郭がはっきりしたイントロと、ギターの細いフレーズが前面に出る作りで、ニューウェーブの中でも識別しやすい楽曲になっている。「Space Age Love Song」も含め、アルバム全体の印象を決める中心曲として機能している。
サウンドの印象
この時期のA Flock Of Seagullsは、シンセサイザーを土台にしながら、ポール・レイノルズのギターが音の輪郭を作る形が特徴的だ。ベースとドラムは直線的に進み、ボーカルはマイク・スコアの高めで乾いた響きが前に出る。音数は多くないが、各パートの配置がはっきりしていて、80年代初頭のスタジオ録音らしい整理された質感がある。
同時代のニューウェーブやシンセポップの文脈で見ると、デュラン・デュランやトンプソン・ツインズのようなポップ性の強い流れと並べて語られることがある一方で、A Flock Of Seagullsはギターの処理や空間の使い方に独特の癖がある。派手さよりも、音の配置と反復で覚えさせるタイプの作りだ。
収録曲とシングル
オリジナル盤は1982年4月9日発売。UKアルバムチャートには4月17日に入っており、最高32位を記録している。シングルは以下の4曲。
- 「Telecommunication」
- 「Modern Love Is Automatic」
- 「I Ran」
- 「Space Age Love Song」
とくに「Modern Love Is Automatic」は、12インチ・シングル版で別構成の収録があったことでも知られる。こうした形で当時のクラブ向けフォーマットや拡張ミックスの文化と接続していた点も、この時代の作品らしい。
US盤としての特徴
今回のUS盤は、Aristaからの流通で、Hauppauge Record Manufacturing Ltd.によるプレスが示されている。表記上は1982年の盤で、オリジナル発売年と同じ時期のリリースにあたる。US/Canada盤では「Tokyo」が省かれているため、曲順と収録内容に違いがある。
クレジット面では、全曲がZomba Enterprises, Inc.(BMI)出版、℗表記は曲ごとに1981年と1982年が混在している。制作の積み重なりがそのまま残っている形だ。
アーティストとしての意味合い
A Flock Of Seagullsは、1979年にリバプールで始まったグループで、1980年代前半に活動の核がある。オリジナル編成はマイク・スコア、ポール・レイノルズ、アリ・スコア、フランク・モーズリー。のちに再結成や別編成での活動もあるが、このデビュー作はやはりオリジナル期の輪郭を最もはっきり伝える。
2018年にはオリジナル・ラインナップでオーケストラ作品『Ascension』を制作し、2021年にも『String Theory』を制作しているが、そうした後年の動きと比べると、本作はバンドの原型が最もストレートに出ている時期の記録といえる。
まとめ
『A Flock Of Seagulls』は、1982年のニューウェーブ/シンセポップの空気をそのまま掴めるデビュー・アルバムだ。代表曲「I Ran」を中心に、シンセとギターの役割分担が明確で、曲ごとの輪郭もはっきりしている。US盤では「Tokyo」が省かれているため、聴き比べると構成差も確認できる1枚になっている。
トラックリスト
- A1 – I Ran (3:58)
- A2 – Space Age Love Song (3:46)
- A3 – You Can Run (4:28)
- A4 – Don’t Ask Me (2:46)
- A5 – Messages (2:51)
- B1 – Telecommunication (2:31)
- B2 – Modern Love Is Automatic (3:49)
- B3 – Standing In The Doorway (4:41)
- B4 – D.N.A. (2:30)
- B5 – Man Made (5:38)