Jody Grind – One Step On (1969)
Jody Grind『One Step On』について
Jody Grindの『One Step On』は、1969年に登場したブリティッシュ・プログレッシブ・ロックの初期作品です。バンドは1968年11月に結成され、短い活動期間ののち1970年に解散しているので、この作品はその活動の中でもかなり早い時期の記録にあたります。トランスアトランティック系の英国ロック文脈で語られることが多い一方で、ジャズやブルースの感触もにじむバンドとして知られています。
作品の位置づけ
Jody Grindはアルバムを2枚残していて、『One Step On』はその2作目にあたる時期の作品です。デビュー作から続くバンドの流れの中で、よりまとまったバンド・サウンドを聴かせる一枚として位置づけられます。メンバーはIvan Zagni、Roger Sutton、Tim Hinkley、Bernie Holland、Pete Gavin、Barry Wilson。編成を見るだけでも、鍵盤とギターを軸にした英国ロックらしい手触りが想像しやすいです。
収録内容と盤の特徴
このイタリア盤は、オリジナルLPに対してA2がボーナス・トラックとして加わっているのが大きな違いです。つまり、同じタイトルでもオリジナル盤とは収録曲が少し異なる形になっています。盤の表記としては、スパインとラベルにAK 059、裏ジャケットには059という表記が見られます。また、ラベル表記ではバンド名が「Giody Grind」と誤記されています。
- オリジナル作品年: 1969年
- 盤のリリース国: イタリア
- 盤の特徴: オリジナルLPにないA2を追加収録
- ラベル表記: 「Giody Grind」と誤記
同時代の文脈
1969年前後の英国ロックは、ブルースロックの延長線上から、より組曲的な構成や鍵盤主体の展開へと広がっていく時期です。Jody Grindもその流れの中に置きやすいバンドで、同時代の英国プログレ周辺のバンドと比べると、派手な大作主義よりも、演奏の流れや曲の切り替わりに耳が向くタイプの作品として見られます。ジャズロック寄りの感触を持つグループと並べて語られることもあるバンドです。
聴きどころとして見えやすい点
実際に聴くと、鍵盤の動きとリズム隊の押し引きが曲の進行を作っていく印象が出やすい作品です。ギターが前面に出る場面もありますが、単独のリフで押し切るというより、バンド全体で展開を組み立てる感覚が強いです。プログレの初期らしい、曲の中で場面が変わっていく作りが見どころになりやすい一枚です。
まとめ
『One Step On』は、短命ながらも個性を残したJody Grindの1969年作として、初期英国プログレの空気を伝える作品です。イタリア盤ではオリジナルLPにない曲が加わっていて、同じタイトルでも少し違う顔を持っています。バンドの活動時期、編成、そして当時の英国ロックの流れを合わせて見ると、この一枚の輪郭がつかみやすいです。
トラックリスト
- One Step On (18:43)
- A2 – Paint It Black (Single Version) (5:06)
- B1 – Little Message, 31/7/69 (4:39)
- B2 – Night Today, 27/7/69 (5:02)
- B3 – U.S.A., 27/7/69 (6:41)
- B4 – Rock’n Roll Man, 27/7/69 (4:31)
関連動画
RAH Band – Producers Choice (2020)
RAH Band『Producers Choice』について
RAH Bandは、Richard A. Hewsonを中心に動くUKのスタジオ・プロジェクト。70年代後半から80年代にかけて、ジャズ・ファンク、シンセポップ、ポップの要素を行き来しながら、UKチャートでも結果を残してきたユニットだ。
『Producers Choice』は2020年にUKでリリースされた2枚組アナログ盤。Record Store Day 2020向けの限定盤として出た作品で、RAH Bandの各アルバムから選ばれた楽曲を、オリジナル・テープからリマスターしてまとめた編集盤になっている。印刷スリーブ付きの仕様で、Atjazz Record Companyからのライセンス盤でもある。
作品の位置づけ
RAH Bandの代表曲を、あらためてまとまった形で聴ける一枚という位置づけ。70年代のスタジオ志向の作り込みと、80年代のダンス寄りの感触、その両方を横断する内容になっている。
Richard Hewsonは、編曲家、指揮者、マルチ・インストゥルメンタリストとして活動を始めたのち、自身のイニシャルを冠したRAH Band名義で制作、作曲、演奏まで手がけるようになった。そうした個人プロジェクトとしての性格が、編集盤であってもはっきり見えるのがこの作品の面白さだ。
収録曲の中心となる代表曲
この盤の核としてまず挙がるのが「Clouds Across The Moon」と「Messages From The Stars」。どちらもRAH Bandを語るときによく触れられる曲で、前者はUKヒットとして知られ、後者も後年まで広く親しまれてきた。
「Clouds Across The Moon」は、曲名のイメージどおり宇宙的な題材を持ちながら、打ち込みとバンド的な演奏感が同居するところが特徴。RAH Bandのシンセポップ面と、ソウル寄りの感触が重なる1曲として位置づけられる。
「Messages From The Stars」は、80年代のRAH Bandらしい軽快さと電子音の整理された鳴りが前に出る楽曲。のちにクラブ文脈や再評価の流れでも名前が出やすい代表曲だ。
聴きどころ
この編集盤は、曲ごとの年代差をそのまま並べるというより、RAH Bandの制作スタイルの変化を追いやすい構成になっている。ジャズ・ファンク寄りの楽器の運び、ポップとしての覚えやすさ、シンセを使った音の設計、その3つが曲ごとに違う比重で現れる。
リマスター盤なので、オリジナル盤で聴かれていた曲も、現在の再生環境で輪郭をつかみやすい。とくに低音のラインやシンセのレイヤー、コーラスの重なり方は、編集盤としてまとめて聴くと整理して追いやすい印象がある。
同時代の文脈
RAH Bandは、UKの70年代後半から80年代初頭にかけての、スタジオ主導のポップ/ダンス音楽の流れに位置する。派手なバンド・サウンドというより、作曲、編曲、録音の作業を前面に出したタイプで、同時代のシンセポップやジャズ・ファンクと接点を持つ。
その意味では、ディスコ以後のダンス・ミュージックや、英国のソウル/ファンク寄りポップと並べて語られることが多い存在だ。RAH Bandの曲は、ラジオ向けのポップ感と、スタジオ作品としての細かな構成が同居している。
まとめ
『Producers Choice』は、RAH Bandの主要曲をオリジナル・テープからリマスターし、2枚組LPにまとめた2020年の編集盤。代表曲「Clouds Across The Moon」や「Messages From The Stars」を軸に、Richard Hewson主導のスタジオ・プロジェクトとしてのRAH Band像をつかみやすい内容だ。
70年代のジャズ・ファンク的な流れと、80年代のシンセポップ/ダンス・ポップの接点を一度にたどれる盤、という見方がしやすい。
トラックリスト
- A1 – Beyond
- A2 – Downside Up
- A3 – Out On The Edge
- B1 – Float
- B2 – Perfumed Garden
- B3 – Shadow Of Your Love
- C1 – Clouds Across The Moon (Supanova Mix)
- C2 – Electric Fling
- C3 – Messages From The Stars
- D1 – Falcon
- D2 – Slide
- D3 – Riding On A Fantasy
関連動画
- The RAH Band – Downside Up (Remaster)
- The RAH Band – Beyond (Remaster)
- The RAH Band – Out On The Edge (Remaster)
- The RAH Band – Float (Remaster)
- The RAH Band – Perfumed Garden (Remaster)
- The RAH Band – Shadow Of Your Love (Remaster)
- The RAH Band – Clouds Across The Moon (Supanova Mix Remaster)
- The RAH Band – Electric Fling (Remaster)
- The RAH Band – Messages From The Stars (Remaster)
- The RAH Band – Falcon (Remaster)
Pink Floyd – Original Motion Picture Soundtrack From The Film “More” (1969)
Pink Floyd『Original Motion Picture Soundtrack From The Film “More”』
Pink Floydが1969年に発表した、Barbet Schroeder監督の映画『More』のサウンドトラック盤である。バンドにとっては3作目のスタジオ・アルバムであり、同時に初の映画音楽作品でもある。サイケデリック期のPink Floydをそのまま記録したような内容で、のちの大作志向とは少し違う、短い曲を中心にした構成になっている。
作品の位置づけ
この時期のPink Floydは、Syd Barrett脱退後の編成を固めつつあった段階にある。中心メンバーはRoger Waters、Nick Mason、Richard Wright、そしてDavid Gilmour。映画音楽という用途があるぶん、通常のアルバムよりも場面ごとの切り替わりがはっきりしていて、楽曲の長さや展開も比較的コンパクトである。
1969年のPink Floydは、実験性の強いサイケデリック・ロックの文脈にありながら、フォーク寄りの曲調や、当時の映画サウンドトラックらしい用途性も備えている。後年の『The Dark Side of the Moon』や『Wish You Were Here』のような統一感の強い作品群とは異なり、この段階ではまだ曲ごとの性格がかなりはっきりしている。
収録曲と聴きどころ
このアルバムには、のちに単独でも語られる曲がいくつか入っている。代表的なのは「Cymbaline」「Green Is the Colour」「Crying Song」あたりで、いずれも映画の空気に沿った、抑えめの演奏が印象に残る。
「Cymbaline」: 物語性のある曲調で、映画音楽としての役割が強い楽曲
「Green Is the Colour」: アコースティックな感触が前に出る曲
「Crying Song」: 短い尺の中でメロディが立つ曲
「The Nile Song」: この作品の中では異質な、硬いギターが前に出る曲
特に「The Nile Song」は、Pink Floydの初期作品の中でもかなり強い音像を持つ曲として知られる。映画サウンドトラックという枠の中で、こうした直線的なロック・ナンバーが入っているのが面白い点である。
同時代の文脈
1969年前後の英ロックでは、映画との接点を持つ作品が少なくないが、『More』はその中でも、バンドの持ち味をそのまま映画用に流し込んだタイプに入る。サイケデリック・ロック、フォーク・ロック、映画音楽の要素が同居していて、同時代の実験的な作品群、たとえば関連性のあるアート・ロックやプログレッシブ・ロックの流れとも地続きに感じられる。
ただし、この時点ではまだ巨大なコンセプト作品というより、楽曲単位の密度や色分けが前に出る。Pink Floydが後に築く“アルバム全体で聴かせる”形式への途中経過として見ると、位置づけが分かりやすい。
US盤の再発について
ここでの盤は、USのHarvest再発盤として出たもの。オリジナルのUS盤はTowerからのリリースで、再発盤ではレーベル表記やプレス工場が異なる。記録上、Winchester plantでプレスされたことが示されている。
また、ラベル上の表記に「B2」の曲名の綴り違いがあり、サイドBのランアウト表記も通常のものと異なる点がある。こうした細かな差は、当時の再発盤らしい個体差として見ておくとよい。
まとめ
『More』は、Pink Floydの初期サウンドを映画のためにまとめた作品である。サイケデリックな曲、フォーク寄りの曲、やや硬質なロックが同居し、のちの大規模なアルバム作品とは違う、1969年のバンドの姿がそのまま残っている。代表曲としては「Cymbaline」「Green Is the Colour」「The Nile Song」などが挙げられる。
映画音楽としての機能を持ちながら、Pink Floydらしい音の扱いもすでに見えている作品だといえる。
トラックリスト
- A1 – Cirrus Minor (5:16)
- A2 – The Nile Song (3:24)
- A3 – Crying Song (3:25)
- A4 – Up The Khyber (2:07)
- A5 – Green Is The Colour (2:53)
- A6 – Cymbaline (4:45)
- A7 – Party Sequence (1:10)
- B1 – Main Theme (5:27)
- B2 – Ibiza Bar (3:17)
- B3 – More Blues (2:13)
- B4 – Quicksilver (7:03)
- B5 – A Spanish Piece (1:00)
- B6 – Dramatic Theme (2:11)
The Count – The Intuition Element (1984)
The Count『The Intuition Element』
The Countの『The Intuition Element』は、1984年にフランスで登場した作品。クレジットされているメンバー数が多く、Joe Tortelli、Carolyn Casey、Chuck Stanton、Fudge Keegan、Todd Carnes、Jay Roewe、Joseph A. Viglione、Jeff Hill、Jim Surrette、Chuck Chewning、Mike Quinn、Bill Allenらが参加している。ロックの枠に置かれつつ、スタイル面ではニュー・ウェイヴの要素が前面にある1枚として見てよさそうだ。
作品の輪郭
タイトルからも受ける印象どおり、直感や感覚の動きを意識した作りの作品名で、1984年という時代らしい空気もまとっている。ニュー・ウェイヴ期の作品らしく、ロックの骨格を保ちながら、当時の新しい音像やリズム感へ寄せていく流れの中にある盤だろう。フランス盤として出ている点も、この時代の欧州圏ニュー・ウェイヴ作品らしい流通のかたちを感じさせる。
収録曲はすべてVar Music Publishing Co.管理のクレジットになっており、作品全体として一つのまとまりを意識した構成だったことがうかがえる。メンバー表記の人数から見ても、バンドというよりプロジェクト色の強い編成だった可能性がある。
サウンドの印象
実際の音を追うと、ロックの直線的な推進力に、ニュー・ウェイヴ特有の整理されたビート感や、少し硬質な質感が重なって聞こえるタイプの作品として受け取れそうだ。1984年の作品らしく、ギター主体のバンド感だけで押し切るというより、アレンジの切り替えや音の隙間の作り方に意識が向いている印象がある。
同時代の文脈で見ると、The Cure、Talking Heads、B-52’s、XTCのような、ロックを土台にしながらニュー・ウェイヴの文法を取り込んだ潮流と近い空気を共有している。とはいえ、The Countのこの盤はその中でも、よりローカルな制作感やバンド内の役割分担が前に出るタイプに見える。
位置づけ
The Countにとって『The Intuition Element』は、少なくとも1984年時点の活動を示す重要な記録として扱える作品だ。タイトルの初出年でもあり、バンドの方向性をその時点で形にしたアルバム、あるいはシングルやプロジェクト作品に近い性格を持つ可能性もある。いずれにしても、当時のニュー・ウェイヴ周辺の空気をまとった、フランス発のロック作品として見るのが自然だろう。
まとめ
『The Intuition Element』は、1984年のロック/ニュー・ウェイヴの文脈に置くと輪郭がつかみやすい作品。多人数編成のクレジット、統一された出版管理、そしてフランス盤という条件から見ても、時代性の強い一枚として位置づけられる。派手な逸話や代表曲の情報は見当たらないが、80年代前半のニュー・ウェイヴ周辺を掘るときには、名前を押さえておきたい盤だ。
トラックリスト
- A1 – Million Miles A Minute (2:34)
- A2 – Auguste Winds (2:34)
- A3 – Run The Night Away (4:02)
- A4 – You Didn’t Hear It From Me (2:46)
- A5 – Experienced Again (2:25)
- A6 – Reaction (2:15)
- B1 – The Midnight Run (2:59)
- B2 – Wave Descends (3:03)
- B3 – Somewhere Inside Today (2:12)
- B4 – Here In My Heart (2:44)
- B5 – The Intuition Element (6:24)
関連動画
Jon Lord – Sarabande (1976)
Jon Lord「Sarabande」について
Jon Lordの「Sarabande」は、1976年に発表されたソロ作品です。Deep Purpleの共同創設者として知られるLordが、バンドの枠を離れて自身の音楽性を前面に出したアルバムで、ロックの語法とクラシック寄りの構成を結びつけた作品として位置づけられます。ハモンド・オルガンの強い存在感で知られる彼らしい作りですが、ここでは単なるキーボード主体のロックというより、組曲的な流れを持つインストゥルメンタル作品として聴こえます。
作品の位置づけ
1970年代半ばのJon Lordは、Deep Purpleでの活動と並行して、より大きな編成や作曲面に踏み込んだ仕事を進めていました。「Sarabande」はその流れの中にあるアルバムで、ロック・オルガンの名手というイメージだけでは収まりきらない、作曲家としての側面を確認できる内容です。Deep Purpleの強いリフや即興性とは少し距離があり、構成を追って聴くタイプの作品になっている点が特徴です。
音の印象
実際に聴くと、まず耳に入るのはオルガンの厚みと、弦やリズム隊を含めた編成の動きです。曲の展開は直線的ではなく、場面が切り替わるように進んでいきます。ロックの推進力を保ちながら、クラシック音楽のような組み立てを意識した流れが見えるのが面白いところです。派手な歌ものではなく、楽器同士の掛け合いや、テーマの反復で聴かせるタイプの作品といえる内容です。
Deep Purpleとの関係
Jon Lordといえば、やはりDeep Purpleでの存在感が大きいです。ハモンド・オルガンを大きな音で鳴らし、ときに歪ませながらロックと古典的な要素を接続していったスタイルは、ハードロックやヘヴィメタルの形成にも影響を与えたものとして語られます。「Sarabande」は、その延長線上にある一方で、バンドの枠内では見えにくい作曲志向を前に出した作品として聴けます。
1976年という時代
1976年という年は、ハードロックが成熟し、同時により複雑な構成や演奏を取り入れる流れも強まっていた時期です。Jon Lordのこのアルバムも、その時代の空気と無関係ではなさそうです。ロックのエネルギーを保ちながら、より長いスパンで音楽を組み立てる発想が前に出ていて、同時代のプログレッシブ・ロック周辺とも近い感触があります。
この盤について
このドイツ盤は白盤仕様のエディションとして出ており、ラベルには1976年の表記、裏ジャケットには1983年のクレジットが見られます。再発盤として流通しているものです。制作年と盤の流通年が異なるため、作品そのものは1976年のものとして捉えるのが自然です。
また、この再発盤は西ドイツでプレス・印刷されたものです。ジャケットやレーベル表記からも、オリジナルの時代感を残しつつ、後年に再流通した盤であることがわかります。
まとめ
「Sarabande」は、Jon Lordのロック・キーボード奏者としての顔と、作曲家としての顔の両方が見えるアルバムです。Deep Purpleの強烈なイメージとは少し違い、楽曲の構成や音の配置をじっくり追う楽しさがある作品。1970年代ロックの周辺で、クラシック的な発想をどう取り込むかという流れを感じる一枚です。
トラックリスト
- A1 – Fantasia (3:30)
- A2 – Sarabande (7:20)
- A3 – Aria (3:42)
- A4 – Gigue (11:06)
- B1 – Bouree (11:00)
- B2 – Pavane (7:35)
- B3 – Caprice (3:12)
- B4 – Finale (2:03)
関連動画
Steve Hillage – L (1976)
Steve Hillage『L』(1976年)
Steve Hillageのソロ作『L』は、1976年に発表されたアルバムだ。Gongでの活動を経て、ソロ・ギタリストとしての輪郭がさらにはっきりしてくる時期の作品で、UKのプログレッシブ・ロックと実験的な音響感覚が前面に出ている。後年のアンビエント寄りの仕事や、System 7での活動を知っていると、この時点ですでにエコーやリバーブを活かしたギターの処理がかなり意識されていることがわかる。
作品の位置づけ
Hillageは、Uriel、Egg、Arzachel、Kevin Ayers周辺の活動を経てGongに参加し、Daevid Allen流のグリッサンド・ギターを吸収しながら独自の演奏へ進んだ人物だ。『L』は、その流れの中でソロ・アーティストとしての個性を固めていく初期の重要作として位置づけられる。Gong的なサイケデリック感覚を残しつつ、より整理されたバンド・サウンドと、ギターの音色そのものを聴かせる作りになっている。
音の印象
この時期のHillageのギターは、速いフレーズを並べるだけではなく、音の伸びや残響で空間を作るところが特徴だ。歪みの質感も含めて、単なる技巧派というより、音響の流れを組み立てるプレイヤーという印象が強い。シンセサイザーとの重なりもあり、ロックの推進力と実験性が同じ場に置かれている感じがある。
同時代の文脈で見ると、HawkwindやGong、あるいはCamelや初期のYes周辺のプログレと並べて語られることがあるタイプの作品だが、『L』はよりギターの処理に焦点がある。のちのアンビエント・テクノやニューエイジ寄りの感触を先取りしているようにも聴こえる。
収録曲と代表曲
『L』には、のちにHillageの代表曲として知られる「Hurdy Gurdy Glissando」が収録されている。この曲は、タイトルどおりグリッサンドを軸にした演奏で、Hillageのギター表現を端的に示す一曲だ。メロディをなぞるというより、音の滑りと持続で印象を作る曲で、彼のソロ活動を語るうえで外せない存在になっている。
制作とリリース情報
US盤はPresswellでのプレス。プロモーション盤にはゴールドのDJスタンプやタイミング・ストリップが付くものがあり、一部にはTodd RundgrenのUtopiaの写真が同封されるものもある。クレジット上でも「Todd Rundgren’s Utopia appear by courtesy of Bearsville Records」と記されており、当時のUSロック/プログレ周辺のつながりが見える。
同時代とのつながり
Steve Hillageはこの時代、演奏技術だけでなく、音色や残響の扱いで個性を出していた。のちにSimple Mindsのプロデュースで知られる一方、The Orbに自身の音源をサンプリングされたことをきっかけにSystem 7へつながっていく流れを見ると、『L』の時点で既にロックの枠を越える要素があったことがわかる。1976年という年のプログレ作品としては、構築性と実験性のバランスに特徴があるアルバムだ。
まとめ
『L』は、Gongを経たSteve Hillageが、ソロ・ギタリストとしての言語を固めていく途中の重要作だ。ギターのグリッサンド、残響、シンセとの絡み、そして「Hurdy Gurdy Glissando」に代表される演奏の組み立て方。そのあたりに、この人の後年まで続く核がはっきり出ている作品といえる。
トラックリスト
- A1 – Hurdy Gurdy Man (6:32)
- A2 – Hurdy Gurdy Glissando (8:54)
- A3 – Electrick Gypsies (6:24)
- B1 – Om Nama Shivaya (3:33)
- B2 – Lunar Musick Suite (11:59)
- B3 – It’s All Too Much (6:26)
関連動画
The Flying Lizards – The Flying Lizards = ミュージック・ファクトリー (1980)
The Flying Lizards『ミュージック・ファクトリー』について
The Flying Lizardsは、David Cunninghamを中心にした実験色の強いポップ・グループだ。1970年代後半のイギリスで始まり、既成のロックやポップの型をずらした音作りで知られている。この1980年作『ミュージック・ファクトリー』は、日本ではこのタイトルで紹介された作品で、英題はThe Flying Lizards。日本盤は1980年リリースで、帯、英日対訳の歌詞折り込み、そして日本語解説紙が付いた仕様になっている。
作品の位置づけ
オリジナル・アルバムとしては1979年のデビュー作に続く時期の作品で、The Flying Lizardsの初期の流れをつかむうえで重要な一枚といえる。バンドの核にあるのは、David Cunninghamのプロデュース感覚と、入れ替わる演奏者・ヴォーカリストの組み合わせだ。実験音楽の側面がありながら、曲の骨格はポップ寄りに保たれているところが、このグループらしさになっている。
聴こえてくるもの
この作品では、音の配置がかなり特徴的だ。リズムやボーカルが前に出たり引いたりしながら、普通のバンド演奏の流れから少し外れた場所で曲が進む。電子的な処理、硬いビート、短いフレーズの反復が目立ち、ロックの体裁を取りつつも、パンク以後の制作感覚やアート寄りの手つきが強い。
実際に聴くと、音の抜き差しがはっきりしていることが印象に残る。メロディを大きく押し出す場面より、声や音色の置き方で引っかかりを作る場面が多い。単純な「聴きやすさ」ではなく、音がどこに置かれているかを追っていくタイプの作品だ。
同時代とのつながり
1970年代末から1980年前後のイギリスでは、ポストパンクやニューウェーブの文脈で、ロックの形式を崩す試みが多く見られた。The Flying Lizardsもその流れの中に置けるが、一般的なバンド像からはかなり離れている。アート寄りの感覚、スタジオ作業の比重、既存曲の扱い方などから、同時代の実験的なポップ・アクトや、切り貼りの感覚を持つ作品群と並べて語られることがある。
David Cunninghamの関与を軸に見ると、演奏の生々しさよりも編集や構成の面白さが前に出る。David Toop、Steve Beresford、Patti Palladinらの名前が並ぶのも、このバンドの流動的な性格を示している。
日本盤の仕様
この日本盤は、ジャケットに帯が付き、英語と日本語の歌詞を収めた4ページの折り込みインサート、さらに日本語解説の一枚紙が付属する。盤を光にかざすとやや透けて見える茶色味があり、JVC Supervinylでプレスされたことがわかる仕様だ。背面表記には、ロンドンのBerry StreetとBrixtonで録音されたこと、さらにニューヨーク、ミュンヘン、Maidstoneなどでも追加録音が行われたことが記されている。制作の移動の多さも、この作品の断片的な手触りにつながっているように見える。
代表曲について
The Flying Lizardsといえば、一般にはシングル曲の印象が先に来ることが多い。特にデビュー期の「Money (That’s What I Want)」は、このグループの代表的な楽曲として知られている。『ミュージック・ファクトリー』は、その一曲だけで語れる作品ではないが、バンドの輪郭を理解するうえでは、あのずらした感覚がアルバム全体にも通じている。
まとめ
『ミュージック・ファクトリー』は、The Flying Lizardsの初期像を日本盤の丁寧な体裁で伝える1980年の一枚だ。ポップの形を借りながら、その中身を少しずつ組み替えていくような作り。ロック、電子音、編集感覚が同居する、当時の実験的な空気をそのまま閉じ込めた作品として見えてくる。
トラックリスト
- A1 – Mandelay Song = マンドレイ・ソング (2:28)
- A2 – Her Story = ハー・ストーリー (4:40)
- A3 – TV (4:00)
- A4 – Russia = ロシア (6:36)
- A5 – Summertime Blues = サマータイム・ブルース (3:31)
- B1 – Money = マネー (5:49)
- B2 – The Flood = ザ・フラッド (4:56)
- B3 – Trouble = トラブル (2:48)
- B4 – Events During Flood = イベンツ・デュアリング・フラッド (3:24)
- B5 – The Window = ザ・ウィンドウ (5:35)
関連動画
Lily & Maria – Lily & Maria (1968)
Lily & Maria『Lily & Maria』について
Lily & Mariaの『Lily & Maria』は、1968年に発表されたデュオ唯一のアルバムである。メンバーはMaria Neumannと、Lily FiszmanあらためLily Isaacs。アメリカ出身のフォーク・ポップ・デュオとして、21歳のときにこの1枚を残した、という位置づけの作品である。のちに2008年に180g仕様の再発盤が登場し、ゲートフォールド仕様、ライナー・ノーツ付きの形で出ている。
作品の全体像
音楽性は、アコースティックを軸にしたフォーク、バラード、ポップ・ロックの要素が中心である。ジャンル表記としてはRock、Pop、Folk、World, & Countryが並び、スタイル面ではAcoustic、Ballad、Folk、Pop Rockに分類されている。デュオ編成らしい声の重なりと、当時のフォーク・ポップの感触がまとまっている1枚といえる。
アーティストの紹介では「one lone album」とされており、このアルバムがLily & Mariaというユニットの核になる作品であることがわかる。活動終了後も二人は友人関係を保ったというプロフィールも残っている。
再発盤について
2008年盤は、180g virgin vinyl、Mastered at Abbey Road、All-analogue audiophile pressingという表記がある再発盤である。裏ジャケットには「Mastered […] at Hiltongrove, London, March 2008」と記されており、オリジナル1968年盤とは別に、2008年時点で新たにマスタリングされた盤として流通したことがうかがえる。
パッケージはゲートフォールド仕様で、ライナー・ノーツも付属している。オリジナル盤の詳細な仕様との比較はここでは触れないが、少なくとも2008年盤は音質面と装丁面を意識した再発として作られている。
同時代の文脈
1968年という時期は、フォークとポップの接点が広がっていた時代である。Lily & Mariaも、その流れの中で、アコースティック主体の楽曲とポップな構成を行き来する作品として受け取れる。デュオの歌声を軸にした作りは、同時代のフォーク・ポップ系の作品群と並べて語られることが多いタイプのものだろう。
このアルバムについては、アーティスト紹介ページとして挙げられているGalactic Rambleの「Search Music」記事でも取り上げられている。埋もれやすい作品を掘り起こす文脈で参照されることがある、という立ち位置のアルバムである。
まとめ
Lily & Maria『Lily & Maria』は、1968年に残されたデュオ唯一のアルバムで、アコースティック主体のフォーク・ポップ作品である。2008年には180gの再発盤がゲートフォールド仕様で登場し、Abbey Roadでのマスタリングやアナログ・プレスを前面に出した形で再提示された。作品そのものは、短い活動の中で残された、二人の歌の関係性を軸にした記録として見ることができる。
トラックリスト
- Ismenè-Jasmine
- A1 – Subway Thoughts
- A2 – Everybody Knows
- A3 – I Was
- A4 – Ismenè – Jasmine
- A5 – There’ll Be No Clowns Tonight
- Scatterings
- B1 – Aftermath
- B2 – Morning Glory Morning
- B3 – Melt Me
- B4 – Fourteen After One
関連動画
Tim Bowness – Powder Dry (2024)
Tim Bowness『Powder Dry』について
Tim Bownessの『Powder Dry』は、2024年に登場した作品。No-Manの中心人物として知られるTim Bownessが、ソロ名義であらためて自分の音楽をまとめた一枚で、アート・ロックとプログレッシブ・ロックの流れの中に置ける内容になっている。
Tim Bownessは、Porcupine TreeのSteven Wilsonと組んだ長期プロジェクトNo-Manで広く知られる存在だが、ソロや客演でも活動の幅を広げてきたアーティスト。この『Powder Dry』も、その経歴が反映された作品で、バンドの枠に収まりきらない作り手としての視点が前に出るタイトルといえる。
制作とリリースの情報
本作は、イングランドのウィルトシャーで2022年11月から2024年2月にかけて録音され、ロンドンのNo Man’s Landで2023年3月から2024年3月にかけてミックスされた。制作期間が比較的長く、段階を追って仕上げられたことがうかがえる。
盤は2024年リリース。フルカラーのインナー・スリーブが付属し、歌詞とクレジットを収録。シュリンクのステッカーには「kscope1242」とある。さらに、購入元によってはサイン入りアートプリントが付く形で流通していた。
音楽的な位置づけ
Tim Bownessの作品群の中では、No-Manで培われた繊細な構成感と、ソロならではの個人的な温度が重なるタイプのアルバムに見える。Stephen Bennettが参加している点も含め、演奏とアレンジのバランスを重視した作りが想像される。
アート・ロックやプログレッシブ・ロックの文脈では、派手な技巧を前面に出すというより、曲の流れや音の配置で聴かせるタイプの作品として捉えやすい。Tim Bownessは、そうした英国的な室内感のあるロックの系譜に位置するアーティストで、同時代のプログレ周辺の作家性を持つミュージシャンたちと比較されやすい存在でもある。
作品の見どころ
このアルバムは、全曲が2022年から2024年にかけてじっくり作られている点が特徴。短期集中でまとめた作品というより、時間をかけて音を整えた記録として受け取れる。歌詞とクレジットがきちんと付属するあたりも、アルバム全体を通して聴かせる設計を感じさせる。
Tim Bownessのソロ作は、No-Manのファンからも自然に接続できる一方で、より個人の視点が出やすいところがある。『Powder Dry』も、その延長線上にあるタイトルとして見ると輪郭がつかみやすい。
ひとことで整理すると
2024年のTim Bownessによるソロ作品。No-Man以後の文脈を引き継ぎながら、アート・ロック/プログレッシブ・ロックの手触りでまとめられたアルバム、という位置づけの一枚。
トラックリスト
- A1 – Rock Hudson (2:04)
- A2 – Lost / Not Lost (2:09)
- A3 – When Summer Comes (2:59)
- A4 – Idiots At Large (2:50)
- A5 – A Stand-Up For The Dying (4:59)
- A6 – Old Crawler (1:18)
- A7 – Heartbreak Notes (1:33)
- A8 – Ghost Of A Kiss (1:36)
- B1 – Summer Turned (2:06)
- B2 – You Can Always Disappear (2:38)
- B3 – Powder Dry (2:38)
- B4 – Films Of Our Youth (1:30)
- B5 – This Way Now (2:20)
- B6 – I Was There (4:07)
- B7 – The Film Of Our Youth (2:17)
- B8 – Built To Last (2:32)
関連動画
Caravan – Canterbury Tales (The Best Of Caravan) (1976)
Caravan『Canterbury Tales (The Best Of Caravan)』について
Caravanは、イングランドのカンタベリー周辺で生まれたプログレッシブ・ロック・バンドで、1960年代末から70年代前半のカンタベリー・シーンを代表する存在のひとつだ。この『Canterbury Tales (The Best Of Caravan)』は、バンドの楽曲をまとめたベスト盤として1976年に登場した作品で、ここで扱う日本盤は1978年リリース。オリジナル・アルバムではなく、Caravanの主要曲を振り返る編集盤という位置づけになる。
Caravanの音楽は、サイケデリック・ロック、ジャズ、クラシックの要素を混ぜながら、演奏の流れや曲展開を重視した作りが特徴だ。プログレッシブ・ロックの中でも、YesやGenesisのような大きなスケール感とは少し違って、より室内楽的、あるいは英国の抒情性が前に出るタイプとして語られることが多い。カンタベリー・シーンの文脈では、Soft MachineやHatfield and the Northと並べて語られることもあるが、Caravanはその中でも比較的メロディのわかりやすさが残るバンドとして知られている。
作品の位置づけ
1971年の『In the Land of Grey and Pink』が批評面で特に評価の高い代表作として知られており、このベスト盤は、そうした初期Caravanの流れを一望するための一枚として見やすい。バンドはメンバー交代を重ねながら活動を続けたが、70年代中期の時点でその歩みを整理する意味でも、こうした編集盤の存在は大きい。
収録曲の選び方によっては、初期の組曲的な長尺曲から、よりコンパクトな楽曲まで、Caravanの音作りの幅が見えやすい。プログレ系のベスト盤にありがちな「代表曲集」というより、バンドの変化を追う資料的な性格も持つ一枚といえる。
内容と聴きどころ
Caravanの代表的な楽曲では、ピアノやオルガンを軸にした旋律、柔らかいコーラス、ジャズ寄りのリズム展開が目立つ。ギターが前面に出る場面でも、ハードさよりはフレーズの運びや曲全体の流れが重視される印象だ。曲が進むにつれて拍子感や展開が変わることも多く、ロックでありながら組曲を聴いているような感覚が残る。
Caravanの楽曲の中では、『Golf Girl』や『Nine Feet Underground』、『Love to Love You (And Tonight Pigs Will Fly)』などが広く知られている。とくに『In the Land of Grey and Pink』期の楽曲は、バンドを代表するイメージを形作った重要な材料になっている。
この編集盤でも、そうした初期の核になる楽曲群を通して、Caravanらしい流れがつかみやすい。メロディの伸び方、楽器の受け渡し、曲の途中で空気が変わる感じなど、ベスト盤であってもバンドの個性が比較的はっきり出るタイプだ。
日本盤について
1978年の日本盤には、和文と英文の歌詞インサートが付属している。英語詞を追いながら聴ける点は、Caravanのように歌詞の響きと曲の展開が結びつくバンドではありがたい仕様だ。日本盤ならではの付属物として、コレクション面でもわかりやすい要素になっている。
カンタベリー・シーンの中で
Caravanは、カンタベリー・シーンの中でも中心的な存在として扱われることが多い。Wilde Flowersの流れを引き継いだメンバー構成、ジャズ的な感覚を持つ演奏、英国的なユーモアや抒情を含む歌ものの作りなど、同時代の他のプログレ・バンドとは少し違う立ち位置にある。
同じシーンのバンドと比べると、Caravanは技巧の見せ場よりも、曲の流れとメロディのまとまりが印象に残りやすい。そうした点が、このベスト盤でも確認しやすいはずだ。
まとめ
『Canterbury Tales (The Best Of Caravan)』は、Caravanの初期から中期にかけての魅力をまとめた編集盤。1971年の『In the Land of Grey and Pink』を頂点とする初期の流れを軸に、カンタベリー・シーンらしい感触をつかめる内容になっている。1978年日本盤では歌詞インサートも付属し、聴く側にとってはバンドの楽曲を追いやすい形の一枚だ。
トラックリスト
- A1 – If I Could Do It All Over Again, I’d Do It All Over You
- A2 – Winter Wine
- A3 – Waterloo Lily
- A4 – L’Auberge Du Sanglier / A Hunting We Shall Go / Pengola / Backwards / A Hunting We Shall Go (Reprise) (10:05)
- B1 – Stuck In A Hole
- B2 – Introduction
- B3 – Can’t Be Long Now/Francoise/For Richard/Warlock
- B4 – The Fear And Loathing In Tollington Park Rag
The Butler Twins – Live In Detroit (1988)
The Butler Twins『Live In Detroit』について
『Live In Detroit』は、デトロイト出身の双子兄弟、Clarence ButlerとCurtis ButlerによるThe Butler Twinsのライヴ盤で、1988年にUSでリリースされた作品。タイトル通り、地元圏のライヴを記録した一枚で、録音は1988年5月21日、ミシガン州DearbornのMoby Dick Loungeで行われている。
バンド編成は、Clarence ButlerとCurtis Butlerを中心に、ゲスト・ミュージシャンを加えた形。プロフィール上ではエレクトリック・ブルースのグループとして紹介されており、この作品もその流れの中にある。ハーモニカ・ブルースの要素も含むため、ギター主体の電気的なブルース・バンド・サウンドと、ハーモニカの鳴りが前に出る構成が想像しやすい。
作品の位置づけ
このアルバムは、The Butler Twinsにとって少なくとも1988年時点のライヴ活動を記録した初出の作品。デトロイト周辺のブルース・シーンを背景にした、現場感のあるドキュメントとして位置づけられる一枚といえる。
デトロイトのブルースといえば、都市のR&Bやソウルの感触を引きつつ、シカゴ・ブルースの流れとも接点を持つことが多い。この作品も、その周辺文脈の中で聴かれることが多そうだ。エレクトリック・ブルース、ハーモニカ・ブルースという枠組みからも、派手な装飾より、演奏の押し出しやバンドの呼吸が重要なタイプの作品として見えてくる。
ライヴ盤としての見どころ
録音場所がクラブのMoby Dick Loungeである点も、この作品の性格をはっきりさせている。大きなホール録音というより、近い距離感の会場での演奏を切り取ったもの。ライヴ盤では、スタジオ盤よりもテンポの揺れ、掛け合い、観客との距離感が出やすいが、この作品もそうした現場の要素が前面に出るタイプに見える。
実際に聴いた感想としては、ここでは断定を避けるが、こうした構成のライヴ・ブルース盤は、曲そのもの以上に演奏の進め方や音のぶつかり方が印象を左右しやすい。特に双子の兄弟を中心にした編成は、息の合った展開が作品の核になっている可能性が高い。
アーティストについて
The Butler Twinsは、Clarence ButlerとCurtis Butlerの双子兄弟によるデトロイトのエレクトリック・ブルース・バンド。Clarence Butlerは2003年に亡くなり、その3か月後にCurtis Butlerも続いたとされている。そうした経緯を踏まえると、『Live In Detroit』は兄弟の演奏を同時代の空気とともに残した記録としても受け止められる。
まとめ
『Live In Detroit』は、1988年のデトロイト圏ブルースを、ライヴの形でそのまま伝える作品。The Butler Twinsという双子のユニット名が示す通り、兄弟の結びつきがそのまま演奏の軸になっているはずの一枚で、エレクトリック・ブルースとハーモニカ・ブルースの現場感を知るうえで、重要な記録のひとつとして見てよさそうだ。
トラックリスト
- A1 – Introduction: Famous Coachman (0:30)
- A2 – Long Distnace Love (4:34)
- A3 – Hey Baby (5:02)
- A4 – The Fatman (5:12)
- A5 – I’ve Got To Move Out Of My Neighborhood (6:28)
- A6 – Take Me Back (3:55)
- B1 – Butler Boogie (7:22)
- B2 – Old Blouse Or Two (5:46)
- B3 – Ex Old Man (3:58)
- B4 – Miss T (3:42)
Shingetsu – New Moon / Shingetsu (1979)
Shingetsu「New Moon / Shingetsu」(1979)について
Shingetsuは、1970年代の日本のプログレッシブ・ロック/シンフォニック・ロックを代表する短命ながら重要なバンドのひとつだ。この「New Moon / Shingetsu」は1979年に日本で登場した作品で、バンド名をそのまま冠した初出作として位置づけられる。メンバーはNaoya Takahashi、Akira Hanamoto、Haruhiko Tsuda、Shizuo Suzuki、Makoto Kitayamaの5人編成。
Shingetsuのプロフィールを見ると、中心人物のAkira HanamotoとHaruhiko Tsudaは、その後も関連プロジェクトへつながっていく流れがある。つまりこの作品は、単発のアルバムというより、70年代日本プログレの一つの到達点として見ると輪郭がつかみやすい。バンドの公式サイトもあり、後年まで一定の注目を集めてきたことがわかる。
作品の位置づけ
1979年という時期は、日本のロックが70年代的な実験性から次の段階へ移っていくタイミングでもある。その中でShingetsuのこの作品は、英米のプログレ勢と同じ文脈で語られやすい一方で、日本語圏のロックが持っていた独自の緊張感も残している盤として扱われることが多い。国産シンフォニック・ロックの流れを振り返るときに、しばしば名前が挙がるタイプの作品だ。
サウンドの特徴
実際に聴くと、演奏はかなり整理されていて、各パートがはっきり分かる作り。ギター、鍵盤、リズム隊の役割が明確で、長尺の中で展開を積み重ねていく構成が目立つ。単に技巧を並べるタイプというより、曲の流れを保ちながら場面を切り替えていく印象がある。
プログレッシブ・ロックらしい組曲的な発想や、シンフォニック・ロックに通じる音の厚みは確かに感じられるが、派手さだけを押し出す感じではない。むしろ、演奏の緊張感と構成の組み立てで聴かせるタイプの作品だと思える。
同時代の文脈
同じ時代の日本のプログレを思い浮かべると、Far East Family BandやMikami Kanの周辺、あるいは海外ではGenesisやYes、King Crimsonなどの影響圏が見えてくる。この作品もそうした大きな流れの中に置けるが、単純な模倣ではなく、国産バンドらしいまとまり方がある。
特に1970年代後半の作品として見ると、初期プログレの奔放さよりも、構成の精度や演奏の密度が前に出ている。Shingetsuのこの盤も、その流れに乗った作品として受け取れる。
代表曲について
収録曲の中では、アルバム全体の流れの中で印象を残す長めの曲が核になっているタイプだ。シングルヒットで知られる作品というより、アルバム単位で聴かれる性格が強い。どの曲を抜き出すかより、曲間のつながりや展開の積み重ねを含めて楽しむ盤と言えそうだ。
まとめ
Shingetsu「New Moon / Shingetsu」は、1979年の日本のプログレッシブ・ロックを知るうえで外しにくい一枚だ。短命なバンドながら、関連プロジェクトへ広がる人脈を持ち、国産シンフォニック・ロックの文脈でも重要な存在として見られている。演奏のまとまり、長尺曲の構成、当時の日本のロックの空気感が、ひとつの作品として収まっている。
トラックリスト
- A1 – 鬼 / Oni
- A2 – 朝の向こう側 / The Other Side Of The Morning
- A3 – 発熱の街角 / Influental Streets
- A4 – 雨上がりの昼下がり / Afternoon-After The Rain
- B1 – 白唇 / Fragments Of The Dawn
- B2 – 魔笛”冷凍” / Magic Flute “Reitou”
- B3 – 科学の夜 / The Night Collector
- B4 – せめて今宵は / Return Of The Night
関連動画
The Jimmy Castor Bunch – The Jimmy Castor Bunch (1979)
The Jimmy Castor Bunch / The Jimmy Castor Bunch
1979年にUSでリリースされた、The Jimmy Castor Bunch名義のアルバム。Jimmy Castorを中心に、John Pruittがソングライティング、出版、プロデュース面で関わる編成で、Gerry Thomasを含むメンバーが参加している。ソウル、ファンク、ディスコの流れの中に、Jimmy Castorらしいラテン色が時折のぞくグループの一枚として位置づけられる作品だ。
作品の位置づけ
Jimmy Castorは、60年代から活動してきたファンク/ソウル・シーンの人物で、The Jimmy Castor Bunchはその代表的なグループ名義のひとつ。1979年という時期は、ファンクがディスコと接近しながら形を変えていた時代で、このアルバムもその空気を受けた一枚として見てよさそうだ。派手にジャンルを横断するというより、当時のUSブラック・ミュージックの実用的なダンス感覚をきっちり持った作品という印象がある。
サウンドの印象
全体としては、タイトなリズム隊を軸にしたファンク寄りの作りで、ホーンやコーラス、ベースの推進力が目立つタイプのアルバム。Jimmy Castor作品に期待される、言葉数の多いヴォーカル、リズムの切れ、遊び心のあるノリが前に出やすい構成だ。ラテンの要素が入る場面もあり、完全に直線的なディスコ作品というより、ファンクをベースにしたグルーヴ盤としての性格が強い。
実際に聴いたときは、曲ごとのフックよりも、演奏のまとまりとリズムの持続で聴かせるタイプに感じられることが多い。派手な展開で押すというより、一定のテンポ感の中で身体を動かしやすいビートを積み重ねる作りだ。
同時代とのつながり
1979年のファンク/ソウル周辺を考えると、ファットバック・バンドやセシル・ホルムズ周辺のダンス志向、あるいはディスコ期のソウル作品と並べて見たくなる時期だ。Gerry ThomasがThe Fatback Bandにも関わっていたことからも、当時のダンス・ミュージックの現場感が重なる。洗練されたディスコというより、バンド演奏の熱量を残したファンク寄りの作りに近い。
代表曲・注目点
このアルバム単体では、広く知られた代表曲の存在は前面には出ていないが、Jimmy Castorといえば「Troglodyte (Cave Man)」や「It’s Just Begun」で知られる人物。その流れを踏まえると、この1979年作も、彼の持ち味であるリズムの粘りと掛け合いの感覚を確認できる一枚として捉えやすい。
リリースに関しては、プロモーション用ステッカー付きの個体があることが知られている。US盤として流通した1979年のオリジナル期の資料として見ると、当時の販促の雰囲気も含めて面白い。
まとめ
The Jimmy Castor Bunch名義の本作は、Jimmy Castorのファンク/ソウル路線を1979年の空気の中でまとめたアルバム。ラテン色を含むグルーヴ、バンド感のある演奏、ディスコ期のダンス感覚が同居する内容で、70年代末のUSブラック・ミュージックの一断面が見える作品だ。
トラックリスト
- A1 – Don’t Do That (7:08)
- A2 – Need Your Lovin (6:46)
- A3 – Party People (5:35)
- B1 – Psych-Out (6:55)
- B2 – Goodbye! (7:40)
- B3 – I Just Wanna Stop (6:06)
関連動画
Rupert Hine – Waving Not Drowning (1982)
Rupert Hine / Waving Not Drowning(1982)
Rupert Hineは、英国内で長く活動したシンガー、ソングライター、キーボード奏者、プロデューサーだ。1960年代半ばから自分名義でもバンドでも録音を重ねていて、このWaving Not Drowningは1982年にUKで出たアルバムになる。電子音を前面に出した作りで、ジャンル表記としてはElectronic、スタイルとしてはSynth-popに置かれている。
作品の位置づけ
Rupert Hineのキャリアの中では、作曲と制作の感覚がかなり前に出た時期の一枚として見える。本人はアーティスト活動だけでなくプロデューサーとしても知られていて、歌とキーボード、スタジオワークが自然につながっている人だ。このアルバムも、その持ち味がそのまま表れた作品という印象になる。
1982年UKの空気感
1982年という年は、UKのポップスでシンセサイザーが広く浸透していた時期だ。Rupert Hineの音作りも、その流れの中にある。硬質な打ち込み感と、メロディを前に出す歌もののバランスがこの時代らしい。周辺の文脈でいえば、同時代の英国シンセポップに通じる耳ざわりがありつつ、プロデューサー気質の整理された響きが特徴になっている。
聴きどころ
実際に聴くと、音のレイヤーが多すぎず、要所でシンセのフレーズやリズムの刻みがはっきり分かる作りだ。歌を覆い隠すというより、歌の輪郭を支えるような配置になっている。タイトル曲のWaving Not Drowningは、作品全体の方向性を示す中心曲として受け取られやすいだろう。派手なロック的高揚より、一定のテンポ感の中で細部を聴かせるタイプのアルバムという印象が残る。
盤の情報
- オリジナルリリース年: 1982年
- リリース国: UK
- 盤の表記: Made in England
- 一部の流通盤には、裏ジャケットに金色のプロモーションスタンプが付く例あり
アーティストについて
Rupert Hineは、演奏者としてだけでなく、音楽業界の制度面にも関わった人物でもある。BASCAのソングライター委員会を率い、Ivor Novello Awards委員も務めた。のちには、技術ライターで起業家のAlan GrahamとともにOne-Click Licence(OCL)を立ち上げ、NDiiDやTotemといった仕組みにも関わっている。音楽制作と著作権、テクノロジーの接点に早くから目を向けていた人でもある。
まとめ
Waving Not Drowningは、1982年のUKシーンに置くと、電子音を使いながらも歌を中心に据えたRupert Hineの代表的な時期を示すアルバムとして捉えやすい。プロデューサーとしての整理された音像、シンセポップ期の空気、そして本人の作家性が重なる一枚だ。
トラックリスト
- A1 – Eleven Faces (3:44)
- A2 – The Curious Kind (4:46)
- A3 – The Set Up (4:29)
- A4 – Dark Windows (3:22)
- A5 – The Sniper (5:32)
- B1 – Innocents In Paradise (3:24)
- B2 – House Arrest (4:18)
- B3 – The Outsider (5:29)
- B4 – One Man’s Poison (6:13)
関連動画
Camel – Camel (1973)
Camel『Camel』について
Camelは、1971年に結成されたイングランドのプログレッシブ・ロック・グループ、Camelのデビュー・スタジオ・アルバム。オリジナルのリリースは1973年2月で、この日本盤は1982年に日本で製造された盤になる。バンド初期の4人、Andrew Latimer、Peter Bardens、Doug Ferguson、Andy Wardによる出発点の作品であり、以後のCamelの方向性を見ていくうえで基本になる1枚。
バンド初期の輪郭が見えるデビュー作
この時期のCamelは、ギターのAndrew LatimerとキーボードのPeter Bardensを軸にした編成。のちにより組曲的で流れのある作品へ進んでいくが、このデビュー作ではバンド名そのままの手触りを持つ、比較的まっすぐなプログレ・ロックの組み立てが目立つ。ギター、オルガン、シンセ、フルート、リズム隊がそれぞれ役割を持っていて、演奏の見通しがはっきりしている印象。
Camelはこの後、1975年の『The Snow Goose』で大きく評価を広げるが、その意味では『Camel』は“のちの代表作へ向かう前段階”という位置づけになっている。まだバンドの表現が固まりきる前の、出発点としての記録。
収録曲とシングル
マスターノートによると、本作は1973年2月発売のデビュー・アルバム。収録曲のうち、Track 5はシングルに関連し、Track 6「Curiosity」はそのシングルのB面として扱われている。アルバム単位で聞くと、曲ごとの性格の違いが出やすく、バンドの初期作らしいまとまり方になっている。
代表曲として広く知られるのは、この後の作品群に収録される曲のほうが多いが、デビュー作としてはバンドの基本線をつかむための重要盤といえる。
同時代の文脈
1970年代前半のイギリスのプログレッシブ・ロックには、長尺の構成、キーボードの前面化、曲展開の切り替えなどが共通項としてある。Camelもその流れの中にありつつ、同時代の巨人たちと比べると、過度に劇的へ振り切るより、演奏の流れを保ちながら組み立てていくタイプに見える。後年のジャズ寄りの展開や、より叙情的な作風へ向かう前の段階として聞くと、バンドの輪郭がつかみやすい。
日本盤について
この盤は1982年の日本製造盤。オリジナルの1973年盤とは発売時期が異なるため、作品そのものは1973年のデビュー作として、盤としては後年の日本盤として扱うのが自然。日本盤のため、当時の国内流通向けにプレスされた1枚という位置づけになる。
まとめ
『Camel』は、Camelというバンドの最初の記録であり、のちの『The Snow Goose』や『Moonmadness』へつながる前提が見える作品。初期プログレらしい編成感と、ギターとキーボードの役割分担がはっきりしたデビュー作として、バンドの原点を確認できる内容になっている。
トラックリスト
- A1 – Slow Yourself Down
- A2 – Mystic Queen
- A3 – Six Ate
- A4 – Separation
- B1 – Never Let Go
- B2 – Curiosity
- B3 – Arubaluba
関連動画
David McWilliams – Lord Offaly (1972)
David McWilliams「Lord Offaly」について
David McWilliamsは、北アイルランド・ベルファスト出身のシンガー/ソングライターで、1960年代から70年代にかけて活動した人物だ。ソングライターとしての確かな筆致で知られ、フォークとロックのあいだを行き来する作品を残している。
この「Lord Offaly」は1972年の作品で、手元の盤は1973年リリースのUS盤。Bell Recordsから出ており、ジャケットにはBell Recordsのプロモーション・ステッカーが付いていたという記録もある。レーベル表記は「Bell Records, A division of Columbia Pictures Industries, Inc.」となっている。
作品の位置づけ
David McWilliamsの代表的な流れの中では、初期の大きなヒットで知られる時期のあとに置かれる作品群のひとつとして見ることができる。彼の名前を広く知らしめたのは「Days of Pearly Spencer」だが、「Lord Offaly」はその単発のヒット曲だけでは見えにくい、アルバム単位での作家性を追ううえで重要な一枚といえる。
タイトルからはアイルランド的な響きがあるが、ここではDavid McWilliamsらしい、歌詞を中心に据えた曲作りが軸になっている。フォーク寄りの語り口を保ちながら、バンド演奏でロックの手触りを加えるタイプの作品として捉えやすい。
サウンドの印象
この時代のDavid McWilliamsは、いわゆるフォーク・ロックの文脈に置かれることが多い。アコースティックな響きとロックのリズムが同居する作りで、派手なアレンジで押すというより、曲の輪郭と歌の内容を前面に出すタイプの盤だ。Bell Records期のUSリリースという点でも、60年代後半から70年代前半のアメリカン・ロック市場に向けた整理された音作りが意識されていた可能性がある。
同時代の耳で並べるなら、フォーク・ロックの流れの中にいる作品で、シンガー/ソングライター色の強いアルバムとして受け取りやすい。大編成で押し切るタイプではなく、歌そのものを聴かせる方向性。
「Days of Pearly Spencer」との関係
David McWilliamsの名前でまず挙がるのはやはり「Days of Pearly Spencer」だが、この「Lord Offaly」はその代表曲の延長線だけでは説明しきれない。アーティストとしての活動を、ヒット曲単位ではなくアルバム単位で追うときに見えてくる一枚という印象が強い。
なお、この盤にはCD再発も存在しており、流通のされ方としては後年に再び扱われている作品でもある。オリジナル期の空気をそのまま持つかどうかは別として、少なくとも1970年代前半のDavid McWilliamsを知る手がかりにはなる。
まとめ
「Lord Offaly」は、David McWilliamsのフォーク・ロック系の作家性を追ううえでの1972年作。1973年のUS盤としてはBell Recordsからのリリースで、プロモーション用ステッカー付きの個体も確認されている。大ヒット曲だけでは見えない、アルバムとしてのDavid McWilliamsを確認できる作品だ。
トラックリスト
- A1 – Go On Back To Momma (From The Film “Gold”) (3:30)
- A2 – She Was A Lady (4:25)
- A3 – I Will Always Be Your Friend (4:00)
- A4 – Heart Of The Roll (3:25)
- A5 – I Would Be Confessed (5:08)
- B1 – Spanish Hope (Instrumental) (3:50)
- B2 – Blind Mens Stepping Stones (5:56)
- B3 – Lord Offaly (6:33)
- B4 – The Prisoner (4:00)
- B5 – The Gypsy (3:40)
関連動画
Yes – Fragile (1971)
Yes『Fragile』について
Yesの『Fragile』は、1971年に発表された4作目のスタジオ・アルバムで、プログレッシブ・ロックの定番としてよく語られる作品だ。バンドの初期を代表する1枚であり、長尺曲と個別のソロ・パートを組み合わせた構成がはっきり示されている。アート・ロック、プログ・ロックという並びがそのまま内容に結びつくアルバムで、Yesの名前を広く印象づけた時期の作品でもある。
1976年盤は日本でのリリースで、ゲートフォールド仕様、インサート、8ページのブックレット付き。歌詞とライナー・ノーツは見開き内側に収められている。℗1972 Atlantic Recording Corporation, U.S.A.の表記があり、盤面のランアウトはスタンプ刻印という案内になっている。
作品の位置づけ
『Fragile』は、Yesがバンドとしての輪郭を強く見せた作品として知られる。メンバーは、Jon Anderson、Steve Howe、Chris Squire、Rick Wakeman、Bill Brufordという編成が中心で、バンドの演奏力とアレンジの緻密さが前面に出る。後のYesにつながる、複雑な構成とメロディの明快さが同居した時期の記録でもある。
このアルバムでは、バンド全体で組み上げた曲と、各メンバーの個性を切り出した短いソロ・パートが並ぶ。グループとしての統一感と、個々のプレイヤーの存在感を同時に見せる構成で、当時のYesの考え方がよく出ている。
収録曲と代表曲
中でもよく知られるのが「Roundabout」だ。アルバム冒頭を飾るこの曲は、Yesの代表曲として広く認識されている。リフ、転調、各パートのつながりがはっきりしていて、バンドの特徴を早い段階で示す1曲になっている。
ほかにも「South Side of the Sky」「Heart of the Sunrise」といった曲があり、いずれも長めの展開を持ちながら、演奏の切り替えやリズムの変化が細かく組まれている。短いソロ曲を挟みつつ全体を進める流れも、この作品ならではの構成だ。
同時代の文脈
1971年前後のイギリスでは、YesのほかにもKing Crimson、Genesis、Jethro Tullなどが、それぞれ異なる形でロックの拡張を進めていた。『Fragile』はその中でも、演奏の精密さと音の積み上げ方がはっきりした作品として位置づけられる。シンフォニックな展開や技巧的なアンサンブルを重視する流れの中で、Yesの方向性を示したアルバムといえる。
まとめ
『Fragile』は、Yesの初期を代表する重要作であり、「Roundabout」を含む代表的な楽曲群と、バンド各員のソロ的な見せ場が共存するアルバムだ。日本盤の1976年リリースでは、見開きジャケットとブックレット付きの仕様が用意されている。作品そのものは、Yesがプログレッシブ・ロックの中心的存在として見られるようになる流れを、かなり早い段階で形にした1枚として捉えられている。
トラックリスト
- A1 – Roundabout (8:29)
- A2 – Cans And Brahms (1:35)
- A3 – We Have Heaven (1:30)
- A4 – South Side Of The Sky (8:04)
- B1 – Five Per Cent For Nothing (0:35)
- B2 – Long Distance Runaround (3:33)
- B3 – The Fish (Shindleria Praematurus) (2:35)
- B4 – Mood For A Day (2:57)
- B5 – Heart Of The Sunrise (10:34)
関連動画
- Roundabout (2024 Remaster)
- Cans and Brahms (2024 Remaster)
- We Have Heaven (2024 Remaster)
- South Side of the Sky (2024 Remaster)
- Five Per Cent for Nothing (2024 Remaster)
- Long Distance Runaround (2024 Remaster)
- The Fish (Schindleria Praematurus) (2024 Remaster)
- Mood for a Day (2024 Remaster)
- Heart of the Sunrise (2024 Remaster)
Far Out – 日本人 (1973)
Far Out「日本人」について
Far Outは、1970年代前半の日本で活動したサイケデリック/プログレッシブ系のバンドです。「日本人」は1973年に登場した作品で、重いギター、展開の多い曲構成、当時の国産ロックらしい土台を持つ1枚として知られています。メンバーはFumio Miyashita、Keiju Ishikawa、Manami Arai、Eiichi Sayuの4人。
作品の位置づけ
この作品は、Far Outの初期を代表するタイトルとして見られることが多いです。日本のハードロックやプログレッシブ・ロックが独自の形を作っていった時期の記録であり、海外向けの再紹介盤が出るほど、後年まで注目されてきた作品でもあります。
当時の日本のロックでは、海外のハードロックやプログレッシブ・ロックの影響を受けつつ、長い曲構成や演奏中心の組み立てを前面に出す作品が増えていました。「日本人」もその流れの中にある1枚で、70年代初頭の日本産ロックの空気をそのまま切り取ったような存在です。
音の印象
実際の音像は、ギターの押し出しが強く、リズム隊も前に出るタイプです。曲によっては演奏の切り替わりが多く、ひとつのリフを長く引っぱるというより、場面を変えながら進む作りが目立ちます。サイケデリックな色合いと、ハードロック寄りの力感が同居している点が特徴です。
派手なヒット曲で引っ張るというより、アルバム全体の流れで聴かせる性格が強い作品です。代表曲を1曲だけ挙げて語るタイプの盤というより、まとまった演奏と空気感で印象を残す内容と言えるでしょう。
同時代の文脈
同じ時代の日本のロックでは、外来のロックを吸収しながら独自化を進める動きが各所で見られました。Far Outもその流れの中で、英米のハードロックやプログレッシブ・ロックに通じる要素を持ちながら、日本のバンドらしい緊張感のある演奏にまとめています。海外の同時代バンドと並べると、より硬質で、演奏の切迫感が前に出るタイプとして受け取られやすいでしょう。
再発盤について
ここで扱っている盤はヨーロッパで出た再発盤で、オリジナルは1973年の日本盤です。再発盤は、入手しやすさという点でオリジナル盤とは性格が異なりますが、作品そのものは1973年当時の内容を伝えるものです。日本のレア盤として知られるタイトルが、のちに海外で再び流通した例のひとつでもあります。
まとめ
「日本人」は、Far Outの初期の姿を知るうえで重要な1枚です。70年代前半の日本のハードロック/プログレッシブ・ロックの文脈の中で、演奏主体の構成と強いギターを軸にした作品として位置づけられます。派手な話題性よりも、当時のバンドの手触りをそのまま残した記録として見ていくと、輪郭がつかみやすい盤です。
トラックリスト
- A – Too Many People (17:55)
- B – 日本人 (19:52)
関連動画
Propaganda – p: Machinery (Polish) (1985)
Propaganda「p: Machinery (Polish)」について
Propagandaは、ドイツ・デュッセルドルフ出身のシンセポップ・グループだ。1982年にRalf DörperとAndreas Theinを中心に始まり、1985年の時点ではClaudia Brücken、Susanne Freytag、Michael Mertens、Ralf Dörperの編成で活動していた。ZTT周辺の80年代英国ポップの文脈で語られることの多いグループで、緻密な打ち込みと強いビート、女性ボーカルの存在感を軸にしたサウンドが持ち味である。
この「p: Machinery (Polish)」は、1985年に登場した「p: Machinery」のポーリッシュ・ヴァージョンを収めた盤。Propagandaの代表曲のひとつとして知られる「p: Machinery」の別形態で、同曲の12インチ展開の中でも長尺版にあたる。オリジナルの「p: Machinery」は「A Secret Wish」期の重要曲で、Propagandaの代表作を語るうえで外せない1曲だ。
曲の位置づけ
Propagandaにとって1985年は、アルバム「A Secret Wish」に結実する時期だ。その中で「p: Machinery」は、鋭い機械的リズムとボーカルの切り替わりがはっきりした、バンドの個性がよく出た楽曲として扱われている。マスターノートによると、今回の「Polish」は9分24秒のヴァージョンで、最後に1分15秒のリプリーズを含む構成だ。単なる延長ではなく、曲の終わり方まで含めて別の流れを作っている。
同曲には複数のヴァージョンが存在していて、3分台の7インチ向けミックス、ギターを足した再構成版、そしてこの長尺の「Polish」など、用途ごとに性格が分かれている。Propagandaのシングル制作が、当時の12インチ・シーンらしい編集感覚に支えられていたことが分かる。
サウンドの印象
実際に聴くと、打ち込みのリズムとシンセの層がかなり明確に分かれていて、音数は多いのに整理されている。ボーカルは前に出すぎず、ビートの上で言葉を置いていく感じが強い。長尺版のため、同じフレーズの反復が続いても、途中の展開や抜き差しで流れが保たれている。短いシングル版とは違って、曲の構造そのものを楽しむタイプの仕上がりだ。
Propagandaのサウンドは、同時代の英国シンセポップの中でも、単純な明るさや軽快さより、冷たさや緊張感が前に出る。Depeche ModeやCabaret Voltaire周辺と並べて語られることがあるのも、そうした要素が理由になりやすい。とはいえ、Propagandaは女性ボーカルの配置やコーラスの扱いで、よりポップ・ソングとしての輪郭も強い。
日本盤としての特徴
この盤は日本でのリリースで、付属物として日本語のインフォシートと英語詞が入っている。80年代の輸入盤/国内盤の文脈では珍しくないが、歌詞を追いながら聴ける仕様は、当時のリスナーにとって分かりやすい作りだ。収録内容そのものは1985年当時のシングル・ヴァージョンの範囲に収まっている。
Propagandaというバンドの中で
Propagandaは、メンバー変動の多いバンドだが、1985年はClaudia Brückenのボーカルが前面に出た時期として印象が強い。「Dr. Mabuse」に続いて「p: Machinery」もグループの代表曲となり、ZTTレーベルを象徴する80年代ポップの一角として定着していく流れにある。
制作面では、Stephen Lipsonがプロデュースを担った時期でもあり、音の密度や編集の細かさにその特徴が出ている。Propagandaの中でも、アルバム曲とシングル曲の境目がはっきりしつつ、12インチでさらに構造を広げる手つきがよく見える作品だ。
まとめ
「p: Machinery (Polish)」は、Propagandaの代表曲「p: Machinery」を長尺で味わえる1985年の12インチ・ヴァージョンだ。シングルとしての推進力と、12インチならではの展開の長さが両立していて、Propagandaの80年代的な完成度がまとまった1枚になっている。日本盤は日本語インフォシート付きで、英語詞も付属する構成である。
トラックリスト
- A – p: Machinery (Polish) (9:20)
- B1 – p: Machinery (Passive) (3:44)
- B2 – Frozen Faces (5:30)
関連動画
M-Opus – At The Mercy Of Manannán (2023)
M-Opus『At The Mercy Of Manannán』について
アイリッシュ・プログレッシブ・ロック/シンフォニック・ロック・バンド、M-Opusによる『At The Mercy Of Manannán』は、2023年に登場した作品だ。バンドの出身国もリリース国もアイルランドで、同国のプログ・ロック文脈の中で受け止めやすい1枚になっている。
タイトルにある「Manannán」は、アイルランド神話に登場する海の神として知られる存在で、作品全体にもケルト圏の物語性を感じさせる要素がある。バンド名、作品タイトル、そしてアイルランドという背景がつながって見える構成で、ロック作品でありながら土地の伝承や神話を意識した作りになっている点が目を引く。
作品の位置づけ
アーティスト情報としては、M-Opusはアイリッシュのプログレッシブ・ロック/シンフォニック・ロック・バンドとされている。『At The Mercy Of Manannán』は2023年の作品として提示されており、現行のバンド像を知るうえでの中心作として見るのが自然だろう。
プログ・ロックとシンフォニック・ロックの組み合わせからは、楽曲の展開や構成の変化を重視するタイプの作品像が読み取れる。アイルランドのバンドという点では、同じく物語性やスケール感を重視する70年代以降のプログ・ロック系バンドの系譜とも比較しやすい。
レコード盤の仕様
この盤は、マット仕様のゲートフォールド・ジャケットに収められ、2ページのカラー印刷インサート、黒のポリライニング入りインナーLPスリーブ、再封可能な透明ポリプロピレン製スリーブが付属する。パッケージ全体は、グリーンエネルギー、グリーンガス、ソーラーエネルギーを使って倫理的に制作されたと案内されている。
- 限定500枚
- 2023年リリース
- 専用マスタリングを施したヴァイナル・プロダクション
レコードとしては、作品の内容だけでなくパッケージ面にもかなり意識が向けられている印象だ。ゲートフォールドやインサート付きの構成は、アルバムの世界観をじっくり見せる作り方としてわかりやすい。
聴きどころとして見えやすい点
実際の音そのものについてはここでは断定しないが、プログ・ロック/シンフォニック・ロックというスタイルからは、曲ごとの長い展開、パートの切り替わり、楽器の重ね方に耳が向きやすい作品として捉えやすい。タイトルの神話性とあわせて、単独曲の強さだけでなく、アルバム全体の流れで聴くタイプの作品像が浮かぶ。
代表曲やヒット曲として広く知られた1曲があるという情報は見当たらないが、こうした作品では曲単位よりも、アルバム全体の構成やテーマ性が印象に残ることが多い。
まとめ
『At The Mercy Of Manannán』は、アイルランドのM-Opusが2023年に発表した、神話的な題材とプログレッシブ・ロック/シンフォニック・ロックの文脈を重ねたアルバムだ。限定500枚のヴァイナルとして、専用マスタリングや丁寧なパッケージングも含めて、作品のまとまりを感じやすい仕様になっている。
トラックリスト
- A1 – Setting Off (2:02)
- A2 – Riverflow (6:55)
- A3 – Whirlpool (3:23)
- A4 – To The Other Side (9:10)
- B1 – Na Bruídaí (7:55)
- B2 – Valley of Elah (4:07)
- B3 – Scaling Novas (3:25)
- B4 – Carnivale (5:14)
関連動画
Morse Code – La Marche Des Hommes (1975)
Morse Code 『La Marche Des Hommes』(1975)
カナダ・ケベック州出身のプログレッシブ・ロック・バンド、Morse Codeが1975年に発表した作品。バンドは1967年に別名義で活動を始め、その後にMorse Code Transmissionを経て、最終的にMorse Code名義へ落ち着いた。フランス語圏カナダのロック史の中で、70年代前半のプログレ文脈にしっかり置かれるグループだ。
本作『La Marche Des Hommes』は、そうした流れの中で出た1975年作。録音は1975年5月から6月にかけて、Son Québec Inc.スタジオで行われている。収録内容は、歌詞入りの片面インサート付きという、当時のプログレ作品らしい体裁も持つ。
作品の位置づけ
Morse Codeは、キーボードとリード・ヴォーカルを務めるChristian Simardを中心に、演奏面でも多人数編成で知られる。提示されているメンバーには、Daniel Lemay、Michel Vallée、Raymond Roy、Yves Boisvert、Marc Leach、Jean Ravel、Jocelyn Julien、Bernie Tapin、Gilles Simard、Mario Langis、Gilles Beaudoinが並ぶ。編成の厚さは、そのままプログレッシブ・ロックの作りに結びついていそうな顔ぶれだ。
1970年代半ばのカナダ・プログレは、英語圏ではRushやFM、フランス語圏ではQuébecの独自シーンが存在感を持っていた時期で、このバンドもその一角にある。Morse Codeは、同時代の長尺構成や鍵盤主体のアンサンブルを扱うバンド群と並べて語られることがありそうだ。
聴きどころ
実際の音像としては、プログレ作品らしく、楽曲展開の切り替えや、鍵盤とバンド全体の動きの組み合わせが軸になっているタイプのアルバムとして捉えられる。Christian Simardのキーボードと歌が中心に置かれている点も、この時代のプログレらしい輪郭だ。
タイトル曲の「La Marche Des Hommes」は、作品全体の顔として受け止められやすい曲名で、アルバムのテーマ性を代表する位置にあると思われる。ヒット曲として広く知られたシングルの情報は見当たらず、アルバム単位で聴かれる性格が強い。
作品の特徴
- 1975年のカナダ産プログレッシブ・ロック
- フランス語圏ケベックのバンドによる作品
- Son Québec Inc.スタジオ録音
- 歌詞入りの片面インサート付き
- 鍵盤とヴォーカルを軸にした編成
同時代の文脈
この時期のプログレは、英米の有名バンドだけでなく、各地域のローカルシーンで独自に発展していた。Morse Codeも、その流れの中で、フランス語圏カナダのロック表現を担ったグループとして見ることができる。英語圏の大型バンドとは違う言語環境の中で、作品の組み立てや歌の置き方にも地域性が出やすい時代だった。
『La Marche Des Hommes』は、そうした70年代中盤の空気をそのまま閉じ込めた一枚として、Morse Codeの活動を追ううえで押さえておきたい作品だ。
トラックリスト
- A1 – La Marche Des Hommes (11:14)
- A2 – Le Pays D’Or (3:16)
- A3 – La Cérémonie De Minuit (5:00)
- B1 – Cocktail (3:25)
- B2 – Une Goutte De Pluie (3:23)
- B3 – Qu’est-ce Que T’as Compris? (5:29)
- B4 – Problème (2:05)
関連動画
Galliard – Strange Pleasure (1970)
Galliard『Strange Pleasure』について
Galliardの『Strange Pleasure』は、1968年にバーミンガムで結成されたUKのプログレッシブ/ジャズ・ロック・バンドによる初期作品のひとつで、オリジナルは1970年に発表されたアルバムだ。Galliardは同年にDeramから2作を残しており、この『Strange Pleasure』はその1枚目にあたる。翌年には解散しているため、活動期間は短いが、70年代初頭の英国ロックの流れの中では、フォーク色とサイケデリックな感触を含んだ作品として位置づけられている。
作品の位置づけ
バンドのプロフィールを見ると、GalliardはBirmingham出身の進歩的なロック・バンドであり、ジャズ・ロック寄りの演奏感を持ちながら、メロディや曲調にはフォーク・ロック、サイケデリック・ロックの要素も見える。『Strange Pleasure』は、そうした複数の要素がまとまった初期の記録として捉えやすい。バンドの後続作『New Dawn』と並べて語られることが多いが、こちらはデビュー期の輪郭を示すアルバムという印象が強い。
盤の情報と再発について
ここで扱う盤は2007年リリースのヨーロッパ盤で、カバーには「Limited Edition of 500 Copies」とあり、シュリンクの黄色ステッカーには「TPT 245, 180 gram virgin vinyl」と記載されている。オリジナルの1970年盤とは発売時期が異なる再発盤で、コレクション用途の仕様を持つ一枚だ。ジャケット裏面には、メンバー表記のLes Podrazaの名前が消され、ニックネームのBeppaが書き込まれている。こうした細部は、資料性のある再発盤らしい特徴と言える。
バンドの文脈
Galliardは、同時代の英国のプログレッシブ・ロックやジャズ・ロックの周辺にいるバンドとして見ておくとわかりやすい。バーミンガムという土地柄も含め、ロンドン中心ではないローカルな英国ロックの流れの中で成立したグループだ。プログレッシブな構成感と、フォーク寄りの語り口、サイケデリックな色合いが同居するタイプの作品として、70年前後の英国ロック史をたどるときに名前が挙がる存在だ。
収録曲について
この作品の中で広く知られた代表曲が定番化している、というタイプではない。少なくともGalliardは、シングル・ヒットで知られるバンドというより、アルバム単位で語られるグループだ。作品を通して聴くと、曲ごとの展開や演奏の組み立てにバンドの個性が出るタイプのアルバムと言える。
まとめ
『Strange Pleasure』は、Galliardの活動初期を示す1970年作であり、バーミンガム発の英国ロックとしての輪郭を持ったアルバムだ。フォーク・ロック、サイケデリック・ロック、ジャズ・ロックの要素が同居する70年代初頭らしい空気をまといながら、短命だったバンドの足跡を伝える一枚として見ておきたい。
トラックリスト
- A1 – Skillet (3:44)
- A2 – A Modern Day Fairy Tale (3:15)
- A3 – Pastorale (2:29)
- A4 – I Wrapped Her In Ribbons (3:51)
- A5 – Children Of The Sun (3:45)
- B1 – Got To Make It (4:00)
- B2 – Frog Galliard (3:22)
- B3 – Blood (3:47)
- B4 – Hear The Colours (3:47)
- B5 – I Wanna Be Back Home (4:49)
関連動画
Exmagma – Goldball (1974)
Exmagma「Goldball」について
Exmagmaは、ドイツ・シュトゥットガルト周辺を拠点にしたアンダーグラウンドなジャズ・ロック・トリオである。メンバーは、キーボードのThomas Balluff、ギター/ベースのAndy Goldner、ドラムのFred Braceful。いずれも経歴がはっきりしていて、Balluffは1960年代のソウル・バンドMuli & The Misfits、Goldnerはローカルなリズム&ブルース・コンボFive Fold Shade、Bracefulは1950年代後半にドイツへ移ったアメリカ人ジャズ・ドラマーとして知られる。Exmagmaは、そうした背景の違う3人が合流した、ドイツのクラウトロックと即興ジャズの交差点にあるグループという位置づけになる。
「Goldball」は、Exmagmaの2作目にあたる作品で、1974年3月に録音され、1974年にUrusまたはDisjuncta名義で初出した。ここで取り上げている盤は2003年リリースの再発盤で、オリジナルの1974年盤とは年代が異なる。録音とミックスは1974年にWolperathで行われている。
作品の輪郭
ジャンル表記はElectronic、Jazz、Rock、スタイルはKrautrock、Fusion、Space Rock、Free Improvisation。Exmagmaらしいのは、この複数の要素が別々に並ぶというより、演奏の中でひと続きに現れる点である。ギター、キーボード、ドラムの3人編成で、曲の骨格がはっきりした場面と、即興に寄る場面が行き来するタイプの作品として捉えやすい。
同時代のドイツ勢でいえば、クラウトロックの枠に収まりつつも、よりジャズ寄りの緊張感を持ったバンドとして語られることが多い。Wolfgang DaunerやEt Cetera周辺の流れ、あるいは即興性の強いジャズ・ロックの文脈に置くと見えやすい作品である。Fred Bracefulの経歴が示す通り、アメリカのジャズ感覚が土台にあり、その上にドイツの実験的なロックの感触が重なる構図。
作品の位置づけ
「Goldball」は、Exmagmaのディスコグラフィーの中でも重要な位置にある2作目。バンドの基本形が固まった段階の記録として見ることができる。1作目で示した方向性を受けつつ、より演奏の密度や展開の幅が出た作品として扱われることが多い。
タイトル曲「Goldball」が作品名になっているが、特定のヒット曲として広く知られた楽曲というより、アルバム全体の流れの中で聴かれるタイプの作品である。曲単位の派手な代表曲を押し出すというより、トリオの即興と構成の切り替えそのものが聴きどころになっている。
2003年盤について
この盤は2003年のリリースで、オリジナルの1974年盤を後年に再発したものにあたる。カタログ番号は、ジャケット表記ではDaily009、レーベル表記では000.009となっている。再発盤としては、まずオリジナル音源を改めて聴ける点が大きい。
作品そのものは1974年の録音とミックスに基づくため、音楽内容はオリジナル時点のものをそのまま伝える形になる。再発盤としては、当時のクラウトロックやジャズ・ロックを後年の視点で聴き直す際の入口になっている。
まとめ
Exmagmaの「Goldball」は、ドイツのアンダーグラウンド・ジャズ・ロックを語るうえで外しにくい1枚である。シュトゥットガルト周辺のローカルな背景、アメリカ人ジャズ・ドラマーの参加、そして1974年という時代の空気が、3人編成の演奏にそのまま刻まれている作品と言える。
トラックリスト
- A1 – Marilyn F. Kennedy (2:25)
- A2 – Dada (3:35)
- A3 – Adventures With Long S. Tea 25 Seconds Before Sunrise (2:25)
- A4 – Groove (4:50)
- A5 – Tango Wolperaiso (2:30)
- B1 – Jam Factory (For People Insane) (4:00)
- B2 – Habits (5:55)
- B3 – Dance Of The Crass (0:50)
- B4 – Greetings To The Maroccan Farmers (6:45)
- B5 – Last But One Train To Amsterdam (0:55)
関連動画
- Exmagma – Goldball 1974 (full album)
- Exmagma — Da Da
- Exmagma- Adventures With Long S. Tea.wmv
- exmagma “groove” and “marilyn f.kennedy”.
- Exmagma-Habits.wmv
- Exmagma Goldball 1974 full album
- Exmagma—–Goldball (1974 )
- Exmagma – Goldball 1974 (full album)
- Exmagma − Goldball (1974)
- Uma banda psicodélica alemã: EXMAGMA (Goldball, 1974, parte 1)
Drnwyn – Gypsies In The Mist (1978)
Drnwyn『Gypsies In The Mist』について
Drnwynの『Gypsies In The Mist』は、1978年にオリジナル・リリースされた作品で、USのacid-psych-folk-rockバンドとして紹介されるグループの記録になっている。盤は2007年に出ており、ここでは1978年当時の作品として扱うのが自然だろう。レコード情報では、録音とミックスはオハイオ州セーラムのWilderland Recording Studiosで行われたとされている。
作品の輪郭
クレジットに並ぶメンバーは、Randy Pregibon、David W. Hoag、Cheryl McIlvaine、Kevin McIlvaine、John Volio、Nancy Fannin、Larry Davis。複数名が参加している編成で、フォークロックを土台にしながら、acid rockやpsychedelic rockの要素を重ねたバンド作品として見える。ジャンル表記もRock、Blues、Folk Rock、Acid Rock、Psychedelic Rock、Psychedelicと幅がある。
タイトル曲『Gypsies In The Mist』が作品名を担っている点からも、アルバム全体の雰囲気を象徴する曲として置かれている可能性が高い。1970年代後半のアメリカのアンダーグラウンドなフォーク/サイケデリック系作品に通じる、手作り感のある私家盤の空気を持つ作品として整理できる。
オリジナル盤と再発盤の位置づけ
オリジナルは1978年の私家盤として800枚限定でリリースされたと記録されている。2007年盤はその後に出た再発盤で、作品そのものの年代は1978年に置かれる。こうした再発盤では、音源内容は同じでも、レコードの入手経路や流通の範囲が大きく変わることが多い。『Gypsies In The Mist』も、もともと限られた枚数で出た作品として扱われている。
聴きどころとして見える点
実際の音を確定的に述べることはできないが、クレジットとスタイル表記からは、アコースティックな楽器運びを軸にしつつ、ブルース寄りの感触やサイケデリックな展開が差し込まれる構成が想像しやすい。USの70年代フォークロックやアシッド・フォーク周辺の文脈に置くと、同時代のローカルな私家盤らしい作り込みの作品群の一つとして見えてくる。
作品の背景
この作品は、商業的な大規模リリースというより、限定枚数で作られた自主制作盤の文脈にある。1978年という時期は、一般的なロックの主流から見ると少し遅い年代にもあたり、そこにフォークロックやサイケデリックの感触を持ち込んでいる点が、このレコードの性格をよく示している。アメリカの70年代ローカル・サイケやフォーク系の私家盤を追う流れの中で、名前が挙がるタイプの作品といえる。
まとめ
『Gypsies In The Mist』は、Drnwynが1978年に残した私家盤のフォークロック/サイケデリック作品。録音地や参加メンバーが明記されており、当時のローカルな制作環境と、ブルースや酸性ロックの要素を含むバンドの輪郭が見えやすい一枚になっている。
トラックリスト
- A1 – Empty Bars (4:55)
- A2 – Summer Sun (4:36)
- A3 – Secrets Of The Past (4:50)
- A4 – Brothers (3:03)
- A5 – Move A Mountain (5:02)
- B1 – Gypsies In The Mist (6:27)
- B2 – Places, Faces, Pages (5:26)
- B3 – The Madman And The Angel (5:22)
- B4 – Something To Hang On To (5:17)