Ovrfwrd – Starstuff (2020)
Ovrfwrd『Starstuff』(2020)
ミネアポリスを拠点に2012年に結成された、米国のインストゥルメンタル・プログレッシブ・ロック・グループ、Ovrfwrdによる『Starstuff』。2020年の作品で、バンドの持つプログレッシブ・ロック志向と、シンフォニック・ロックの要素が前面に出た一枚として捉えやすい内容だ。
作品の輪郭
Ovrfwrdは、歌を中心に置かず、演奏そのものを軸に組み立てるバンド。『Starstuff』でもその方向性は変わらず、楽曲はリズムの切り替えや曲展開、層の厚いアンサンブルで進んでいく構成が想像しやすい。プログレッシブ・ロックらしい組曲的な流れと、シンフォニック・ロック寄りの重厚さが重なったタイプの作品といえる。
サウンドの印象
この手の文脈では、タイトなリズム隊、細かく動くギター、広がりのある音像が重要になるが、『Starstuff』もそうした要素を軸にしているように見える。録音の雰囲気は、楽器の分離感と密度の両方を意識した仕上がりが似合うジャンルで、硬質さと立体感が同居する方向性。派手な歌メロではなく、演奏の推進力で聴かせるタイプの一作だ。
アーティストにおける位置づけ
2012年に活動を始めたOvrfwrdにとって、『Starstuff』はインストゥルメンタル中心のスタイルを示す作品のひとつとして見やすい。バンドのプロフィールからも、演奏面を重視する姿勢がはっきりしていて、この作品でもその方針がそのまま反映されている印象だ。
ジャンルの文脈
2020年のプログレッシブ・ロックは、往年の長尺志向やシンフォニックな構成を踏まえつつ、現代的な音の輪郭や録音の明瞭さを取り入れる流れが目立つ。その中で『Starstuff』は、US発のインストゥルメンタル・プログレとして、演奏の複雑さと音の厚みを両立する方向に位置づけられる作品だ。
Ovrfwrdの公式サイトやSNS、YouTube、SoundCloudでは、バンドの活動や関連音源を確認できる。
トラックリスト
- A1 Firelight (5:37)
- A2 Let It Burn (King George) (5:58)
- A3 Starstuff (5:09)
- B1 Lookup (8:21)
- B2 Daybreak (2:48)
- B3 Zathras (4:35)
- B4 From Parts Unknown (6:25)
Grace Jones – Fame (1978)
Grace Jones「Fame」について
Grace Jonesの「Fame」は、1978年に登場したディスコ期の作品。ジャマイカ出身で、モデル、俳優、シンガーとして活動してきた彼女の初期キャリアを知るうえで、ひとつの重要なタイトルとして位置づけられる。ジャズやロックへ広がる前の、フロア向けの強いビートと華やかな空気が前面に出た時期の記録でもある。
サウンドの印象
ジャンルはFunk / Soul、スタイルはDisco。リズムは一定の推進力があり、ベースとドラムの刻みが曲全体を引っ張るタイプ。音像はきらびやかで、ダンス・ミュージックらしい明快さがある一方、Grace Jonesの低く存在感のあるボーカルが入ることで、ただ明るいだけではない緊張感も生まれている。録音の雰囲気は、70年代後半のディスコらしい乾いた質感と、少し艶のある仕上がりの中間あたり。
当時の文脈
1978年という時期は、ディスコがクラブやラジオで大きな存在感を持っていた時代。Grace Jonesもその流れの中で、ファッション性の強いイメージと音楽を結びつけながら活動していた。のちにニュー・ウェイヴやレゲエ寄りの作品へ向かう前段階として見ると、この時期の作品にはディスコのフォーマットの中で個性を作っていく過程が感じられる。
作品の位置づけ
Grace Jonesの初期ディスコ路線を示す一枚。後年の鋭いビジュアルや、ジャンルをまたぐ強いキャラクター性を知っていると、この時点ですでに歌声と存在感がはっきりしていることがわかる。ファンク寄りの骨格と、ディスコの艶やかさが同居するあたりが、この作品の見どころ。
ひとこと
70年代後半のディスコの空気をまといながら、Grace Jonesらしい強さが前に出る作品。華やかさと硬質さが同じ画面に収まっているような印象。
トラックリスト
- Medley
- A1 Do Or Die (6:35)
- A2 Pride (6:33)
- A3 Fame (5:37)
- –
- B1 Autumn Leaves (7:00)
- B2 All On A Summers Night (4:16)
- B3 Am I Ever Gonna Fall In Love In NYC (5:26)
- B4 Comme Un Oiseau Qui S’Envole (4:42)
関連動画
The House Of Love – The Girl With The Loneliest Eyes (1991)
The House Of Love / The Girl With The Loneliest Eyes
1991年のUKリリース。The House Of Loveは、1986年にロンドンで結成されたイングリッシュ・インディー・ポップ/オルタナティブ・ロック・バンドで、この作品もその流れの中にある一枚。タイトルが示す通り、メロディの輪郭を前に出しながら、ギターの重なりと淡い陰影で曲を組み立てていくタイプの音楽性が見えてくる。
作品の印象
サウンドは、インディー・ロックらしい乾いた質感と、少し奥行きのある録音の雰囲気が同居している印象。リズムは派手に跳ねるというより、一定の推進力を保ちながら進んでいく感じで、そこにギターの響きが重なる構成。The House Of Loveらしい、きらびやかさと内省が同じ画面にあるような空気感。
中心にいるのは、ソングライターとしてのGuy Chadwick。初期メンバーにはTerry Bickers、Andrea Heukamp、Chris Groothuizen、Pete Evansが名を連ねており、バンドの初期編成の流れを踏まえた時期の作品として捉えられる。ギターのレイヤーを軸にしたアンサンブルという点でも、90年代初頭のUKインディー/オルタナティブの文脈に置きやすい内容。
バンドの位置づけ
The House Of Loveは、80年代後半から90年代初頭のUKシーンで、インディー・ロックのメロディ感とバンドサウンドの密度を両立させてきた存在。1991年という時期は、そうした流れがひとつのまとまりを見せていた頃で、このレコードもその時代感をそのまま映しているような一枚。
後年の再編やメンバー交代を経る以前の、初期から中期にかけてのバンドの質感を知るうえでも、ひとつの手がかりになる作品。派手な装飾より、曲の輪郭とギターの余韻を残すタイプの記録。
トラックリスト
- A1 The Girl With The Loneliest Eyes
- A2 Purple Killer Rose
- B1 Tea In The Sun
- B2 Pink Frost
関連動画
Professor Tip Top – Hybrid Hymns (2019)
Professor Tip Top『Hybrid Hymns』について
『Hybrid Hymns』は、ノルウェー・ベルゲン出身のサイケデリック/スペースロック・バンド、Professor Tip Topによる2019年の作品。ジャンル表記はロック、スタイルはプログレッシブ・ロックで、バンドの持つ宇宙的な広がりと、組曲的な展開を思わせる性格が見えてくる一枚だ。
バンドの輪郭
Professor Tip Topは、ベルゲンを拠点に活動するサイケデリックでスペースロック志向のグループ。メンバーにはMette Mathiesen、Stein Høgseth、Jan Reed-Larsen、Charles Wise、Sam Fossbakk、David Sundby、Sonja Otto、Svein Magnar Hansenが名を連ねる。複数メンバーによる厚みのある編成が、そのまま音の層の多さにつながっている印象だ。
サウンドの印象
この作品は、プログレッシブ・ロックらしい曲展開と、サイケデリックな揺らぎをあわせ持つタイプの音像。リズムは単純に前へ押し出すというより、曲の流れに合わせて形を変えていくような作りが想像される。ギターや鍵盤が重なり、空間を広く使う録音の雰囲気もこの系統の作品らしい要素だ。
質感としては、硬質にまとめるよりも、音が少しずつ広がっていくような感触がある。スペースロックの文脈で見れば、反復と展開、浮遊感と緊張感の行き来がポイントになりそうだ。
作品の位置づけ
2019年の時点でのProfessor Tip Topの作品として見ると、バンドのサイケデリック/スペースロック路線を、よりプログレッシブ・ロック寄りに整理した一作という見方ができる。北欧のロック・シーンには、実験性とメロディを両立させるバンドが少なくないが、この作品もその流れの中に置いて捉えやすい。
関連情報
- アーティスト: Professor Tip Top
- タイトル: Hybrid Hymns
- リリース年: 2019年
- 出身: Bergen, Norway
- リリース国: Norway
- ジャンル: Rock
- スタイル: Prog Rock
公式情報としては、FacebookページとBandcampが案内されている。作品の全体像をつかむ入口としては、そのあたりをたどるのが自然だろう。
トラックリスト
- A1 Black Holes Part 1 (1:32)
- A2 An Awkward Choice (5:57)
- A3 Machine Emotions (6:10)
- A4 The Dogs Are Coming…… (4:23)
- A5 Datamining (4:57)
- B1 Light Generator (1:14)
- B2 Turing Machines (5:25)
- B3 Passion (5:25)
- B4 Hybrid Minds (2:29)
- B5 ……Closer (2:54)
- B6 The Final Night (3:28)
- B7 Black Holes Part 2 (2:12)
関連動画
The Move – (Shines On) (1979)
The Move / (Shines On) (1979, UK)
The Moveは、1965年にバーミンガムで結成されたイギリスのロック・バンドだ。1960年代後半のUKチャートで存在感を示したグループで、のちに編成変化を経てElectric Light Orchestraへつながっていく流れでも知られている。(Shines On)は、そのThe Moveの作品を1979年にUKでまとめてリリースしたものとして位置づけられる1枚だ。
バンドの輪郭
中心人物のRoy Woodを軸に、Jeff Lynne、Carl Wayne、Bev Bevan、Ace Kefford、Trevor Burton、Rick Priceといったメンバーが名を連ねる。The Moveは、シングルでの成功が特に大きく、1966年から1968年にかけて「Night of Fear」「I Can Hear the Grass Grow」「Flowers in the Rain」「Fire Brigade」「Blackberry Way」などが上位ヒットになっている。アルバム面では、1968年のデビュー作MoveがUKチャートに入っている。
作品の位置づけ
(Shines On)は、The Moveの代表曲群や活動期の印象をあらためて見渡せるタイトルとして受け止めやすい。バンドの活動時期そのものは1960年代後半から1972年までで、1979年のUK盤として出ているため、オリジナル活動期の後にまとめられた作品という見方になる。
サウンドの印象
The Moveの音は、ロックの骨格を保ちながら、ポップなメロディと分厚いバンド・アンサンブルが前に出るタイプだ。ギターの輪郭がはっきりしていて、リズムは歯切れがよく、1960年代後半らしい少し乾いた録音感もある。派手に作り込むというより、曲の推進力とフックをそのまま押し出す質感。
同時代とのつながり
The Moveは、ブリティッシュ・インヴェイジョン以後のUKロックの流れの中で、ポップスのわかりやすさとハードな鳴りを両立させたバンドとして見られることが多い。サイケデリックな空気や、後年のプログレッシブな展開へ向かう入口のような要素もあり、1960年代末のイギリス・ロックの幅広さが感じられる内容だ。
短く言うと、The Moveのヒット期とバンドの輪郭を押さえるうえで、時代感のはっきりした1枚という印象になる。
トラックリスト
- A1 Message From The Country (4:44)
- A2 Ella James (3:13)
- A3 No Time (3:39)
- A4 Don’t Mess Me Up (3:10)
- A5 Until Your Moma’s Gone (5:01)
- A6 Do Ya (4:00)
- A7 Chinatown (3:06)
- B1 It Wasn’t My Idea To Dance (5:28)
- B2 The Minister (4:26)
- B3 Ben Crawley Steel Company (3:03)
- B4 The Words Of Aaron (5:23)
- B5 My Marge (2:00)
- B6 Tonight (3:16)
- B7 California Man (3:34)
関連動画
The Zombies – Odessey And Oracle (1968)
The Zombies『Odessey And Oracle』
The Zombiesは、1961年にイングランドのハートフォードシャー州セント・オールバンズで結成されたUKロック・バンド。本作『Odessey And Oracle』は、彼らの2作目のアルバムとして知られる作品で、サイケデリック・ロックの文脈で語られることの多い1枚です。Colin Blunstoneの柔らかなリード・ボーカルと、Rod Argentの鍵盤を軸にしたアレンジが、バンドの持ち味としてよくまとまった内容になっています。
作品の位置づけ
このアルバムは、バンド解散前の終盤に残された作品という位置づけ。シングル中心で活動してきたThe Zombiesにとって、アルバムとしての表現を強く意識した一枚でもあります。のちに再評価が進み、彼らの代表作として扱われることが多くなった作品です。ロックの中でも、60年代後半のサイケデリック・ポップ/ロックの流れに接続する内容。
サウンドの特徴
サウンドは、派手な歪みや過剰な厚みよりも、細かな音の重なりが目立つタイプ。オルガンやピアノの響きが前に出て、ベースとドラムはその下で落ち着いた推進力を作る構成です。録音の質感は比較的クリアで、各パートの輪郭がはっきりしている印象。Colin Blunstoneの声も、やわらかく伸びるトーンで、楽曲全体の空気を決めているように感じられます。
リズム面では、直線的に押すというより、ゆるやかな揺れを保ちながら進む曲が多め。メロディの流れを優先した作りで、サイケデリック・ロックの中でも、内省的で整った感触が残る内容です。60年代後半の英国ロックらしい、ポップさと実験性のあいだのバランス。
同時代との関わり
同時代のサイケデリック・ロックが、長尺の演奏や強い音響効果へ向かう場面がある中で、『Odessey And Oracle』は比較的コンパクトな曲作りと、緻密なハーモニーが印象に残るタイプ。英国のポップ感覚を保ちながら、当時の新しい音の感触も取り入れている、そんな立ち位置の作品です。
ひとこと
The Zombiesというバンドの輪郭をつかむうえで、重要なアルバムとして語られている一枚。メロディ、鍵盤、コーラス、録音のクリアさ、そのあたりがきれいにそろった作品です。
トラックリスト
- A1 Care Of Cell 44
- A2 A Rose For Emily
- A3 Maybe After He’s Gone
- A4 Beechwood Park
- A5 Brief Candles
- A6 Hung Up On A Dream
- B1 Changes
- B2 I Want Her She Wants Me
- B3 This Will Be Our Year
- B4 Butcher’s Tale (Western Front 1914)
- B5 Friends Of Mine
- B6 Time Of The Season
関連動画
Sally Oldfield – Easy (1979)
Sally Oldfield / Easy
1979年にUKでリリースされた、Sally Oldfieldのアルバム。フォークロックとポップロックの間を行き来する作りで、アコースティックな手触りと、当時らしい整ったバンド・サウンドが同居している作品です。Sally Oldfieldは英国のシンガー/ソングライターで、Mike Oldfieldの姉としても知られています。
作品の輪郭
この時期のSally Oldfieldは、フォーク由来の素朴さを残しながら、ポップな構成の中に歌をしっかり置いていくタイプの表現が見えてきます。Easy というタイトルどおり、肩の力を抜いた流れを感じさせる一方で、ただ軽いだけではなく、メロディと歌声を中心に組み立てたまとまりのある印象です。
サウンドの特徴
リズムは派手に押し出すというより、楽曲を支える形で落ち着いて進むタイプ。質感としては、1970年代末のUKらしい、少し温かみのある録音の空気が感じられます。フォークロック寄りのアコースティック感と、ポップロックの輪郭が重なった、耳当たりのよい仕上がり。歌のニュアンスが前に出やすい構成です。
時代背景と位置づけ
1979年は、英国のロックやポップの中で、シンガーソングライター系の作品が多様化していた時期。フォークの流れを引きつつ、より洗練されたポップの感覚へ寄っていく動きも目立ちます。Easy は、そうした流れの中で、Sally Oldfieldの歌を軸にしたスタイルを示す一枚として捉えやすい作品です。
プロフィールとのつながり
Sally Oldfieldはダブリン生まれで、英国で育ち、音楽活動の初期には弟のMike Oldfieldとのデモ録音や、The Sallyangieでの活動もありました。クラシック・ピアノや舞踊の教育を受けた経歴もあり、その背景は歌の運びや楽曲の組み立てにも通じているように見えます。Easy は、そうした経歴を経た後の、ソロ表現の流れの中に置ける作品です。
ひとことで言うと
フォークロックの手触りを残しながら、ポップに整えた1979年のUK作品。歌を中心にした落ち着いた質感が印象に残る一枚です。
トラックリスト
- A1 The Sun In My Eyes
- A2 You Set My Gypsy Blood Free
- A3 Answering You
- A4 The Boulevard Song
- A5 Easy
- B1 Sons Of The Free
- B2 Hide And Seek
- B3 Firstborn Of The Earth
- B4 Man Of Storm
関連動画
Yanni – Keys To Imagination (1986)
Yanni / Keys To Imagination(1986)
ギリシャ生まれのキーボーディスト、Yanniによる1986年の作品。Keys To Imaginationは、電子楽器を軸にしながら、クラシカルな旋律感とアンビエント寄りの広がりを重ねた一枚で、彼の音楽性をつかみやすいタイトルのひとつといえる内容だ。
作品の印象
全体としては、シンセサイザーのレイヤーを丁寧に積み上げた、なめらかな音の流れが中心。ビートが前に出る場面もあるが、基本はリズムで押すというより、音色の変化とフレーズの反復で空気を作っていくタイプ。打ち込みの輪郭は比較的はっきりしていて、そこに伸びのある鍵盤の響きが乗る構図。
音の質感は、80年代の電子音楽らしいクリアさと、空間を広く使う残響感が目立つ。メロディは分かりやすく、旋律の流れに重心が置かれている一方で、過度にドラマティックへ振れすぎないところに、この時期のモダン・クラシカルらしい落ち着きがある。
Yanniというアーティスト
YanniことYiannis Chryssomallisは、ギリシャのカラマタ出身。水泳選手としての経歴を持ち、その後にミネソタ大学で心理学を学び、独学でピアノと作曲に向かった人物として知られている。楽譜を読まず、自分なりの記譜法で作曲を進めたというプロフィールも、この音楽の独特な流れにつながっているように見える。
Keys To Imaginationは、そうした彼の鍵盤主体の作風が前面に出た初期の一作として捉えやすい。のちの大規模なシンフォニック路線を思わせる芽も見えつつ、まだ電子音楽の枠組みの中で輪郭を整えている印象。
同時代との関わり
1986年という時期は、ニューエイジ、アンビエント、モダン・クラシカルがそれぞれ独自の広がりを見せていた頃。そうした文脈の中で、この作品も、シンセサイザーを使いながら「雰囲気」だけに寄らず、旋律をしっかり残すタイプの作品として位置づけられそうだ。電子音楽の機材感と、クラシック的な構成意識の両方が見えるところが特徴。
要点
- アーティスト: Yanni
- タイトル: Keys To Imagination
- リリース年: 1986年
- ジャンル: Electronic
- スタイル: Modern Classical, Ambient
- 鍵盤主体の構成、シンセのレイヤー、広めの残響感
80年代中盤の電子音楽の空気をまといながら、メロディの輪郭を保った作品。Yanniの初期像を追ううえで、ひとつの基準になりそうなアルバムだ。
トラックリスト
- A1 North Shore (5:06)
- A2 Looking Glass (6:39)
- A3 Nostalgia (4:29)
- A4 Santorini (4:35)
- B1 Port Of Mystery (4:49)
- B2 Keys To Imagination (5:15)
- B3 Forgotten Yesterdays (3:29)
- B4 Forbidden Dreams (3:57)
関連動画
Naxatras – V (2025)
Naxatras『V』について
ギリシャ・テッサロニキ出身のストーナー/サイケデリック・ロック・バンド、Naxatrasによる『V』は、2025年の作品。John Vagenas、Kostas Harizanis、John Delias、Pantelis Kargasの4人編成で、ギター、ドラム、ベース&ボーカル、キーボード/シンセサイザーを軸にした演奏体制になっている。
バンドは2012年結成。『V』は、そうした活動の流れの中で届く作品として位置づけられる。ロックを土台に、サイケデリック・ロック、ストーナー・ロック、プログレッシブ・ロックの要素が重なる構成。厚みのあるギター、低音の押し出し、反復を生かしたリズム、鍵盤やシンセによる広がりが、バンドの輪郭を形づくっている。
サウンドの印象
Naxatrasの持ち味は、重さと浮遊感の両立にある。リズム隊がしっかりと土台を支え、その上でギターがうねり、キーボードが空間を広げる形。音像は密度がありつつも、サイケデリックな質感が前に出やすい。録音の雰囲気も、演奏の生々しさと音の広がりが同居するタイプとして捉えられる。
ストーナー・ロック由来の粘りのあるグルーヴと、プログレッシブ・ロック寄りの展開感が重なるところもポイント。長めのフレーズや反復を軸にしながら、単調に寄りすぎない構成が見えやすいバンドだと言えそうだ。
作品の位置づけ
『V』というタイトルからも、バンドの継続的な歩みの中にある作品であることがうかがえる。2010年代以降のサイケデリック/ストーナー系の流れを背景にしつつ、そこへプログレッシブな要素を加えるNaxatrasの方向性が、ここでも反映されている印象。
ギリシャのロック・シーンの中でも、重厚さだけでなく、鍵盤やシンセを含めた立体的なアレンジを持つバンドとして整理できる。ジャンルの枠内に収まりながらも、演奏の組み立てで個性を出すタイプの作品として見ておきたい一枚。
基本情報
- アーティスト: Naxatras
- タイトル: V
- リリース年: 2025
- 出身: Thessaloniki, Greece
- リリース国: Greece
- ジャンル: Rock
- スタイル: Psychedelic Rock, Stoner Rock, Prog Rock
トラックリスト
- A1 Celestial Gaze (5:05)
- A2 Spacekeeper (5:09)
- A3 Numenia (5:09)
- A4 Utopian Structures (5:29)
- B1 Breathing Fire (5:17)
- B2 Legion (4:51)
- B3 Sand Halo (6:01)
- B4 The Citadel (5:55)
関連動画
Black Window – Black Widow (1990)
Black Widow / Black Widow
Black Widowの「Black Widow」は、1990年にドイツでリリースされた作品。バンド名をそのまま冠したタイトルで、Black Widowというグループの輪郭をつかみやすい一枚になっている。もともと彼らはイングランド、レスターでPesky Gee!の流れから1969年に結成された英国のロック・バンドで、オカルトやサタニックなイメージを早い時期から打ち出していたことで知られる。
作品の位置づけ
Black Widowは、1970年前後の英国ロック史の中では、プログレッシブ・ロックとハードロックの境界線上に置かれやすい存在。劇的な構成やテーマ性の強さがありつつ、当時の重いギター・リフや土の匂いのするバンド感も持っている。三枚のアルバムを残して1973年に一度解散しており、この「Black Widow」は、その後の時期にあらためて触れられる形の作品として見ておくと整理しやすい。
サウンドの印象
ジャンル表記はRock、スタイルはProg Rock。音の作りは、派手に磨き上げるというより、バンドの演奏を軸にした厚みのある質感が想像しやすい。リズムは直線的に押す場面と、展開を追うように揺れる場面がありそうで、録音の空気感も、70年代英国ロックらしい少しざらついた手触りが似合うタイプ。リフの重さ、曲ごとの構成の変化、少し演劇的なムードが前に出る文脈。
同時代とのつながり
このバンドは、同時代のハードロックやプログレの流れの中で語られることが多い。特に、当時の英国バンドらしい重厚さや、舞台演出を含む見せ方が印象に残るグループ。メディアがBlack Sabbathとの類似を持ち出したという点も、当時の空気をよく示している。
クレジット
- アーティスト: Black Widow
- タイトル: Black Widow
- リリース年: 1990年
- 国: Germany
- ジャンル: Rock
- スタイル: Prog Rock
メンバーにはGeoff Griffith、Clive Box、Clive Jones、Bob Bond、Jim Gannon、Kip Trevor、Romeo Challenger、John Culley、Kay Garret、Jess Taylorの名前が挙がっている。バンドの来歴と合わせて見ると、Black Widowという名前が持つ初期のイメージと、プログレ寄りの構成感が重なる一枚として捉えやすい。
トラックリスト
- A1 Tears And Wine
- A2 The Gypsy
- A3 Bridge Passage
- A4 When My Mind Was Young
- A5 The Journey
- B1 Poser
- B2 Mary Clark
- B3 Wait Until Tomorrow
- B4 An Afterthought
- B5 Legend Of Creation
関連動画
Visible Wind – Catharsis (1988)
Visible Wind『Catharsis』(1988)
カナダ・モントリオールのプログレッシブ・ロック・バンド、Visible Windによる1988年作。ElectronicとRockを土台にしながら、Prog RockとSpace Rockの要素を組み合わせた作品として位置づけられるアルバムである。バンドは1983年にStephen GeysensとLuc Hébertを中心に始動し、この時期にはLouis Roy、Claude Rainville、Philippe Woolgarらが加わっている。
作品の輪郭
『Catharsis』は、Visible Windの作品群の中でも初期の重要作にあたる。のちの作品でより大きく展開していくバンドの方向性を、1988年の時点で示している1枚という印象。Christopher Wellsがボーカルを担当しており、後年の編成とは異なる顔ぶれでまとまっている。
サウンドは、電子的な質感とロックの推進力が同居するタイプ。スペース・ロックらしい広がりを持ちながら、プログレッシブ・ロックらしい構成の変化も感じられる内容で、リズムは直線的に押し切るというより、曲ごとに展開を作りながら進む形が想像しやすい。録音の空気感も、80年代後半らしい輪郭のある響きが軸になっていそうな作品である。
バンドにおける位置づけ
Visible Windにとっては、1988年のラインナップで発表された代表的な初期作。プロフィール上でも、この年の活動がひとつの節目として扱われている。後年には編成の変化を経て別の作品へつながっていくが、『Catharsis』はその前段階として、バンドの個性を確認できるタイトルと言えそうだ。
同時代の文脈
1988年は、プログレッシブ・ロックが70年代的な大作志向だけでなく、80年代的な音作りや電子楽器の感触を取り込みながら続いていた時期でもある。『Catharsis』もその流れの中に置くと、シンセや電子的な処理とロック・バンドの演奏感を並べた、時代性のある一作として見えてくる。
基本情報
- アーティスト: Visible Wind
- タイトル: Catharsis
- リリース年: 1988
- リリース国: Canada
- ジャンル: Electronic, Rock
- スタイル: Prog Rock, Space Rock
トラックリスト
- A1 Blind Regards (3:27)
- A2 The False Truths (8:42)
- A3 Learning To Bloom (3:50)
- A4 Wedding Game (5:18)
- B1 Catharsis (7:32)
- B2 Wrong Time, Wrong Place (6:37)
- B3 Les Tortues Schizophrènes Marchent Vers Leur Destin / Les Trois Lacs (8:49)
関連動画
Various – The British Psychedelic Trip Vol. 3 1966-1969 (1987)
The British Psychedelic Trip Vol. 3 1966-1969
「The British Psychedelic Trip Vol. 3 1966-1969」は、UKのさまざまなアーティストによる楽曲をまとめたコンピレーション作品である。タイトルが示す通り、1966年から1969年にかけてのブリティッシュ・サイケデリック期を切り取った内容で、ロックとポップの境目を行き来する楽曲群が並ぶ。
作品の輪郭
中心にあるのは、当時の英国ポップスにサイケデリック・ロックの要素が入り込んでいく流れ。ギターの響きに揺れがあり、曲によってはリズムが素直に進まず、少し浮遊感のある展開を見せる。録音の質感も、現在の整った音像というよりは、時代特有のざらつきや奥行きが残るタイプで、そこに60年代後半らしい空気がにじむ。
ポップ寄りのメロディを持つ曲もあれば、演奏面で色彩を強めた曲もあり、ひとつの流れの中で当時の英国シーンの幅が見えやすい構成になっている。派手さだけで押すのではなく、音の重なりやコーラスの処理、リズムの揺れが印象を作る場面が多い。
サウンドの特徴
- ギターのエフェクトや揺れを感じる音作り
- 直線的すぎないリズム、やや漂うようなビート感
- コーラスやオルガン系の響きが前に出る場面
- 録音年代を感じる、少し粗さのある質感
文脈
1960年代後半の英国では、ロックが単なるビート音楽から広がりを見せ、ポップソングにも実験的な感触が入り込んでいった。この作品は、その変化をコンパイル盤という形でたどる一枚として見えやすい。個別のバンドの作品集というより、時代の断面を並べて感じるタイプの内容である。
リリース時期について
盤としては1987年のリリースだが、収録されている音楽は1966年から1969年の空気を映している。作品としては、その時代の英国サイケデリック・ロックとポップ・ロックの流れをまとめたものとして受け取れる。
トラックリスト
- A1 Renaissance Fair
- A2 Miss Pinkerton
- A3 Toffee Apple Sunday
- A4 Green Plant
- A5 Follow Me
- A6 Just One More Chance
- A7 Heavenly Club
- A8 ‘Cos I’m Lonely
- A9 Turquoise Tandem Cycle
- A10 Jenny Artichoke
- B1 Magic Potion
- B2 Cast A Spell
- B3 Deep Inside Your Mind
- B4 The Elf
- B5 Happy Castle
- B6 Death At The Seaside
- B7 Secret
- B8 In My Magic Garden
- B9 Woodstock
- B10 Desdemona
Various – The Dutch Explosion (Hollands Greatest Hits) (1969)
The Dutch Explosion (Hollands Greatest Hits) / Various
1969年にUSでリリースされた、Various名義のコンピレーション作品。タイトルが示す通り、オランダ由来の楽曲をまとめた一枚として受け取れる内容で、ロックとポップを軸にしながら、ガレージ・ロック寄りの勢いも感じさせる作品だ。
作品の印象
全体としては、きっちり整った洗練よりも、ラフな推進力と分かりやすいフックが前に出るタイプの印象。ギターのざらつき、軽く押し出してくるリズム、ストレートな歌い口が中心になりやすく、60年代後半らしい熱気がそのまま残っているように聴こえる。
録音の雰囲気も、過度に厚塗りされた感じではなく、音の輪郭をはっきり置いた作りに寄っているように感じられる。ドラムの跳ね方や、短く切り込むギターのフレーズが前に出る場面では、ガレージ・ロックの文脈が見えやすい。
ジャンルと時代の空気
ロックとポップのあいだを行き来しながら、当時のヒット感覚とバンド・サウンドの荒さが同居している点がこの作品の特徴だろう。1969年という時期を考えると、サイケデリックやハードなロックが広がっていた時代でもあり、その中でこの手のコンピレーションが持つ意味は、地域色のあるポップ・ロックの断片をまとめて追えるところにある。
位置づけ
アーティスト情報が限られているため個別の活動史までは追いにくいが、少なくともこの作品は、Various名義で当時の空気をパッケージした記録として見ると分かりやすい。単独のバンド作品というより、1960年代末のロック/ポップの流れを横断して捉えるための一枚、という位置づけに近い。
ひとことで言うと
60年代末のロックとポップの温度感を、ガレージ寄りのざらつきとともにまとめたコンピレーション盤。
トラックリスト
- A1 If I Stay Too Long (3:44)
- A2 My Little Girlie (2:26)
- A3 Since You Have Gone (2:56)
- A4 Whoopy Whistle (2:51)
- A5 What’s That Sound (2:37)
- A6 Love Is Like A Rainbow (2:55)
- B1 Leave This Man Alone (2:59)
- B2 What A Day, What A Day (2:56)
- B3 I Know In My Mind (2:20)
- B4 Boem (2:04)
- B5 Little Women (2:30)
- B6 Didn’t I (2:26)
関連動画
It Bites – The Big Lad In The Windmill (1986)
It Bites / The Big Lad In The Windmill
1986年にUKで登場した、It Bitesの初期を代表する作品のひとつ。バンドは1982年にイングランド北西部のEgremontで結成されていて、当時はポップ・ロック寄りの感触を持ちながら、その後のプログレッシブ・ロック方面へつながる流れも見えてくるグループです。
作品の輪郭
このタイトルでは、ロックを土台にした明快な曲の進行と、少しひねりのある構成が同居している印象です。リズムは比較的きっちりと前へ進み、演奏の輪郭もはっきりしていて、80年代らしい整った録音の質感が感じられます。ポップな分かりやすさと、演奏面の細かさが同じテーブルに並んでいるような作り。
バンドの中での位置づけ
It Bitesは、初期にはポップ・ロック色が前に出ていて、80年代後半にかけてよりプログレッシブ・ロック寄りの方向へ展開していきます。その流れの中で見ると、本作はバンドの初期像をつかみやすい一枚といえそうです。後年の変化を知る入口としても、当時のバンドの立ち位置を映す記録としても、整理しやすい内容。
同時代の空気
1980年代半ばのUKロックには、メロディを重視した作りと、演奏の技巧を前面に出す流れが並走していました。It Bitesもその中にいて、ポップな聴きやすさを保ちながら、少し複雑な展開を織り込むタイプのバンドとして見えてきます。ジャンル表記としてはロック、スタイルとしてはポップ・ロック寄りの位置。
クレジット
- アーティスト: It Bites
- タイトル: The Big Lad In The Windmill
- リリース年: 1986年
- リリース国: UK
- ジャンル: Rock
- スタイル: Pop Rock
- メンバー: Lee Pomeroy, Francis Dunnery, Dick Nolan, John Mitchell, John Beck, Lee Knott, Bob Dalton
トラックリスト
- A1 I Got You Eating Out Of My Hand (5:37)
- A2 All In Red (3:31)
- A3 Whole New World (4:25)
- A4 Screaming On The Beaches (3:45)
- A5 Wanna Shout (3:29)
- B1 Turn Me Loose (4:11)
- B2 Cold, Tired And Hungry (4:16)
- B3 Calling All The Heroes (5:33)
- B4 You’ll Never Go To Heaven (7:12)
- B5 The Big Lad In The Windmill (0:48)
関連動画
Martha And The Muffins – Trance And Dance (1980)
Martha And The Muffins / Trance And Dance
カナダのニューウェイヴ/アートポップ・シーンから登場したMartha And The Muffinsによる、1980年の作品。電子音を軸にしたサウンドで、シンセポップの流れの中に置ける1枚だ。トロントのQueen Street West周辺やオンタリオ・カレッジ・オブ・アートの空気を背景にしたバンドらしく、ポップさの中に少しひねりのある作りが印象的。
サウンドの印象
タイトルが示す通り、ダンス感覚のあるリズムと、シンセの冷たい質感が前面に出る。ビートは比較的はっきりしていて、打ち込み的な感触とバンド演奏の輪郭が重なる場面もある。録音全体は、80年代初期らしい乾いた響きと、少し硬質な音像が特徴的。メロディは親しみやすい一方で、音の重ね方にはアートロック寄りの感触も残る。
アーティストの位置づけ
Martha And The Muffinsは、1977年にトロントのパンク/ニューウェイヴ/アートポップの文脈から現れたバンドで、この時期の作品は、そうした初期の動きと80年代のシンセポップの接点にある。後年の「Echo Beach」で広く知られる前後の時期にあたるため、バンドの初期像をつかむうえでも重要な時期の記録といえる。
同時代とのつながり
1980年前後のカナダや英国では、ギター中心のニューウェイヴに加えて、シンセサイザーを使ったポップスが広がっていた。Martha And The Muffinsのこの時期の音も、その流れの中で、ダンスビートとポップ・ソングの形を組み合わせたものとして聞こえる。派手さよりも、音色の組み合わせやリズムの立て方に個性が出るタイプの作品。
- アーティスト: Martha And The Muffins
- タイトル: Trance And Dance
- リリース年: 1980年
- ジャンル: Electronic
- スタイル: Synth-pop
- 国: Japan盤
80年代初期のシンセポップらしい質感と、カナダ発バンドのアート寄りの視点が重なる1枚。音の輪郭がはっきりしていて、当時の空気がそのまま残るタイプの作品だ。
トラックリスト
- A1 Luna Park (3:11)
- A2 Suburban Dream (3:27)
- A3 Was Ezo (4:00)
- A4 Teddy The Dink (3:27)
- A5 Symptomatic Love (4:08)
- A6 Primal Weekend (5:10)
- B1 Halfway Through The Week (3:40)
- B2 Am I On? (3:24)
- B3 Motorbikin’ (2:55)
- B4 About Insomnia (3:10)
- B5 Be Blasé (2:39)
- B6 Trance And Dance (7:14)
関連動画
The Snake Corps – Flesh On Flesh (1985)
The Snake Corps『Flesh On Flesh』
UKのThe Snake Corpsが1985年に発表したアルバム。前身となるSad Lovers And Giantsの解散後、Tristan Garel-FunkとNigel Pollardを中心に結成され、より硬質なサウンドを目指していたバンドの初期像が見える作品として位置づけられる。
作品の輪郭
ジャンル表記はAlternative Rock、New Wave、Goth Rock。全体としては、ニューウェーブの冷えた感触に、ゴシック寄りの陰影とロックの直線的な推進力が重なるタイプの音像。録音は派手に装飾するというより、リズム隊の存在感とギターの輪郭を前に出した作りに聴こえる。
ビートは比較的タイトで、低音は粘りを残しつつも重すぎない印象。ギターは空間を広く使うというより、鋭いフレーズや反復で曲を押していく場面が目立つ。ヴォーカルも、感情を大きく振り切るというより、やや抑制した温度で楽曲の緊張感を保っている。
バンドの中での位置づけ
この『Flesh On Flesh』は、バンドの出発点にあたる作品。後に編成の変化やキーボードの導入を経て音の幅を広げていくThe Snake Corpsだが、この時点では、より硬い質感とシンプルなバンド・サウンドを軸にしていたことがうかがえる。
Sad Lovers And Giantsの流れを引きながらも、別の方向へ踏み出そうとする初期の試みとして見ると、バンドの輪郭がつかみやすい一枚。UKのポストパンク以後の流れ、ニューウェーブからゴシック・ロックへと接続していく時代感の中に置くと、その立ち位置も見えやすい。
ひとことで言うと
硬質なギター、抑えた熱量、陰影のあるニューウェーブ/ゴシック寄りのロック。The Snake Corpsの初期の方向性をそのまま示すアルバム。
トラックリスト
- Suicide
- A1 Victory Parade (4:09)
- A2 Animals All (3:38)
- A3 Save My Heart (3:54)
- A4 Man In The Mirror (3:36)
- A5 Miracle (3:42)
- Homicide
- B1 Science Kills (5:06)
- B2 Another Monday (4:18)
- B3 Look East For Eden (4:06)
- B4 House Of Man (4:17)
- B5 Flesh On Flesh (1:54)
関連動画
Theo Travis – The Tonefloat Sessions (2009)
Theo Travis『The Tonefloat Sessions』について
Theo Travisの『The Tonefloat Sessions』は、2009年にオランダでリリースされた電子音響系の作品。ブリティッシュ・サクソフォニスト/フルート奏者/キーボード奏者として知られるTheo Travisの活動の中でも、ドローンとアンビエントの要素が前面に出た一枚として見ておきたい内容だ。
サウンドの軸は、明確なビートで押すタイプというより、持続音や空気感の変化で聴かせる方向にある。音の輪郭は比較的なめらかで、空間の広がりや残響の感触が印象に残るタイプ。リズムが強く主張する場面は多くなさそうで、音の重なりや質感の移ろいに耳が向く作品といえる。
音の印象
ドローンらしい持続感と、アンビエントらしい静かな流れ。そのあいだを行き来するような作りが、この作品の基本線に見える。即効性のある展開よりも、じわじわと空間を満たしていく組み立てで、録音の雰囲気も含めて冷たすぎず、かといって過度に装飾的でもない、落ち着いた手触り。
電子音楽の文脈では、2000年代後半らしい、ミニマルな構成と音色の細部で聴かせる流れの中に置けそうな作品でもある。派手な変化より、持続と余白のバランスに重心があるあたりが、この時期のアンビエント/ドローン作品らしいところ。
アーティストの位置づけ
Theo Travisは1964年生まれのイギリス出身ミュージシャンで、サクソフォン、フルート、キーボードを扱う人物。『The Tonefloat Sessions』では、その多面的な演奏活動の中でも、管楽器の表現を電子的な音響環境に溶け込ませる方向が見えやすい。アコースティックな息づかいと電子音の持続が近い距離で共存する構図、そんな印象。
オランダ発のリリースという点でも、ヨーロッパ圏の実験音楽やアンビエントの流れに接続する作品として見えてくる。ジャンルの境界を大きく越えるというより、電子音、ドローン、アンビエントの要素を静かに束ねた一作、という捉え方がしっくりくる。
まとめ
- 2009年、オランダでリリースされたTheo Travisの作品
- Electronicを基調に、DroneとAmbientの要素が中心
- ビート主導ではなく、持続音と空間感で聴かせるタイプ
- 管楽器奏者としての個性が、電子音響の中ににじむ内容
- 2000年代後半のアンビエント/ドローン文脈に置きやすい一枚
トラックリスト
- A The Lamentation Returns
- B Melancholy Of The Masses
Rip Rig & Panic – Attitude (1983)
Rip Rig & Panic『Attitude』(1983)
Rip Rig & Panicの『Attitude』は、1983年にUKで登場した作品。BristolのThe Pop Group周辺から発展したバンドで、Neneh Cherry、Gareth Sager、Bruce Smith、Sean Oliver、Mark Springerらを中心に、ジャズの要素とロックの緊張感を同じ場に置いたグループとして知られている。ジャンル表記としてはJazz、Rock、スタイルとしてはAlternative Rock、Jazz-Funk。
サウンドの印象
この作品では、鋭いリズムと、少しざらついた質感が前に出る。ドラムは細かく動き、ベースは低い位置で粘り、ピアノやギターがその上でせわしなく絡む構成。演奏はきっちり整いすぎず、勢いのあるぶつかり方をしていて、録音全体にも生々しい空気が残る。ジャズ由来の自由度と、ポストパンク寄りの硬さが同居している印象。
バンドの中での位置づけ
Rip Rig & Panicは、The Pop Groupの流れを受けつつ、よりジャズやファンクの感覚を強めた存在として見られることが多い。『Attitude』は、その方向性がはっきり出ている時期の作品として捉えやすい。Neneh Cherryを含む初期メンバーの個性が強く出ていて、バンドの輪郭をつかむうえで重要な一枚といえる。
同時代とのつながり
1980年代前半のUKでは、ポストパンクの流れから、ロックの形式にジャズやダブ、ファンクを持ち込む動きが広がっていた。Rip Rig & Panicもその文脈の中にあり、単なる実験色だけでなく、身体的なリズム感や即興性を前面に出しているところが特徴的。『Attitude』は、その時代の空気をよく映したタイトルのひとつ。
作品全体としては、荒さのある演奏、前に出るビート、ジャンルの境界をまたぐ構成が印象に残る内容。バンドの初期の姿を知るうえでも見取りやすいアルバム。
トラックリスト
- A1 Keep The Sharks From Your Heart
- A2 Sunken Love
- A3 Rip Open, But Oh So Long Thy Wounds Take To Heal
- A4 Do The Tightrope
- A5 Intimacy, Just Gently Shimmer
- A6 How That Spark Sets Me Aglow
- B1 Alchemy In This Cemetry
- B2 Beat The Beast
- B3 The Birth Pangs Of Spring
- B4 Eros; What Brings Colour Up The Stem?
- B5 Push Your Tiny Body As High As Your Desire Can Take You
- B6 Viva X Dreams
関連動画
Pure Reason Revolution – Coming Up To Consciousness (2024)
Pure Reason Revolution「Coming Up To Consciousness」
Pure Reason Revolutionは、2003年にウェストミンスター大学で結成されたイギリスのロック・グループだ。電子的な質感とロック、さらにプログ寄りの構成を行き来してきたバンドで、この「Coming Up To Consciousness」は2024年の作品になる。オルタナティヴ・ロックとプログ・ロックの要素を軸にした、現行編成での到達点として見える1枚。
作品の位置づけ
バンドは2011年にいったん解散を発表し、その後2018年に再始動している。このアルバムは、再結成後の流れの中で出てきた新作で、Jon CourtneyとGreg Jongを中心に、Annicke Shireenが新たなボーカルとして参加し、Ravi Kesavaramがドラムを担っている。過去の編成とは少し違う形で、現在のPure Reason Revolutionを示す内容といえる。
サウンドの印象
ジャンル表記はElectronicとRock、スタイルはAlternative RockとProg Rock。そうした情報どおり、ギター主体のバンド感に、電子音のレイヤーや硬質な質感が重なるタイプの作品として捉えやすい。リズムはきっちりと組み立てられ、展開の切り替えもはっきりしていそうだ。録音の空気感も、ラフに鳴らすというより、音像を積み上げていく方向の作りに見える。
バンドの流れとのつながり
Pure Reason Revolutionは、初期からメロディと構築性の両方を意識したバンドとして知られてきた。2024年作の「Coming Up To Consciousness」も、その延長線上にある作品として整理できる。2026年にはデビュー作「The Dark Third」の20周年を記念するツアーも行われており、このバンドが長い時間の中で現在形を更新していることがわかる。
クレジットの整理
- アーティスト: Pure Reason Revolution
- タイトル: Coming Up To Consciousness
- リリース年: 2024
- アーティストの国: Europe
- リリース国: Europe
- ジャンル: Electronic, Rock
- スタイル: Alternative Rock, Prog Rock
Pure Reason Revolutionの現在地を、電子的な質感とロックの骨格の両方から確認できるタイトルだ。
Zior – …Plus (1971)
Zior …Plus / Zior
1971年にUKでリリースされた、Ziorの作品。Ziorはイングランド、サウスエンド=オン=シー出身のサイケデリック/ハードロック・バンドで、1970年に結成されたグループだ。メンバーは Keith Bonsor、John Truba、Barry Skeels、Peter Brewer。クレジットや流通の都合も含め、バンドの歩みの中で少し変則的な位置に置かれる作品として見ておくと、全体像がつかみやすい。
作品の輪郭
ジャンル表記は Rock、スタイルは Hard Rock と Prog Rock。骨格はリフ主体の硬質なロックで、そこに70年代的なプログレッシブ・ロックの展開感が重なるタイプの作品として受け取れる。サイケデリック・ハードロックの流れを引きずりながら、演奏の推進力と構成の組み立てを前に出した音像が想像しやすい。
サウンドの印象
音の手触りは、分厚いギターと直線的なドラムが軸になるタイプだろう。リズムは重く、少し引っかかるような推進感があり、録音の雰囲気も派手に磨き上げるというより、バンドの生々しさを残した質感に寄る。ハードロックの押し出しと、プログレ由来の曲展開の変化が同居するあたりが、この手の作品らしい面白さになっている。
アーティストの文脈
Ziorは1970年結成のバンドで、同時代の英国ロックに見られる、サイケデリックな感覚とハードな演奏をつなぐ系譜にいる。契約上の事情でMonument名義の作品もあるため、バンド名と作品の並びを追うときは少し注意が必要なグループでもある。そうした経緯を踏まえると、この作品も単独で完結したものというより、バンドの活動史をつなぐ一枚として見えてくる。
E-I-E-I-O – Land Of Opportunity (1986)
E-I-E-I-O『Land Of Opportunity』について
『Land Of Opportunity』は、米ウィスコンシン州ミルウォーキー出身のインディー・ロック・バンド、E-I-E-I-Oによる1986年のレコード。ロックを基調にしながら、カントリー・ロックとインディー・ロックの要素を重ねた作品として位置づけられる。
バンドの背景
E-I-E-I-Oは1980年代に結成された、ミルウォーキーのバンド。メンバーにはMike Hoffmann、Mike Gorman、Scott Gorsuch、Rob Harding、Steve Summers、Richard Szeluga、Tommy Ciaccioが名を連ねる。アメリカ中西部のローカルな空気を背にしたグループとして見ていくと、当時のインディー・ロックの文脈に自然に収まる存在だ。
サウンドの輪郭
ジャンル表記にある通り、土台はロックで、そこにカントリー・ロックらしい乾いた響きが加わるタイプの作品と受け取れる。ビートは前に進む感触があり、ギターは飾り立てすぎず、素朴な質感を残した鳴りが想像しやすい。録音も、過度に磨き込まれた印象よりは、バンドのまとまりや演奏の手触りが見えやすい方向にあるように見える。
時代とのつながり
1986年という時期は、アメリカのインディー・ロックが各地で少しずつ輪郭を強めていった頃でもある。E-I-E-I-Oの『Land Of Opportunity』も、その流れの中で、メジャー寄りのロックとは少し距離を置いた、地方都市発のバンドらしい感触を持つ一枚として捉えやすい。カントリー・ロックの要素を含みつつ、インディーらしい軽さと粗さを残すあたりが、この作品の見どころになっている。
まとめ
『Land Of Opportunity』は、E-I-E-I-Oという1980年代ミルウォーキー発のバンドを知るうえで手がかりになるレコード。ロック、カントリー・ロック、インディー・ロックの接点に置かれた作品として、当時のアメリカン・インディーの空気を伝える一枚といえる。
Mandrill – Beast From The East (1975)
Mandrill『Beast From The East』について
『Beast From The East』は、アメリカのラテン色の強いファンク・グループ、Mandrillによる1975年の作品。ラテン、ファンク/ソウルを軸に、ソウル、ファンク、ディスコの要素が重なる一枚として捉えられる。バンド名義の編成も大きく、David Conley、Carlos Wilson、Claude “Coffee” Cave、Louis Wilson、Ric Wilson、Brian Allsop、Neftali Santiago、Fudgie Kae、Bundie Cenac、Wilfredo “Wolf” Wilson、Juaquin Jessup、Omar Mesa、Charles Padro、Marc Reyがクレジットされている。
サウンドの印象
Mandrillの持ち味は、ラテン由来のリズム感とファンクの粘りが同居するところにある。ここでも、その骨格はしっかり見えてくる。打楽器の動き、ベースの押し出し、ホーンの厚みが前に出るタイプの音像で、ソウル寄りの滑らかさと、ファンクらしいタイトさが同時に感じられる。ディスコ期の空気も重なり、リズムの輪郭がやや整えられた質感として耳に入る一枚といえる。
Mandrillというグループの位置
Mandrillは、ラテン・ファンクの文脈で語られることの多いグループ。1970年代半ばという時期は、ファンクがソウルやディスコと近づき、ダンス・ミュージックとしての輪郭を強めていった時代でもある。『Beast From The East』も、その流れの中で捉えやすい作品。バンドの持つ多国籍なリズム感と、当時のブラック・ミュージックの潮流が交差する地点に置ける内容になっている。
作品の雰囲気
録音の雰囲気は、演奏の密度を前面に出すタイプ。音の隙間よりも、複数のパートが重なって進む感触が強い。グルーヴを中心に据えた構成で、ラテン・パーカッション、ファンクのベースライン、ソウル寄りのコーラスやホーンが層になっていく印象がある。派手さだけで押すというより、バンド全体の推進力で聴かせる作り。
まとめ
『Beast From The East』は、Mandrillのラテン・ファンクとしての性格が見えやすい1975年の一作。ファンクの硬さ、ソウルの滑らかさ、ディスコ期の整理されたノリが同居する、70年代中盤らしい手触りの作品として整理できる。
Commodity Fetish – The Through Line / Iron Hop (1986)
Commodity Fetish「The Through Line / Iron Hop」について
Commodity Fetishによる「The Through Line / Iron Hop」は、1986年にUSでリリースされたElectronic作品。EBMの文脈に置くと、打ち込みの反復と硬質なビートを軸にした、当時らしい空気を持つレコードとして見えてくる。アーティスト情報は多くないが、作品単体では、1980年代半ばの電子音楽の持つ機械的な推進力が前面に出た内容として受け取れる。
サウンドの印象
EBMらしく、リズムの輪郭がはっきりした作りが想像されるタイトル。ドラムマシンの直進的な拍、シーケンスの繰り返し、金属的な質感の音色が軸になっているタイプの作品として語られやすい。録音の雰囲気も、華やかさよりは乾いた質感、近い距離で鳴るような硬さが印象に残る方向だろう。
「The Through Line」と「Iron Hop」という2つの曲名も、動きのあるライン感と、跳ねるようなリズム感をそれぞれ連想させる。タイトルの並びだけでも、メロディ主体というより、ビートと構造で押していく性格がうかがえる。
1986年という時代感
1986年は、インダストリアルやダンス寄りの電子音楽が少しずつ整理され、EBMの輪郭がより見えやすくなっていった時期。US発の作品として見ると、欧州のシーンで発展していたEBMの感触を受けつつ、当時の電子音楽のローカルな解釈が反映されている可能性がある。ジャンルの流れの中では、シンセ、反復、ストイックなグルーヴが重要になる時代の一枚。
作品の位置づけ
アーティストのプロフィールや関連情報が限られているため、ディスコグラフィーの中での位置づけを細かく追うのは難しい。ただ、1986年のUSリリースとして残っている点は、当時のElectronic/EBMの広がりを示す記録として見やすい。作品名とジャンルだけでも、80年代中盤の硬質な電子音楽の空気を切り取った一枚として整理できる。
Visitors – Visitors (1981)
Visitors『Visitors』(1981)
フランス系のプロジェクトとして知られる Visitors の1981年作。Space Rock と Disco を軸にした、電子音とロックの要素が交差する一枚だ。アーティスト名義は Visitors だが、アメリカでは法的事情から Force 5 の名も使われていた。
作品の輪郭
この時期の Visitors は、いわゆる宇宙的なテーマを前面に出したグループとして位置づけられている。プログレッシブ・ロック寄りの流れを持つ時期もありつつ、1981年のこの作品ではコズミックなディスコ感が強い印象。プロデュースには JPM と Claude Lemoine が関わっており、同時代のディスコ/スペース系サウンドの文脈に置きやすい内容だ。
サウンドの特徴
リズムは比較的はっきりしていて、4つ打ちに近い推進力が感じられる場面がある。そこにシンセサイザー、オルガン、モーグ、エレクトリック・ピアノ、さらにギターやベースが重なり、ロックの手触りを残しながらも電子音が前に出る構成だ。録音の質感は、きらきらしたシンセの層と、やや硬質なビートが目立つタイプ。ディスコの明快さと、スペースロックらしい浮遊感が同居している。
メンバー
- Donald Rieubon
- Jean-Pierre Massiera
- Bernard Lignac
- Gérard Brent
- André Guiglion
- Bernard Baverey
- Willy Cat
位置づけ
Visitors という名義は複数の時期に使われており、この1981年作はその中でもコズミック・ディスコ寄りの再編成にあたる。グループの流れを見ても、プログレ的な宇宙感からダンス寄りの電子音楽へと寄せた時期として見ることができる。フランスの電子ロック/ディスコの周辺で起きていた変化を、そのまま反映したような作品だ。