Grace Jones – Fame (1978)
アンディ・ウォーホルやヘルムート・ニュートンらのミューズとしてパリやニューヨークのモード界を席巻し、のちにはスライ&ロビーらと共にコンパス・ポイント・スタジオでニューウェイヴ/ダブの歴史的傑作群を放つことになる不世出のアイコン、グレース・ジョーンズ(Grace Jones)。彼女が「ディスコ・ディーヴァ」としてスタジオ54のフロアを完全掌握していた初期アイランド時代、名プロデューサーのトム・モールトン(Tom Moulton)とタッグを組んだ三部作の第2弾として1978年に放たれたのが本作『Fame』である。
トム・モールトンとシグマ・サウンド:フィリー・ディスコの最高峰プロダクション
12インチ・シングルやディスコ・リミックスの発明者として名高いトム・モールトンが指揮を執り、フィラデルフィアの聖地シグマ・サウンド・スタジオにて録音された本作。バッキングを務めるのは、MFSBの中核を成す名プレイヤーたちと、華麗なコーラスを添える「スウィートハーツ・オブ・シグマ(Sweethearts of Sigma)」だ。
ジョン・デイヴィスによる重厚かつ流麗なストリングスとブラス・アレンジメント、そしてタイトに刻まれるハイハットと躍動するベースライン。フィリー・ソウルの芳醇なオーケストレーションと、グレース・ジョーンズの中性的で冷ややかなアルト・ヴォイスが織りなすコントラストは、当時のユーロ・ディスコやニューヨーク・アンダーグラウンドの退廃的な空気を鮮やかに結晶化させている。
A面を貫く18分ノンストップ・メドレーから、シャンソン名曲「枯葉」へ
本作の最大のハイライトは、アナログ盤A面全体を使って繰り広げられる「Do Or Die」「Pride」「Fame」のノンストップ・ディスコ・メドレーだ。ダンスフロアの熱狂を途切れることなく持続させる計算され尽くしたビートの移行と、グレースが放つ女王然とした傲慢なまでのヴォーカル・デリヴァリーは圧巻で、全米ダンス・チャート第3位を記録する大ヒットとなった。
一方、B面冒頭を飾るのは、前作での「ばら色の人生(La Vie en Rose)」の成功を継承したシャンソンの永遠の古典「枯葉(Autumn Leaves / Les Feuilles Mortes)」のディスコ・カヴァーだ。フランス語と英語を巧みに操り、ボサノヴァ風の繊細なリズムと哀愁のストリングスに乗せて歌い上げる彼女の歌唱は、単なるフロア向けトラックの枠を超えた気品と哀愁に満ちている。
後年のダブ/ポストパンク期への進化を予見させる美学の萌芽
80年代の鋭利なアンドロジナス的イメージへと変貌を遂げる直前、ディスコ・カルチャーが最もゴージャスで享楽的だった一瞬を捉えた記念碑的アルバム。華麗なストリングスとタフなグルーヴが交錯するアナログ盤のサウンドは、ニューヨーク・クラブ・カルチャーの黄金期を追体験する上で絶対に外せない一枚である。
トラックリスト
- A1 - Do Or Die (6:35)
- A2 - Pride (6:33)
- A3 - Fame (5:37)
- B1 - Autumn Leaves (7:00)
- B2 - All On A Summers Night (4:16)
- B3 - Am I Ever Gonna Fall In Love In NYC (5:26)
- B4 - Comme Un Oiseau Qui S'Envole (4:42)