The Zombies – Odessey And Oracle (1968)
ザ・ビートルズの『サージェント・ペパーズ』、ザ・ビーチ・ボーイズの『ペット・サウンズ』と並び、60年代ポップ・ミュージックが到達した最高の芸術的極致として永遠に讃えられる奇跡のレコード――それがザ・ゾンビーズ(The Zombies)が1968年に遺した不朽のマスターピース『オデッセイ・アンド・オラクル(Odessey And Oracle)』である。本作は1997年に英Big Beat Recordsがオリジナル・アナログ・マスターからラッカー盤を直カッティングして制作した名高い30周年記念重量盤だ。
アビイ・ロード・スタジオの魔法と、レノンが遺したメロトロン
1967年夏、ビートルズが『サージェント・ペパーズ』の歴史的セッションを終えた直後のアビイ・ロード・スタジオに足を踏み入れたゾンビーズ。限られた予算と時間の中で、ロドニー・アージェント(Rod Argent)とクリス・ホワイト(Chris White)を中心とするバンドは、スタジオの片隅に残されていたジョン・レノンのメロトロンを惜しげもなく駆使し、フル・オーケストラを雇う資金の不足を逆手に取った幻想的な室内楽ポップ・サウンドを創り上げた。
コリン・ブランストーン(Colin Blunstone)の息を呑むほど甘美でシルキーなウィスパー・ヴォイス、緻密極まりないバロック風の多重コーラス、そしてロドニーのクラシカルなピアノとオルガン。サイケデリック全盛期にあって、過剰なドラッグ・エフェクトに頼ることなく、純粋な音楽的気品と高度なソングライティングで描き出された世界は、半世紀を経た今も一切の色褪せを見せない。
「Care Of Cell 44」の幕開けから、不朽の名曲「This Will Be Our Year」へ
服役中の恋人を待ちわびるという奇抜なテーマを胸躍る陽光のメロディで包み込んだオープニング「Care Of Cell 44」から、フォークナーの短編小説に着想を得た哀切のピアノ・バラード「A Rose For Emily」、夕暮れの美しさを真空パックした「Beechwood Park」に至るまで、A面の流れは完璧の一言に尽きる。
B面でも、ホーンとピアノが至福の多幸感を運ぶポップス史上の至宝「This Will Be Our Year」や、第一次世界大戦の悲劇を痛烈に描いた反戦歌「Butcher’s Tale (Western Front 1914)」など、陰影に富んだ楽曲が並ぶ。デザイナーによるスペルミス(OdysseyがOdesseyになった)をそのまま冠したジャケットのアートワークに至るまで、すべてが時代の必然として愛され続けている。
アル・クーパーの情熱が救い上げた、永遠のアンセム「ふたりのシーズン」
リリース当初はセールスに恵まれずバンドは解散の憂き目に遭ったものの、このアルバムの真価を確信したアル・クーパー(Al Kooper)が米コロムビアの首脳陣を説得して全米発売を実現。ラストを飾るシングル「Time Of The Season(ふたりのシーズン)」は全米第3位のミリオンセラーを記録し、バンドの死後にその名声を決定づけるというドラマティックな結末を迎えた。ロックとクラシック、ポップスが最も幸福に交差した瞬間を刻んだ、人類の至宝と呼ぶべき一枚である。
トラックリスト
- A1 - Care Of Cell 44
- A2 - A Rose For Emily
- A3 - Maybe After He's Gone
- A4 - Beechwood Park
- A5 - Brief Candles
- A6 - Hung Up On A Dream
- B1 - Changes
- B2 - I Want Her She Wants Me
- B3 - This Will Be Our Year
- B4 - Butcher's Tale (Western Front 1914)
- B5 - Friends Of Mine
- B6 - Time Of The Season