Ovrfwrd – Starstuff (2020)
2010年代以降のアメリカン・プログレッシヴ・ロック界において、ヴォーカルを排したインストゥルメンタル編成のみで圧倒的なテンションと劇的な音響空間を構築し続けているミネアポリスの実力派カルテット、オーヴァーフワード(OVRFWRD)。2012年の結成以来、不動の4人体制で鍛え上げてきた彼らが、2020年に放った通算4作目のスタジオ・アルバム『Starstuff』は、70年代ヘヴィ・プログの骨太なダイナミズムと、現代スペース・ロックのシネマティックな哀愁が至高の純度で結晶化した傑作である。
ジョン・ロード直系のオルガンと、揺ぎなきカルテットの強靭なアンサンブル
マーク・イラウグ(ギター)、クリス・マルムグレン(キーボード)、カイル・ランド(ベース)、リチャード・ダヴェンポート(ドラムス)という4人の結束は、長年のセッションが生んだ強固なテレパシーを感じさせる。オープニングを飾る「Firelight」が炸裂した瞬間、ディープ・パープルのジョン・ロードを想起させる獰猛なハモンド・オルガンと、レッド・ツェッペリンのジョン・ポール・ジョーンズ直系の重厚なグルーヴが聴き手を圧倒する。
リキッド・テンション・エクスペリメントにも通じるテクニカルなインタープレイを誇りながらも、無闇な速弾きや誇示に陥ることなく、アンサンブルの重厚なうねりとダイナミクスを最優先させた楽曲構成が際立つ。アナログ盤の収録時間に最適化された全7曲・約39分というタイトな尺の中に、一切の贅肉を削ぎ落とした濃密なロック・スピリットが凝縮されている。
フルートの導入と、北欧シンフォニックを思わせる「Starstuff」の星辰
本作の大きな魅力は、ヘヴィ・ロックの剛腕さの裏に潜む繊細な詩情だ。「Let It Burn (King George)」ではゲスト奏者によるフルートとコンガが導入され、土着的なフォーク・テイストとサイケデリアの彩りがアンサンブルに豊かな深みをもたらしている。
そして白眉となるのが、アルバムの核を成す表題曲「Starstuff」だ。スウェーデンのランドベルク(Landberk)やアングラガルドを彷彿とさせるメランコリックなメロトロンの響きと、未知の惑星へ緩やかに降下していく探査機のようなコズミックな空間美。続く8分超の大作「Lookup」やジャジーな小品「Daybreak」に至るまで、光と影のコントラストがドラマティックに展開する。
現代アメリカン・プログの職人芸が鳴り響く、重量盤ヴァイナルの深み
スタジオ・ワークの隅々まで行き届いたオーガニックな音作りと、生楽器の鳴りを生かしたクリアなマスタリング。ハード・ロックの肉体性とプログレッシヴ・ロックの構築美、そして宇宙への憧憬が美しく調和した本作は、現代インストゥルメンタル・ロックの豊穣な可能性を証明する必聴のレコードである。
トラックリスト
- A1 - Firelight (5:37)
- A2 - Let It Burn (King George) (5:58)
- A3 - Starstuff (5:09)
- B1 - Lookup (8:21)
- B2 - Daybreak (2:48)
- B3 - Zathras (4:35)
- B4 - From Parts Unknown (6:25)