Paul Winter – Icarus (1972)
Paul Winter「Icarus」について
Paul Winterの「Icarus」は、1972年に発表された作品で、Paul Winter Consortの代表作として知られているアルバム。ジャズを軸にしながら、フォークやワールド・ミュージックの要素を取り込み、当時のコンテンポラリー・ジャズの流れの中でも独自の位置を占める1枚になっている。
作品の輪郭
Paul Winterは、アルト/ソプラノ・サックスを中心に活動してきたアメリカのサックス奏者。ブラジル音楽やフォークとの接点を早くから持ち、Paul Winter Consortでもその方向性を深めていった。「Icarus」は、その歩みの中でも特によく知られた作品で、George Martinがプロデュースを担当している点も印象的。
編成の細部や演奏者の顔ぶれはここでは触れずにおくが、楽曲はアコースティックな質感を土台に、管楽器のフレーズとアンサンブルが重なっていく構成。リズムは強く前に出すぎず、流れを保ちながら進む場面が多い。ジャズの即興性と、フォーク寄りの素朴さが同居する聴こえ方。
サウンドの特徴
- 管楽器を中心にした明瞭な音の輪郭
- 打楽器やアンサンブルが作る、急がないリズム感
- フォーク寄りの親密さと、ジャズの展開性が並ぶ質感
- 過度に装飾しない、整理された録音の印象
Paul Winterにおける位置づけ
Paul Winterは1960年代から、ボサノヴァやフォークをジャズに接続する活動で注目されてきた人物。「Icarus」は、その流れを受けている作品であり、後年のLiving Music期へつながる前段階としても見ておける。Paul Winter Consortの名を広く印象づけたアルバムのひとつ、という位置づけ。
同時代とのつながり
1970年代初頭のコンテンポラリー・ジャズには、ロックやフォーク、各地の民族音楽を取り込む動きが広がっていた。「Icarus」もその文脈の中に置ける作品で、ジャズの硬質な緊張感よりも、アンサンブルの流れや音色の組み合わせに耳が向きやすいタイプ。ブラジル音楽やフォークとの接点を持つPaul Winterらしさが、ここでもはっきりしている。
ひとこと
1972年のオリジナル作としての「Icarus」は、Paul Winterの活動史の中でもよく参照される1枚。1984年盤はその後のリリースとして存在しており、作品そのものは1970年代初頭の空気を伝える内容になっている。
トラックリスト
- A1 Icarus (3:02)
- A2 Ode To A Fillmore Dressing Room (5:30)
- A3 The Silence Of A Candle (3:22)
- A4 Sunwheel (4:52)
- A5 Juniper Bear (3:10)
- B1 Whole Earth Chant (7:42)
- B2 All The Mornings Bring (3:48)
- B3 Chehalis And Other Voices (5:26)
- B4 Minuit (3:06)
関連動画
Bill Bruford’s Earthworks – Earthworks (1987)
Bill Bruford’s Earthworks「Earthworks」について
Bill Bruford’s Earthworks名義による「Earthworks」は、1987年にUKで登場したジャズ作品。アーティスト名そのものを冠したタイトルで、バンドの初期像をそのまま示すような位置づけの1枚になっている。Bill Brufordはドラマーとして知られ、このプロジェクトでもリズムの組み立てが作品全体の軸になっている印象がある。
作品の輪郭
ジャンルはJazz、スタイルはFusionとContemporary Jazz。演奏の重心は、いわゆるロック寄りの推進力よりも、細かいリズムの運びやアンサンブルの絡みに置かれているように見える。ドラムが前に出すぎず、各楽器の動きが噛み合う構成。録音も、各パートの輪郭を追いやすいタイプの仕上がりとして受け取れる。
メンバーにはBill Brufordのほか、Mick Hutton、Iain Ballamy、Tim Harries、Tim Garland、Django Bates、Patrick Clahar、Mark Hodgson、Steve Hamiltonといった名前が並ぶ。時期によって編成の変化があるバンドなので、個々の奏者の個性が作品ごとに表れやすいグループでもある。
Bill Brufordにとっての位置づけ
Earthworksは、1986年に結成された英国のジャズ・バンドで、2009年まで活動した。Bill Brufordのキャリアの中では、プログレッシブ・ロックの文脈で知られる活動とは別に、ジャズの側面を前面に出したプロジェクトとして見られることが多い。1987年作のこのアルバムは、その出発点にあたる作品として扱える。
同時代の文脈
1980年代後半の英国ジャズは、フュージョンの要素とコンテンポラリー・ジャズの感覚が重なる場面が多く、この作品もその流れの中に置けそうだ。複雑な拍子感やアンサンブル重視の作りは、同時代のジャズ・ロックや英国系の実験性とも近い印象につながる。
まとめ
「Earthworks」は、Bill Brufordのドラマーとしての視点が前に出た、1987年の英国ジャズ作品。リズムの組み立て、楽器同士の応答、ジャンルの境目をまたぐ編成感、そのあたりが見どころになっている。
トラックリスト
- A1 Thud (4:10)
- A2 Making A Song And Dance (5:52)
- A3 Up North (5:19)
- A4 Pressure (7:25)
- B1 My Heart Declares A Holiday (4:35)
- B2 Emotional Shirt (4:45)
- B3 It Needn’t End In Tears (5:04)
- B4 The Shepherd Is Eternal (1:50)
- B5 Bridge Of Inhibition (4:15)
関連動画
Zoltán Boros – Pași Spre Infinit (1988)

Zoltán Boros『Pași Spre Infinit』について
『Pași Spre Infinit』は、ルーマニアの作曲家、ピアニスト、指揮者として知られるZoltán Borosによる1988年作のジャズ作品である。ジャンルはJazz、スタイルはContemporary Jazzに分類されている。ルーマニア制作の一枚として、当時の東欧圏のジャズの流れも感じさせるタイトルだ。
作品の印象
ピアノを軸にした構成が想像しやすい作品で、コンテンポラリー・ジャズらしく、リズムの運びやアンサンブルの組み方に現代的な感覚がにじむ内容と見られる。録音の空気感も、1980年代後半の作品らしい、スタジオの輪郭が見えやすいタイプの質感を持っていそうだ。
タイトルの「Pași Spre Infinit」は、直訳すると「無限への歩み」といった意味合いになる。作品全体にも、そうした進行感や展開の積み重ねを意識したつくりが感じられる。
アーティストの背景
Zoltán Borosはトランシルヴァニアを拠点に活動したハンガリー系の音楽家で、作曲、ピアノ、指揮、放送音楽の分野まで幅広く関わってきた人物である。ジャズ・バンドの活動、劇場オーケストラの指揮、テレビ音楽部門での仕事など、演奏と編曲、制作の両面にまたがる経歴がある。
また、Anca Parghel、Mihaela Runceanu、Aura Urziceanuといった著名な歌手たちの楽曲も手がけており、ジャズの枠内にとどまらない音楽家としての姿がうかがえる。
1980年代ルーマニアのジャズ文脈
1988年という時期のルーマニア作品として見ると、同時代のジャズが持っていた編曲重視の流れや、旋律と構成を丁寧に組み立てる感覚と重なる部分がある。派手な即興性だけで押すというより、楽曲全体の設計に重きを置くタイプの作品として捉えられるだろう。
まとめ
『Pași Spre Infinit』は、Zoltán Borosの作曲家・ピアニストとしての持ち味が表れた1988年のコンテンポラリー・ジャズ作品である。東欧圏のジャズ史の中でも、音楽監督や放送音楽の仕事を経験してきた人物ならではの、構成感のある一枚として位置づけられそうだ。
トラックリスト
- A1 Pași Spre Infinit (Partea I) = Steps To The Infinite (Part I)
- A2 Pași Spre Infinit (Partea A II-a) = Steps To The Infinite (Part II)
- B3 Pași Spre Infinit (Partea A III-a) = Steps To The Infinite (Part III)
- B4 Un Gînd = A Thought
- B5 Toamna În Orașul Meu = The Fall In My Town