Roger Eno – Voices (1985)

Roger Eno『Voices』について
Roger Enoの『Voices』は、1985年に発表された作品。電子音楽とアンビエントの流れに位置づく一枚で、作曲家・マルチインストゥルメンタリストとしてのRoger Enoの持ち味が、比較的はっきり見えやすい時期の作品として捉えられる。
Roger Enoは、兄Brian Enoとの関わりや、Michael Brook、Daniel Lanoisとの共同作業でも知られる人物。映画やテレビ向けのスコアでも活動していて、クラシカルなピアノへの関心がソロ作品に反映されている。そうした背景を踏まえると、『Voices』も単なる電子音響の作品というより、室内楽的な感覚とアンビエントの手触りが重なる位置にある一枚と見てよさそうだ。
サウンドの印象
この作品では、はっきりしたビートで引っぱるタイプの展開よりも、音の重なりや余白を意識したつくりが目立つ。リズムは前面に出すぎず、音は硬質すぎない方向に寄っている印象。録音全体にも、音の輪郭を急がずに置いていくような雰囲気がある。
アンビエントというジャンルの中でも、シンセの持続音だけでまとめるのではなく、ピアノや室内楽的な響きの感覚が入り込むのがRoger Enoらしいところ。1980年代半ばのアンビエント周辺の作品群と並べると、電子音楽の文脈にありながら、より演奏の気配が残るタイプの作品として見えてくる。
Roger Enoの作品の中で
Roger Enoのソロ活動は、兄Brian Enoとの周辺だけでは収まりきらない独自性があるが、『Voices』もその流れの中で、作曲家としての輪郭を確認しやすいタイトルのひとつ。後年のソロ作へつながる、初期の重要な足場として聴かれてきた一枚といえる。
同時代の文脈
1985年という年は、アンビエントや電子音響が、実験音楽の領域だけでなく、より広いリスニングの場に広がっていった時期でもある。Roger Enoの『Voices』も、その流れの中で、音の密度を抑えながら、静かな構成と響きの変化を中心に組み立てた作品として位置づけられる。
トラックリスト
- A1 Through The Blue (4:19)
- A2 A Paler Sky (3:21)
- A3 Evening Tango (3:08)
- A4 Recalling Winter (3:23)
- A5 Voices (2:20)
- A6 The Old Dance (3:57)
- B1 Reflections On I.K.B. (3:42)
- B2 A Place In The Wilderness (3:43)
- B3 The Day After (3:45)
- B4 At The Water’s Edge (2:40)
- B5 Grey Promenade (4:30)