Hako Yamasaki – 藍色の詩 (1977)
山崎ハコが1977年3月に発表したサード・アルバム『藍色の詩(うた)』。デビューから所属していたエレックレコードの倒産を経て、キャニオン・レコード(現・ポニーキャニオン)へ移籍してリリースされた第一弾にあたる一枚だ。小柄な身体から放たれる凄まじい声量と、人間の心の奥底にある孤独や哀歓を容赦なく抉り出す歌詞世界。初期の代表作としていまなお強烈な光を放っている。
移籍と深化――少女のあどけなさから真の表現者へ
1975年のデビュー作『飛・び・ま・す』、続く名盤『綱渡り』で一躍脚光を浴びた山崎ハコ。TBSラジオ『パックインミュージック』などを通じて深夜放送のリスナーたちを虜にし、同時期に頭角を現していた中島みゆきらとともに、70年代後半の日本のフォークシーンで異彩を放つ存在となっていた。レーベル倒産という激動のなかで制作された本作は、初期2作に見られた少女特有の脆さや危うさを残しながらも、一人の自立した表現者としての凄みと情念が一段と深まっている。
アンプラグドな緊張感と一流ミュージシャンが織りなす音像
サウンド面を支えるのは、吉川忠英や笛吹利明といった当代屈指のアコースティック・ギターの名手たち。過度な装飾を排し、アコースティック楽器の生々しい響きと抑制の効いたリズムセクションが、歌声の輪郭をくっきりと浮き彫りにする。張り詰めた空気のなか、指先が弦を擦る音までもが楽曲のドラマとして機能しているかのようだ。
アルバム前半のハイライトとなる「にぎりこぶし」では、言葉の一つひとつが聴き手の胸に突き刺さるような切迫感を帯びている。一方で、タイトル曲「藍色の詩」の冷たくも静謐な叙情美や、「花枕」「二つに一つ」における情景描写の巧みさ、さらには乾いたグルーヴが漂う「ジプシーローズ」など、フォークの枠組みに留まらない陰影に富んだアレンジが光る。
時代を超えて響くアシッド・フォークの先駆的響き
70年代の日本のフォーク/ニューミュージックという文脈はもちろん、近年では国内外のサイケデリックやアシッド・フォークのリスナーの間でも再評価が進む初期の山崎ハコ。湿り気を帯びた情念と、凛とした気品が同居するそのボーカルは、何十年という年月を経ても色褪せない存在感を放ち続けている。
トラックリスト
- A1 - あの海に
- A2 - にぎりこぶし
- A3 - 幻列車
- A4 - 持って行きます
- A5 - 桜の日
- B1 - 藍色の詩
- B2 - 二つに一つ
- B3 - 花枕
- B4 - ジプシーローズ
- B5 - 水割り