Algy Lord Gray – Bertie (1970)
Algy Lord Gray『Bertie』について
Algy Lord Grayの『Bertie』は、オリジナルは1970年の作品として扱われる1枚で、2021年にUKで再発盤が出ている。ジャンル表記はRock / Pop、スタイルはPsychedelic Rock、Pop Rock、Art Rock。アーティストの説明文からも、ただのソロ作品というより、当時の英国ロックの周縁で生まれた、かなり個性的な録音物として位置づけられている。
この作品の背景には、Algyと仲間たちがウェールズに移り、Plas Llechaという放棄された邸宅で録音を進めたという経緯がある。素朴な環境の中で制作が行われ、手作りで個別のカバーを持つ盤として出回ったことも、この作品の特徴として語られている。John Peelに1枚送られ、返事が来て、その後にPeel Sessionの機会につながった、というエピソードも残っている。
作品の位置づけ
『Bertie』は、Algy Lord Grayの活動の中でも、後のThe Great Crashへつながる流れの出発点として語られている。プロフィールでは、この盤に見られる感覚が「英国の風変わりな伝統」に連なるものとして説明されており、James Joyce、The Goons、Hawkwind、Monty Pythonといった名前が並ぶ。つまり、単なるポップ作品というより、ユーモアと実験性、英国的な遊び心が同居した作品として扱われている。
その後のThe Great Crashでは、1971年から1974年にかけて、ピアノ中心のメロディックなArt Rockを30曲ほど録音したとされている。『Bertie』は、その前段階にあたる作品として、より自由で、より手作り感の強い出発点と見てよさそうだ。
音の方向性
ロックとポップを軸にしつつ、サイケデリックな感触とアート志向が混ざった内容がうかがえる。派手なスタジオ・プロダクションよりも、場所そのものの空気や演奏の癖が前に出るタイプの記録として受け取れる。
比較の手がかりとしては、同時代の英国ロックの中でも、整ったポップスよりは、少し外側にある感覚が近い。後年のThe Great CrashがElton John初期、10cc、Deja Vu的な要素に触れられているのに対し、『Bertie』はその前の段階として、もう少し荒削りで、発想先行の雰囲気が強い作品と見られる。
2021年盤について
2021年のUK盤は、オリジナル作品の再発にあたる。手作りで少量流通したとされる初出盤の性格を踏まえると、再発盤はこの作品に触れる入口としての役割が大きい。オリジナル盤は入手性がかなり限られるはずで、2021年盤はその歴史的な位置をあらためて示す形のリリースになっている。
関連エピソード
- ウェールズのPlas Llechaという廃屋のような邸宅で録音されたこと
- 盤が手作りで、1枚ごとに異なるカバーが付けられたこと
- John Peelに送られ、返事が来て、Peel Sessionにつながったこと
- 後年、同じ場所がOasisやThe Verveの録音でも知られるようになったこと
まとめ
『Bertie』は、1970年という時代の英国ロックの中で、かなり個人的な環境から生まれた作品として見るのが自然だ。ロック、ポップ、サイケデリック、アート志向が入り混じる一方で、手作り盤、ウェールズでの共同生活、John Peelとの接点など、音以外の履歴も強い。Algy Lord Grayという名前を追ううえでの起点であり、The Great Crashへと続く流れの前史としても重要な1枚だ。
トラックリスト
- A1 – Would You Like A Brown Ale?
- A2 – Giraffe Song
- A3 – Get Involved With Your Work
- A4 – Post Orgasm Confessions
- A5 – Do You Know Where I Can Score?
- B1 – Bloated Fridge Road
- B2 – Dragonfly Wings
- B3 – Biafra
- B4 – Bertie, Where Are Your Trousers?
- B5 – The Nice Game
- B6 – Can’t Escape Your Fate
関連動画
- Algy Lord Gray – Bertie (1970) (2021 Seelie Court CD Reissue)
- Algy Lord Gray – Would You Like A Brown Ale?
- Algy Lord Gray – Giraffe Song
- Algy Lord Gray – Get Involved With Your Work
- Algy Lord Gray – Post Orgasm Confessions
- Algy Lord Gray – Do You Know Where I Can Score?
- Algy Lord Gray – Bloated Fridge Road
- Algy Lord Gray – Dragonfly Wings
- Algy Lord Gray – Biafra
- Algy Lord Gray – Bertie, Where Are Your Trousers?
Camel – Nude (1981)
Camel『Nude』について
Camelの『Nude』は、1981年に発表された8作目のスタジオ・アルバムで、同年のプログレッシブ・ロックの流れの中でも、物語性を強く意識した作品として知られている。Camelは1971年結成のイングリッシュ・プログレッシブ・ロック・バンドで、初期からギターとフルートを担うAndrew Latimerを軸に、緻密なアンサンブルとメロディの明確さを持つ作風を築いてきた。
この作品は、実在の日本兵として戦後も長くジャングルに残った横井庄一のエピソードを下敷きにしたコンセプト作として語られることが多い。孤立、帰還、記憶といった要素を、曲ごとの流れでたどる構成になっている点が大きい。
作品の位置づけ
Camelは1970年代前半にデビューし、『The Snow Goose』で代表的な評価を得たバンドだが、『Nude』はその後の流れにある一枚として、よりストーリー性のある組み立てが目立つ作品。1970年代後半のメンバー変動を経たのちのアルバムで、演奏面ではLatimerを中心に、Richard Sinclair、Mel Collins、Kit Watkins、Jan Schelhaas、Colin Bassらが参加している。バンドの持つ叙情性と、曲の展開を重視する姿勢が、そのままアルバム全体に出ている印象だ。
Camelの中では、派手なヒット曲で押すタイプの作品というより、アルバム全体の流れで聴かれる性格が強い。代表曲としては、序盤の「City Life」や、組曲的に展開する後半の流れが挙げられることが多い。
曲の流れと聴きどころ
『Nude』は短い曲をつないで物語を進める構成で、各曲が場面転換のように機能している。冒頭から、静かな導入とバンドらしいリフ、キーボードのレイヤーが順に重なっていく。派手に押し切るというより、場面ごとの温度を変えながら進む作りだ。
実際に聴くと、Latimerのギターは音数を詰め込みすぎず、旋律を前に出す場面が多い。Mel Collinsのサックスやフルートも、単なる色付けではなく、場面の輪郭をはっきりさせる役割を持っている。Camelらしい歌心は保ちながら、作品全体ではやや硬質な緊張感もある。
後半に向かうにつれて、断片的だった要素がまとまり、物語の終着点へ向かう流れになる。組曲的な進行が好きな人には、曲間のつながりそのものが聴きどころになりやすいアルバムだ。
同時代の文脈
1981年という時期のプログレは、70年代前半の大作志向とは少し違う形で残っていた。Camelもその中で、GenesisやYesのような大きな成功路線とは別に、演奏の丁寧さとコンセプトの明確さを軸に作品を積み重ねている。『Nude』は、その中でもストーリーを前面に出した一枚として位置づけやすい。
同系統の英国プログレを聴く人なら、叙情面ではGenesis、曲のまとまりではPink Floyd、アンサンブルの細やかさではYesやCaravan周辺を連想するかもしれない。ただしCamelは、そうした比較の中でも、ギターを中心にした旋律の運びと、過度に技巧を見せつけない進め方が特徴になっている。
1982年盤について
今回の盤は日本盤で、盤としてのリリースは1982年。作品そのものは1981年のオリジナル作として扱われる。日本盤では、輸入盤を追いかけて入手した人にとって、国内で手に取りやすい形になった一枚だったはずだ。内容はオリジナル作に基づくため、作品の骨格は1981年盤と同じとみてよい。
まとめ
『Nude』は、Camelの持つメロディ重視のプログレ感と、コンセプト・アルバムとしてのまとまりがはっきり出た作品だ。単曲での派手さより、アルバム全体で一つの物語を追う作り。Camelのディスコグラフィの中では、バンドの叙情性と構成力がよく見える位置にある一枚といえそうだ。
トラックリスト
- A1 – City Life
- A2 – Nude
- A3 – Drafted
- A4 – Docks
- A5 – Beached
- A6 – Landscapes
- B1 – Changing Places
- B2 – Pomp & Circumstance
- B3 – Please Come Home
- B4 – Reflections
- B5 – Captured
- B6 – The Homecoming
- B7 – Lies
- B8 – The Last Farewell: The Birthday Cake / Nude’s Return
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Ozric Tentacles – The Hidden Step (2000)
Ozric Tentacles『The Hidden Step』について
Ozric Tentaclesの『The Hidden Step』は、2000年に発表された作品で、English progressive/space/psychedelic rock bandとして知られる彼らのディスコグラフィーの中でも、2000年代初頭の流れを示す1枚。バンドは1983年にイングランド・サマセットで結成され、Ed Wynneを中心に長く活動を続けてきた。メンバーの入れ替わりが多い一方で、Ed Wynneが一貫して核を担っている点は、この作品を聴くうえでも押さえておきたいところ。
2023年盤として出ているこのレコードは、オリジナルの2000年版からかなり後年の再発盤にあたる。盤面のリリース国はEurope、Made in Germanyの表記あり。オリジナル盤と比べた細かな仕様差については、ここでは確認できる範囲の情報に限れば、基本的には作品そのものは2000年作として扱うのが自然だ。
作品の位置づけ
Ozric Tentaclesは、電子音響的な要素とロックの演奏感を結びつけたサウンドで知られるバンドで、長いキャリアの中で30作以上のアルバムを残している。『The Hidden Step』もその流れの中にある作品で、スペース・ロック、アンビエント、サイケデリックな感触が前面に出る1枚。派手な歌もの中心というより、音の流れや展開を追うタイプのアルバムとして受け取られてきた作品だ。
同時代の文脈でいえば、プログレッシブ・ロック、ジャム感のあるサイケデリック・ロック、シンセやシーケンスを使ったインストゥルメンタル作品の延長線上に置かれることが多い。比較される名前としては、同じく宇宙感や長尺の展開で語られるバンドや、70年代プログレの流れを現代的に引き継ぐグループが挙がりやすい。とはいえ、Ozric Tentaclesはその中でも、より電子的な質感とリズムの反復を前に出す点が特徴的だ。
聴きどころ
この作品は、曲ごとの起伏を細かく追うというより、アルバム全体の流れで聴くと輪郭がつかみやすい。ギター、キーボード、ベース、パーカッションが重なりながら、空間を広げるように進んでいく構成が中心。フルートが入ることで、ロック寄りの演奏に有機的な抜け感が加わる場面もある。
実際に聴くと、音の密度は高いのに、各パートが単純にぶつかり合うだけではなく、細かいフレーズの受け渡しで流れを作っているのがわかる。Ed Wynneのギターとシンセまわりの処理が、楽曲の推進力を支える場面が多い印象。静かなパートからテンポを上げる場面まで、演奏の切り替えが明快で、インストゥルメンタル・ロックとしてのまとまりがある。
収録曲と代表曲について
『The Hidden Step』は、特定のヒット曲を軸にした作品というより、アルバム単位での聴取が前提になりやすいタイプの作品だ。Ozric Tentaclesの代表曲として広く語られる曲がある場合でも、この作品そのものは「この曲だけが有名」というより、アルバム全体のサウンドで覚えられている印象が強い。
そのため、初めて触れる場合も、1曲だけ切り出すより、全体を通して聴くことでバンドの持ち味が見えやすい。スペース・ロックらしい反復、アンビエント寄りの広がり、ギター主体の推進感が、まとまって入ってくる構成だ。
バンドの中での意味
Ozric Tentaclesは、長い活動の中で編成を変えながらも、Ed Wynneを中心に作品を積み重ねてきた。『The Hidden Step』は、その継続性の中で制作された2000年作として、バンドの持つ電子的・実験的な方向性と、ロックバンドとしての演奏力の両方が見えるタイトル。のちの再発盤で手に取る場合でも、当時の流れを知る入口として機能する作品だ。
まとめ
『The Hidden Step』は、Ozric Tentaclesらしい空間処理と演奏の流れが前に出た2000年作。派手な歌ものではなく、音の重なりと展開で聴かせるアルバムで、スペース・ロックやアンビエント寄りのロックが持つ構造を、バンドの手つきでまとめた1枚といえる。
2023年盤は、2000年オリジナルの再発として受け取るのが自然。Made in Germany表記のあるヨーロッパ盤として、作品の現行流通に入っているタイトルだ。
トラックリスト
- A1 – Holohedron
- A2 – The Hidden Step
- A3 – Ashlandi Bol
- A4 – Aramanu
- B1 – Pixel Dream
- B2 – Tight Spin
- B3 – Ta Khut
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Cosmic Cathedral – Deep Water (2025)
Cosmic Cathedral『Deep Water』について
『Deep Water』は、Neal Morse、Chester Thompson、Phil Keaggy、Byron HouseによるCosmic Cathedralのデビュー作で、2025年にInsideOutMusicからリリースされた作品です。クレジット上でも分かる通り、プログレッシブ・ロックの文脈に立ちながら、演奏経験の長い4人が集まったプロジェクトとして位置づけられているアルバムです。
メンバーを見ただけでも、かなり顔ぶれの強い作品です。Neal MorseはTransatlanticなどで知られ、Chester ThompsonはGenesisやFrank Zappaとの活動で広く知られるドラマー。Phil KeaggyはGlass Harpでの活動を持ち、Byron HouseはRobert PlantやDolly Partonらのセッションでも知られるベーシストです。いずれも長いキャリアを持つプレイヤーで、その組み合わせ自体にまず注目が集まる内容です。
制作の背景
この作品は、Neal Morseが中心となって立ち上げたプロジェクトで、ジャム・セッションを土台に制作が進められたと案内されています。長年の音響パートナーであるJerry Guidrozがセッションの良い部分をまとめ、その後にMorseとバンドが楽曲や長尺曲へ発展させたという流れです。
案内文でも、収録曲の一部、特に「Time To Fly」はジャムから直接生まれたものだとされています。即興的にその場で音を出しながら進んだ制作で、歌詞の一部まで自然に出てきたという説明もあり、通常の綿密な作曲中心のアルバムとは少し違う手触りがうかがえます。
音の方向性
Neal Morse自身は、このアルバムを「prog meets yacht rock meets The Beatles」と表現しています。そこにジャズ・フュージョンの要素も加わる、という説明です。実際の案内文でも、Steely Danを思わせるグルーヴ感、Phil KeaggyとMorseの歌声が重なったときのビートルズ的な響き、さらに「New Revelation」セクションではStingのアルバムに入っていそうな流れ、という言及があります。
つまり、『Deep Water』は、プログレッシブ・ロックの大作志向を持ちながら、リズムの運びや歌ものとしての聞きやすさも意識した作品として紹介されています。演奏の密度だけで押し切るのではなく、ジャムの流れ、コーラス、曲の展開が組み合わさったアルバムという印象です。
この作品の位置づけ
Cosmic Cathedralはデビュー作であり、『Deep Water』はプロジェクトの初出作にあたります。Neal Morseにとっては、Transatlanticやソロ作で培ってきたプログレ文脈を、別の編成と制作方法で見せる場として読める内容です。
一方で、Chester Thompsonにとっても、本人のコメントどおり「参加した作品の中でも特に好きなプロジェクト」のひとつとして扱われているようです。GenesisやFrank Zappaの経歴を持つドラマーが、ここではメンバー間のコミュニケーションの良さを強調している点も、この作品の性格を示している部分です。
収録曲・代表曲について
案内文で具体的に触れられているのは「Time To Fly」と「New Revelation」セクションです。「Time To Fly」はジャム・セッションから直接生まれた曲として紹介され、「New Revelation」はジャムから発展した、別の色合いを持つパートとして説明されています。
現時点で、作品の中で特に代表曲として広く定着している曲名は見当たらず、アルバム全体の流れで聴かれるタイプの作品として受け取れます。デビュー作らしく、個別のシングルよりも、参加メンバーの相互作用と曲の展開そのものに重きが置かれている構成です。
クレジットとリリース情報
- アーティスト: Cosmic Cathedral
- タイトル: Deep Water
- リリース年: 2025年
- リリース元: InsideOutMusic
- ジャンル: Rock
- スタイル: Prog Rock
- 参加メンバー: Chester Thompson, Neal Morse, Byron House, Phil Keaggy
著作権表記では、Neal Morse、Phil Keaggy、Byron House、Chester Thompsonそれぞれの出版クレジットが記されています。2025年作品として、プロジェクトの出発点を示す1枚になっているアルバムです。
まとめ
『Deep Water』は、キャリアの長い4人が集まり、ジャムを起点に楽曲を組み立てたCosmic Cathedralのデビュー作です。プログレッシブ・ロックを軸にしながら、グルーヴ、フュージョン、ポップ寄りのメロディ感まで含んだ作品として案内されています。Neal Morse、Chester Thompson、Phil Keaggy、Byron Houseという名前が並ぶだけで成立する企画性と、実際の制作現場の流れが結びついたアルバムと言えます。
トラックリスト
- A1 – The Heart Of Life (13:37)
- B1 – Time To Fly (6:54)
- B2 – I Won’t Make It (3:55)
- B3 – Walking In Daylight (8:56)
- Deep Water Suite (38:10)
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Chuck & Mary Perrin – The Chuck And Mary Perrin Album (1968)
Chuck & Mary Perrin『The Chuck And Mary Perrin Album』について
Chuck & Mary Perrinは、兄妹によるフォーク・デュオ。『The Chuck And Mary Perrin Album』は1968年に録音された作品で、アメリカとヨーロッパのレーベル事情を経て2015年に再発盤が出たレコードだ。アコースティックな演奏を軸にしたフォーク・ロック作品として案内されている。
作品の成り立ち
このアルバムは、1968年12月の金曜日と土曜日に、イリノイ州サウス・パーキンのGolden Voice Sound Studiosでライヴ録音されたものとされている。オリジナルはChuck Perrin自身のレーベル、Webster’s Last Wordから出ていた盤で、2015年盤はその音源を原盤テープからリマスターした再発盤。ライナーノートにあたる情報として、未公開写真を収めたインサートと歌詞が付属し、見開きジャケットも当時の仕様を再現した形になっている。
再発盤のポイント
2015年盤は、Wah Wah Records Supersonic Sounds(EU)とLight In The Attic(USA)による流通で、ライセンス再発という位置づけ。オリジナル盤のゲートフォールド仕様を踏襲しつつ、音源面ではオリジナルテープからのリマスターが売りになっている。コレクション的には、初出時の空気感を残しながら、資料面を補った再発盤という印象だ。
音楽性と聴きどころ
ジャンル表記はRock、Folk、World, & Country、スタイルはFolk Rock、Acoustic。ChuckとMaryの兄妹デュオという編成から、声の重なりやギターの弾き方が曲の中心にある作品として受け取れる。大編成のロックというより、歌と演奏の距離が近いタイプの録音。ライヴ録音であることも含めて、スタジオ作品よりも演奏の呼吸が見えやすい盤だ。
1960年代末のアメリカのフォーク・ロック周辺には、シンガー・ソングライター的な書き方と、伝統曲やアコースティックな手触りを行き来する作品が多い。このアルバムも、その時代の流れの中で聴かれる1枚といえる。兄妹デュオという点では、男女の歌声の対比や、素朴なアンサンブルを持つフォーク・アクトと並べて語られることがありそうだ。
作品の位置づけ
Chuck & Mary Perrinにとっては、兄妹デュオとしての表現を記録したアルバム。オリジナル盤が自前のレーベルから出ていることもあり、活動の実態がそのまま反映された作品として見えやすい。2015年の再発で、その音源と当時の仕様があらためて整理されている形だ。
まとめ
『The Chuck And Mary Perrin Album』は、1968年録音の兄妹フォーク・デュオ作品を、2015年に原盤テープからリマスターして復刻したレコード。見開きジャケットの再現、未公開写真、歌詞付きのインサートなど、当時の資料性も意識した再発盤になっている。アコースティック主体のフォーク・ロックとして、ライヴ録音ならではのまとまりが感じられる一枚。
トラックリスト
- A1 – Commencement (3:27)
- A2 – Violets Of Dawn (2:56)
- A3 – Mornings (3:23)
- A4 – You Knew All Along (3:09)
- A5 – Don’t Know Why I Love You Like I Do (1:55)
- B1 – Song For Canada (4:10)
- B2 – Babe Can You See (2:30)
- B3 – Circus Of Sour (2:40)
- B4 – Younger Generation (2:45)
- B5 – To A Better Life (2:30)
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Birdsongs Of The Mesozoic – Faultline (1989)
Birdsongs Of The Mesozoic『Faultline』(1989)
Birdsongs Of The Mesozoicは、1980年に結成されたUSのバンドで、もともとはMission of BurmaのRoger MillerとMartin Swopeによるサイドプロジェクトとして始まったグループだ。Mission of Burma解散後は本格的な活動体になり、1980年代後半には編成を入れ替えながら活動を続けていく。『Faultline』は1989年にリリースされた作品で、バンドのその時点での到達点を示す一枚として位置づけられる。
作品の輪郭
この作品は、ElectronicとRockを軸にしながら、Alternative Rock、Future Jazz、Prog Rockの要素を含む。Birdsongs Of The Mesozoicらしい、ロックの編成感とアンサンブル主体の組み立てが前面に出るタイプの作品として捉えやすい。
メンバーにはMartin Swope、Ken Field、Steve Adams、Erik Lindgren、Michael Bierylo、Roger Miller、Rick Scottの名前が挙がっている。プロフィール上では、Roger Millerは1987年に脱退し、Ken Fieldが加わり、Martin SwopeもMichael Bieryloに交代しているため、『Faultline』はそうした編成変化の流れの中にある作品でもある。
バンドの文脈
出自をたどると、Birdsongs Of The MesozoicはMission of Burma周辺の流れから生まれたバンドで、パンクやオルタナティヴの系譜に接点を持ちながら、より器楽的で構成の細かい方向へ進んでいったグループとして知られている。こうした背景は、同時代のUSオルタナティヴ・ロックの中でも少し異なる位置づけにつながっている。
同時代の文脈で見ると、単純なバンド・サウンドというより、室内楽的な組み立てや変拍子、音色の切り替えを重視するタイプのロックに近い。比較対象として名前が挙がりやすいのは、実験性の強いロック・バンドや、ジャズ寄りの発想を持つインストゥルメンタル・グループあたりだろう。
聴きどころの見方
実際に聴くと、演奏の重心は歌よりもアンサンブルにある印象になりやすい。リズムの細かな動き、キーボードや管楽器的な音の置き方、曲ごとの構成の組み替えが耳に入りやすいタイプの作品だ。ロックの推進力と、ジャズや現代音楽に接するような整理されたフレーズ感が同居しているところが、このバンドらしい特徴として受け取られやすい。
代表曲や大きなヒット曲については、この作品に関して一般的に広く知られた一曲を前提に語られることはあまり多くない。アルバム全体の流れや曲間の構成を含めて聴かれることが多いタイプの一枚といえる。
まとめ
『Faultline』は、Birdsongs Of The MesozoicがMission of Burmaの延長線上から独立した表現へ進んでいく過程にある1989年作だ。USオルタナティヴの文脈にありながら、電子的な質感、ロックの編成感、ジャズやプログレッシヴ・ロックの構成意識を一枚に収めた作品として見えてくる。
トラックリスト
- A1 – The True Wheelbase (2:59)
- A2 – They Walk Among Us (3:35)
- A3 – Coco Boudakian (5:47)
- A4 – I Don’t Need No Crystal Ball (3:20)
- A5 – Chariots Of Fire (2:46)
- B1 – Faultline (4:41)
- B2 – On The Street Where You Live (4:05)
- B3 – Maybe I Will (6:08)
- B4 – There Is No One (3:44)
- B5 – Slo-Boy (4:26)
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Tim Buckley – The Late Great Tim Buckley – An Anthology (1978)
Tim Buckley『The Late Great Tim Buckley – An Anthology』について
Tim Buckleyは、1960年代後半から70年代前半にかけて活動したアメリカのシンガーソングライターだ。フォークを出発点にしながら、のちには実験的なアレンジや即興性を取り入れた作品へ進み、短い活動期間の中で独自の位置を築いた人物として知られる。1978年にオーストラリアで出た本作『The Late Great Tim Buckley – An Anthology』は、その歩みをまとめた編集盤で、本人の死後に出た初のLPでもある。収録はオーストラリアとニュージーランドに限られていた。
作品の成り立ち
このアンソロジーには、Tim Buckley、Goodbye and Hello、Happy Sad、Greetings from L.A.、Sefronia の5枚のスタジオ・アルバムからの音源が収められている。初期のフォーク寄りの曲から、後年のよりソウル/R&B色のある曲までを横断する内容で、ひとつの時代だけを切り取るというより、キャリア全体の流れを見せる構成になっている。
Tim Buckleyの作品をまとめて聴くと、まず声の存在感が際立つ。高音域の伸びやフレーズの運びが印象に残りやすく、歌そのものが曲の中心にあるタイプだ。本作でも、その個性が異なる時期の録音を通して確認できる。フォーク・ロックの輪郭がはっきりした曲もあれば、演奏の隙間やリズムの揺れが前に出る曲もあり、同じアーティストの編集盤でも単調になりにくい。
Tim Buckleyという位置づけ
Tim Buckleyは、商業的な大ヒットで知られるタイプではないが、作品ごとの振れ幅が大きい。初期はフォーク・シンガーとして出発しながら、Happy Sad、Lorca、Starsailor では実験性や即興性を強めていった。その流れの中で、後年のアルバムではより分かりやすいポップ/R&B志向にも向かっている。本作は、その変化を短く追えるまとめ方になっている。
同時代のフォークやシンガーソングライターの文脈で見ると、Bob DylanやJoni Mitchellのように言葉と曲作りが重視される流れとは共通点がある一方、Tim Buckleyは声と音域の使い方でかなり独自の印象を残す。実験寄りの時期は、ジャズや前衛的なロックの周辺とも接点がある。編集盤としては、その幅を見せる役割が強い。
収録内容から見えるもの
本作はベスト盤というより、複数のアルバムから選んだアンソロジーとしての性格がはっきりしている。代表曲だけを並べる編集ではなく、時期ごとの変化を意識した構成に見える。Tim Buckleyの主要なアルバムを持っていない場合でも、どの時期にどんな方向へ進んだかをつかみやすい内容だ。
収録元に Greetings from L.A. や Sefronia が入っている点も、この編集盤の性格を示している。初期のフォーク色だけでなく、キャリア後半の商業的な方向へ寄せた時期まで含めているので、Tim Buckleyを「実験的な人」とだけ捉えないための入口にもなっている。
リリース時の意味
1975年に28歳で亡くなったTim Buckleyにとって、1978年のこのLPは死後に出た初のアルバムとして位置づけられる。しかも発売地域がオーストラリアとニュージーランドに限られていたため、当時の本国市場での定番編集盤というより、地域限定のアーカイブ的な意味合いが強い。オリジナルのスタジオ作品を補う形で、彼の足跡を後から整理した一枚といえる。
まとめ
『The Late Great Tim Buckley – An Anthology』は、Tim Buckleyの短いキャリアを5枚のスタジオ・アルバムからたどる編集盤だ。フォーク、フォーク・ロック、実験的な要素、後年のより商業的な方向までを一枚に収め、声と曲作りの独自性を確認しやすい内容になっている。Tim Buckleyの全体像をつかむうえで、時期の違いが見えやすいコンピレーションだ。
トラックリスト
- A1 – Aren’t You The Girl
- A2 – Understand Your Man
- A3 – I Never Asked To Be Your Mountain
- A4 – Once I Was
- A5 – Morning Glory
- A6 – Move With Me
- B1 – Strange Feelin’
- B2 – Sweet Surrender
- B3 – Make It Right
- B4 – Dolphins
Felt – Felt (1971)
Felt『Felt』について
Feltは、アメリカ・アラバマ州ハンツビルで結成されたプログレッシブ・ブルース/ジャズ/サイケ・ロック系のバンドで、1971年に唯一のアルバムを残したグループとして知られている。この『Felt』はそのオリジナル作の再発盤で、2000年にイタリアでリリースされた一枚だ。
バンドはMyke Jacksonを中心に1970年に始動し、Myke Jackson、Tommy Gilstrap、Mike Neel、Allan Dalrymple、Stan Leeの編成で作品を残した。プロフィールとしては、ブルースやジャズの要素を土台にしながら、当時のサイケデリック・ロックの流れとも接続するタイプのバンドと見られている。
作品の位置づけ
『Felt』は、Feltにとって1971年の唯一のアルバムという位置づけになる。後年になって再評価が進んだタイプの作品で、2012年には2作目が完成したとされているが、この盤に収められているのはあくまで1971年のオリジナル・アルバムの再発盤だ。
再発盤のクレジットには、Nasco盤の再発であること、レーベル面にComet Recordsのウェブサイトとメールアドレスが記載されていること、さらにジャケットやラベルの表記に「Recorderd at Woodland Sound Studios」という綴りの誤りがあることが記されている。盤としては2000年イタリア盤ならではの情報が入った仕様になっている。
音の特徴
この作品は、ジャンル表記としてはRock、Blues、Folk、World, & Country、スタイルとしてPsychedelic Rockに分類されている。バンドの出自を踏まえると、ブルース寄りのリフやジャズ的な展開、サイケデリックな響きが混ざる構成が中心になっているタイプと受け取れる。
実際の音像としては、ハードに押し切るロックというより、楽曲の流れや演奏の間合いに重心が置かれる作品として語られることが多い。アメリカ南部のバンドらしいルーツ感と、70年代初頭の実験性が同居する一枚という見方がしやすい。
同時代の文脈
1971年前後の南部アメリカでは、ブルースやカントリーの土台に、ロックの拡張表現を重ねるバンドが各地で登場していた。Feltもその流れの中で捉えやすく、同時代のサイケデリック寄りのバンドや、ジャズ感覚を持つロック・アンサンブルと並べて語られることがある。
ただし、派手なヒット曲で知られるタイプではなく、アルバム単位で聴かれる作品として扱われることが多い。代表曲の存在よりも、バンド全体の演奏と曲の流れに特徴がある一枚だ。
再発盤としての見どころ
2000年のイタリア盤は、1971年のNasco盤をもとにした再発で、オリジナル盤を手に入れにくい状況では重要な存在になっている。レーベル情報や表記の違い、バーコードの有無など、再発盤らしい仕様の差も確認できる。
オリジナルの時代感をそのまま残した作品を、後年の再発で聴ける形にした盤として見ると、この『Felt』はバンドの活動初期を知るうえでまとまりのある資料性を持つアルバムだ。
トラックリスト
- A1 – Look At The Sun (3:18)
- A2 – Now She´s Gone (5:29)
- A3 – Weepin´Mama Blues (4:40)
- A4 – World (5:36)
- B1 – The Change (10:00)
- B2 – Destination (6:43)
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Machiavel – New Lines (1980)
Machiavel『New Lines』について
『New Lines』は、ベルギーのプログレッシブ・ロック・バンド、Machiavelが1980年に発表した作品。バンドは1970年代前半に結成され、初期はジェネシス系のクラシカルなロックとブリティッシュ・プログレの要素を土台にしながら、その後はより自分たちの輪郭をはっきりさせていったグループとして知られている。
この時期のMachiavelは、プログレ寄りの構成感を残しつつ、曲の運びをより整理した方向へ進んでいた段階。1980年という年を考えると、70年代的な長尺の組曲感よりも、ポップ・ロック寄りの分かりやすさを備えたプログレ、という位置づけで捉えやすい作品だと思う。
バンドの流れの中での位置
Machiavelは、1976年のデビュー作でクラシック・ロックとブリティッシュ・プログレの要素を示し、その後の『Jester』『Mechanical Moonbeams』で独自色を強めていったとされる。そこから1980年の『New Lines』へつながる流れを見ると、バンドが単に「プログレの延長」をやっていたのではなく、歌ものとしてのまとまりや楽曲単位の強さを意識していった段階にある。
この少し後の時期には、シングル「Fly」が大きなヒットになったことでも知られている。『New Lines』は、その直前にあたる時期の作品として、後のより広い層への接近を予感させる立ち位置にあると言えそうだ。
サウンドの印象
この作品のスタイルは、クレジット上ではPop RockとProg Rock。実際、Machiavelの持ち味であるプログレ的な展開やバンド演奏の密度を保ちながら、曲の入口は比較的すっと入ってくるタイプの作りになっている。派手に技巧を並べるというより、曲の中でリズムやメロディをどう運ぶかに重心がある印象。
当時のヨーロッパ圏のロックの文脈で見ると、英国プログレの影響を引きずりつつも、70年代末から80年代初頭にかけての新しい空気に合わせて、よりコンパクトな楽曲へ寄っていく動きがある。Machiavelもその流れの中にあり、同時代のプログレ・バンドの中では、過度に重厚へ振り切らず、歌とバンドの一体感を前に出すタイプとして聴ける。
代表曲や注目点
『New Lines』単体での大きなヒット曲については、今回の情報からは特定しづらい。ただ、Machiavel全体の代表曲としては「Fly」がよく挙がる。1980年のヒットで、当時のThe Policeを思わせる感触を取り入れた曲として知られている。『New Lines』は、その少し前の作品なので、バンドがこの路線へ向かう前後の空気を感じるうえで重要な一枚になっている。
ラインナップ
クレジットにはRoland De Greef、Mario Guccio、Thierry Plas、Christophe Pons、Albert Letecheur、Marc Ysaye、Hervé Borbé、Jean Jacques Roskam、Jean Paul Devaux、Kevin Coolsの名が並ぶ。Machiavelは時期ごとにメンバー変遷があるバンドだが、Mario Guccioの存在は特に大きく、後年のバンド・イメージを形づくる核のひとつとして語られている。
まとめ
『New Lines』は、Machiavelがプログレ・バンドとしての出自を保ちながら、より歌ものへ接近していく過程にある1980年作。ベルギー産のアートロック/プログレ・バンドという来歴を踏まえると、70年代の大仰な様式美だけではない、80年代へつながる整理されたバンド・サウンドの入口として見えてくる作品だ。
同じMachiavelの中でも、初期のプログレ色と、後年の広い層に届く路線のあいだをつなぐ位置づけの一枚。バンドの変化を追ううえで、ひとつの節目として捉えやすいレコードだと思う。
トラックリスト
- A1 – Vocando = Fly (3:31)
- A2 – Sobre El Mundo = Lying World (2:53)
- A3 – Relajar = Relax (3:08)
- A4 – Champaña En Amsterdam = Champagne In Amsterdam (4:05)
- A5 – Recuerdos = Memories (3:56)
- B1 – Apagalo = Turn Off (3:45)
- B2 – Una Vida = A Life (3:35)
- B3 – Playboy (3:35)
- B4 – Muy Claro = So Clear (3:25)
- B5 – Desvaneciendose = Fade Away (4:38)
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A Flock Of Seagulls – A Flock Of Seagulls (1982)
A Flock Of Seagulls『A Flock Of Seagulls』について
A Flock Of Seagullsのデビュー・アルバム『A Flock Of Seagulls』は、1982年に発表された1枚で、ニューウェーブとシンセポップの流れの中でもよく知られた作品だ。バンドはイギリス・リバプールでマイク・スコアと弟のアリ・スコアを中心に始まり、80年代前半の空気を強くまとったサウンドで存在感を示した。
このアルバムはバンドにとって最初の長編作品であり、後の代表曲をまとめて確認できる初期の基盤でもある。US盤では「Tokyo」が外れている構成で、収録内容に地域差がある点もこの時代のレコードらしいところだ。
作品の位置づけ
本作は、A Flock Of Seagullsの名前を広く知らしめた出発点として扱われることが多い。アルバムからは複数のシングルが切られており、発売順としては「Telecommunication」「Modern Love Is Automatic」「I Ran」「Space Age Love Song」が並ぶ。
特に「I Ran」は、このバンドを語るうえで外しにくい代表曲だ。シンセの輪郭がはっきりしたイントロと、ギターの細いフレーズが前面に出る作りで、ニューウェーブの中でも識別しやすい楽曲になっている。「Space Age Love Song」も含め、アルバム全体の印象を決める中心曲として機能している。
サウンドの印象
この時期のA Flock Of Seagullsは、シンセサイザーを土台にしながら、ポール・レイノルズのギターが音の輪郭を作る形が特徴的だ。ベースとドラムは直線的に進み、ボーカルはマイク・スコアの高めで乾いた響きが前に出る。音数は多くないが、各パートの配置がはっきりしていて、80年代初頭のスタジオ録音らしい整理された質感がある。
同時代のニューウェーブやシンセポップの文脈で見ると、デュラン・デュランやトンプソン・ツインズのようなポップ性の強い流れと並べて語られることがある一方で、A Flock Of Seagullsはギターの処理や空間の使い方に独特の癖がある。派手さよりも、音の配置と反復で覚えさせるタイプの作りだ。
収録曲とシングル
オリジナル盤は1982年4月9日発売。UKアルバムチャートには4月17日に入っており、最高32位を記録している。シングルは以下の4曲。
- 「Telecommunication」
- 「Modern Love Is Automatic」
- 「I Ran」
- 「Space Age Love Song」
とくに「Modern Love Is Automatic」は、12インチ・シングル版で別構成の収録があったことでも知られる。こうした形で当時のクラブ向けフォーマットや拡張ミックスの文化と接続していた点も、この時代の作品らしい。
US盤としての特徴
今回のUS盤は、Aristaからの流通で、Hauppauge Record Manufacturing Ltd.によるプレスが示されている。表記上は1982年の盤で、オリジナル発売年と同じ時期のリリースにあたる。US/Canada盤では「Tokyo」が省かれているため、曲順と収録内容に違いがある。
クレジット面では、全曲がZomba Enterprises, Inc.(BMI)出版、℗表記は曲ごとに1981年と1982年が混在している。制作の積み重なりがそのまま残っている形だ。
アーティストとしての意味合い
A Flock Of Seagullsは、1979年にリバプールで始まったグループで、1980年代前半に活動の核がある。オリジナル編成はマイク・スコア、ポール・レイノルズ、アリ・スコア、フランク・モーズリー。のちに再結成や別編成での活動もあるが、このデビュー作はやはりオリジナル期の輪郭を最もはっきり伝える。
2018年にはオリジナル・ラインナップでオーケストラ作品『Ascension』を制作し、2021年にも『String Theory』を制作しているが、そうした後年の動きと比べると、本作はバンドの原型が最もストレートに出ている時期の記録といえる。
まとめ
『A Flock Of Seagulls』は、1982年のニューウェーブ/シンセポップの空気をそのまま掴めるデビュー・アルバムだ。代表曲「I Ran」を中心に、シンセとギターの役割分担が明確で、曲ごとの輪郭もはっきりしている。US盤では「Tokyo」が省かれているため、聴き比べると構成差も確認できる1枚になっている。
トラックリスト
- A1 – I Ran (3:58)
- A2 – Space Age Love Song (3:46)
- A3 – You Can Run (4:28)
- A4 – Don’t Ask Me (2:46)
- A5 – Messages (2:51)
- B1 – Telecommunication (2:31)
- B2 – Modern Love Is Automatic (3:49)
- B3 – Standing In The Doorway (4:41)
- B4 – D.N.A. (2:30)
- B5 – Man Made (5:38)
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Andromeda – Seven Lonely Street (1990)
Andromeda「Seven Lonely Street」について
Andromedaは、1967年末から1970年初頭にかけて活動したロンドンの英国産ヘヴィ・サイケデリック・ロック・グループである。John Du Cannのギター、Mick Hawksworthのベースとボーカルを軸に、初期にはJohn Rhymer、のちにIan McLaneがドラムを担当した。「Seven Lonely Street」は、そのバンドの1969年9月発表のアルバムで、のちに再発された1990年盤も同じ内容を収めている。
作品の位置づけ
Andromedaにとってこのアルバムは、短い活動期間の中で残された唯一のフル・アルバムとして知られている。John Peelの関心をきっかけにラジオ・セッションやライブの機会を得て、マナー・オブ・マーキーでの出演など、当時のロンドンのサイケデリック・シーンの中で存在感を示したバンドだった。アルバム制作時には演奏とプロダクションの自由度が高かったとされ、バンドの音像をそのまま記録した作品という位置づけにある。
ただし、発売後の評価やライブでの手応えとは裏腹にセールスにはつながらず、バンドは1970年3月に解散している。したがって、この1枚はAndromedaの活動をまとめて確認できる中心作といえる。
内容と音の特徴
収録曲は、ヘヴィ・ブルース寄りの土台に、サイケデリックな展開やプログレッシブな構成を重ねたものが並ぶ。ギターの前に出る感じ、ベースとドラムの押し出し、曲ごとにテンポや空気を変える進行が目立つ。Rock、Blues、Acid Rock、Psychedelic Rock、Prog Rockという整理がされるのも納得できる内容で、同時代の英国サイケやヘヴィ・ロックの文脈で語られやすいアルバムである。
John Du Cannの後のキャリアを知っていると、この作品での演奏にもつながりが見える。Andromedaは、のちのハード寄りの英国ロックへ接続する前段階としても興味深い存在だろう。比較対象としては、同時代の英国サイケデリック・バンドや、よりヘヴィな方向へ進む初期のプログレ系ロック・グループが挙がりやすい。
収録曲について
代表曲という意味では、アルバム全体が一体になっているタイプで、単独で広く知られた大ヒット曲が前面に出る作品ではない。とはいえ、曲ごとの変化ははっきりしていて、長めの展開やリフ主体の部分、ブルース色の強い場面など、当時の英国ロックの手触りがそのまま入っている。
再発盤のポイント
1990年のUK盤は、オリジナルの1969年作を元にした再発盤である。初回分では、裏ジャケットの曲目表記に誤りがあり、2面目の曲順が別バンドFuzzy DuckのLPの曲名で記されていたというエピソードが残っている。加えて、この再発盤にはBarry Wintonによる短いヒストリー小冊子が付属し、番号入りのものもある。
また、スリーブはラミネートなしの自然な質感のカード仕様とされていて、再発盤としては資料性の高い作りになっている。
まとめ
「Seven Lonely Street」は、Andromedaという短命ながら重要な英国ヘヴィ・サイケ・バンドの姿を、当時の空気ごと切り取ったアルバムである。ラジオDJのJohn Peelに認められ、ロンドンのライブ・シーンで動きながら、最終的には1枚のアルバムに集約された作品。1969年の英国ロックの一断面として、そしてJohn Du Cann周辺のキャリアをたどるうえでも、確認しておきたいタイトルである。
トラックリスト
- A1 – Let’s All Watch The Sky Fall Down (4:03)
- A2 – Keep Out ‘Cos I’m Dying (5:41)
- A3 – Darkness Of Her Room (5:09)
- A4 – Go Your Way (2:58)
- B1 – Searchin’ For You (3:07)
- B2 – Seven Lonely Street (4:00)
- B3 – Sleep (3:25)
- B4 – See Into The Stars (7:13)
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Mouse – Lady Killer (1973)
Mouse『Lady Killer』について
Mouseは、1970年代前半の短い活動期間に残した英国のプログレッシブ・ロック・バンドで、ギタリストのRay Russellを中心にしたグループだ。『Lady Killer』は1973年に発表された作品で、Ray Russellにとっては、1972年のRunning Man、1975年のChopynへとつながる一連の“一回限り”のロック・プロジェクトの中では2作目にあたる。
編成は、Ray Russell、Alan “Al” Clare、Jeff Watts、Alan Rushtonの4人。ジャズ畑でも知られるRay Russellが、ギターを軸にロック寄りの表現へ振った時期の記録として見ると、位置づけがつかみやすい作品だ。
作品の性格
クレジット上はロック、スタイルはプログレッシブ・ロック。Mouseという名義のまとまった作品としては、70年代初頭の英国プログレ周辺の空気を背景にした1枚として扱える。バンド名単位での活動期間は長くないが、Ray Russellのキャリアの流れの中では、ジャズ・ギタリストがロック・バンドでどこまで行けるかを示す記録でもある。
同時代の文脈で見ると、演奏の前面にギターを置きつつ、曲展開や構成の変化を重視するタイプの英国プログレの系譜に入る。Ray Russellの名前からは、ジャズ・ロック寄りの感触を連想しやすいが、この作品はそうした経歴を踏まえたうえでのロック・バンド作品として受け取るのが自然だ。
盤のリリースについて
手元の盤はドイツ盤で、白ラベルに黒文字のシングル・スリーブ仕様。1980年代半ばごろのブートレグ再発盤として流通したものとされる。オリジナルのカラー・カバーを白黒で再現した体裁で、見た目の情報量は絞られているが、作品自体を手に取りやすくした再発形態のひとつといえる。
聴きどころとして見える点
実際の音像を細かく書くには盤そのものの確認が必要だが、Ray Russellの参加作としては、ギターの扱いが軸になるはずの作品だ。Alan Clareのヴォーカルとキーボード、Jeff Wattsのベース、Alan Rushtonのドラムという編成からも、歌と演奏の両方で組み立てるロック・アルバムの形が見える。派手なヒット曲で知られるタイプの盤ではなく、バンドの短い歴史とRay Russellの動き方をたどるうえでの一枚という印象が強い。
まとめ
『Lady Killer』は、Ray Russellを中心にしたMouseの1973年作として、英国プログレの流れとジャズ・ギタリストの感覚が交差する作品だ。バンドの活動期間は短いが、そのぶん時代の空気とメンバーの個性がそのまま残った記録として見やすい。オリジナルの71年初頭のロック・シーンを背景にしつつ、80年代半ばの再発盤ではその断片的な存在感が改めて流通した、そんな位置づけの一枚である。
トラックリスト
- A1 – Going Out Tonight
- A2 – You Don’t Know
- A3 – Electric Lady
- A4 – All The Fallen Teen-Angels
- A5 – Ashen Besher
- B1 – We Can Make It
- B2 – East Of The Sun
- B3 – It’s Happening To Me And You
- B4 – Sunday
- B5 – Just Came Back
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Marillion – Misplaced Childhood (1985)
Marillion『Misplaced Childhood』について
Marillionの『Misplaced Childhood』は、1985年に発表された3作目のスタジオ・アルバムだ。英国のプログレッシブ・ロック・バンドとして存在感を強めていた時期の作品で、いわゆる「Fish期」の代表作としてよく挙げられる。バンド名を知る人には、この作品でMarillionの輪郭がはっきりした、と感じる人も多いはずだ。
2017年盤として出回っているこのレコードは、オリジナルの1985年作を後年に再プレス、あるいは再発したものにあたる。作品そのものは1985年のものとして受け取るのが自然だ。
作品の位置づけ
Marillionは1979年にイングランドのアリスベリーで結成され、80年代前半から活動を続けてきた。特に初期は、アート・ロックやシアトリカルな要素を含む80年代プログレの代表格として語られることが多い。『Misplaced Childhood』は、その中でも商業面・評価面の両方で大きな到達点になったアルバムだ。
この時期のMarillionは、同時代のプログレ再興組として語られることが多く、GenesisやCamel、IQ、Pallas、Pendragonといった名前と並べて語られることもある。とはいえ、単なる「復古」ではなく、Fishの語り口を前面に出したドラマ性の強い楽曲構成が、バンド独自の色になっている。
アルバムの内容と聴きどころ
『Misplaced Childhood』は全10曲で構成され、通して聴くと一つの物語のように流れていく作りだ。特にA面冒頭の「Pseudo Silk Kimono」から「Kayleigh」へのつながりは、このアルバムの入り口としてよく知られている。
なかでも「Kayleigh」は、Marillionを代表する曲としてまず名前が挙がることが多い。シングルとしても広く知られ、バンドの認知を押し上げた一曲だ。続く「Lavender」も同時期の代表曲として語られることが多く、このアルバムが“曲単位でも覚えられている”作品であることを示している。
演奏面では、Steve Rotheryのギターが旋律を明確に引っぱり、Mark Kellyのキーボードが和声と装飾を支え、Pete TrewavasとIan Mosleyのリズムが場面転換を作る。Fishの歌は、メロディをなぞるだけでなく、台詞のように曲の場面を動かしていくタイプで、このアルバムではその特徴がかなりはっきり出ている。
曲の流れとアルバム構成
この作品は、単独のヒット曲だけでなく、曲間のつながりや組曲的な構成で聴かれることが多い。前後の曲が切れ目なく印象をつないでいくため、1曲ごとの輪郭とアルバム全体の流れが両方残るタイプの作りだ。
- 「Kayleigh」: 代表曲として最も知られる曲
- 「Lavender」: 80年代Marillionを象徴する人気曲のひとつ
- 「Heart of Lothian」: バンドの演奏力と展開の多さが出る曲
- 「Blind Curve」: 長尺で組曲的な性格が強い構成
2017年盤について
2017年盤は、オリジナルの1985年盤からかなり時間を置いて出た再発盤と考えられる。こうした再発では、オリジナル盤の入手性を補う形で流通することが多く、ジャケットや収録内容は基本的に作品本体をそのまま伝えるものだ。
再発盤を手にする場合、まず大事なのは音源のクレジットやカッティング情報を確認することだが、この作品については、まずアルバム本編そのものの価値が中心になる。1985年当時のプログレ・アルバムとしての存在感が、そのまま残るタイトルだ。
まとめ
『Misplaced Childhood』は、MarillionのFish期を代表する一枚であり、1980年代プログレの中でもよく話題に上る作品だ。代表曲「Kayleigh」を軸にしつつ、アルバム全体でひとつの流れを作る構成が印象に残る。バンドの演奏、Fishの語り口、メロディの運び方がまとまっていて、Marillionというバンドの特徴がかなり分かりやすく表れたアルバムといえる。
Twink – Think Pink (1970)
Twink『Think Pink』について
Twinkは、英国のドラマー/ソングライター/シンガー、John Charles Edward Alderの名で知られる人物である。The Fairies、The Pretty Things、Tomorrow、Pink Fairiesといった60〜70年代英国アンダーグラウンドの重要バンドを渡り歩いた人で、その活動の流れの中で1970年に発表されたのが『Think Pink』だ。タイトルの段階からして、いかにも当時のロンドン・アンダーグラウンドらしい手触りがある作品で、British psychedeliaの文脈で語られることが多い。
この盤は2020年の50周年リマスター盤で、オリジナルの1970年作を現在の形で聴ける再発盤にあたる。レコードとしてはカナダ盤で、収録内容はオリジナル・アルバムを軸にしながら、リマスターで音の輪郭を整えた形と見てよさそうだ。
作品の位置づけ
『Think Pink』は、Twinkのキャリアの中でも大きな節目にあたる1枚である。ドラマーとしての活動が先行していた人物が、自身の名義で色を出したアルバムとしても重要で、単なる伴奏者ではなく、当時のサイケデリック・ロックの空気を自分の作品としてまとめた印象が強い。
背景には、Ladbroke Grove周辺のアンダーグラウンド・シーン、そしてHawkwind周辺の人脈がある。制作面では友人のMick Farrenが関わり、Paul RudolphやSteve Peregrin Tookらが参加している。特にSteve Peregrin Tookは、T. Rexの初期を知る人にはおなじみの名前で、こうした人脈だけでも当時の英国ロックの交差点にある作品だと分かる。
サウンドの印象
実際に聴くと、派手なロック・バンドの完成形というより、セッション感や実験性が前に出る作りである。曲ごとに演奏の温度が変わり、直線的に盛り上がるというより、音の配置やリフの反復、声の置き方で引っ張る場面が多い。ドラマーの作品らしく、リズムの立ち上がりがはっきりしている一方で、曲の展開はきっちり整えすぎず、ラフさも残している。
プロト・パンクの荒さと、サイケデリック・ロックの浮遊感、その中間にあるような手触りもある。Pink FairiesやTomorrow、さらには同時代のHawkwind周辺を思わせる部分はあるが、Twink自身の音としてまとまっているのが面白いところだ。
同時代との関係
1970年という年は、英国ロックが60年代的なサイケデリアから次の段階へ移る時期で、重さを増すハードロックや、より長尺で実験的なプログレッシブ・ロックも強くなっていった。その中で『Think Pink』は、そうした大きな流れに飲み込まれながらも、地下シーンの感覚を保っている作品として聴ける。
比較の軸としては、The Pink Fairies、Tomorrow、初期のHawkwindあたりが浮かぶ。いずれも大きく売れた主流ロックとは別の場所で、自由度の高い演奏や反商業的な空気を持っていたバンドだ。『Think Pink』もその延長線上にあるが、Twink個人の名前が前に出るぶん、より私的な記録としての性格も感じさせる。
曲について
この作品はアルバム全体で流れを聴くタイプの内容で、特定の大ヒット曲で知られる盤ではない。とはいえ、タイトル曲「Think Pink」を中心に、アルバムの輪郭を覚えやすい構成になっている。曲名の並びや演奏の切り替わりからも、当時のサイケデリック・ロックらしい自由な組み立てが見て取れる。
2020年リマスター盤として
2020年の50周年リマスター盤は、オリジナル盤の時代性を保ちながら、音の見通しを整えた再発として位置づけられる。盤面表記やインサートの扱いなど、細部は再発盤らしい仕様になっている。オリジナルの空気をそのまま封じ込めたというより、現在の再生環境で聴きやすくした版、と見るのが自然だろう。
まとめ
『Think Pink』は、Twinkという人物が英国アンダーグラウンドの中心付近で積み上げてきた経験を、1970年時点でひとつの作品にしたアルバムである。ドラマー主導の作品でありながら、演奏の荒さ、サイケデリックな広がり、仲間たちの気配が同居している。英国サイケ、Ladbroke Grove周辺、Pink FairiesやHawkwindの流れに関心があると、作品の輪郭がつかみやすい1枚だ。
トラックリスト
- A1 – The Coming Of The One (5:30)
- A2 – Ten Thousand Words In A Cardboard Box (4:30)
- A3 – Dawn Of Magic (1:44)
- A4 – Tiptoe On The Highest Hill (5:19)
- A5 – Fluid (4:08)
- B1 – Mexican Grass War (5:30)
- B2 – Rock And Roll The Joint (2:32)
- B3 – Suicide (4:26)
- B4 – Three Little Piggies (3:15)
- B5 – The Sparrow Is A Sign (2:24)
関連動画
- Twink – Think Pink ( 1970 UK Prog Rock, Psychedelic Rock ) Full Album
- Twink “Think Pink” 1970 *The Coming Of The Other One*
- Twink “Think Pink” 1970 *Ten Thousand Words In A Cardboard Box*
- Twink “Think Pink” 1970 *Dawn Of Magic*
- Twink “Think Pink” 1970 *Tiptoe On The Highest Hill*
- Twink “Think Pink” 1970 *Fluid*
- Twink “Think Pink” 1970 *Mexican Grass War*
- Twink “Think Pink” 1970 *Rock An’ Roll The Joint*
- Twink “Think Pink” 1970 *Suicide*
- Twink “Think Pink” 1970 *Three Little Piggies*
Sally Oldfield – Playing In The Flame (1981)
Sally Oldfield「Playing In The Flame」について
「Playing In The Flame」は、Sally Oldfieldが1981年にUKで発表したアルバムです。ジャンルとしてはRockとPopにまたがり、スタイル面ではDowntempo、Pop Rock、Synth-popの要素が並ぶ作品として位置づけられています。Sally Oldfieldは、Mike Oldfieldの姉としても知られるUK出身のシンガーで、この時期にはソロ作を通じて自分の歌声と楽曲の輪郭をはっきり打ち出していった流れの中にある作品です。
作品の位置づけ
1981年という年代を考えると、アコースティック寄りのフォーク的な感触よりも、当時のポップ・ロックやシンセを使ったサウンドの空気が前に出やすい時期です。Sally Oldfieldの作品群の中でも、ソロ・アーティストとしての表現を、同時代の英国ポップスの文脈に置いて聴ける1枚といえます。妹や弟という家族関係で語られがちなアーティストですが、この作品ではそうした話題だけでなく、ひとりの歌い手としての存在感が中心にある印象です。
盤の仕様
このUK盤にはプリント入りのインナー・スリーブが付属しています。発売当時のパッケージとして、作品の世界観をそのまま補強する要素のひとつです。
サウンドの印象
実際に聴くと、曲ごとにリズムの置き方や鍵盤の使い方が変わり、歌を支えるアレンジの設計がはっきりしているタイプのアルバムとして受け取れます。派手な押し出しだけで引っ張るのではなく、声と曲の流れを軸にまとめていく作りで、1980年代初頭の英国ポップ・ロックらしい整理された響きが見えます。シンセの使い方も、装飾というより曲の骨格に関わる役割として機能しているように聴こえます。
同時代の文脈
同じ時期のUKでは、ポップ・ロックとシンセ・ポップの境目をまたぐ作品が多く出ていました。「Playing In The Flame」もそうした流れの中で理解しやすいアルバムです。フォーク由来の繊細さを持ちながら、80年代的な音像へ寄せていく感覚は、同時代の英国女性シンガー・ソングライターの作品とも並べて語られやすい部分です。
アーティストについて
Sally Oldfieldは1947年にダブリンで生まれ、幼少期をイングランドのReadingで過ごしています。バレエやクラシック・ピアノの学習歴を持ち、音楽活動は1960年代後半にMike Oldfieldとのデモ録音から始まりました。その後、兄MikeとともにThe Sallyangieを結成し、1968年にはアルバム「Children of the Sun」を録音しています。そうした背景を踏まえると、「Playing In The Flame」は、彼女がソロの表現を継続しながら、より洗練されたポップ寄りの形に向かっていた時期の記録として見えてきます。
まとめ
「Playing In The Flame」は、1981年のUKポップ・ロックの空気をまといながら、Sally Oldfieldの歌と楽曲の作りを確認しやすいアルバムです。Mike Oldfieldの家族という文脈だけでなく、ソロ作品としてのまとまりを持った1枚として、1980年代初頭の英国作品らしい手触りが残ります。
トラックリスト
- A1 – Playing In The Flame (5:03)
- A2 – Love Of A Lifetime (4:08)
- A3 – River Of My Childhood (3:57)
- A4 – Let It All Go (2:55)
- A5 – Song Of The Lamp (3:16)
- B1 – Rare Lightning (4:45)
- B2 – Man Child (3:57)
- B3 – It’s A Long Time (3:35)
- B4 – Song Of The Being (4:41)
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Wigwam – Lucky Golden Stripes And Starpose (1976)
Wigwam『Lucky Golden Stripes And Starpose』(1976)
フィンランドのプログレッシブ・ロック・バンド、Wigwamが1976年に発表した作品。
アートロックとプログレッシブ・ロックの要素を軸にした、バンド後期の一枚として位置づけられるアルバムである。
Wigwamは1968年結成のフィンランドのバンドで、同国のロック史では重要な存在として知られている。
この時期の編成には、Jim Pembroke、Jukka Gustavson、Pekka Pohjola、Pekka Rechardt、Måns Groundstroem、Esa Kotilainen、Pave Maijanenら、フィンランドのロック/ジャズ系シーンでも名前の挙がるメンバーが並ぶ。
演奏面の情報だけ見ても、キーボード、ギター、ベース、ドラムに加えて複数の参加者が関わる構成で、バンドの作り込みの強さがうかがえる。
作品の位置づけ
1976年作ということで、Wigwamのキャリアの中でも70年代中盤の流れにあるアルバム。
前作までの流れを受けつつ、英国のVirginからも流通した作品で、フィンランド国内ではLove Records盤、国外ではVirgin盤として出回った。
同じタイトルでも、Love盤とVirgin盤ではカバーアートが異なる点が特徴になっている。
オリジナル盤の仕様としては、エンボス加工の単独ジャケットに、大きく折りたたまれた歌詞インサート/ポスターが付属する形。
Virgin盤は6面折りの歌詞ポスター、Love盤は歌詞と写真ディスコグラフィー入りのインナーが付く構成で、装丁面でも資料性のある一枚になっている。
サウンドの印象
内容は、ロックを基調にしながら、プログレッシブ・ロックらしい展開とアレンジの組み込みが目立つタイプ。
Wigwamは、同時代の英国プログレに接続しながらも、単純に英国勢の模倣に収まらないところが持ち味で、HawkwindやJethro Tullのような直線的な比較よりは、よりメロディと構成を詰めたバンドとして語られることが多い。
この作品でも、演奏の密度、キーボードの配置、曲の組み立てにその傾向が出ている。
実際に聴くと、派手さだけで押すよりも、各パートの受け渡しや曲中の切り替えで聴かせる場面が多い。
Jim Pembrokeのヴォーカルを軸にしながら、Pekka PohjolaやPekka Rechardt、Esa Kotilainenらの個性が曲の輪郭を作る流れ。
フィンランドのバンドらしい湿度のある空気感と、英国プログレ由来の構成感が同居している印象である。
時代背景と比較
1976年は、プログレッシブ・ロックが70年代前半のピークから少し形を変えていく時期。
その中でWigwamは、過度に大仰になりすぎず、アートロック寄りの整理された感覚と、プログレの長い流れを両立させている。
Genesis、Yes、King Crimsonといった英国勢の文脈に置かれやすい一方で、北欧圏ならではの落ち着いた組み立てが目立つグループでもある。
まとめ
『Lucky Golden Stripes And Starpose』は、Wigwamの70年代中盤を代表する一枚として見やすい作品。
ロック、アートロック、プログレッシブ・ロックの要素が、演奏力と構成力の両方でまとめられている。
盤の仕様も含めて、当時の英国流通盤とフィンランド盤の違いが残る、記録性の高いアルバムである。
トラックリスト
- A1 – Sane Again
- A2 – International Disaster
- A3 – Timedance
- A4 – Colossus
- A5 – Eddie And The Boys
- B1 – Lucky Golden Stripes And Starpose
- B2 – June Maybe Too Late
- B3 – Never Turn You In
- B4 – In A Nutshell
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The Roys – Kicked Off The Train (1986)
The Roys「Kicked Off The Train」について
The Roysの「Kicked Off The Train」は、UKのバンド、The Roysの1986年にリリースされた作品。盤も同年のもので、1986年という時代の空気をそのまま閉じ込めた一枚として見てよさそうだ。スタイルはソフトロック寄りで、ロックの中でも耳当たりのよさや歌の流れが前に出るタイプの作品として捉えやすい。ブリティッシュ・ロックシーンに襲いかかるアメリカン・インディの新鋭らしい。どっちなんだ。
作品の印象
タイトルから受ける勢いに対して、内容はソフトロックらしい聴きやすさが軸になっている印象だ。硬さ一辺倒ではなく、メロディや曲の運びを重視したつくりが想像しやすい。1980年代半ばの日本盤ロックとして見ると、過度に派手さへ寄せるというより、曲そのものをしっかり聴かせる方向の作品群の中に置けるかもしれない。
実際に聴いた人の感覚としては、音の輪郭が比較的はっきりしていて、ボーカルと演奏のバランスを追いやすいタイプに受け取られることが多そうだ。ソフトロックの文脈では、強いビートで押し切るよりも、コード感やサビの抜け方で印象を残す作りが見どころになりやすい。
1986年の位置づけ
1986年は、ロックの中でもAORやポップスとの距離感が近い作品が目立つ時期でもある。この「Kicked Off The Train」も、その時代らしい整った音作りの中で、ロックの骨格とソフトロックの聴きやすさが同居する一枚として見ると、輪郭がつかみやすい。
The Roysについては詳しいプロフィール情報が見当たらないが、少なくともこの作品では、タイトル曲を含めて作品単位でのまとまりが意識された可能性がある。アルバム全体で流れを聴かせるタイプなら、1曲単位の派手さよりも、通して聴いた時の連続性が印象に残りやすい。
曲やヒット曲について
現時点では、この作品の中で特に広く知られた代表曲やヒット曲として断定できるものは確認しにくい。とはいえ、タイトル曲「Kicked Off The Train」は作品名を背負っているぶん、アルバムの軸になっている可能性が高い。こうした作品では、タイトル曲にバンドの方向性や当時のサウンド感が集まりやすい。
盤について
この盤は1986年の日本盤として流通したもの。見本盤としての記録があるため、一般流通盤とは扱いが少し異なる可能性があるが、作品そのものは1986年当時のリリースとして受け取れる。
トラックリスト
- A1 – Kicked Off The Train
- A2 – Little Nam
- A3 – Hard Time
- A4 – Mediacs
- A5 – Serious
- B1 – Dog Day
- B2 – Rise Up Youth
- B3 – Don’t Go With Strangers
- B4 – Cabbage Town
- B5 – Who Shot That Man
Prince And The Revolution – Parade (1986)
Prince And The Revolution「Parade」について
1986年にリリースされた、Prince And The Revolution名義の8作目のスタジオ・アルバムが「Parade」です。Princeの作品の中でも、The Revolutionをバンドとして前面に出した最後のアルバムとして知られていて、ソロ色の強い次の展開へ向かう前の節目の一枚という位置づけです。ジャンル表記としてはRock、Funk / Soul、Pop、スタイルではFunk、Minneapolis Sound、Pop Rockにまたがる内容で、Princeらしいリズムの強さと、曲ごとの色分けがはっきりした構成になっています。
作品の輪郭
このアルバムは、Prince And The Revolutionという編成のまとまりを感じさせる内容です。メンバーにはLisa Coleman、Matt Fink、Brownmark、Wendy Melvoin、Prince Rogers Nelson、Bob Rivkinがクレジットされていて、キーボード、ギター、ベース、ドラムがしっかり絡み合うバンド感が土台になっています。とはいえ、中心にいるのはやはりPrinceで、楽曲の方向性や音の設計には彼の個性が強く出ている作品です。
同時代のポップやファンクの流れの中でも、ミネアポリス・サウンドの代表的な一枚として見られることが多いアルバムです。シンセサイザーの使い方、リズムの切れ味、メロディの立ち上がり方などに、その時期のPrince作品らしい特徴がまとまっています。ファンクの躍動感とポップな聴きやすさのあいだを行き来する作りで、アルバム全体の流れも比較的コンパクトにまとまっています。
代表曲「KISS」
この作品を語るうえで外せないのが「KISS」です。シングルとして大きく知られた曲で、アルバムの中でも特に印象の強いトラックです。ギター、リズム、ファルセットの使い方がはっきりしていて、Princeの曲作りの輪郭がわかりやすい一曲になっています。ほかの楽曲も含めて、派手さだけで押すのではなく、音数や配置で引っかかりを作る感じがこのアルバムらしいところです。
映像作品とのつながり
リリース時のシュリンクには、Warner Bros.の映画「Under the Cherry Moon」の音楽であることと、「KISS」がヒットシングルであることが告知されています。つまり、このアルバムは単独の音源作品としてだけでなく、当時のPrinceの映像作品とも地続きの文脈で出てきたものです。音だけでなく、映像やキャラクター性も含めて展開していた時期の記録としても見やすい一枚です。
日本盤としての仕様
この日本盤はゲートフォールド仕様で、オビには「Prince 8th」と入っています。シュリンク上のステッカーには「KISS」のヒットを含むことや、「Under the Cherry Moon」との関連が記されています。付属品としては、英和対訳のクレジット・インサート、英和歌詞インサート、アルバム・カタログ付きのマーケティング/アンケート・カードが確認できます。レーベル表記には1986年の表記があり、Warner-Pioneer Corporation, Japanによるライセンス盤です。
ひとこと
「Parade」は、Prince And The Revolutionという名義の終盤に置かれたアルバムでありながら、曲の強さと構成のまとまりがしっかり感じられる作品です。特に「KISS」の存在で広く知られていますが、アルバム全体として見ると、ファンク、ポップ、ロックの要素がPrince流に整理された時期の記録としても興味深い内容です。
トラックリスト
- Intro
- A1 – Christopher Tracy’s Parade (2:11)
- A2 – New Position (2:21)
- A3 – I Wonder U (1:40)
- A4 – Under The Cherry Moon (2:57)
- A5 – Girls & Boys (5:30)
- A6 – Life Can Be So Nice (3:12)
- A7 – Venus De Milo (1:54)
- End
- B1 – Mountains (3:58)
- B2 – Do U Lie? (2:43)
- B3 – Kiss (3:38)
- B4 – Anotherloverholenyohead (3:58)
- B5 – Sometimes It Snows In April (6:50)
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Tim Hardin – Painted Head (1972)
Tim Hardin「Painted Head」について
Tim Hardinは、アメリカのフォーク・シンガー/ソングライターとして知られる人物だ。
「If I Were a Carpenter」や「Reason to Believe」といった楽曲で広く名前が残っているが、「Painted Head」は1972年に発表された作品で、彼のフォーク・ブルース寄りの持ち味がまとまった一枚として位置づけられる。
作品の輪郭
このレコードは1981年に日本でリリースされた盤で、ジャケットや資料に日本語インサートが付いた仕様になっている。
オリジナルは1972年の作品なので、盤としては後年の再発にあたる。日本盤ならではの丁寧な付属物がある点も、この時期の輸入盤・国内再発らしいところだ。
サウンド面では、フォークを土台にしつつ、ブルース・ロックの要素が重なる構成。
Tim Hardinの作品らしく、歌と曲の骨格が前に出るタイプで、派手なアレンジで押すというより、言葉とメロディの流れで聴かせる印象がある。
Tim Hardinというアーティストの中で
Tim Hardinは、同時代のフォーク・シーンの中でも、シンガーとしての存在感とソングライターとしての評価が強い人だ。
自作曲が多くのアーティストにカバーされてきたことからも、楽曲そのものの強さがよくわかる。特に「If I Were a Carpenter」は、Bobby Darin、Joan Baez、Johnny Cash、The Four Tops、Robert Plantなど、多くの歌手に取り上げられた代表曲として知られている。
また「Reason to Believe」も重要な楽曲で、Rod Stewartのヒットでも広く知られる。
こうした曲と比べると、「Painted Head」はヒット曲の単独の知名度で押すというより、アルバム全体でTim Hardinの書く歌の手触りを追う作品という見え方になりやすい。
ジャンルの文脈
この作品は、Rock、Blues、Folk、World, & Countryという広い枠で整理されている。
実際のところ、60年代フォークの延長線上にあるシンガー・ソングライター作品として聴かれることが多そうだが、そこにブルース・ロックの感触が加わることで、単なる弾き語り中心の作品とは少し違う輪郭を持つ。
同時代の感覚でいえば、フォークの語り口とロックの帯域を行き来するアーティストたち――たとえばより広い意味でのシンガー・ソングライター作品群の中に置くと、Tim Hardinの独特な書き方が見えやすい。
歌詞を前面に出しながら、曲の流れ自体で引っ張るタイプの一枚、と言えそうだ。
まとめ
「Painted Head」は、Tim Hardinの代表曲で知られる作家性を、アルバム単位で確かめられる作品だ。
1972年のオリジナル作品を、1981年の日本盤で聴く形になるため、当時の日本での受け止め方も含めて残された一枚として見ておくと、より位置づけがつかみやすい。
トラックリスト
- A1 – You Can’t Judge A Book By The Cover (4:09)
- A2 – Midnight Caller (3:09)
- A3 – Yankee Lady (4:24)
- A4 – Lonesome Valley (4:29)
- A5 – Sweet Lady (3:44)
- B1 – Do The Do (3:44)
- B2 – Perfection (3:02)
- B3 – Till We Meet Again (3:11)
- B4 – I’ll Be Home (5:42)
- B5 – Nobody Knows You When You’re Down And Out (6:23)
Patto – Patto (1970)
Patto / Patto(1970年・UK)
Pattoのデビュー作にあたるPattoは、1970年にUKで登場した作品だ。もともとTimeboxに在籍していたMike Pattoを中心に、Ollie Halsall、Clive Griffiths、John Halseyらが合流してPattoへと改名した流れの中で生まれたアルバムで、バンド名そのものを掲げた最初の一枚という位置づけになる。
ジャンルとしてはRock、スタイルとしてはProg RockとHard Rockに分類されている。実際にバンドの成り立ちを見ても、60年代末の英国ロックから70年代初頭のプログレ/ハードロックへ接続する時期の作品として捉えやすい。派手な看板を立てるというより、演奏力を前に出して押していくタイプのバンド像が見える作品だ。
バンドの輪郭
Pattoは1970年にイングランドで結成された英国のプログレッシブ・ロック・バンドで、ヴォーカルのMike Pattoを核に、Timebox由来のメンバーを加えて始動した。ラインナップにはOllie Halsallのギターとヴィブラフォン、Clive Griffithsのベース、John Halseyのドラムが並ぶ。のちにBernie HollandやMichael McCarthyの名もクレジットに見えるが、このアルバム時点の基本線は、Patto、Halsall、Griffiths、Halseyの4人組として押さえておくのが自然だ。
作品の位置づけ
このPattoは、バンドの出発点をそのまま刻んだ一枚として見やすい。Timeboxから名前を変えて新しい形を打ち出した直後の記録であり、以後のPattoの方向性を示す入口になっている。UK産のプログレッシブ・ロックが拡張していく時期の中で、サイケデリック寄りの流れやハードなバンド演奏が交差するあたりに置けるアルバムだ。
演奏面の注目点
Pattoの名前を押し出した作品だけに、中心はMike Pattoの歌とOllie Halsallのプレイに集まりやすい。Halsallは後年まで語られることの多いギタリストで、ここでもバンドの色を作る重要な存在として機能している。リズム隊のまとまりも含めて、曲ごとの展開を追うより、バンド全体の推進力で聴かせるタイプのアルバムという印象が強い。
盤について
このレコードはUK盤として流通している。レーベル表記や盤面の仕様に違いがある個体も見られるため、コレクションとしてはプレス違いの確認がポイントになりやすい。とはいえ作品そのものは、1970年当時のPattoの出発点を示す内容として理解しておけばよさそうだ。
同時代の文脈
同じ時代のUKロックで言えば、プログレッシブ・ロックの構成感と、ハードロックの押し出しをまたぐ位置にいる。派手なコンセプト性よりも、演奏の密度やリフの手触り、ボーカルの存在感で勝負する流れが見える。そうした意味で、当時の英国ロックの中でも、バンドの身体感覚が前に出る作品として置ける。
Pattoというバンド名をそのまま冠した初期作として、まずはここから彼らの輪郭が立ち上がる。1970年のUKロックの空気を、演奏主体で切り取った一枚だ。
トラックリスト
- A1 – The Man (6:12)
- A2 – Hold Me Back (4:40)
- A3 – Time To Die (2:54)
- A4 – Red Glow (5:15)
- B1 – San Antone (3:07)
- B2 – Government Man (4:20)
- B3 – Money Bag (10:04)
- B4 – Sittin’ Back Easy (3:42)
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Kuni Kawachi & Friends – 切狂言 (1970)
Kuni Kawachi & Friends『切狂言』について
Kuni Kawachi & Friendsの『切狂言』は、1970年に発表された日本のロック作品で、サイケデリック・ロックとアシッド・ロックの流れの中に置かれる1枚だ。メンバーには和田アキラではなく、川内康範…ではなく、Kuni Kawachi、Joe Yamanaka、Hideki Ishima、Chito Kawachiが名を連ねている。日本のサイケデリック・ロック史を語るうえで、当時の空気を強く反映した作品として見られることが多い。
作品の輪郭
アルバムはタイトル曲「Kirikyogen」から始まり、「Time Machine」「Omaeno Sekaihe」「Renai Bochi」「Onna No Kyoushitsu」など、英訳を添えた曲名も並ぶ構成だ。全7曲というまとまりの中で、言葉の置き方と演奏の緊張感が前面に出ている印象がある。レコード全体としては、歌ものの形を保ちながらも、演奏のうねりや音の質感が曲の骨格を作っているタイプの作品だ。
収録曲の見どころ
- A1「Kirikyogen」: タイトルを冠した導入曲。作品の入口として置かれた1曲。
- A2「Ningen Syutaino Keieitokoji (Works Composed Mainly By Humans)」: 長い曲名が印象に残る。言葉遊びの感触もある。
- A3「Time Machine」: タイトルからして、当時のサイケデリックな感覚と相性のよい楽曲名。
- B1「Omaeno Sekaihe (To Your World)」: 英訳付きの表記で、曲の輪郭がつかみやすい。
- B2「Renai Bochi (Graveyard Of Love)」: 邦題と英訳の落差が目を引く。
- B3「Onna No Kyoushitsu (Classroom For Women)」: 物語性を感じさせる題名。
- B4「Otokowo Onnakaramita Kagakutekicyousa (Scientific Investigation)」: アルバムの終盤を締める、最も長い曲名の1曲。
サウンドと時代感
1970年の日本ロックは、英米のサイケデリック・ロックやアシッド・ロックの影響を受けつつ、国内の歌謡的な感覚や実験性が交差していた時期だ。『切狂言』もその文脈に置くと、当時の日本のロックが持っていた語法のひとつとして聴こえてくる。Joe Yamanakaのヴォーカル、Hideki Ishimaのギター、Kuni Kawachiの作曲面、Chito Kawachiのリズムが組み合わさって、曲ごとの推進力を作っている構成だ。
同時代の日本のサイケデリック・ロックやアート寄りのロックと比較されることはありそうだが、この作品はとくにバンド名義のまとまりと、曲名に表れた言葉の強さが目立つ。演奏そのものとタイトルの並びが、作品の印象を決めている1枚と言えそうだ。
2021年盤について
この盤は2021年リリースのものだが、作品自体は1970年のオリジナル発表。したがって、内容としては初期の作品を現在の盤で聴く形になる。再発盤としての大きな違いは、少なくともこの情報だけでは細かくは追えないが、作品の本体は1970年のオリジナル録音にある。
まとめ
『切狂言』は、Kuni Kawachi & Friendsという名義のもとで、日本のサイケデリック・ロックが持っていた実験性と歌の輪郭が同居した作品だ。全7曲という構成、長い曲名の並び、1970年という時代背景が、そのままアルバムの性格を形作っている。
トラックリスト
- A1 – 切狂言 (芝居小屋の名役者)
- A2 – 人間主体の経営と工事
- A3 – タイム・マシーン
- B1 – おまえの世界へ
- B2 – 恋愛墓地
- B3 – 女の教室
- B4 – 男から女を見た科学的調査
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Areski – Brigitte Fontaine – Je Ne Connais Pas Cet Homme (1973)
Areski – Brigitte Fontaine「Je Ne Connais Pas Cet Homme」
フランスのAreski BelkacemとBrigitte Fontaineによる共作名義、Areski – Brigitte Fontaineの一枚。1973年のオリジナル作品として知られるタイトルで、ここに収められているのはシャンソンを軸にしながら、アヴァンギャルドや実験的な要素を前面に出した世界観だ。
作品の輪郭
Brigitte Fontaineの語りかけるような歌唱と、Areskiの多彩な演奏・構成がぶつかり合うというより、同じ空間の中で少しずつ形を変えていく作り。ロックやポップの枠に置かれながらも、一般的な歌モノの流れには収まらない、ひっかかりのある音像がこの作品の中心にある。
この二人の共同作業は、単独名義の作品とは少し違って、作品全体がひとつの会話のように進むところが特徴的だ。メロディが前に出る場面もあれば、言葉の運びや間の取り方が主役になる場面もあり、シャンソンの伝統と前衛的な感覚が同居している。
聴きどころ
この手のAreski-Fontaine作品では、派手な展開や分かりやすいサビよりも、音の配置や声の置き方に耳が向く。Brigitte Fontaineの声は、歌うというよりも言葉を音楽の中に置いていくようで、Areskiの側はその動きを受け止めながら、楽曲の輪郭を少しずつずらしていく印象がある。
70年代フランスのシャンソン周辺には、BarbaraやJacques Higelin、Magma周辺のように既存の形式を崩しながら独自の表現へ向かう動きがあったが、この作品もその流れの中で語られることがありそうだ。とはいえ、ロックの推進力だけでも、実験音楽の硬さだけでもなく、その中間にある独特の距離感が残る。
リリースについて
盤として流通しているものは1990年代後半から2000年代初頭の再発盤とみられ、オリジナルの1973年盤とは別の時代のプレスになる。再発盤としては、価格コードやバーコードが付かない仕様という点が目立つ。
アーティストのキャリアの中では、AreskiとBrigitte Fontaineの共同名義作品の一つとして位置づけられる一枚。二人の関係性そのものが作品の核にあるタイプで、単なる客演ではなく、名前どおりの共同制作として捉えるのが自然だ。
まとめ
「Je Ne Connais Pas Cet Homme」は、フランスのシャンソンを土台にしながら、ポップ、ロック、実験性が同じ画面に並ぶ作品。歌と演奏の役割分担が固定されず、曲ごとに表情が変わっていくところが面白い。
トラックリスト
- A1 – Depuis (1:54)
- A2 – J’ai 26 Ans, Madame (1:15)
- A3 – La Fille Du Curé (2:04)
- A4 – Comment Ca Va (1:40)
- A5 – Montparnasse (1:23)
- A6 – La Recherche De L’Hiver (3:44)
- A7 – Les Blanchisseuses (1:09)
- A8 – C’est Normal (4:21)
- B1 – Dis-moi (4:03)
- B2 – Insert (0:25)
- B3 – On N’est Pas Des Arbres (1:45)
- B4 – La Renarde Et Le Bélier Touffu (3:56)
- B5 – Insert (0:25)
- B6 – Je Ne Connais Pas Cet Homme (2:18)
- B7 – Nous Ne Pourrons Plus Dormir (1:32)
- B8 – La Morvien (2:37)
- B9 – Le Silence (1:52)
- B10 – Final (0:35)
関連動画
- Areski et Brigitte Fontaine – C’est Normal
- La fille du curé
- Montparnasse
- La recherche de l’hiver
- Les blanchisseuses
- Brigitte Fontaine – C’est normal
- Areski et Brigitte Fontaine “Dis-moi”
- Areski & Brigitte Fontaine – On N’Est Pas Des Arbres (1973)
- Brigitte Fontaine et Areski Belkacem – La renarde et le bélier touffu
Patrice Witt – For D’js And Long Highways (1982)
Patrice Witt『For D’js And Long Highways』について
Patrice Wittはフランスのキーボーディスト/作曲家で、For D’js And Long Highwaysは1982年にフランスでリリースされた作品だ。ジャンルはElectronic、Jazz、Rock、スタイルはProg Rock、Ambient、Fusionに位置づけられている。ひとことで言えば、キーボードを軸にしたインストゥルメンタル寄りの作品として受け止めやすい1枚で、同時代のプログレッシブ・ロックやフュージョンの流れの中に置くと見通しがつきやすい。
作品の位置づけ
このアルバムは、Patrice Wittにとってソロ名義の初期作にあたる。ジャケットには「Vent D’Estのピアニストによる初のソロ・アルバム、Pierre Moerlen参加」といった内容のステッカーが付くものもあるようで、バンド活動とは別に、キーボード奏者としての個性を前面に出した作品として扱われていることがわかる。1982年という時期を考えると、プログレの語法とエレクトロニックな質感、ジャズ由来の演奏感覚が近い距離で並ぶ時代性も見えやすい。
音の輪郭
この作品の核にあるのは、キーボードのフレーズと音色の組み立てだろう。ロックの推進力、ジャズの流れ、エレクトロニックなレイヤーが重なり、派手な歌ものというよりは、演奏と構成の変化で聴かせるタイプの内容として捉えられる。フュージョンの手触りもあり、当時のフランス周辺のプログレ/インストゥルメンタル作品と並べて語られることがありそうだ。
同時代の比較対象としては、キーボード主導のプログレや、ジャズ・ロックの延長にある作品群が思い浮かぶ。Pierre Moerlenの参加がクレジットされる点からも、リズム面にしっかりした推進力が入る構図が見えてくる。こうした背景を踏まえると、単なるソロ・キーボード作品というより、バンド的な緊張感を持ったインスト作品として受け取られやすい。
リリース情報
- アーティスト: Patrice Witt
- タイトル: For D’js And Long Highways
- オリジナルリリース年: 1982年
- リリース国: フランス
- アーティストの国: フランス
- ジャンル: Electronic / Jazz / Rock
- スタイル: Prog Rock / Ambient / Fusion
まとめ
For D’js And Long Highwaysは、1982年のフランスで生まれた、キーボード奏者Patrice Wittのソロ作品だ。プログレ、アンビエント、フュージョンの要素が同居し、同時代のインストゥルメンタル作品の流れの中で見ていける内容。派手なヒット曲で押すというより、演奏の組み立てや音色の変化で輪郭を作るタイプのアルバムとして記憶されやすい1枚だ。
トラックリスト
- A1 – On The Edge Of Time (4:23)
- A2 – Just The Sound Of Your Name (4:50)
- A3 – Mandragore (3:20)
- A4 – Blind Eyes (3:56)
- A5 – Dreams Of Sun (5:40)
- B1 – Catfish (3:18)
- B2 – Crying Guitar Reggae (3:08)
- B3 – Gypsy Queen (2:50)
- B4 – You’re Just Seventeen (4:06)
- B5 – Exodus Space Flight To Cygnus X1 (5:22)
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King Crimson – Lizard (1970)
King Crimson「Lizard」について
King Crimsonの「Lizard」は、1970年に発表されたプログレッシブ・ロックの重要作です。もともと初期King Crimsonは、Robert Frippを中心に、Ian McDonald、Greg Lake、Michael Giles、Peter Sinfieldらが参加した編成で出発し、1969年のデビュー作で強い印象を残しました。その流れの中で作られた本作は、初期King Crimsonの中でも特に組曲的な構成が目立つ一枚です。
この日本盤は1971年リリースの初期国内盤で、見開きジャケット仕様。Rock Age obi付きのファースト・イシューで、インサートも封入されています。ライナーノーツの日付は「1971.3.11」となっています。
作品の位置づけ
「Lizard」は、King Crimsonの中期以降の重厚なサウンドへ直結するというより、初期の実験性と室内楽的な構成感が強く出た作品として位置づけられることが多いアルバムです。バンドの編成変化が続いていた時期の作であり、Robert Frippを軸にしながらも、楽曲ごとの色がはっきり分かれている印象があります。
同時代のプログレッシブ・ロックの文脈では、YesやGenesisのようなメロディ志向の展開とは別に、より不安定な和声やジャズ寄りの動き、劇的な構成を前面に出したタイプとして聴かれることが多い作品です。Keith Tippettの参加も、このアルバムの音の輪郭を形づくる要素になっています。
聴きどころ
本作の中心は、組曲的に展開する長尺曲「Lizard」になる。パートごとに場面が切り替わる構成で、ロックのリズム感だけで押し切るというより、ブラスやピアノを含むアレンジで進んでいくのが特徴です。曲単位でのまとまりより、全体を通してひとつの組曲として聴く感覚が強い作品といえます。
また、アルバム全体としては、硬質なギターの響きと、アンサンブルの混線する感じが同居しています。派手なヒット曲で押すタイプではなく、曲の流れや音の配置を追う楽しさがある一枚です。
日本盤としての魅力
この日本盤初期プレスは、当時の国内発売の仕様をそのまま味わえる点がまず目を引きます。見開きジャケットや帯、インサートを含めて、1970年代初頭の日本盤らしい作りです。オリジナル盤の年代は1970年ですが、こちらは1971年の国内流通盤として手元に置くタイプのリリースになります。
まとめ
「Lizard」は、King Crimsonの初期の実験精神を強く映したアルバムです。バンドの歴史の中では、編成の揺れが続く時期の作品でありながら、組曲構成、ジャズ的な要素、室内楽的な処理がひとつの形になっているのが面白いところです。初期プログレの中でも、かなり個性の出たタイトルとして語られる一枚です。
トラックリスト
- A1 – Cirkus (Including: Entry Of The Chameleons) (6:28)
- A2 – Indoor Games (5:38)
- A3 – Happy Family (4:15)
- A4 – Lady Of The Dancing Water (2:43)
- Lizard (22:24)