The Nice – Attention! (1973)

The Nice『Attention!』について

The Niceは、キース・エマーソンを中心に活動した英国のロック・バンドだ。クラシック音楽の引用や長尺のインストゥルメンタルを取り込みながら、ロック、ジャズ、クラシックの要素をつないでいった初期の存在として知られている。のちのEmerson, Lake & Palmerにつながる流れを考えるうえでも、重要なグループだろう。

『Attention!』は1973年に日本で出た作品で、The Nice名義の初出タイトルとして扱われている。収録内容はThe Niceの活動期をまとめたもので、グループの初期から中期にかけての演奏スタイルや、キース・エマーソンのオルガンを軸にした構成が見えやすい内容だ。

バンドの位置づけ

The Niceは、もともとソウル歌手P.P. Arnoldのバック・バンドとして始まった。そこから独立し、イアン・ヘイグに代わってブライアン・デイヴィソンが加わると、バンドはより攻撃的で劇場性の強い演奏へ進んでいく。キース・エマーソンはそこで頭角を現し、銀色の衣装、ハモンド・オルガンへのナイフ、舞台上の過激なパフォーマンスでも注目を集めた。

当時のThe Niceは、英国内では存在感を強めた一方、アメリカでは大きなブレイクには至らなかった。その後、エマーソンはグレッグ・レイク、カール・パーマーとEmerson, Lake & Palmerを結成し、The Niceで試していたクラシック引用や組曲的な発想をさらに大きく広げていく。

作品の聴きどころ

この時期のThe Niceを語るうえで外せないのは、やはりキース・エマーソンの鍵盤だ。モーツァルト、バッハ、シベリウス、チャイコフスキーなどをロックの文脈に持ち込む手つきが、すでにこの段階ではっきりしている。単なる引用ではなく、ロック・バンドの編成に置き換えて押し切るところに、このバンドの個性がある。

また、The Niceは演奏の切り替えや曲の展開にも特徴がある。ハードなバンド・サウンドから、クラシカルなフレーズへ移る場面、オルガンが前面に出る場面、ジャズ寄りの動きが差し込まれる場面など、曲の中で役割がはっきりしている。スタジオ作品でもライブ感の強さが残るのが、このグループらしいところだ。

エピソードと代表曲

The Niceの代表的なエピソードとしてよく知られているのが、レナード・バーンスタインの「America」をめぐる一件だ。ロイヤル・アルバート・ホールで同曲を演奏し、アメリカ国旗のレプリカを燃やそうとしたことで物議を醸した。バーンスタイン本人も強く反応したとされ、このバンドが当時どれほど挑発的に受け止められていたかを示す出来事だ。

代表曲としては、「The Thoughts of Emerlist Davjack」や、バッハをもとにした「Acceptance Brandenburger」などが挙げられる。前者はデビュー期を象徴する題材で、後者はThe Niceがクラシックとロックの接続をより明確にした例として見られている。

日本盤としての特徴

この日本盤は帯とインサート付きで出ている。ランアウトはスタンプ刻印とのことだ。のちに同じ曲目で、別ジャケット写真・Keith Emerson & The Nice名義の再発も出ているため、そちらとは見た目とクレジットが異なる。

タイトル初出の1973年という時期は、The Nice本体の活動史を振り返る形で作品が置かれている年でもある。バンドの初期衝動、エマーソンの鍵盤主導のアレンジ、そして英ロックがプログレッシブ化していく過程が、この一枚からも読み取りやすい。

まとめ

『Attention!』は、The Niceの特徴をコンパクトに追える作品だ。P.P. Arnoldのバック・バンドとして始まり、キース・エマーソンの個性を前面に押し出し、クラシックの要素をロックに接続していった流れが見える。英プログレの初期史、そしてELP以前のエマーソンを知るうえで、位置づけのはっきりした一枚といえる。

トラックリスト

  • A1 – Third Movement Pathetique
  • A2 – The Thoughts Of Emerlist Davjack
  • A3 – America (2nd Amendment)
  • B1 – My Back Pages
  • B2 – Country Pie / Brandenburg Concerto No. 6
  • B3 – One Of Those People
2026.06.23