Pink Floyd – The Dark Side Of The Moon (1973)
Pink Floyd / The Dark Side Of The Moon (1973, UK)
Pink Floydの8作目のスタジオ・アルバム。1973年にロンドンのAbbey Road Studiosで録音され、UKのHarvestから発表された。バンドにとっては、それまでのサイケデリック色と実験性を保ちながら、より構成のはっきりした作品へ進んだ時期の到達点にあたる1枚だ。
この作品は、Pink Floydの代表作として広く知られている。音のつながり、効果音、会話の断片、曲間の切れ目の少なさが、アルバム全体をひとつの流れとしてまとめている。制作面では、ジャケットをHipgnosisが手がけ、内袋にポスターとステッカーが付く初期仕様もよく知られている。
作品の位置づけ
1960年代後半の実験的なPink Floydから、70年代の大きな成功へつながる中心作といえる。Syd Barrett在籍期のサイケデリックな側面を引き継ぎつつ、Roger Waters主導の構成意識が前面に出ている。のちの『Wish You Were Here』や『Animals』へ向かう流れの中でも、特に分かりやすく完成度の高い地点に置かれる作品だ。
同時代の英国ロックの中では、YesやGenesis、King Crimsonなどのプログレッシブ・ロック勢と並べて語られることが多い。ただし本作は、長大な組曲の技巧を見せるタイプというより、音響処理やテーマの統一感で聴かせる作りになっている。
収録曲と代表曲
アルバムを通してよく知られるのは、“Time”、“Money”、“Us and Them”、“Brain Damage”、“Eclipse”あたりだ。特に“Money”は、異色の7拍子のリフとレジスター音の導入で印象が強い。“Time”は時計の音から始まる構成がはっきりしていて、アルバムの中でも曲の輪郭が見えやすい。
“The Great Gig in the Sky”では、歌詞を持たないヴォーカル・パートが置かれていて、アルバム内の役割が明確だ。Barry St. John、Doris Troy、Lesley Duncan、Liza Strikeのバック・ヴォーカル参加も、クレジット上で細かくは目立たないが、聴こえ方には確かに影響している。
音と構成
演奏は、David Gilmourのギター、Roger Watersのベース、Richard Wrightの鍵盤、Nick Masonのドラムを軸にしている。シンセサイザーやテープ効果、環境音の使い方が曲のつなぎ目に組み込まれていて、各曲が単独で完結するというより、アルバム全体でひとつのまとまりを作る方向に寄っている。
冒頭と終盤の会話の断片も有名だ。Nick Masonの著書『Inside Out – A Personal History of Pink Floyd』では、収録された発言の出どころとして、Abbey RoadのドアマンGerry O’Driscollの「There is no dark side of the moon. Matter of fact, it’s all dark.」などが挙げられている。こうした断片が、作品のテーマ性を補強している。
オリジナルUK盤について
オリジナルのUK Harvest盤は、ラベルのプリズム図柄の仕様で見分けられることで知られる。初期には、青いプリズムがはっきりしたデザインが使われている。今回の盤は1973年リリースの初期仕様に近い位置づけで、後年の再発盤とはラベルや細部の表記が異なる。
初期のジャケットには、見開き内に2枚のポスターと2枚のステッカーが付属した。コピーによっては、黒いポリライニング内袋や、ゲートフォールドの開口部の貼り方、裏面表記の位置などに違いがある。こうした差異は、UKオリジナル期のプレスを追う際の注目点になっている。
まとめ
『The Dark Side Of The Moon』は、Pink Floydの実験性、構成力、スタジオ作品としての完成度が強く出たアルバムだ。サウンドの細部、曲間のつながり、効果音の配置まで含めて、1970年代ロックの中でも特に設計の意識が見えやすい1枚である。
ヒット曲としては“Money”がまず挙がるが、アルバム全体で聴くと、単曲の人気だけでは収まらないまとまりがある。UKオリジナル盤では、その完成形に近い初期プレスならではの細部も含めて、作品の歴史を感じやすい。
トラックリスト
- A1 – Speak To Me
- A2 – Breathe
- A3 – On The Run
- A4 – Time
- A5 – The Great Gig In The Sky
- B1 – Money
- B2 – Us And Them
- B3 – Any Colour You Like
- B4 – Brain Damage
- B5 – Eclipse