Yes – Time And A Word (1970)
Yes『Time And A Word』について
Yesの『Time And A Word』は、1970年に発表された2作目のアルバムで、バンド初期の姿を知るうえで重要な作品だ。プログレッシブ・ロックの文脈では、のちの大作志向や緻密なアンサンブルへ向かう前段階として位置づけられることが多い。既にYesらしい構築感は見えつつ、まだ初期のロックバンドとしての輪郭も残している時期の録音である。
この日本盤は1979年のリリースで、オリジナルの1970年盤からは時間が経っている。表記上は日本で製造された盤で、℗1970 Atlantic Recording Corporation、Made by Warner-Pioneer Corporation, Japan とある。つまり、作品そのものは1970年のアルバム、手元の盤は後年の国内流通盤という整理になる。
作品の位置づけ
本作は、Yesの初期メンバー編成を聞ける最後のアルバムでもある。マスターノートにある通り、後にスティーヴ・ハウがピーター・バンクスと交代するが、その変更はアルバム発表の前後に起きている。結果として、アメリカ盤のジャケットではスティーヴ・ハウが登場する一方、実際の演奏には参加していないという、少しややこしい事情を持つ作品でもある。
また、トニー・コックスによるライブのオーケストラ・アレンジが加わっている点も特徴的だ。バンドの演奏に弦の厚みが重なり、当時のYesがただのギターロックではなく、オーケストラ的な発想を取り込み始めていたことがわかる。
内容と曲の印象
収録曲では、タイトル曲「Time and a Word」が中心的な存在だ。のちのYesが得意とする長尺組曲とは少し違い、楽曲のまとまりを重視した構成で、メロディとアレンジの両方を前に出している。「Sweet Dreams」も初期Yesを代表する曲として知られ、シングルとして切られたことからも、この時期のバンドがアルバム全体だけでなく単独曲としての印象も意識していたことがうかがえる。
実際に聴くと、演奏の芯はロックバンドそのものだが、そこにオーケストラが入ることで空間の広がりが出る。後年のYesにあるような複雑な変拍子の積み重ねよりも、曲の展開と音色の変化で聴かせる場面が目立つ。ジョン・アンダーソンの声はすでに明確に存在感があり、クリス・スクワイアのベースも前に出る。初期盤らしい、音の密度よりも曲の流れを追うタイプのアルバムという印象である。
同時代との関係
1970年という時期を考えると、イギリスではプログレッシブ・ロックが形を整えつつあったころだ。King Crimson、Genesis、Emerson, Lake & Palmer などと並べて語られることもあるが、Yesはその中でも、メロディの明瞭さとアンサンブルの推進力を重視する方向に進んでいく。この『Time And A Word』は、その後の『Fragile』や『Close to the Edge』のような完成形へ向かう前の、まだ試行の段階が見える作品といえる。
日本盤としてのポイント
1979年の日本盤という点では、オリジナルの1970年盤とは発売時期が異なる。レコードとしては、当時の日本の流通盤らしい安定した再発の一枚として扱える。作品の中身は1970年のアルバムそのままで、初期Yesの音像を日本で改めて聴ける仕様になっている。
まとめ
『Time And A Word』は、Yesがプログレッシブ・ロックの代表格へ進む途中に置かれた、初期ならではの作品だ。オーケストラを交えたアレンジ、シングル向きの楽曲、そして初期メンバー最後の記録という要素が重なっている。後年の大作群とは違うが、Yesというバンドの出発点と方向性を確認できるアルバムである。
トラックリスト
- A1 – No Opportunity Necessary, No Experience Needed
- A2 – Then
- A3 – Everydays
- A4 – Sweet Dreams
- B1 – The Prophet
- B2 – Clear Days
- B3 – Astral Traveller
- B4 – Time And A Word