Genesis – Foxtrot (1972)

Genesis『Foxtrot』について
Genesisの『Foxtrot』は、1972年にUKでリリースされたアルバムだ。バンドの初期らしい組曲的な構成、細かく組み立てられた展開、鍵盤とギターが前に出るアレンジが印象に残る作品として知られている。
Genesisは1967年にイングランド南東部サリーのCharterhouse Schoolで結成されたUKのロック・バンドで、初期は複雑な曲構成と演劇的なステージングで存在感を示した。『Foxtrot』もその流れにある1枚で、プログレッシブ・ロックとアート・ロックの要素が強く出ている。
サウンドの特徴
この時期のGenesisらしく、曲は静かなパートから段階的に組み上がっていく場面が多い。リズムは一定のビートで押し切るというより、拍子や展開の変化を含みながら進む構成。録音も、各楽器の輪郭をはっきり残した質感で、オルガンやメロトロン系の響き、12弦ギターの層、フィル・コリンズのドラムが曲の流れを支える形になっている。
ピーター・ガブリエルのボーカルは、語りを含むような歌い回しと、場面ごとの表情の切り替えが目立つ。バンド全体としては、音数を重ねながらも、各パートの役割が比較的見えやすい作りだ。
作品の位置づけ
『Foxtrot』は、Genesisの初期プログレ期を代表するアルバムのひとつとして語られることが多い。ピーター・ガブリエル在籍時の作品で、のちにバンドがよりポップ寄りの方向へ進む前の、複雑な構成と長尺の展開が前面にある時期を示している。
1970年代前半の英国ロックでは、Yes、King Crimson、Emerson, Lake & Palmer などと並んで、演奏力と構成の緻密さを軸にしたプログレッシブ・ロックが広がっていた。その文脈の中で、『Foxtrot』もバンドの個性を押し出した作品として位置づけられる。
メンバー
- Peter Gabriel – lead vocals, flute, percussion
- Tony Banks – keyboards, backing vocals
- Steve Hackett – guitar
- Mike Rutherford – bass, bass pedals, guitar, backing vocals
- Phil Collins – drums, lead & backing vocals
ひとこと
『Foxtrot』は、Genesisの初期の特徴がまとまった1枚だ。構成の細かさ、楽器の重なり、曲ごとの展開の切り替えがはっきりしていて、1972年の英国プログレらしい手触りが感じられる作品である。
トラックリスト
- A1 Watcher Of The Skies
- A2 Time Table
- A3 Get ‘Em Out By Friday
- A4 Can-Utility And The Coastliners
- B1 Horizons
- Supper’s Ready
関連動画
Quatermass – Quatermass (1970)

Quatermass / Quatermass
1970年にUKで登場した、Quatermassの唯一のアルバム。メンバーはJohn Gustafson、J. Peter Robinson、Mick Underwoodの3人で、ベース、ハモンド・オルガン、ドラムスを軸にしたパワー・トリオ編成になっている。ハードなロックの推進力に、鍵盤の厚みや管弦楽的なアレンジを重ねた、当時のブリティッシュ・プログレ周辺に位置する作品。
サウンドの輪郭
全体の印象は、リズムの押し出しが強く、演奏の密度も高め。Mick Underwoodのドラムは前に出てきて、John Gustafsonのベースとボーカルが土台を作る。そこにJ. Peter Robinsonのキーボードが加わり、ハモンド・オルガンのうねりや、クラシカルな弦の響きが差し込まれる構成。ブルース・ロックの筋肉質な感触と、アート・ロック、シンフォニック・ロック寄りの装飾性が同居している印象。
録音の雰囲気は比較的ストレートで、音数は多いが輪郭は見えやすいタイプ。曲によっては展開が細かく、リフの切り替えやブレイクが目立つ。とくに「Laughin’ Tackle」では、弦楽器の大編成が加わり、ロック・バンドの枠を広げるような作りになっている。
作品の位置づけ
Quatermassは短命だったバンドで、このアルバムが唯一の作品。バンド名はBBCのSFドラマに由来し、70年代初頭の英国ロックらしい、ロックと物語性の近さも感じさせる。後年の活動につながる人脈も多く、John GustafsonはのちにBulletを結成し、Mick UnderwoodはEpisode Sixへと進む。
また「Black Sheep of the Family」は、のちにRainbowが最初に録音した曲としても知られている。そうした意味でも、このアルバムは単独作でありながら、周辺シーンへの接点がいくつも見える一枚。
同時代の文脈
1970年前後のUKでは、ブルース・ロックを土台にしながら、キーボード主体の展開やクラシカルな要素を取り込むバンドが増えていた時期。Quatermassもその流れの中で、ハードな演奏力と構築的なアレンジを両立させた作品として位置づけられる。The Niceのような鍵盤主体のプログレ、あるいは初期のハード寄り英国ロックを思わせる要素もあり、ジャンルの境目を行き来する内容になっている。
盤について
- アーティスト: Quatermass
- タイトル: Quatermass
- オリジナル・リリース年: 1970年
- 盤のリリース年: 1975年
- 国: UK
- メンバー: Peter Robinson, John Gustafson, Mick Underwood
- ジャンル: Rock
- スタイル: Blues Rock, Art Rock, Prog Rock, Symphonic Rock
トラックリスト
- A1 Entropy
- A2 Black Sheep Of The Family
- A3 Post War Saturday Echo
- A4 Good Lord Knows
- A5 Up On The Ground
- B1 Gemini
- B2 Make Up Your Mind
- B3 Laughin’ Tackle
- B4 Entropy (Reprise)
関連動画
Scattered Order – Career Of The Silly Thing (1985)

Scattered Order「Career Of The Silly Thing」について
Scattered Orderは、1979年にシドニーで結成されたポストパンク・バンド。本作「Career Of The Silly Thing」は1985年の作品で、電子音とロックを行き来しながら、ニューウェイブ、アートロック、シンセポップ、実験性を横断する内容になっている。
作品の輪郭
バンドのプロフィールを踏まえると、Scattered Orderはオーストラリアのポストパンク/インダストリアルの流れの中で重要な役割を担ってきたグループ。欧米の先鋭的な音楽を独自に受け止めつつ、周辺のアーティストとともにコミュニティを形成していった経緯がある。本作も、その延長線上にある1枚として捉えやすい。
サウンド面では、電子的な質感とバンド演奏のぶつかり方が印象に残る。硬質なリズム、ざらついた音像、少し距離を置いた録音の空気感。整いすぎない構成の中に、反復や変則的な展開が入り込み、ニューウェイブの枠に収まりきらない手触りがある。
同時代とのつながり
1980年代半ばという時期を考えると、ポストパンクが細分化し、シンセポップやアートロック、実験音楽の要素が混ざり合っていった頃。本作もそうした流れの中で、ロックの骨格に電子音や異物感を差し込むタイプの作品として見えてくる。派手さよりも、音の配置や質感の変化で引っ張るタイプのアルバムという印象。
アーティストの中での位置づけ
Scattered Orderは長い活動の中で作風を広げてきたバンドだが、「Career Of The Silly Thing」は、初期のポストパンク的な緊張感と、実験的な志向が重なる時期の記録として置けそうな作品。バンドの変化と持続、その両方が見えやすい1枚。
クレジット
- アーティスト: Scattered Order
- タイトル: Career Of The Silly Thing
- オリジナルリリース年: 1985
- 盤のリリース年: 1986
- ジャンル: Electronic, Rock
- スタイル: New Wave, Art Rock, Synth-pop, Experimental
トラックリスト
- A1 1,000 Gene Autrys
- A2 Tost Rust Host
- A3 Cut You Up
- A4 The Galaxy Is Dead
- A5 Life On A Bed
- A6 No Mattresses In Heaven
- B1 Career Of The Silly Thing
- B2 Escape Via Cessnock
- B3 4 Or 5
- B4 Remember May 12th
- B5 The Little Eye
- B6 The Entire Combine/Capital Of Sweden